「自転車欲しい人!」

突然咲耶ちゃんが居間に入ってきてそう言った。

「・・・は?」「・・・え?」「・・・へ?」「・・・チェキ?」

その時居間に居たアタシ、花穂ちゃん、衛ちゃん、四葉ちゃんは同時にそんな声を漏らした。

「だから、自転車! 欲しくないの!?」
「突然そんな事言われても・・・」

訳分かんない・・・。











自転車をいただきました













「咲耶ちゃん、一体どういう事?」

この場にいるみんなが状況を理解できなかった。
だからアタシが聞いた。

「さっき商店街の福引きやったら自転車が当たったの! だから欲しい人!」

だから欲しい人、って・・・

「そんな事、突然言われても、ねぇ・・・」
「そうデスよ」

四葉ちゃんと顔を合わせてそう言った。

「あ、衛ちゃん。 衛ちゃんなら自転車欲しいでしょ?」

確かに、衛ちゃんは走ったり、泳いだり、とにかく運動する事が大好きだ。
もちろんサイクリングも。

「あのさー、そう言う事はもうちょっと早く言ってよ」
「そうだよ咲耶ちゃん、この間衛ちゃん新しい自転車買ってたじゃない」
「・・・そう言えばそうだったわね」

でも衛ちゃんはこの間新しい自転車を買ったばかりとか言ってた。
なんでも最新のマウンテンバイクがどうとかで。

「花穂ちゃんは? この間自転車失くしたでしょ」

ああ、そう言えばそう言ってたっけ。
ただ花穂ちゃんの凄いところは、自転車を"盗まれた"、ではなく"失くした"と言う事だ。
いくらドジでもここまで来ると凄いと思う・・・。

「衛ちゃんの使ってたの貰ったからいいよ」
「でもこれ最新モデルだとかでいい物よ。 衛ちゃんのお古なんかより断然いいわ!」
「だったら尚更貰えないよ〜」
「花穂ちゃんならまた失くすかもしれませんからデスね」
「うん」

・・・花穂ちゃん、あなたは今四葉ちゃんにバカにされたんだよ。
納得してるんじゃないよ・・・。
まあ、そのくらいドジだって本人も自覚しているって事なんだろうけど・・・。
・・・・・・なんかアタシの方が悲しくなってきた・・・。

「じゃあこれどうするのよ!」

咲耶ちゃんがちょっとヒステリック気味に言う。

「じゃあアタシに頂戴、改造するから」

誰も貰う気が無いならアタシが貰おう。
アタシだったら新しいメカの材料とかに利用できるし。

「・・・一万六千八百円」
「なんでアタシだけお金取るのさ!?」
「売るって言ってるんじゃない! 返せって言ってるの!!」
「あ・・・」

そうでした、今月は咲耶ちゃんから一万六千八百円も借りてました・・・。

「大体さぁ〜・・・」

なんて考えてたら衛ちゃんが咲耶ちゃんに呆れ気味にそう話し始めてた。

「・・・家にはもう9台も自転車あるんだよ。 これ以上増えたって・・・」
「ちょっと待って、家には12人居るのよ! なんで9台だけなのよ!?」
「あれ? そう言えば・・・」

家は12人暮らし。
で、自転車は9台。
・・・だから12−9=3で・・・つまり3人は自転車を使っていない事になる。

「えっ、と・・・じゃあ誰が使ってないの?」

咲耶ちゃんが聞いてきた。

「まず一人目は千影ちゃんデスね」(よつ)
「あ、そう言えばそうだったね」(花)
「乗ってるトコ見た事無いや」(アタシ)
「乗ってるトコ想像できないデス」(よつ)
「何より似合わないし」(咲)
「でも自転車使っている人より先に目的地に居たり・・・」(まも)
「人間じゃないのよ」(咲)
「・・・・・・失礼じゃないか」(ちか)
「「「「「うわあああああッ!!」」」」」

いつの間にか千影ちゃんが居間に居たよ!

「まったく・・・・・・陰口なんて・・・・・・あまり感心しないな・・・」
「陰口じゃないよ、自転車の話」

咲耶ちゃんの言う通り、アタシ達は自転車の話をしてたんだ。

「・・・で、何処を如何すれば・・・・・・自転車の話から人間じゃないって結果が生まれるんだい?」

・・・・・・まあ、確かに・・・。

「アンタが話題に出た時点でよ!」

咲耶ちゃん酷い事言ってる・・・。

・・・・・・

千影ちゃんゴメンなさい・・・アタシ、納得しちゃった・・・。

「ごめんなさい千影ちゃん、花穂、納得しちゃったぁ〜」
「花穂くん・・・・・・そう言う事は・・・・・・いちいち言わないでくれないかい?」
「え? あ! いけない、花穂、またやっちゃったぁ〜」

花穂ちゃんは相変わらずのドジを披露してくれた。

「ホント〜に花穂ちゃんはドジデスね〜」

・・・でもそれは四葉ちゃんには言われたくないと思うよ・・・。

・・・で、でも、花穂ちゃんのそこが可愛いんじゃない・・・・・・なんて・・・あはは・・・、ぼ、ボクなに言ってるんだろ・・・

衛ちゃんがなんか呟いてるけどよく聞こえない。

「いいデスか花穂ちゃん、そう言うのはコッソリ心の中で考えるんデスよ」
「ふぇ〜、そうだよねぇ・・・」
「そうデスよ。 四葉はそうしマシタ」
「つまりそれは・・・・・・四葉くんもそう思った・・・と・・・」
「ハイデス! ・・・って、ああッ! しまったデス!!」

・・・・・・。

・・・さすがはドジっ子同盟と言う事か・・・。

「なんの話をしているんですか?」
「あ、鞠絵ちゃん」

二階にいたはず鞠絵ちゃんがいつの間にか降りて来ていた。
鞠絵ちゃんの脇にミカエルがトコトコついて来ていた。
あ、そう言えば鞠絵ちゃんは今日は体の調子が良いからって、
ミカエルを連れて公園まで散歩に行くって言ってたっけ・・・

そんな事を思い出していたら、突然衛ちゃんがこんな事を言い出した。

「あ! そう言えば鞠絵ちゃんもそうじゃないの!?」
「え? あ! そうよ! 鞠絵ちゃんもそうだったわ!」

咲耶ちゃんは納得した感じにそう言ってる。

「?? 一体何の事ですか?」
「そうだよ鞠絵ちゃんもそうだって一体何の事?」

鞠絵ちゃんが不思議そうにその事について聞いていた。
アタシも何が"そう"なのかよく分からなかったから咲耶ちゃんに尋ねてみた。

「自転車、鞠絵ちゃんも持ってなかったじゃない」
「え? ああ、そう言われればそうだったっけ」

そうだ、鞠絵ちゃんの自転車はなかったっけ。

「え? 一体なんの話を・・・」

納得したアタシとは反対に鞠絵ちゃんはまだ話が掴めずにいた。
まあ、鞠絵ちゃんはたった今この場に来たばかりだから仕方ないか。

そんな鞠絵ちゃんに咲耶ちゃんが説明をはじめた。

「私ね、さっき商店街の福引きで自転車を当てたのよ」
「まあ、それは凄いですね・・・」
「だけどね誰も欲しがらないのよ」
「はあ・・・」
「だから鞠絵ちゃんにあげる」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「え゛!?」

鞠絵ちゃんが思わずカエルの様な声を・・・って、ええっ!?
"鞠絵ちゃん"が"カエルの様な声"ぇぇ!?

鞠絵ちゃんを見てみると顔は青ざめ、口をパクパクさせながら、全身を震えさせて・・・って、え? えっ!?

「どうしたんデスか鞠絵ちゃん?」
「ななな、なんでも・・・ああありませんにょ・・・」

鞠絵ちゃんの語尾がおかしくなった。

「明らかに何かあるよね・・・」
「うん・・・」

衛ちゃんと花穂ちゃんがそんな鞠絵ちゃんを見てお互いにそう言ってた。

「で、でおそんなこうかまもももわわくしがもらふわけにわ・・・」
「鞠絵ちゃんどうしたの?」

鞠絵ちゃんの日本語がおかしくなった。
多分『でもそんな高価なものわたくしが貰う訳には・・・』って言いたいんだろうけど・・・。

「あ! 亞里亞ちゃん! 亞里亞ちゃんも自転車持っていなかったじゃないですか!」

鞠絵ちゃんの日本語が戻った。
それはそうと残りの一人は亞里亞ちゃんだったのか。
なんか納得。

「それなら亞里亞ちゃんにあげませんか?
 あげましょう! あげまくりましょう!!
 是非そうしましょう! 是が非でもしましょう!!」
「あげまくるほどないわよ!」

鞠絵ちゃんはなんか必死だ。

「それにこの自転車、亞里亞ちゃんが使うには大きすぎるわ」
「ででででも今日の動物占いでさくやちゃんは甘いものが好きな女の子の妹に自転車ヲ揚げると既知だって」
「鞠絵ちゃん途中から文字変換間違えてる」
「大体『今日の動物占い』ってなにさ?」
「しかも・・・・・・今更、動物占いかい・・・?」
「それに女の子の妹って、普通男の子の妹は居ないデスよ」

もうツッコミどころ満載だ・・・。
いつもの鞠絵ちゃんじゃない・・・
一体どうしたんだろう?

「そう言えばなんで鞠絵ちゃんの自転車はないの?」

花穂ちゃんが何気なく鞠絵ちゃんに聞いた。

「あ、あのですね・・・それは・・・」
「ひょっとして乗れないの?」

ハハハ・・・まさかそんな事・・・

・・・・・・。

・・・鞠絵ちゃんが大口開けて固まってる・・・。

「「「「「乗れないのッ!?」」」」」

皆で声をそろえて聞いてしまった。
鞠絵ちゃんは青ざめた顔のまま恥ずかしそうにコクリと頷いた。






「いいんです・・・どうせわたくしは自転車にも乗れないダメ人間ですから・・・」

鞠絵ちゃんは物凄く鬱になってしまった。

「いいんです・・・いいんです・・・」
「あ・・・ほら、その・・・そんなに気を落とさないで。 ね?」
「いいんです・・・どうせわたくしは道を踏み外してますよ〜だ・・・」
「はい?」

鞠絵ちゃんが意味不明な事を言った為、咲耶ちゃんはそんな声を出してた。
そんな鞠絵ちゃんと咲耶ちゃんの会話を聞いてアタシはちょっと苦笑してたりする・・・。

まあ、よく考えてみたら鞠絵ちゃんは小さい頃から病気がちで入退院を繰り返してたんだっけ・・・
だから小さい時に自転車を乗る練習が出来なかったんだろうな・・・。

「ダメだよ鞠絵ちゃん! 嫌な事から逃げてちゃ!!
 乗れないなら乗れるように練習すればいいんだよ!」

なんて考えてたら衛ちゃんが横から鞠絵ちゃんを励ますようにそんな事を言い出した。
うん、いかにも衛ちゃんらしい意見だ。

「それもそうよね。
 どうせ今からミカエルの散歩に行こうとしてたんでしょ?
 だったらそのついでに練習してくれば?
 この自転車あげるから」

咲耶ちゃんも衛ちゃんの意見に賛成らしい。
って言うか咲耶ちゃんにとっては自転車がなんとかなればそれでいいだけかもしれないけど・・・。

「でも今日はお体の調子が・・・」
「優れてるって言ってたでしょ!」

咲耶ちゃんのツッコミが入る。

「でも今月の今日の星占いで・・・」
「今月なのか今日なのか・・・・・・ハッキリしたらどうだい?」

千影ちゃんのツッコミが入る。

「でも咲耶ちゃんは最近可憐ちゃんに優しいから・・・」
「関係無いでしょッ!!」

鞠絵ちゃんが意味不明なことを口走る。

「そうだよ・・・・・・咲耶くんはただ恋び―――」



・・・・・・



・・・・・・



・・・・・・



「・・・千影ちゃん大丈夫?」

花穂ちゃんが数メートルほどぶっ飛んだ千影ちゃんを心配そうに見下ろす。

「・・・・・・」

返事が無い、ただの屍のようだ。

「ごめん千影、手が滑ったわ」

千影ちゃんを豪快にぶっ飛ばした咲耶ちゃんがそう言う。
いくらなんでも滑りすぎでしょう・・・。






「でも衛ちゃんの言う通りだね!」

千影ちゃんの事はこの際どうでもいいのか(酷)花穂ちゃんがそう言った。

「花穂だってチア、全然上手く出来てないけど・・・でもね、それでも頑張ってるんだよ!
 できないからってはじめから諦めてたらなんにもできないままだよ!」

か、花穂ちゃんが・・・花穂ちゃんが何か素晴らしい事を言っているッ!!?

「でもわたくしは別に・・・」
「鈴凛ちゃんもそう思うよね!」
「へ、アタシ?」

熱血系へと進化した花穂ちゃんがアタシの方に質問と視線を向けてきた。

「ね!?」
「う・・う〜ん・・・まあ、確かに花穂ちゃんの言う通りだね・・・」

言ってる事は正しいし、アタシも趣味でメカとか作ってるからそう言う事は何より実感している。

「鈴凛ちゃんも頑張る人の方が好きだよね!?」
「まあ、そうだね・・・」
「では早速練習しましょう!」(まりv)
「「「「「って、えッ!?」」」」」

鞠絵ちゃんはいきなりやる気になったのでした。






「ではそう言う事なので衛ちゃんご協力願えますか?」

やる気になった鞠絵ちゃんは積極的に衛ちゃんに指導を頼み始めた。
でも返事は、

「ごめんボク無理」

だった。

「言い出しっぺが何言ってるのよ」

千影ちゃんを屠り去った拳をもう片方の手で摩りながら咲耶ちゃんがそう言う。

「でも、ボクこれから草むしりしなくちゃいけないから・・・」
「草むしり・・・? ・・・ああ」

そう言えば衛ちゃんはマウンテンバイクを買う為にお小遣いを前借りしようとして、
それで咲耶ちゃんが草むしりをするならお小遣いをあげるって言う話をしてたっけ。

ちなみに我が家の家計簿を預かってるのは咲耶ちゃんなのです。
長女だから。

「じゃあしょうがないデスね」
「うん、がんばってね! ボクは協力できなけど!」

衛ちゃんは笑顔でエールを送ってきた。
・・・ひょっとして衛ちゃんは最初から草むしりの事を考えてあんな事を言ったのだろうか?
自分に厄介事が来ないからって・・・

「大丈夫! 花穂がお手伝いするから!」
「ええッ!?」

熱血系に進化した花穂ちゃんはどうやら止まらないみたいだ。

「ねえ、四葉ちゃんも一緒にお手伝いしよ?」
「チェキ? 四葉もデスか?」
「あ、鈴凛ちゃんは絶対参加しなきゃダメだからね」
「なんで!?」
「なんでって・・・だって鞠絵ちゃんだよ!」
「鞠絵ちゃんだからって理由に・・・・・・」

そこまで言ってアタシは言葉を切った。
だって・・・理由になるんだもん・・・アタシの場合は・・・。

「じゃあ決まりだね!」

熱血系の花穂ちゃんが元気よくそう言った。
そんな訳でアタシ達4人は鞠絵ちゃんの自転車の特訓をする事になった為、
アタシ達は各自簡単に外に出かける準備始めるのだった。






「そ、そうなんだ・・・花穂ちゃんが行くならボクも・・・」
「なに言ってるの! 草むしりする約束でしょ?」
「え!? で、でも花穂ちゃんが・・・!!」
「ほら、早く草むしりしないと夕飯までに終わらないわよ」
「あ、ちょ・・・ま、待って! か、花穂ちゃんが・・・花穂ちゃんがぁ・・・っ!!」

後ろからそんな会話が聞こえてきた気がした。
























そんなこんなでアタシ達は今、公園に向かっています。
アタシ、鞠絵ちゃん、四葉ちゃん、花穂ちゃん、それにミカエルも一緒に。

「鞠絵ちゃん自転車に乗れるようになるといいね」
「まあそれはいいデスけど、なんで花穂ちゃんは自転車に乗ってきてるんデスか?」
「え? だって自転車の練習するんでしょ? だったら見本とか必要じゃあ・・・」
「特にイラナイと思いマスよ」
「え!? そ、そうだったの!? あ〜ん、また花穂ドジしちゃったぁ〜・・・」
「やっぱり花穂ちゃんは相変わらずデスね〜」
「う〜・・・、で、でもさ、さっきは花穂のお陰で鞠絵ちゃんやる気になったんだよ!」
「まあ、確かにそうデシタね」
「花穂の思った通り、鞠絵ちゃんは鈴凛ちゃんの事になったらなんでもやるんだよね」
「そうデスね。 なんたってお二人は・・・"恋人同士"デスからね」

四葉ちゃんと花穂ちゃんがアタシの前を歩きながらそんな会話をしてた。
そう・・・、今四葉ちゃんが言った通り、 アタシと鞠絵ちゃんは姉妹なのに恋人同士って関係なんだ・・・。
二人ともお互いの事が好きだから・・・

「でも、まさかみんな姉妹の中にヘンタイさんが居るなんて思ってもいないデショウね」
「うん、まさかみんな姉妹の中にいじょうな人が居るなんて思っても・・・」


     ガスっ ガスっ


「・・・痛いデス」「・・・痛いよぉ」
「そう言う言い方やめて・・・!」

両手で同時にドジっ子同盟に脳天唐竹割りをかました。

でも、確かに二人の言う通りなんだよね・・・。
姉妹で、って事はつまり、 "女の子同士"で"血が繋がってる"(アタシ達の場合は微妙だけど)で、かなりアブナイ関係だかならなぁ・・・。
だからこんな事誰か知られる訳にいかない。
この事を知っているのは色々あって当人であるアタシ達以外ではこの二人だけ。
お陰で最近はこのメンバーで集まって色々やる事が多くなった気が・・・

「でもまさかみんな、鈴凛ちゃんが同性愛に目覚めたヘンタイさんだなんて思ってもいないデショウね」
「うん、まさかみんな、鈴凛ちゃんが姉妹で愛し合ういじょうな人だなんて思っても・・・」


     ガスっ ガスっ


「・・・痛いデス」「・・・痛いよぉ」
「だからそう言う言い方やめて・・・!」

再び両手で同時にドジっ子同盟に脳天唐竹割りをかました。

「じゃあ違うんデスか!?」
「う・・・」

違わないけど・・・「うん」と頷きたくない。

「大体なんでアタシだけなのさ!」
「じゃあ『まさかみんな鞠絵ちゃんがヘンタイさんだなんて・・・」


    どグワしゃァァぁ


「鞠絵ちゃんをバカにするなぁ!」
「四葉ちゃんッッ!!」

アタシの右手が四葉ちゃんの顎を捉えた!

「・・・って、ああ! ご、ゴメン・・・」

ヤバイヤバイ・・・アタシは勢いで四葉ちゃんに千影ちゃんの後を追わせる所だった。
だって鞠絵ちゃんをバカにされた気になったんだもん・・・。
だからつい・・・。

「痛いデス・・・やり過ぎデス・・・今までで一番痛いデス・・・」
「・・・まあ、いいじゃない。 それだけアタシ達仲良いって事で」
ちょっと待てぃ!」(By四葉)






「りんりんちゃんとよつばちゃんはなかよし・・・」

ん?

「りんりんちゃんとよつばちゃんはなかよし・・・」

なんか後ろの方で鞠絵ちゃんのような声が・・・

「わたくしなんかよりもずっと・・・・・・うっ・・う、ううっ・・・」
「って、わー、鞠絵ちゃん泣かないでー!」
























なんてドタバタしながら歩いてたら思ってたよりも早く公園に着いた。
中には誰も居ない。
まあ、好都合だ。
ついでに連れてこられたミカエルは(って言うかホントは自転車の練習の方がついでだったんだけど・・・)早速、公園に放された。
ちなみに放し飼いはいけないと思うけど、今は人が居ないのでいいのだ!

「じゃあ鞠絵ちゃん、早速自転車に乗って・・・」


    がくがくぶるぶる・・・


「「「・・・・・・」」」

・・・鞠絵ちゃんが物凄く震えている・・・。

「鞠絵ちゃん、頑張るんじゃ・・なかったの?」
「そ、そのつもりだったんですけど・・・」

いざとなると怖くなったんだ・・・。

「あの・・・きょ、今日は天気も悪いので・・・」
「晴天デス」
「でももうすぐ雨が・・・」
「雲ひとつないよぉ」
「でもでももうすぐ槍が・・・」
「降ってきたら大惨事だね」

やる前からイッパイイッパイだ・・・。

「あ、鈴凛ちゃん、見て下さい」
「ん?」

そう言って鞠絵ちゃんが指差したのは白いベンチだった。

「あのベンチ・・・わたくし達、春にあそこで・・キス・・しましたよね」
「え!」

そ、そう言われれば・・・この公園って確か・・・
そうだ、ここってアタシと鞠絵ちゃんが初めてキスした場所だ。

「覚えています?」
「う、うん・・・な、なんか照れるな・・・」

アタシ、前に鞠絵ちゃんに騙されて・・・
それでキスされて・・・

「ここで初めて・・・キス・・したんだよね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・ええ・・・」
「何、今の間!?」

アタシあの時、鞠絵ちゃんと恋人同士なんていいかもなんて考えて・・・
あの時はまだアタシ達、恋人同士じゃなかったんだけど・・・でも今はもう・・・恋人同士・・・なんだよね。
なんか信じられないな・・・。

なんだろう・・・ 少し前の事だったのに・・・すごく懐かしい。


「懐かしいですね・・・」
「うん・・・」
「じゃあ帰りましょう・・・」
「う―「「ダメ!」デス!」

四葉ちゃん、花穂ちゃんの同時援護攻撃。
アタシはまんまと鞠絵ちゃんにしてやられるトコだった・・・。












「じゃあアタシが後ろ掴んでるから漕いで」
「ふぁ、ふぁい・・・」

自転車の練習でお決まりの『自転車の後ろを支えて倒れないように役』はアタシがやる事になった。
理由は四葉ちゃん、花穂ちゃんが二人して「鈴凛ちゃんは鞠絵ちゃんの恋人なんだから!」とか言って アタシにその役を押し付けやがったから。
ちなみにアタシの台詞の後の返事は鞠絵ちゃんのものだ。

「り、鈴凛ちゃん!」
「ん?」
「は、離さないで下さいよ!」

鞠絵ちゃんが必死に訴える。
確かに怖いからそう言う事言うのは当たり前と言えば当たり前だけど・・・。
でもこう言うのは大抵こっそり離して気づいたら乗れてたって事になるし・・・
鞠絵ちゃんには悪いかもしれないけど、ここは・・・

「わたくし、鈴凛ちゃんの事・・・好きです・・・」
「え!?」
「好きです・・・。 誰よりも・・・大好きです」
「鞠絵ちゃん・・・」
「だから絶対離さないでぇっ!!」
「・・・・・・」

鞠絵ちゃんは物凄く必死に訴えてきました。

「鞠絵ちゃん・・・」
「は、はい!?」
「・・・・・・アタシも・・・」
「え?」
「アタシも鞠絵ちゃんの事好きだよ・・・」
「鈴凛ちゃん・・・」
「好き・・・誰よりも大好き・・・」

じゃなきゃ恋人同士だなんてやっていけない。
アタシ達の場合はその関係上なおの事・・・

「花穂ちゃんウチワ持ってきて下サイ! 暑くて敵いマセン!!」
「四葉ちゃん・・・ちょっと・・・」

なんか少し離れた所で四葉ちゃんが何か言って気がしたけどよく聞こえなかった!(怒)(←「しっかり聞いてるじゃないデスか!?」By四葉)

「さ、漕いで・・・」
「はい」

そうだ・・・アタシは鞠絵ちゃんの事が好き・・・






大好き・・・
























だからゴメン・・・


















「きゃあぁぁっ!」


    ドンがらがっシャ〜ン・・・


かなりヘンな擬音と共に鞠絵ちゃんがヤブの中に突っ込んだ。

「鞠絵ちゃん!」
「バウっ」

アタシは急いで鞠絵ちゃんが突っ込んだヤブの方へ走った。
ついでに離れた所ではしゃいでたミカエルも一緒に向かった。

アタシは、しばらく自転車の後ろを掴んでゆっくり練習していた鞠絵ちゃんが、
少しは慣れたかな?って思ったところで掴んでいた手を放したのだった。
そしたらそのほとんど直後にこうなってしまった・・・。

「鞠絵ちゃん大丈・・・」
「うそつき・・・」
「え!?」
「離さない、って言ったのに・・・」
「いや、それは・・・」
「『鞠絵ちゃんの事、二度と離さない!』って!!」
「そんなドラマの台詞アタシいつ言った!?」

・・・いや、いつか言ってみたいけど・・・。

「ああ、ミカエル・・・わたくしは如何すれば良いの!?」

鞠絵ちゃんが近づいて来たミカエル抱きしめながらすっかり悲劇のヒロインになっている・・・。
一方ミカエルは状況がよく分かってないのか、なんか「わう?」って感じの声上げてる・・・。

「好きな人に裏切られて・・・わたくしはもう・・・」
「あ、あのね・・・」
「好きだって言うのは嘘だったんですね!!」
「う、ウソじゃないよ! アタシは鞠絵ちゃんの事ホントに・・・」

好きだから!
だから鞠絵ちゃんの為だと思っ―――

「昨日の夜、
べッドの上でわたくしにしてくれた事は嘘だったんですね!!」
「って、わあああ!! なに言ってるの!!」
「べべ、ベッドの上でぇ・・・」
「って、花穂ちゃん!」

鞠絵ちゃんの発言に花穂ちゃんが真っ赤になって反応してしまった。

「り、鈴凛ちゃん達って・・・鈴凛ちゃん達って・・・もうそこまで・・・」
「ちち、違う! 誤解だよ!」
「わたくしを
抱いた事は遊びだったんですね!!」
「って、うあああぁぁッ!! 鞠絵ちゃんはなにを言ってるのっ!!?」
「う、うわぁ〜・・・、す、進んでるなぁ〜・・・」
「だ、だから違うって! アタシ達まだ・・・」

って言うか花穂ちゃん、アンタ意味分かってて言ってるの!?

「そうデスよ花穂ちゃん。 そんな訳無いデスよ」
「え! で、でも二人はもう恋人同士だし・・・」
「二人は昨日、ベッドの上に座ってお話をしてただけデスよ」
「え?」
「そしたら鞠絵ちゃんが抱き締めてとかキッスしてとかせがんで、
 最後は鈴凛ちゃんが負けて、照れながらも鞠絵ちゃんにしてあげたってだけデスよ」
「え? あ! そ、そうなの!?」
「そ、そうなの! 四葉ちゃんの言う通り!」
「大体鈴凛ちゃんがそこまできる訳無いデスよ。 肝心な所で度胸が無いんデスから」
「や、やだ・・・花穂ったらなに考えて・・・。 ふぇ〜、恥ずかしいよぉ〜・・・」

花穂ちゃんは両手を真っ赤になった自分の顔に当てて、恥ずかしそうにそう言った。
ふう・・・、四葉ちゃんのフォローのお陰でなんとか花穂ちゃんの誤解は解けたよ・・・。

・・・今なんか鞠絵ちゃんが舌打ちしてた気がしたけど・・・。






「・・・で、何で四葉ちゃんが昨日のやり取りを知ってる訳・・・?」
「そんなのこっそりクローゼットの中に潜んでチェキしてたに・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ゴメンナサイ・・・」

    バチッ・・・バチバチッ・・・

「電撃ビリビリ君3号〜・・・」
「って、どう見てもただのスタンガンデスッ!!!」












「さ、漕いで。 今度は離さないから」
「は・・・はい・・・」


    むぎゅ・・・


「なにか踏みました」
「気にしないで、ただの焼肉だから」
気にしてぇっ! 四葉ちゃんを轢かないであげてぇっ!!
























しばらくして鞠絵ちゃんはそれなりに上達はしたと思う。
でも・・・


    ドンがらがっシャ〜ン・・・


・・・離すとすぐこうなってしまう。

「・・・・・・やっぱり・・・わたくしには・・・」
「鞠絵ちゃん、そんな事言わないで・・・」
「いいんです、どうせ・・・どうせわたくしは・・・」

鞠絵ちゃんはまた鬱になってしまった。

「どうせわたくしは道を踏み外してますもの!
 同性に、しかも姉妹相手に恋愛感情抱くようなそんな変態ですもの!」

またそんな事言う・・・。
大体それって今関係無いし、それにアタシもそうだからあんまり言ってほしくないんだけど・・・

「そうだよね、踏み外してるよね、既に」
「ハイデス、踏み外してるデス、既に」


     ガスっ ガスっ


「・・・痛いデス」「・・・痛いよぉ」
「二人とも、誰も居ないからってそう言う事いちいち言わないで・・・!」

アタシはドジっ子同盟にまたまた同時に脳天唐竹割りを喰らわせた。
って言うかアンタ等さっきも家でそう考えたろ?

「あ・・・、それよりも鈴凛ちゃん、ちょっと耳貸して・・・」
「ん?」

アタシが脳天唐竹割りを喰らわせた所を撫でながら花穂ちゃんはアタシにそう言った。
アタシは花穂ちゃんに耳を傾けると花穂ちゃんはアタシにある事を耳打ちしてきた。

「・・・・・・それって上手くいくかなぁ・・・?」
「大丈夫だよ! きっと!」
「そうデスね、四葉もそう思いマス」

自信満々の二人。
なので半信半疑ではあったけどアタシは花穂ちゃんに言われた事を実行してみる事にした。

「どうせ・・・どうせわたくしは・・・」
「あ、あのさ・・・鞠絵ちゃん・・・」
「・・・なんですか?」
「アタシね、鞠絵ちゃんが自転車に乗れるようになったらさ、
 自転車に乗って鞠絵ちゃんと二人っきりでどこか遠くまでデートしに行きたいな」


    ピクッ


あ、反応した。

「山でも海でも二人っきりでどこか遠くに行って・・・
 それからドラマや小説みたいにさ、ロマンティックに・・・」
「何してるんですか!? 早く練習しましょう!!」

そう言う鞠絵ちゃんは既に自転車にまたがっていました・・・。

「「「・・・・・・」」」

あまりにも花穂ちゃんの予想通りだった為アタシ達は3人揃って絶句した。
ここまで効果があるとなんかなぁ・・・。
でもそれって・・・それだけアタシの事好きでいてくれてる、って事だよね・・・。
な、なんかそう考えたら・・・

「鈴凛ちゃん、なんか赤くなってるよ」
「え!? いや、な、なんでもない! なんでも・・・!!」
「どうせ『鞠絵ちゃんが自分の事コンナに好きで居てくれて幸せデス!』
 みたいな事でも考えてたんじゃないデスか?」

四葉ちゃんは首を横に振りながら両手を軽く広げ、ため息を吐きながら呆れた様な声でそう言った。
・・・当たってるだけになんかしゃくだなぁ・・・。


   バチバチバチッッ・・・
チェキチェキチェキーーーッッ!!


だから八つ当たりする事にした。
























日は傾き、公園が赤く染まり始めた。
アタシ達が公園に来て数時間が経過していた。

「り、鈴凛ちゃん・・・助け・・・」
「鞠絵ちゃんハンドルもっとしっかり持ってッ!」
「あと少し、あと少しだよ! 頑張って、鞠絵ちゃん!」

幾多の苦難(ヤブに突っ込む)、幾多の犠牲(主に四葉ちゃん)の上に・・・

「あ・・・あ、ああ・・・っ!」

ついに鞠絵ちゃんは・・・

「走ってます! 鈴凛ちゃんが支えてないのに走ってます!」
「そうだよ! 鞠絵ちゃん、自分の力で自転車に乗ってるんだよ!」
「やったぁ! 鞠絵ちゃんがついに自転車乗れるようになったぁ!」

自転車に乗れる様になったのだった!



   むぎゅ


「なにか踏みました」
「気にしないで、ただの焼に・・・」
四葉ちゃんだよぉっ!!


    ドンがらがっシャ〜ン・・・


「「・・・・・・」」

・・・鞠絵ちゃんはついさっきも余計な一言を言った焼肉(四葉ちゃん)を踏んだ事でバランスを崩してしまい、
またもや転んでしまったのでした。
せっかく乗れたのに・・・。
























鞠絵ちゃんが自転車に乗る事ができ、目的を果たしたアタシ達は家路についていた。

「ねえ、鈴凛ちゃん・・・鞠絵ちゃん、大丈夫?」

花穂ちゃんがそうアタシに聞いたきた。

「大丈夫、ずっと頑張ってたから疲れちゃったのか、
 それとも乗れたから緊張の糸が切れたのか分かんないけど・・・。
 とにかくさ、今は寝かせてあげてね」
「そうだね」

鞠絵ちゃんは今、アタシの背中ですーすーと寝息を立てている。
最後に転んだ時にそのまま意識を失ってしまったのだ。
鞠絵ちゃん・・・よっぽど疲れたのかな?
ついでにミカエルは四葉ちゃんが手綱を持っている。

「重くないデスか?」
「うん・・・、鞠絵ちゃん、結構体重軽いから・・・」

今日は調子が良かったけど、鞠絵ちゃんは体弱かったんだったんだよね・・・。
鞠絵ちゃんの体重の軽さを感じて嫌でもその事を思い出した。
なのに鞠絵ちゃんは一生懸命頑張って・・・。
アタシの為・・・だったのかな?
そんなにアタシと一緒にサイクリングしたかったのかな・・・?
そんなにアタシの事・・・
だったら花穂ちゃんの言う通りにあんな事言ったのはちょっと悪かったかもしれないな・・・。

それにしても・・・鞠絵ちゃん、やっぱりいいニオイかも・・・。
ああ・・・またそんな事考えちゃったよ・・・。
しょ、しょうがないじゃない!
こんなに近くで・・・アタシの背中で眠っているんだから!
しかも前もここ通った時にそう考えたんだから!(←関係無い)

そりゃあ・・・アタシ達も恋人同士だからキスとかもしてるよ・・・。
キスする時は確かに物凄く近づくけど・・・
でもアタシ、その時いつもすっごくドキドキしてるから・・・だからニオイなんて全然気にならない・・・。
だから今は凄く感じる・・・。
やっぱり鞠絵ちゃん・・・いいニオイ・・・。
う〜ん・・・そう考えるアタシはやっぱりヘンタイなのかなぁ・・・?
まあ、女の子同士でこうなってる事が既に、だけど・・・。

「あれ? 鈴凛ちゃん、また顔赤いよ」
「え!? あ! ま、またなってた!?」

・・・やっぱり原因はそんな事考えてたからだよね・・・。

「きっと『鞠絵ちゃんの胸が背中に当たってウェッヘッヘッ・・・』に決まって・・・」
「ち、違うっ! そんな事考えてなんかないって!
 だだいいニオイだなって・・・そう考えてただけだって!」

そんなオッサンみたいな事考えてなんか・・・
でで、でもそう言えば、た、確かに背中になにかやわらか〜いモノが当たって・・・
これって・・・やっぱり間違いなく鞠絵ちゃんの・・だよね・・・。

あわわわわ・・・
そそそ、そんな事考えたらまたドキドキしてきた・・・
アタシの背中には鞠絵ちゃんの胸が当たって・・・
それで鞠絵ちゃんは凄くいいニオイで・・・
どどどどうしよう・・・心臓が凄い速さで、しかもかなりの大音量で鳴ってる・・・。
普通にアタシの耳まで聞こえきてるし・・・、
ま、鞠絵ちゃん、起こしちゃわないかな?

あああ、もう! アタシは一体何考えてるのよ!
ダメだってそんな事考えちゃ!
大体こう言うのは普通男の子が感じる葛藤でしょ!?
なんでアタシが・・・!
アタシこれでも女の子だよ!
そりゃ確かに男の子みたいって言われるけど・・・だからって女の子に欲情して・・・

・・・ってアタシはそう言う趣味だったっけ・・・。
だから女の子と恋人同士になんて・・・

・・・・・・

違う・・・
そうだ、違うよ・・・。

鞠絵ちゃんが女の子だからじゃない・・・。
"鞠絵ちゃん"だからだ・・・。
鞠絵ちゃんだから・・・そう思うんだ。
だってアタシ、鞠絵ちゃん以外だったら、男の子でも女の子でも、
キスしたいって思ったり、抱き締めて嬉しいって感じたりしないもん・・・。

・・・・・・でも物凄く恥ずかしいから滅多にしたいとは思わないけど・・・。

アタシは女の子が好きだったからじゃない・・・
鞠絵ちゃんだからなんだ・・・
だからアタシは・・・



アタシは・・・"鞠絵"が好きなんだ・・・。






改めてそう考えてたら・・・

「・・・・・・鞠絵ちゃん・・・アタシ・・・」

鞠絵ちゃんがどうしょうもないくらい好きだから・・・
鞠絵ちゃんがアタシから離れるなんてイヤだから・・・

「・・・―――」

だから誰にも聞こえない様に・・・こっそりと小さな声で・・・
アタシの背中で眠ってる鞠絵ちゃんに言った。

「? 鈴凛ちゃん、何か言いマシタか?」
「別に・・・」
「そうデスか?」

いつか言ってみたかった・・・ドラマの台詞を・・・。
























「・・・ところで、四葉ちゃんはなに書いてるの?」

四葉ちゃんがチェキノートなる物にメモを取ってることが気になった。

「鈴凛ちゃんもニオイフェチだったと早速チェキして・・・」
「待てコラ!」

アタシはすかさず四葉ちゃんに脳天唐竹割りを・・・

!!

し、しまった・・・!
鞠絵ちゃんをおぶってるから手が塞がって喰らわせれない!!
これじゃあ四葉ちゃんを断罪(←過剰評価)する事が・・・って・・・

「アタシ"も"?」
「ハイデス、前に鞠絵ちゃんが『鈴凛ちゃんのニオイがする・・・』と鈴凛ちゃんの服に・・・」


    バチバチバチッッ・・・
チェキチェキチェキーーーーーッッ!!


「「四葉ちゃん!!?」」

四葉ちゃんの体にアタシの服のポケットに入れてたはずの電撃ビリビリ君3号が触れていた。
そしてそれを握っているその手はアタシの背中から伸びていた。
その手の主・・・それはアタシの背中にいる人物、そしてそれは一人しかいない・・・。

「・・・鞠絵ちゃん、起きてたの!?」
「・・・・・・」

アタシが顔を後ろに向けてそう質問しても鞠絵ちゃんは何も答えてくれなかった。
ただ、後ろにおぶってるからよく見えなかったけど、少しだけ見えた鞠絵ちゃんの顔は赤く染まってた。

「その・・・四葉ちゃんが今言ってた事って・・・」
「離さないで下さいね・・・」
「え?」

四葉ちゃんから聞かされた意外な事実について聞こうとするアタシの言葉を遮って鞠絵ちゃんが真剣な声で言う。
それと同時に腕をぎゅっと締めてアタシにしっかりとしがみついてきた。
顔は・・・よく見えないけどきっと真剣だと思う。

でも離さないでって一体何の・・・

「さっきの言葉・・・信じてますから・・・」
「うぇえっッ!!?」

"さっきの言葉"、アタシはそれで理解した。

・・・・・・


『アタシ・・・鞠絵ちゃんの事、二度と離さないよ・・・』


・・・・・・

つまりさっきのこの台詞は見事聞かれてた訳だ・・・。

「あ、うあ・・う、お・・・」

アタシは既に言葉にならない声を上げ、 そんな様子のアタシを見た鞠絵ちゃんが背中で「ふふふ」と笑ってるを感じながら、
アタシの顔と同じ色に染まった夕暮れの帰り道を歩いて行くのだった。






「ちょ、ちょっと待ってぇ〜・・・!
 花穂一人じゃ四葉ちゃんとかミカエルとか同時に何とかできないよぉ〜・・・!」

犬と焼肉を花穂ちゃんに任せて・・・。
























「あ、おかえり」
「おかえり、花穂ちゃん!」

家に着いたアタシ達は、庭にいた咲耶ちゃんと衛ちゃんに他のみんなより一足早く迎えられた。
ちなみに鞠絵ちゃんには背中から降りてもらってる。
疲れてただろうから家に着く少し前まではおぶっててあげたけどね・・・。

アタシ達は二人の「おかえり」に返すように「ただいま」を言った。

そんなやり取りの後、咲耶ちゃんがアタシにこう質問してきた。

「鞠絵ちゃんどうだった?」
「うん、特訓のお陰! 見事乗れるようになったよ!」
「ほんと! それは良かったわね!」

そんなやり取りの後、衛ちゃんがアタシにこう質問してきた。

「花穂ちゃんどうだった?」
「いや、ただ応援してただけだよ・・・」
「ほんと! 
う〜・・・きっと凄く可愛かったんだろうなぁ・・・

なんか衛ちゃんが呟いているけどよく聞こえない。






「ところで・・・その鉄くずは何?」

咲耶ちゃんが四葉ちゃん(復活後)が運んできたモノを指差してそう聞いてきた。

「・・・・・・最新モデルの自転車・・・」
「・・・・・・え゛!?」

最新モデルの自転車は鞠絵ちゃんの特訓について来れなかった為、 幾多の犠牲の一つとして見事にスクラップになりました。
持ってきた本人の咲耶ちゃんすら見分けがつかないほどに・・・。
最後の方は花穂ちゃんの持ってきた自転車で特訓してました・・・。
花穂ちゃんのドジがあんな形で役立つとは・・・ つくづく人生って何が起こるか分からないものなんだなぁ・・・。



鞠絵ちゃん・・・家の自転車は9台になっちゃたから二人きりでのサイクリングしばらくお預けだね・・・。
折角頑張ったのに・・・。



でもさ・・・いつか、いつか必ず・・・、
二人っきりでどこか遠くまで・・・自転車でさ・・・デートしに・・行こうね・・・。
























おまけ

「話は聞いていますの、特訓ご苦労様ですの」
「あ、白雪ちゃん」
「いっぱい頑張ったから4人ともお腹もペコペコでしょう?
 今日のお夕食は姫、少し奮発しました。 いっぱい食べてですのv」
「ムムム・・・フンパツしたんデスか! それはスゴク楽しみデス! 一体なんなんデスか?」
「はいですの。 白雪特製、豪華焼肉・・・」
「チェキぃーーーーーッッ!!」
「・・・って、えぇッ!? 四葉ちゃんどこ行くんですの!?」
「・・・・・・四葉ちゃん、ゴメン、アタシが悪かった・・・」





あとがき

まりりんほのらぶストーリー "〜ました"シリーズ 第6弾。
鞠絵って自転車乗ってるトコ見たこと無いし、小さい頃から病気なら、って思ってこんな作品が出来ました。
他の二人はなんとなくって事で適当に・・・。
・・・・・・でも実際、自転車に乗ってる場面があったら如何しよう・・・。
まあ、「そう言うネタなので」って事で目を瞑ってもらいましょうか・・・。
それよりも・・・何故だ?
当初の予定では頭から終わりまで壊れギャグ系の予定だったのに・・・
鈴凛の鞠絵への想いがかなり溢れてるっぽい出来になっている・・・。
世の中不思議な事もあるもんだ・・・。


更新履歴

H15・8/22:完成
H15・8/23:結構修正
H15・9/9:脱字修正
H16・7/10:修正


前の話へこのシリーズのメニュー次の話へ
SSメニュートップページ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送