「ただいまー」
「ただいまデスー」

一緒に買い物に行っていたアタシと四葉ちゃんは、
家の居間に着くと同時にそう言った。

「あ、おかえりなさ〜い」
「おかえりなさい、二人とも」
「あ、おかえりー」
「おかえり」
「おかえりなさい、鈴凛ちゃん」
「バウッ」

その時居間に居た鞠絵ちゃん、花穂ちゃん、衛ちゃん、可憐ちゃん、
咲耶ちゃん、ついでにミカエルがアタシ達にそう言って来た。

「なにしてるの?」

居間では鞠絵ちゃんが何か衣服類の様な物を手に持ってソファに座り、
それを花穂ちゃんと衛ちゃんが囲んで座っていると言う状況だった。

「あのね、これはね、 衛ちゃんったら今日はしゃぎ過ぎちゃって、それで枝にズボン引っ掻けて破いちゃったの」
「で、鞠絵ちゃんがそこを縫ってあげているって訳らしいわよ」

アタシの質問に花穂ちゃん、咲耶ちゃんが答えてくれた。
そう言われて見れば鞠絵ちゃんの持っているものは今朝衛ちゃんの履いていたズボンで、今衛ちゃんが履いているズボンは今朝ものとは違う。












電気でビリビリさせました














「にしても鞠絵ちゃん上手いね」
「そんな事ありませんよ。 あ、はい、出来ましたよ」
「あ、ありがとう鞠絵ちゃん!」

鞠絵ちゃんは縫い終わったズボンを衛ちゃんに手渡した。

「すごい・・・凄く綺麗に縫えてますね」
「うん、花穂だったらこんなに上手くできないよ」

衛ちゃんが受け取ったズボンを横から見ながら可憐ちゃんと花穂ちゃんがそう話す。

「そうなの? ちょっと見せて」

それを聞いた咲耶ちゃんが衛ちゃんからズボンを取る。

「どれどれ・・・・・・ほんと、凄く細かいわ。
これなら鞠絵ちゃん良い奥さんになれるわよ」
「え!? そ、そんな・・・」

鞠絵ちゃんは顔を赤くして下を向いてしまった。

・・・可愛い・・・物凄く・・・。

「鈴凛ちゃん・・・顔、赤くなってマスよ・・・」

四葉ちゃんが小声でアタシにそう言ってきた。

「へ? あッ!」

鞠絵ちゃんを見てついこっちまで赤くなってしまった・・・。
だって凄く可愛かったんだもん・・・。

「だったら花穂はいいお嫁さんになれないのかなぁ?」
「あ、そう言う意味で言ったつもりじゃないのよ」
「そうだよ、別にお裁縫ができなくても花穂ちゃんは可愛いから大丈夫だよ」

アタシが四葉ちゃんと買い物の荷物を降ろしているとみんながそう話してるのが聞こえた。

「そ、それにさ・・・ボ、ボクは・・・別にそんな事、全然気にしたりしないから・・・花穂ちゃんは安心して・・・」

なんか衛ちゃんが呟いているけどよく聞こえない。

「咲耶ちゃんはお裁縫ができるお嫁・・・じゃなくてお婿さんの方がいいんですか?」

可憐ちゃんが咲耶ちゃんの方を向いてそう聞いてた。
・・・って普通お嫁さんとお婿さんを間違えるものだろうか?

「そうねぇ・・・別にどっちでもいいわ」

咲耶ちゃんは可憐ちゃんにそう答えてたのが聞こえた。

「でもやっぱりできた方が良いよね。 鞠絵ちゃん今度花穂に教えてね!」
「え!」
「いいでしょ?」
「そうですね・・・わたくしも人に教えられるほどではないんですけど・・・、 それでも良いのなら別に構いませんよ」
「ほんと! やったぁ〜ッ!」

アタシが荷物を一旦降ろし終わった後に花穂ちゃんに目をやると、
その顔からは喜びが溢れ出そうな程の笑顔を作って喜んでいた。

「そ、そうなんだ・・・花穂ちゃんお裁縫の練習するのか・・・
だったらボク、将来いっぱい服を破いても・・・

なんか衛ちゃんが呟いてるけどよく聞こえない。

「でも鞠絵ちゃんの恋人になれる人って幸せ者よね」
「いや〜、そんな〜」
「・・・なんで鈴凛ちゃんが照れるのよ?」
「え! いや、な、なんでも・・・」

ヤバッ・・・アタシったら咲耶ちゃんの一言につい・・・

「ああ、それはデスね、鈴凛ちゃんは既に鞠絵ちゃんのこ・・・」


    ガスッ


「チェキィッ!?」
「・・・ゴメン四葉ちゃん、手が滑った・・・」

アタシは隣に居る四葉ちゃんの言葉を遮る為に四葉ちゃんをドツいた。

「もう、鈴凛ちゃんったら、そそっかしいわね」
「アハハハハ・・・」

・・・ただしワザと・・・。

「そんなんじゃいつまで経っても恋人の一人もできないわよ」

咲耶ちゃんが少しだけ笑いながらそう言ってきた。
すると花穂ちゃんが、

「それは大丈夫だよ、だって鈴凛ちゃんはもう鞠絵ちゃんと・・・」
「バウッ」


    どしっ


「きゃあっ!」

突然ミカエルが花穂ちゃんの上にのしかかった。

「花穂ちゃん!?」
「あらあら、ミカエルったら急にどうしたんですか?」

・・・ただしアタシには鞠絵ちゃんが合図を出したのが見えた・・・。

「ちょっと大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ、咲耶ちゃん・・・」

花穂ちゃんがそう答える。
しかし今アタシはとても冷や冷やさせられた・・・。

「四葉ちゃん、作りかけのアレ早速取り掛かるからラボまで行こうか・・・。
・・・もちろん手伝ってくれるよね?」
「ちぇ、チェキ・・・」
「花穂ちゃん、わたくし達も御一緒させて頂きましょうか?」
「う、うん・・・」

だからアタシと鞠絵ちゃんはそれぞれ四葉ちゃん、花穂ちゃんに笑顔でそう言った。
この時アタシも鞠絵ちゃんも目が笑ってなかったりする・・・。












ここはアタシのラボ

「二人とも・・・、どうしてここに連れて来られたか分かってるよね・・・?」
「チェキ〜・・・」
「ご、ごめんなさい・・・」

アタシは床に正座させた四葉ちゃん、花穂ちゃんの二人を半ば怒り気味に見下ろしている。

「四葉ちゃん、貴女はさっきなんと言おうとしましたか?」

アタシは笑顔を作りながら丁寧な口調で四葉ちゃんにそう聞く。
そこ! 丁寧だからってアタシと鞠絵ちゃんと間違えないように!

「・・・・・・」
「ラボの壁は防音が施されてるから言ってもいいよ」
「・・・で、でも・・・」
「怒らないから」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・り、『鈴凛ちゃんは既に鞠絵ちゃんの恋人だからデスよ』デス・・・」


    ガスッ


「チェキッ!!?」

アタシは四葉ちゃんに脳天唐竹割り(頭に手刀を叩き込む事)をかました。

「お、怒らないって言ったじゃないデスか・・・」
「叩かないとは言ってない・・・」

アタシは低いトーンの声で四葉ちゃんを睨みながらそう言った。

「次、花穂ちゃん!」
「は、はい!」

突然話を振られ体全体をビクッとさせる花穂ちゃん。

「貴女はさっき咲耶ちゃんに何と言おうとしたのですか?」

さっきと同じく丁寧な口調で話しかけるアタシ。

「え・・・と、その・・・」
「叩かないから」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・『だって鈴凛ちゃんはもう鞠絵ちゃんとお付き合いしているから』・・・」
「なんでそう言う事言おうとするの!!」

アタシは力一杯声を上げて花穂ちゃんに怒鳴った!

「ひゃあっ! ご、ごめんなさ〜い!」

それで花穂ちゃんは身をすくめて屈んでしまった。

「り、鈴凛ちゃん怒らないって言ってたじゃないデスか!?」
「それは四葉ちゃんだけに言ったの! 花穂ちゃんには言ってない!!」
「まあ鈴凛ちゃん、落ち着いて下さい。  二人とも反省しているようですし・・・」

かなり興奮気味のアタシを鞠絵ちゃんがなだめようとしてくれた。

「反省しててもバレたらその時点でアタシ達アウトなんだよ!」
「それはそうですけど・・・」

でも状況が状況だ!
そう簡単に落ち着いてなんかいられない!



さっきからのアタシ達の会話がヘンだって感じがしてない?
アタシと鞠絵ちゃんは姉妹、つまり女の子同士で血の繋がりのある関係だ。
それなのにまるでアタシと鞠絵ちゃんが付き合ってでもいる様な、そんなおかしな会話が繰り広げられているなんてヘンだと思うでしょ?
でもこれはウソや冗談なんかじゃなくてホントの事。
アタシ達は付き合っている。
少し前にアタシは鞠絵ちゃんにキチンと告白して、それで鞠絵ちゃんはOKしてくれたの・・・。
だからアタシ達は立派な恋人同士・・・。

ただし・・・アタシ達はお互いの立場上その事がバレると非常にヤバイ・・・。
さっきも言ったようにアタシ達は姉妹、つまり女の子同士で血の繋がりのある関係だからだ・・・。

まあ、血の繋がりは微妙なんだけどその事はここでは意外と関係無いから置いといて。

アタシ達の恋は言うまでも無く“禁断の愛”だ。
同性ってだけでもヤバイし血が繋がっているってだけでもヤバイのに・・・
よりによって両方だからなぁ・・・。
誰かにバレると大変な事になるのは目に見えている。
下手したらもう鞠絵ちゃんに逢えなくなる事だって・・・
だからアタシ達はその事を誰にも悟られる訳には行かないのだ!

・・・でもバレた。
四葉ちゃんと花穂ちゃん、この二人に。
四葉ちゃんはアタシと鞠絵ちゃんが・・・、その・・・、と、とにかく決定的な現場を見ちゃったのよ!
しかもその時写真まで撮って・・・。
で、それを花穂ちゃんに見せちゃったらしいの。
バレたのがこの二人と言う事がアタシにとっての幸か不幸か・・・、よく分からない。

二人はアタシ達の事を特別避けたり軽蔑したりしないし他の人にも言う気は無いらしい。
そこの所は良かったって思ってる。
問題になった決定的な現場の写った写真も既に処分してもらっている。
だからアタシ達がドジしなければバレないはずなんだ。






そう・・・、“ドジ”しなければ・・・。






「あ〜、もう!  なんでよりによってアタシ達の事がアンタ等“ドジっ子同盟”にバレちゃったのよ・・・」
「ど、ドジっ子同盟!??」
「なッ!? 四葉もドジ扱いなんデスか!?」

この二人はアタシ達姉妹の中でも一、二を争うほどの“ドジ”だ!!
いや、少し訂正しよう。
一、二を争ってはいない。
我が家のドジっ子No.1の称号を持っているは花穂ちゃん!
少しヌケててうっかりミスなどの多い四葉ちゃんがNo.2だ!
それぞれ他のみんなとかなりの格差をつけてのランクインだ!
よりによってそんな二人にバレたのだ・・・。

「大丈夫デス! もう四葉はそんなミスを犯しません!」
「・・・・・・はぁ・・・」
「な、なんでそこでため息を吐くんデスか!?」
「・・・その台詞を何度聞いたことか、って思ったらね・・・」

数えてないけど間違いなく二桁に達している。

「か、花穂も頑張るから・・・、 だから鈴凛ちゃん、花穂の事見捨てないでね」

正直見捨てたい・・・。
でも見捨ててバラされたら困るのはアタシ達だ・・・。

「鞠絵ちゃん、アタシもう“アレ”使うよ・・・」
「「“アレ”?」」

アタシの言葉にそう反応する四葉ちゃんと花穂ちゃん。

「鈴凛ちゃんでもそれは・・・」

鞠絵ちゃんが少し焦り気味にアタシにそう言ってきた。
鞠絵ちゃんがあんまりこの方法を取りたくなかったのは分かっていた。
けど・・・

「確かに最初はやり過ぎかなって思ってたけど・・・ でも、そこまでしないとこのままだとバレる・・・!」

・・・事は深刻だ。
アタシもいい加減四葉ちゃんに脳天唐竹割りを何度かましたか・・・。
このままだと四葉ちゃんの脳みそは使い物にならなくなりかねない。

「仕方・・・ありませんね・・・」

鞠絵ちゃんはため息混じりにそう言う。



アタシは一旦二人に背を向けて壁側に寄せて置いてある段ボール箱を探り始めた。
この段ボール箱の中にはアタシの作った発明品で比較的小さい物を適当に放り込んで置いてある。

「あ、あった」

アタシは段ボール箱の中から
“アレ”の入っている袋を取り出すと、
不安そうな顔をしている二人に再び近づいた。

「あ、“アレ”ってなんデスか・・・?」

四葉ちゃんは恐る恐るアタシにそう聞いてきた。

「これ」

そう言ってアタシは袋の中から金属の輪を二つ取り出した。

「鈴凛ちゃん、これって・・・?」
「なんだかブレスレットみたいデスね」
「まあ、似たようなもんかな。 じゃあ二人とも手出して」
「「?」」

二人はお互い顔を合わせて疑問そうな顔をしてから、よく分からないまま四葉ちゃんは右手を、花穂ちゃんは両手をアタシの方に出してきた。

「あ、片方でいいよ」

アタシは“アレ”を片方鞠絵ちゃんに渡しながら花穂ちゃんにそう言った。
それを聞いた花穂ちゃんは頭にハテナマークを出したまま左手を下ろす。

「鞠絵ちゃんは花穂ちゃんに着けてあげて」
「はい・・・」

鞠絵ちゃんはばつの悪そうな顔をしながらそう答える。
アタシ達は不思議そうな顔をしている二人の右手に“アレ”を着け始めた。


    カチャッ


「!!」

アタシが鞠絵ちゃんより先に“アレ”を着け終わると四葉ちゃんは驚いた顔をしてこう聞いてきた。

「な、なんで鍵を掛けるんデスか!?」
「え!? 鍵?」

鍵という言葉に花穂ちゃんが反応したのと同時に、


    カチャッ


「あ!」

鞠絵ちゃんの方も着け終わったみたいだ。

「り、鈴凛ちゃんどうして鍵なんか・・・?」
「どうして、って・・・勝手に外されちゃ困るからだよ」

四葉ちゃんの質問にそう答えた。

「ねえ、これって一体なんなの?」

その花穂ちゃんの質問にアタシはこう答えた。

「口が滑らない様になるブレスレットだよ」
「ああ、つまり“オマジナイ”デスか」

四葉ちゃんが「なんだ」と言う感じで安心した様子。
それを見て花穂ちゃんもホッと安心するのだった。
四葉ちゃん、名探偵を目指すならもう少し頭を働かせた方が良いよ。
アタシは心の中でそう呟くのだった。












「あ、花穂ちゃん」
「衛ちゃん!?」

アタシ達がラボから出ると衛ちゃんがラボの入り口の所に立っていた。

「か、花穂絶対言わないもん!」
「へ?」

・・・・・・。

本気で見捨てたくなった・・・。

「花穂ちゃん! それはボケツデス!」
「あッ!」
「え、墓穴って・・・?」
「なんでも無いんデスよ衛ちゃん! アハハハハ・・・」
「そう、なんでもないの! えへへ・・・」

アタシにはなんでもあるようにしか見えない・・・。
でもアタシは鞠絵ちゃんと一緒に 三人のやり取りを黙って見ている事にした。

四葉ちゃん・・・花穂ちゃん・・・アタシ信じているから・・・。

「それより鈴凛ちゃんのラボで一体何してたの?」
「え、と・・・それはデスね・・・」
「あ、新しいメカを見せてもらってたの!」
「そ、そうデス! その通りデス!!」

二人ともかなり怪しいけどなんとか誤魔化せている様だ。

「だから鈴凛ちゃんと鞠絵ちゃんの秘密をバラしそうになって怒られてたなんて事は全然アリマセンよ!」
「え? 鈴凛ちゃんと鞠絵ちゃんの秘密?」

・・・・・・。

アタシの期待は見事に裏切られた・・・。

アタシは四葉ちゃんに申し訳無く思いつつ右のポケットの中に手を入れた。
まあ、困るのはアタシ達なんだからアタシ達がなんとかするのは当然の事だろう。
そう思いながらアタシはポケットの中の“ある物”に手を掛けた。

「よ、四葉ちゃん! ダメだよ!」

花穂ちゃんが心配そうに四葉ちゃんを見る。

「しまったデス! 違うんデス! 二人に秘密なんてアリマセン!  本当デス! ウソじゃないデス! だから・・・」

当の四葉ちゃんはもう既に錯乱状態に陥ってしまった。

「二人がお付き合・・・」

アタシは四葉ちゃんの口から完全なNGワードが出たのを確認するとポケットの中の“ある物”のボタンを押した!

・・・瞬間、


    ビリッ・・・ビリリッ・・・
「チェキィッ!!?」


四葉ちゃんの体がわずかに跳ねた。

「??!?!??!?」
「四葉ちゃん・・・?」
「どうしたの?」

衛ちゃんと花穂ちゃんが四葉ちゃんの事を心配そうに見る。
当の四葉ちゃんは何が起こったのか最初はよく分からなかった様だった。
しかし少しすると四葉ちゃんは、さっきアタシが着けた右手の“アレ”に視線を落とし、その後アタシの事を見てきた。

「あれ? 花穂ちゃん、そのブレスレット・・・」
「え? ああ、これはね・・・」

四葉ちゃんが“何か”を推理しその事で恐怖し始めているのも知らずに別の話題に移る二人。
アタシはそんな四葉ちゃんに何も言わず、「四葉ちゃんの考えてる通りだよ」ってメッセージを込めた笑顔を送ると、
それが通じたのか四葉ちゃんの顔がみるみる青くなっていくのが分かった。

「花穂ちゃん・・・」
「ふぇ・・・!?」
「えッ!!?」

四葉ちゃんは花穂ちゃんを無理矢理引っ張って再びラボに入って行った。
突然の事で衛ちゃんは驚いたのかそんな声を漏らしていた。
四葉ちゃんがラボに戻る時、目でアタシ達にも入る様に訴えかけてたので、それに答える様にアタシ達もラボに戻るのだった。
その時ふと衛ちゃんを見ると、恐らく四葉ちゃんの突然の行動が原因なのだろう、とても驚いた顔になっていた。

「な、なんで・・・!?
 なんで花穂ちゃんと四葉ちゃんがお揃いの・・・

なんか衛ちゃんが呟いてるけどよく聞こえない。












「今すぐ外して下サイッ!!」

ラボに入ってすぐに四葉ちゃんが右手を出してそう言った。

「四葉ちゃん、どうしたの?」
「花穂ちゃん、これは罠デス! 陰謀デス! 四葉達はハメられマシタ!!  このままでは四葉達は殺されマス!! 感電死させられマスッ!!」

殺される、ってそんな大袈裟な・・・。

「でも、わたくし達の愛の為です、華々しく散って下さいね(はぁと)」
「チェキーッ!!?」
「いやいやいや・・・」

鞠絵ちゃんが笑顔で発した言葉に恐怖する四葉ちゃんと突っ込むアタシ。
もう、鞠絵ちゃんったらお茶目なんだから・・・。

「ねえどう言う事なの?」

花穂ちゃんは状況を掴めずにいた。

「どうって・・・」
「こう言う事です」


    ポチッ

    ビリビリビリビリビリビリビリビリ・・・
「チェキーーーーーーッッ!!」



「四葉ちゃんッ!!?」

鞠絵ちゃんの一言の直後、四葉ちゃんは体を激しく震えさせながら悲鳴を上げた。
・・・って言うかこう言う時でも“チェキ”なんだ・・・。

「え? え!? 四葉ちゃんどうしちゃったの!?」

未だ状況が掴めない花穂ちゃん。
アタシはそんな花穂ちゃんに状況を説明してあげる事にした。

「つまりね・・・これなんだと思う?」

アタシはまず左右のポケットにそれぞれ入れていた“ある物”を取り出し花穂ちゃんに見せた。

「? なに? 鈴凛ちゃんの発明?」
「う〜ん・・・40点」

アタシは花穂ちゃんの答えに点数を付けてあげた。

「確かにこれはアタシの発明したものだけどこれだけじゃ使えないんだよ」
「うん・・・なんかスイッチみたい・・・。  あ、だったらこれを押したら何か起こるんだね!」
「そう! ・・・で何が起こると思う?」
「えっ? ・・・う〜んとね〜・・・」
「ヒント1、これは二つあります」
「うん、二つあるね」
「つまり二つある“何か”に関係してるの」
「え〜っとねぇ・・・・・・鈴凛ちゃん、ヒント2」
「ヒント2、これを押すとこれに反応して何かが反応します」
「うんうん」
「それはさっき花穂ちゃん達に見せました」
「えっ! 花穂見たの!?」
「そうだよ」
「う〜ん・・・・・・・・・ヒント3は?」
「ヒント3、今の四葉ちゃん」


    ビリビリビリビリビリビリビリビリ・・・
「チェキチェキチェキチェキチェキーーーーーーッッ!!」



「・・・・・・」
「それと右手首に着けているもの」
「・・・・・・?」
「・・・・・・」
「・・・・・・!」
「・・・・・・」
「・・・・・・(汗)」
「・・・・・・」
「・・・・・・(滝汗)」
「・・・・・・」
「・・・・・・(顔面蒼白)」
「・・・・・・」
「・・・・・・(恐怖)」
「・・・分かった?」
「いやぁぁぁぁぁあああああ〜〜っ!」

恐怖に顔を歪ませながら
自分の右手首に着けられた“アレ”を見る花穂ちゃん。

「これは電撃ビリビリ口封じ君1号、2号って言って・・・」
「外してぇ〜〜ッッ!!」
「ちょっと、説明聞かないの?」
「いいから外してぇ〜〜ッッ!!」
「ダメ!」
「いぃぃ〜〜やぁぁぁぁぁあああああ〜〜〜〜っっッッ!!」



つまり、さっき四葉ちゃんと花穂ちゃんに着けた“アレ”は、アタシの持っているこのスイッチに反応して電気を流す仕組みになっているのだ。
この二つのスイッチ、片方は赤、もう片方は青にカラーリングしている。
それは四葉ちゃんに着けた方と花穂ちゃんに着けた方を分かりやすく区別する為にそうしている。
ちなみに花穂ちゃんの方が赤のスイッチに反応する。
有効範囲は大体20m。
四葉ちゃんか花穂ちゃんがアタシ達の秘密をうっかり話しそうになった時、
今までみたく脳天唐竹割りをかます必要も無くスイッチを入れれば否が応にも秘密が漏れるのを阻止できる優れもの。
鞠絵ちゃんにも同じ赤と青のスイッチを渡している。


    ビリビリビリビリビリビリビリビリ・・・
「チェキーーーッ! チェ、チェキーーーーッ! キィーーーーッ!」



だから今、四葉ちゃんが電気を流されているのは鞠絵ちゃんがスイッチを押しているから。


    ビリビリビリビリビリビリビリビリ・・・
「チぇ、チェきィー! キィぃー! ちぇキぃーーーッ!!」



・・・・・・。


    ビリビリビリビリビリビリビリビリ・・・
「チぇ、ちェ・・・き・・・・・・ち、チぇ・・・・・・キ・・・・・・」



「ま、鞠絵ちゃん・・・そろそろスイッチ切ってあげないと・・・」
「え・・・? あ、はい」

鞠絵ちゃんがポケットの中に入れていた手を出すと同時に
四葉ちゃんはバタン、と言う音を立てて倒れた。




    しゅー・・・


「ちぇ・・・ちぇ・・・・・・き・・・ぃ・・・・・・」

四葉ちゃんからはちょっと湯気が立っていて焼肉みたいな香ばしいニオイがしてきた。

「よ、四葉ちゃんッ!? だ、大丈夫!!?」

花穂ちゃんが焼肉になった四葉ちゃんを心配して駆け寄る。

「鞠絵ちゃん、すぐに離さなきゃダメだよ!  押している間ずっと流れる仕組みになっているんだから!」
「ああ、そうだったんですか」
「もう、鞠絵ちゃんったら!」
「すみません」

鞠絵ちゃんは、てへっ、と言った感じで軽くウインクし可愛らしく舌を出して謝った。
ああ、もうっ! 可愛いなぁっ!!

「次からは気をつけなきゃダメだよ。 じゃないと四葉ちゃん死んじゃうよ」
「「死ッ!!?」」
「はーい」

笑顔で答える鞠絵ちゃん。
ああ、こんなに可愛い娘がアタシの恋人だなんて信じられないよ!

「ちょっと待てや! そこのヘンタイバカップル!」(By四葉)

・・・・・・。

・・・焼肉はまだ自分の立場を分かっていないようだ。


    ポチッ

    ビリビリビリビリッ
・・・
「チェーーーーーキーーーーーッッ!!」






「まあ、とにかくアタシ達の事口に出さなきゃアタシ達だって押さないから」
「・・・だったら最後のはなんだったんデスか・・・?」
「なんか言った?」
「・・・なんでもないデス」


    ピンポ〜ン


「あら、お客様でしょうか?」
「誰だろう?」

アタシはラボのドアのすぐ横にあるインターホンの前まで歩いていった。
さっきも言ったとおりラボは防音を施されている。
外からの音は全く聞こえない為、ご飯の時や緊急時などで呼ばれたのに気がつけない。
だからインターフォンで外と連絡を取れるようにアタシが設置したのだ。
ちなみにキチンと画像も出る。

「はいは〜い、こちら鈴凛よ」
『あ、鈴凛ちゃん』

画面に映ったのは可憐ちゃんだった。
可憐ちゃんは何か慌てている様な感じだった。

「どうしたの?」
『大変なの! 咲耶ちゃんが・・・咲耶ちゃんが春歌ちゃんの修行相手君にボコボコにされちゃうよ!』
「ええッ!?」












「大丈夫ですか?」

鞠絵ちゃんが咲耶ちゃんに包帯を巻きながら聞く。

「ええ、なんとか・・・」

体中にアザをつくりとても痛々しい姿の咲耶ちゃんが答える。

「鈴凛ちゃん、一体何があったのでしょうか?」
「・・・う〜ん、どこかで攻撃目標が春歌ちゃんから可憐ちゃんになったみたい」

アタシは前に作った春歌ちゃんの修行相手君1号を調べながら春歌ちゃんに答える。

「上手くいったと思ったんだけどなぁ〜。 また失敗かぁ・・・」
「まったく、作るならしっかりしたもの作りなさいよ! ・・・痛ッ・・・!」
「あ、動かないでください」



可憐ちゃんの話だと庭で春歌ちゃんが修行している所を二人で見てたら、
突然可憐ちゃんに春歌ちゃんの修行相手君1号が向かって来たと言う。
それで咲耶ちゃんが可憐ちゃんを逃がす為必死で戦ったらしい。
アタシ達は可憐ちゃんからその話を聞くとすぐにみんなで庭に向かったのだった。

「咲耶ちゃん・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、これくらいなんとも・・・」

咲耶ちゃんは心配そうに聞く可憐ちゃんに笑顔で答えた。
春歌ちゃんはそんな咲耶ちゃんに呆れ顔でこう言う。

「まったく、咲耶ちゃんは無茶苦茶ですよ。  相手は武器を持っているんですよ」

まあ、正確には持っていると言うより手と一体化しているデザインだ。

「しかもワタクシの薙刀の相手を務めていたのに・・・ それを素手で相手しようだなんて・・・」

確かに無茶苦茶だ。
だけどアタシ達が駆けつけた時にはそれを打ち倒していたからなおさら無茶苦茶だ。

春歌ちゃんの修行相手君1号を大地に沈ませ物凄い気迫でそれを見下す咲耶ちゃん。
あの姿はまるで“鬼”だった・・・。

「チェキ〜、咲耶ちゃんはやっぱり恐いデス・・・」
「うっさいわね、こっちだって必死だったんだから!」

・・・これからはあんまり咲耶ちゃんを怒らせないどこう。



「あ、鞠絵ちゃん、後は可憐が代わります」
「そうですか。 じゃあ、お願いしますね」
「はい」

鞠絵ちゃんは持っていた包帯を可憐ちゃんに渡し、咲耶ちゃんの隣のスペースを可憐ちゃんに譲った。

「・・・ところで咲耶ちゃんの怪我、どうですか?」

心配そうな顔で可憐ちゃんが聞く。

「そうですね・・・ 全身に軽い打撲とかがありますけど傷が残ったりはしないと思いますよ」
「そうなんだ・・・良かった・・・」

それを聞くと可憐ちゃんは安心した顔になった。

「ただ、両手は手首を捻挫してたり 少し強め打撲などがありますから・・・しばらく使えそうに無いですね・・・」
「「えッ!?」」

可憐ちゃんと咲耶ちゃんが同時に驚く。

「ほ、本当ですか!?」 「それほんとッ!?」

そして鞠絵ちゃんに同時に聞き返す。

「え・・・、え、ええ・・・」

同時に凄まれて少し困り気味の鞠絵ちゃん。
そんな鞠絵ちゃんも可愛い(はぁと)

「・・・にしても咲耶ちゃんついてないね・・・。
  アタシも前に両手怪我して散々な目に遭ったから・・・ ちょっと他人事とは思えないよ・・・」

・・・まあ、あの時は良い事もあったけど。

「そ、そうね・・・! ついてないわね・・・!」
「そうですね! 大変ですね!」

・・・・・・。

・・・なんで嬉しそうなのこの二人?



「でもよく鈴凛ちゃんのメカを倒せましたね・・・」

鞠絵ちゃんが唐突に聞いてきた。

「それはもちろんラブの力よッ!」
「「「「「え!?」」」」」

アタシ、鞠絵ちゃん、四葉ちゃん、花穂ちゃん、春歌ちゃんはそろって咲耶ちゃんの問題発言に声を出して驚いた。
え、もしかして咲耶ちゃんって・・・

「さ、咲耶ちゃん・・・」
「あ・・・、いや、違うの・・・、その・・・、ご、誤解しないで!  “家族愛”よ、“家族愛”!!」
「え・・・、あ、ああ、そう言う事でしたか」

納得した様子の春歌ちゃん。
なんだ、一瞬同類が居たのかと思ったよ・・・。
まあ、そんな訳無いよね・・・、アタシと鞠絵ちゃんみたいに・・・

「なんだぁ〜、花穂てっきり鞠絵ちゃんと鈴凛ちゃ・・・」


    ポチッ

    ビリビリビリビリッ・・・
「チェキィィィッッ!?!??」



「!? どうしたの四葉ちゃん!?」

危なかった・・・、アタシは考え事してて花穂ちゃんのNGワードに反応できなかったけど、どうやら鞠絵ちゃんがスイッチを押してくれたみたいだ。

・・・・・・。

・・・なんで四葉ちゃんの方?

「ちょっと四葉ちゃん、何? いきなり叫んで・・・」
「一体どうなさったのですか?」
「四葉ちゃん?」

咲耶ちゃん春歌ちゃん可憐ちゃんが不思議そうに四葉ちゃんを見る。

「あのさ、咲耶ちゃん両手が使えなくて不便でしょ?」

とにかく話を逸らそう。

「ちょっと待ってて今いい物持って来るから」

アタシはそう言ってラボに向かおうとした。
・・・これで話を逸らせたんだろうか?
パッ、と思いついた事を言っただけだから自信無い・・・。

・・・マッテクダサイ・・・四葉モ・・・行キマス・・・

焼肉・・・じゃなくて四葉ちゃんが話し掛けてきた。

・・・鞠絵チャンモ・・・一緒ニ・・・来テクダサイ・・・

・・・・・・。

・・・四葉ちゃんはちょっと危ないようだ。












「どうして四葉に電気を流すんデスかッ!?」

ラボに着くなり四葉ちゃんはアタシ達にそう抗議してきた。
まあ当然だろう、ドジしたのは花穂ちゃんなんだから。

「押したのはドッチデスか!? 鈴凛ちゃん!! 鞠絵ちゃん!!」
「あ、わたくしです」
「鞠絵ちゃん!!」

四葉ちゃんは唸る様に鞠絵ちゃんを威嚇し始めた。

「でもホントどう言う事? 今のは花穂ちゃんが悪かったんだよ」
「そう言われましても・・・わたくしは確かに赤い方の・・・ こっちの花穂ちゃんの方のスイッチを押したんですけど・・・」

そう言って鞠絵ちゃん右ポケットから赤いスイッチを出してきた。
続けて左のポケットから青いスイッチを出してきた。
違うポケットに入れていたんだから押し間違えた訳じゃ無さそうだ。

「入れているポケットを思い違えてたとかじゃないんデスか!?」
「いえ、確かにこっちの方を・・・」
「じゃあなんで四葉の方に電気が来たんデスか!?」
「さあ?」
「さあ、じゃアリマセン!!」
「でも、さっきも花穂ちゃんの方を押したはずなのに 四葉ちゃんの方が反応したんですよね」
「え、ちょっと貸して」

そう言ってアタシは赤い方のスイッチを手に取るとおもむろにそのスイッチを押してみた。


    ポチッ

    ビリビリビリッ・・・
「チェキッッ!!?」



反応したのは四葉ちゃんの方だった。
今度は青い方の手に取って押してみた。


    ポチッ


・・・・・・

・・・何も起きない。

「・・・う〜ん、どうやら設定する時に間違えて逆に設定しちゃったみたい」
「あ、そうだったんですか」
「でもまあ、使えてると思うからこのまま使ってね」
「はい」

どうやらこれはアタシの方のミスだったらしい。
それでこの件は解決。
めでたし、めでたし。

「なに勝手に話を収めてるんデスか・・・!」












「はい」
「・・・・・・なにこれ?」
「両手が使えなくても安心君3号」

アタシ達はラボから戻ると持ってきたメカを咲耶ちゃんに渡した。

「これで両手が使えない咲耶ちゃんも安心だよ」
「・・・結局作ってたんデスか・・・」

四葉ちゃんがなんか呟いている。

「そうね・・・・・・どうもありがとう!」

咲耶ちゃんはアタシにそう言ってきた。

・・・なんか言葉に怒りがこもってない?

「・・・1号と2号はどうしたんデショウか・・・?」

四葉ちゃんがなんか呟いてる。

「・・・失敗したんデショウか・・・?」

ビンゴ。

「・・・ねえ、鈴凛ちゃん」
「ん?」

横から花穂ちゃんが話し掛けてきた。

「見てたの?」
「え?」
「・・・ずっと見張ってたの?  か、花穂もう言わないから・・・だから・・・」

花穂ちゃんは涙目でやや意味不明な事を言ってきたのだった。












「ふー、やっと着いたぁ・・・」
「重かったデス・・・」

アタシ達は春歌ちゃんの修行相手君1号を四人で協力してラボに運んだ。
四人と言うのはさっきからのメンバーのアタシ、鞠絵ちゃん、四葉ちゃん、花穂ちゃんの事。

アタシとしては鞠絵ちゃんには手伝わせたくなかったんだけど、
「わたくし、こう見えても結構力持ちなんですよ」なんて言って手伝うって言って聞かなかった。
しかもトドメに耳元で一言、「大好きなわたくしの恋人の鈴凛ちゃんの為になにかしたいんです・・・」だもんなぁ・・・。
しかも“わたくしの恋人”の部分を強調して言うもんだからつい手伝わせてしまった・・・。



「あれ? 鈴凛ちゃん、顔赤いよ」
「どうせさっき耳元で鞠絵ちゃんに言われた事でも思い出して、 ノロケて赤くなってるんデスよ、花穂ちゃん」
「ええッ!? き、聞こえてたの!?」
「聞こえませんデシタよ。  けど内容は大体『大好きな鈴凛ちゃんの為に・・・』とかなんとかに決まってマス・・・」
「う・・・、ほとんど正解・・・」

四葉ちゃんの推理力侮り難し・・・。

「すご〜い、さすが四葉ちゃん、名推理だね」
「・・・・・・」

花穂ちゃんの一言の後、四葉ちゃんは突然止まった。

「・・・四葉ちゃん?」
「ムフフフ・・・」
「!!」
「ハーッハッハー!」

で、いきなり笑い出した。

「この名探偵の四葉様にかかればどんな秘密もチェキよー!」

四葉ちゃんは自信満々にそう言い始め―――

「それなら電撃ビリビリ口封じ君を着けられる前に なんとかすれば良かったのでは?」
「!! ・・・・・・」

―――鞠絵ちゃんの一言で再び止まった。



「四葉ちゃん?」

アタシは止まっている四葉ちゃんに話しかけてみた。

・・・なんか前に似たようなやり取りをやった気が・・・。

「え・・・と、デスね・・・その・・・」

四葉ちゃんはなにか反論しようとはするんだけど何も言えないって感じだった。
そんな四葉ちゃんに鞠絵ちゃんは、

「やっぱり四葉ちゃんは四葉ちゃんですね」
「どう言う意味デスか!?」

怒る四葉ちゃん。

「で、でも、四葉ちゃんは凄いんだよ! この間だって花穂と一緒に見た推理物の映画の犯人当てちゃったんだから!」

花穂ちゃんは四葉ちゃんをそうフォローする。

「そうなの?」
「うん、本当は執事さんが犯人で、 トリックで奥さんに罪を擦り付けようとしているって所までピッタシ!」
「執事が犯人・・・?」
「奥さんに擦り付ける・・・?」

ちょっと待ってその話どっかで・・・。

「・・・それってひょっとして金曜ロー○ショーとかじゃなくてビデオ?」
「うん」
「いつ見たの?」
「鈴凛ちゃんの両手の怪我が治る少し前」
「・・・・・・」

それを聞いたアタシはつい言葉を失ってしまった。

「あの、ひょっとしてタイトルは・・・」

鞠絵ちゃんは花穂ちゃんに四葉ちゃんと見たと言う映画のタイトルを聞く。

「うん、そうだよ」

花穂ちゃんは何も知らずに笑顔で答える。

「四葉ちゃん・・・」

アタシは呆れ顔で四葉ちゃんの方を見た。

「二人とも見た事あるの?」

花穂ちゃんが何気なく聞く。
ちなみにこの時、四葉ちゃんはこっそり逃げ出そうとしていた。

「ええ・・・」

鞠絵ちゃんが肯定する。
そしてアタシはそれを補足する様にこう付け足した。

「花穂ちゃんが見る少し前に四葉ちゃんと一緒に・・・」
「えぇッ!!」






「ひどいよ四葉ちゃん! 花穂の事騙したの!?」

マンガの泥棒の様に抜き足差し足で歩いていた四葉ちゃんは 真実が露呈する前にラボから脱出する事に失敗したのだった。

「四葉ちゃんッ!!」
「アハハハ・・・、そ、それはデスね・・・」

確か前にアタシ達と見た時は、四葉ちゃんは犯人を見事外して「次は負けない」とか捨て台詞を・・・ ああ、キチンと雪辱してたんだなぁ・・・。

「最初から犯人分かってたから!?  だから犯人を当てられるかどうか賭けようって言ったの!?
 当てたらたら助手になれって・・・自信満々だったのはそう言う事なの!? どこがちょっとした賭けなのさ!? ズルじゃないの!!」

・・・そんな賭けまでしてたのか・・・。

「花穂、凄いと思ったから助手になってあげたのにぃ!」

つまりあれか?
花穂ちゃんにあの写真を見せたのは助手だったからか?
だったらこっちはいい迷惑だ・・・。

「でも勝負は勝負デス! あの勝負は四葉の勝ちデス!」

あ、四葉ちゃん逆ギレした。

「イカサマもバレなければイカサマではないとマンガで読みました!!」

・・・・・・。

・・・四葉ちゃんは名探偵より名詐欺師になった方がいいかもしれない。

「でも・・・」


    ビリビリビリッ・・・
「チェキィッ!?」


「「「え!?」」」

花穂ちゃんの講義の最中、四葉ちゃん体が突然跳ねた。
その事に四葉ちゃん以外はみんな声を漏らして驚いた。



「ど、ドッチデスか今のは!?」

四葉ちゃんがそう言う。
四葉ちゃんの様子から、アタシは電撃ビリビリ口封じ君の所為だって事はなんとなく分かった。

「アタシじゃないよ」

でもアタシはスイッチを押していない。
じゃあ鞠絵ちゃんって事に・・・

「わたくしでもないです」
「え?」

そんなはずは無い。
スイッチを持っているのはアタシと鞠絵ちゃんだけだ。
どっちかが押さなきゃ作動する訳ないんだ。

「鈴凛ちゃんじゃないんですか?」
「アタシじゃないよ。 そもそもアタシ、ポケットにも手入れてないし」

アタシはスイッチをポケットに入れているから、押す為には一旦ポケットの中に手を入れる必要がある。
確か鞠絵ちゃんもポケットに入れていた。

「でも、わたくしもそうなんですけど・・・」
「じゃあなんで四葉に電気が流―――」


    ビリビリビリッ・・・
「―――れェッ! チェキぃッ!?」



「四葉ちゃんッ!?」

四葉ちゃん、無理して「チェキ」って言い直さなくても・・・じゃなくて!

「どう言う事!?」

四葉ちゃんの体が再び跳ねた!
しかし不思議な事にアタシも鞠絵ちゃんもポケットに手を入れてはいない。
それどころかポケットに手すら触れていない。
つまり、ポケットの上から布越しに押す事すらしていないという事だ。
ここにいる全員がそれを確認している。
しかし、四葉ちゃんの電撃ビリビリ口封じ君は確かに反応した!

「これは・・・」

おもむろに口を開く鞠絵ちゃん。

「・・・花穂ちゃんの怨念!?」

いや ・・・それは無いと思う・・・。

「花穂ちゃんッ!!」
「え!? 花穂の所為なの!?」

花穂ちゃんをジッ、と睨む四葉ちゃん。

「・・・四葉ちゃん、真に受けるんじゃないよ・・・」

そんな四葉ちゃんにアタシはそう言った。

「じゃあ、一体どうし―――」


    ビリビリビリッ・・・
「―――てェッ! チェキぃーッ!?」



「四葉ちゃんッ!」

三度四葉ちゃんの体が跳ね上がる。

「花穂ちゃん、やり過ぎですよ!」
「鞠絵ちゃん、だから違うって・・・」

アタシはボケる鞠絵ちゃんにツッコム。
鞠絵ちゃんってこう言うキャラだっけ?

「花穂ちゃん、四葉が悪かったデス! だからもう許してくだサ―――」


    ビリビリビリッ・・・
「―――イぃーーーーーーッ!?」


あ、今回「チェキ」って言わなかった・・・じゃなくて!

「一体どうして!?」
「か、花穂の所為だぁ〜」
「いや、だから違うって・・・」

このままでは「花穂ちゃんの怨念説」が通ってしまう・・・。

「花穂ちゃんの所為じゃないよ、 ・・・っと、ほら、これ押さないと作動しないはずなんだから」

アタシはポケットの中から電撃ビリビリ口封じ君の青い方のスイッチを取り出して花穂ちゃんに見せた。

「そうですよ・・・ほら・・・」

続いて鞠絵ちゃんもアタシと同じ様に電撃ビリビリ口封じ君の青い方・・・あ、鞠絵ちゃんのは赤い方か・・・赤い方のスイッチを取り出そうと・・・
・・・って、「そうですよ」って鞠絵ちゃん、最初に「花穂ちゃんの怨念説」を説いたのはあなたでしょう!

「あら・・・?」

鞠絵ちゃんの動きが止まった。
しかもポケットの中をまじまじと見ている。

「・・・・・・ああ、そう言う事ですか」

そしていきなりそんな事を言う。

「鞠絵ちゃんどうしたの?」
「四葉ちゃん、安心してください。 花穂ちゃんの所為じゃないですよ」
「ホントデスか!?」


    ビリビリビリッ・・・
「チェェェェェキィィィィィッ!?」


四葉ちゃんは五度体を跳ね上がらせる。

「鞠絵ちゃんなにか分かったの?」
「はい、つまり・・・、これです」

そう言って鞠絵ちゃんはアタシ達にポケットの口を広げて中を見せて来た。

「落としました」

そこには底にポッカリと穴が開いていた。
四葉ちゃんには死刑宣告が言い渡された。



「なんとかして下サイ!  このままでは四葉・・・死んでしまいマス!!」
「なんとかって言われても・・・」

四葉ちゃんはまるで命でも狙われているかの様な顔をして必死にアタシの腕に縋り付いてきた。
いや、事実四葉ちゃんはかなりヤバイかもしれな―――


    ビリビリビリッ・・・
「チェキィィィィイイイイイッッ!?」
「きゃぁぁぁぁあああああッッ!?」



「鈴凛ちゃん!!」「四葉ちゃん!!」

アタシは巻き添えを食った・・・。
鞠絵ちゃんと花穂ちゃんがそれぞれ同時に名前を呼んだのが聞こえた。
もちろんアタシの名前を呼んだのは鞠絵ちゃんv
アタシは倒れそうになったところで鞠絵ちゃんに抱きとめられ床に激突するのを免れた。
ちなみに四葉ちゃんも倒れそうになったけどそっちは見事床に激突。
バタンッ、って感じの音が二つ聞こえた。

あ、“二つ”って言うのは花穂ちゃんが転んだからね。
花穂ちゃんは四葉ちゃんを抱きとめようとしたみたいだけど転んだみたい。



「大丈夫ですか、鈴凛ちゃん?」
「うん・・・なんとか・・・」

アタシは今、鞠絵ちゃん膝枕してもらっている。
ああ、幸せ・・・。

「四葉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫デス・・・。 ・・・デスから早く足をどけて下サイ・・・」

四葉ちゃんは今、花穂ちゃんに手を踏まれている。
ご愁傷様・・・。

「とにかく作動してるって事は誰かが持っているって事だから・・・」
「拾った人を見つければいいんですね」
「そう言う事」

鞠絵ちゃんは赤い方のスイッチ、つまり四葉ちゃんへの刑罰執行の道具を落としたのだ。
それを誰かが拾ってスイッチを押している。
そう考えればつじつまは合う。
鞠絵ちゃんが落としたのは多分春歌ちゃんの修行相手君1号を運んでいる時で間違い無いだろう。

「じゃあ、行こうか・・・・・・早くしないと家族が一人減る・・・」
「チェキッ!!?」

くらってみて分かった・・・ちょっと強すぎたかもしれない・・・。
まあ、家の中の誰かが持っているのは確かなんだからみんなに尋ねればきっと見つかるはず。
アタシ達は早速行動に出る事に―――


    ビリビリビリッ・・・
「チェキィッ!!」


―――した。












アタシ達は二手に分かれて探す事にした。
アタシは四葉ちゃんと、鞠絵ちゃんは花穂ちゃんと、それぞれ二人一組で探し始めた。

「スイッチ・・・ですか?」

アタシ達はまずは春歌ちゃんに聞いてみた。

「うん、アタシの新発明」
「・・・新兵器デス・・・」

四葉ちゃんがなんか呟やいてる。

「いえ、知りません・・・」
「そう・・・、うん・・・ありがと」

春歌ちゃんじゃない、と・・・。
じゃあ次は・・・

「あ、いたいた、鈴凛ちゃん!!」
「衛ちゃん?」

次にどこに行こうか考えていたら衛ちゃんがやって来た。

「あの、スイッチ知らないデスか!?」
「え? スイッチ」
「ハイデス、赤いスイッチデス!」

四葉ちゃんは早速衛ちゃんに聞いていた。
まあ、命が懸かってるんだから必死にもなるよね・・・。

「ごめんね、ボク知らないだ」
「そうデスか・・・」
「でも花穂ちゃん達も同じ事聞いてたね、それって重要なものなの?」
「まあね」

人一人の命位重要。

「あのさ、だったらボクも探すの手伝おうか」
「そうして下サイ!」

四葉ちゃんはアタシが考える暇も無く即答で答えた。
後で説明が面倒だからアタシは断りたかったが・・・まあ四葉ちゃんが死んでしまっては困るし。

「・・・ゴメンね、多分誰かが持っていると思うからみんなに聞いて見てくれる?」
「いいよ・・・、でもその代わりボクが見つけたらお願い・・・聞いてくれる?」
「お願い?」
「う、うん・・・」
「なに?」
「あ、あのさ・・・そのブレスレット、 花穂ちゃんから聞いたんだけど鈴凛ちゃんが作ったんだよね?」
「うん、まあ・・・」
「ぼ、ボクにもそれ作ってくれないかなぁ?」
「え?」「正気デスかッ!?」

アタシと四葉ちゃんは同時に違うことを口走った。

「べ、別にいいけど、なんで?」
「え!? いや、その・・・
か、花穂ちゃんとお揃いが良いから・・・じゃ、じゃなくて! なんとなくカッコイイから!」

なんか真ん中らへんがうまく聞き取れなかったけど・・・

「理由はどうあれ命を捨てる覚悟があるなら別に・・・」

アタシはそう答える。

「そんな事より四葉のをプレゼントしマス」
「え!? いいの!?」
「もう衛ちゃんが見つけたらなんて言わずに今スグにでも・・・」

ああ、四葉ちゃん、衛ちゃんに擦り付ける気だ・・・。



「じゃあ事は一刻を争うからアタシ達行くね」

アタシはそう言うと次に行く事にした。

「衛ちゃん! 見つけたらくれぐれもスイッチは押さないで下サイ!」

四葉ちゃんはしっかりと念を押していた。
いつもどこかヌケている四葉ちゃんも命が懸かっていると、この様にしっかり者になるらしい。



「やった、それなら四葉ちゃんは花穂ちゃんとお揃いじゃなってくれる・・・その上ボクが代わりに花穂ちゃんとお揃いに・・・」

なんか衛ちゃんが呟いてるけどよく聞こえない。












「次は誰の所に行く?」

歩きながら四葉ちゃんに聞く。

「そうデスね・・・ズバリ四葉の推理では可憐ちゃん当たりが・・・」

その時、居間の方から花穂ちゃんがこう言ってくるが聞こえた。

「四葉ちゃ〜ん、亞里亞ちゃんが持ってたよ〜」

四葉ちゃんの推理は見事外れた。
四葉ちゃんはやっぱり四葉ちゃんだった。












「亞里亞ちゃん、それ渡してくれますか?」
「いや・・・」
「お願い、亞里亞ちゃん」
「いや・・・」

アタシ達が居間に向かうと鞠絵ちゃん達が亞里亞ちゃんから例のモノを取り返そうと説得している最中だった。

「鞠絵ちゃん」

アタシは居間に着くと鞠絵ちゃんに声を掛けた。

「あ、鈴凛ちゃん」
「なによ、これやっぱりアンタが作ったものだったの?」

近くでは“大戦鬼”こと咲耶ちゃんが痛々しい姿でソファに座っていた。

「咲耶ちゃん・・・もうちょっと優しく言ってあげた方が・・・」

隣では可憐ちゃんが咲耶ちゃん専属の看護婦として座っていた。

「亞里亞ちゃんそれをこっちに今すぐ渡すのデス!」

アタシが状況を整理している間に四葉ちゃんは早速行動に出ていた。
まあ、ここに来るまでにさらに四回電気を流されている(内一回巻き添え喰った)から当然か・・・。

「大人しく渡せば痛い目には遭わせないデスから!」

・・・・・・。

四葉ちゃんは将来、名詐欺師より名強盗になるかもしれない・・・。

「・・・いやなの〜」

亞里亞ちゃんは例のモノを両手でしっかりと大切そうに持って自分の体で隠してしまった。

「さっきからこの調子なんです・・・」

鞠絵ちゃんがため息混じりにそう言う。

「なにそれ? そんなに大切なものなの?」

咲耶ちゃんが聞いてきた。

「まあね・・・」
「四葉ちゃんの命が懸かってるの!」

アタシに続いて花穂ちゃんがそう答える。
それに咲耶ちゃんは、訳も分からず「は?」と声を漏らしていた。

「とにかく今すぐ渡して下サイ!」
「これは亞里亞の〜・・・」

亞里亞ちゃんは一向に渡そうとはしてくれない。

「亞里亞ちゃん、これは元々わたくしのものなんです。 人の物を盗るのは悪い事だって亞里亞ちゃんも知っているでしょう?」
「でも〜・・・」
「亞里亞ちゃん・・・」
「・・・いやなの〜」

亞里亞ちゃんは意外と強情で鞠絵ちゃんの説得にも応じてくれない。
アタシはその事が普通に気になったから聞いてみた。

「どうしてそんなのが良いのさ?」
「あ、鈴凛ちゃん! それ聞いちゃダメ!!」

それが四葉ちゃんへの刑の執行の言葉だと知らずに・・・。

「亞里亞・・・これ押すの好き〜」


    ポチッ

    ビリッ・・・
「チェキッ!」


    ポチッ

    ビリッ・・・
「チェキッ!!」


    ポチッ

    ビリッ・・・
「チェキッッ!!!」


事もあろうに亞里亞ちゃんはボタンを三連打した。
なるほど、さっきの四回はそれか。

「四葉ちゃんはなにを踊ってるのよ?」

咲耶ちゃんには四葉ちゃんが踊ってるように見えたようだ。

「四葉ちゃん大丈夫!?」
「ああ、花穂ちゃん・・・エンジェルが見えマス・・・ きっと四葉を迎えに・・・」
「しっかりしてぇーーーッ!!」

ヤバイ・・・四葉ちゃんはもう限界のようだ・・・。

「どうしよう・・・迂闊に言うと亞里亞ちゃん押しちゃうし・・・」
「これ以上押されたら四葉ちゃん死んじゃうよぉ〜」

アタシ達がおろおろ(一部、ピクピク)していると、

「仕方ありませんね・・・」

鞠絵ちゃんがそう言って亞里亞ちゃんの側に寄って行った。
そして一言、

「亞里亞ちゃん、それは亞里亞ちゃんにあげます」
「「ええッ!?」」

鞠絵ちゃんの突然の一言に驚きを隠せないアタシと花穂ちゃん。
ちなみに四葉ちゃんの耳には既に届いてない。

「ほんと?」
「はい、ですから少しの間だけそれを押さないでくれますか?」
「・・・?」
「そうしてくれるならそれは差し上げますよ」
「ちょッ・・・鞠絵ちゃん何言ってるの!?」

アタシはそれを慌てて止めようとする。
そんな事をすればその内四葉ちゃんは一足早くお空の上に逝ってしまう。
しかし鞠絵ちゃんは任せてください、って感じの顔をアタシに見せてきたのだった。

「分かった、亞里亞これ押さな〜い・・・」

亞里亞ちゃんは満面の笑顔で鞠絵ちゃんのお願いを聞いた。
そして鞠絵ちゃんはアタシ達にこう言ったのだ。

「さあ、では一旦ラボに行きましょう」
「え?」

そのまま鞠絵ちゃんはラボに向かって歩き始めてしまった。
訳も分からないままアタシ達は鞠絵ちゃんの言うとおりラボに向かう事にした。



「あ、鈴凛ちゃん、ラボに行くならこれ」
「なに、咲耶ちゃん?」
「両手が使えなくても安心君3号、なんか壊れちゃったのよね」
「え! そうなの!?」
「だからこれも持って行ってね」

そうしてアタシは咲耶ちゃんから両手が使えなくても安心君3号を渡された。
両手が使えなくても安心君3号は何かに踏み潰されたような奇妙な壊れ方をしていたのだった。












「鞠絵ちゃん、どう言うつもり?」

アタシ達は一旦ラボに戻ってきた。

「どうって・・・ですから四葉ちゃんを助ける為に・・・」
「ふぇ〜、四葉ちゃん重いよ〜」

ちなみに四葉ちゃんは花穂ちゃんに任せてある。
虚ろながら四葉ちゃんは歩けているのでまあ大丈夫だろう。

「アハハハ・・・鈴凛ちゃんのグランパデスか・・・?  ハジメマシテ・・・鈴凛ちゃんの大親友の四葉デス・・・」

四葉ちゃんは今、ジジに会ってるみたいだ。
かなりヤバイがなんか羨ましい・・・。

「アハハハ・・・グランパさん・・・残念ながら鈴凛ちゃんはヘンタイさんに目覚めちゃったんデスよ・・・。  ゴシューショーサマデス・・・アハハハ・・・」

・・・・・・。

「鈴凛ちゃんポケットに手を入れないでぇーッ!」

はッ!
いけない、いけない・・・
つい四葉ちゃんにトドメを刺そうかと思っちゃったよ・・・。



「・・・で、鞠絵ちゃん、どうするの?」

アタシは鞠絵ちゃんに聞いてみた。
ところが鞠絵ちゃんはラボに着くなり何かを探し始めた。

「鞠絵ちゃん?」
「無いですね・・・」
「なにか探してるの?」
「はい、四葉ちゃんの電撃ビリビリ口封じ君の鍵です」
「え?」
「鍵?」

“鍵”、その単語を聞いた瞬間、

「「あッ!!」」

アタシは花穂ちゃんと一緒にある事に気がついた。

「そうか四葉ちゃんから外しちゃえば良かったんだ!」
「あ〜ん、花穂そんな事すっかり忘れてた〜」

アタシと花穂ちゃんはその事をすっかり忘れていたのだった。
外してしまえば四葉ちゃんがもう電気を流される事はない。

「鈴凛ちゃん、鍵はどこに・・・?」
「え、アタシが持ってるけど・・・そうだよ、すっかり忘れてた!」

そうしてアタシは、すぐさまポケットから鍵を出すと四葉ちゃんから電撃ビリビリ口封じ君を外した。
これにて四葉ちゃんは恐怖の電気地獄からの奇跡の生還を果たしたのであった。

実に事故発生から30分の出来事だった!






○月 ×日   △時 □分

四葉 無事生還


























「・・・ねえ、鞠絵ちゃん」
「なんですか、花穂ちゃん?」
「だったら鞠絵ちゃんは初めから鍵の事覚えてたの?」
「はい」
「だったらなんですぐに外そうって言わなかったのッ!?」
「そんなの決まってるじゃないですか・・・」
「え?」
「今日、鈴凛ちゃんと二人っきりで出掛けたからです!」
























「あー、今日はなんか大変だった・・・」

夜、部屋でくつろぐアタシ、

「本当ですね・・・」

鞠絵ちゃんと二人きりで・・・

「どうしよっか?」
「なにがですか?」
「電撃ビリビリ口封じ君は今日みたいな事があったからさ、 もう使わない方がいいじゃない?」
「そうですか?」
「くらってみて分かったんだけどちょっと電気強すぎたし・・・」
「そうですか・・・」

鞠絵ちゃんは残念そうに言う。

鞠絵ちゃん、あなたは確か最初使うの渋ってなかったっけ?



「・・・にしてもなんか疲れたー」

座りながら両手を伸ばし背伸びしてそう言う。

「だったら・・・」
「ん?」
「恋人同士だからできる、元気が出るおまじないです・・・」
「え・・・」

そのまま鞠絵ちゃんがアタシに近づいてきた・・・。

「鞠絵・・・ちゃん・・・」

そしてそのまま目を瞑りアタシに顔を近づける。
アタシは鞠絵ちゃんがなにをするのかを理解すると、 彼女の背中に手を回してゆっくりと自分の方に引き寄せる・・・。

しばらくして・・・アタシ達の唇が重なった・・・。












    ポチッ

    ビリビリビリッ
・・・
「チェキチェキチェキィィィィッッ!?」「ひゃぁぁぁぁあああああッッ!?」


「うわぁぁぁぁあああああッ!!」「・・・!!」

突然、アタシの部屋のクローゼットの中から叫び声がした!
アタシ達はその声に驚いて大声で叫びながら鞠絵ちゃんから離れた。
一方、鞠絵ちゃんはビックリして声が出せなかったようだった。

アタシは最初、何が起こったか分からなかった。
しかし、花穂ちゃんにまだ電撃ビリビリ口封じ君を着けていた事と、
鞠絵ちゃんのポケットの中にあったそれに反応するスイッチを、鞠絵ちゃんを引き寄せた時にアタシの体で押した感覚があった事を思い出した。
そこから導かれた推論の結果・・・アタシはクローゼットに近づきそれを開けた。

「・・・・・・」

思ったとおり、中から出て来たのはドジっ子同盟こと、

「四葉ちゃん・・・、花穂ちゃん・・・」
「あ、アハハハ・・・」
「えへへ・・・」
「・・・何してるの?」
「えっ・・・と、デスね・・・、ちょっとお二人の禁断のラブシーンを・・・」
「か、花穂は四葉ちゃんの助手だから・・・」
「・・・・・・」
「り、鈴凛ちゃん・・・、その顔ホントに怖いデス・・・」
「ご、ごめんなさい・・・」
「・・・・・・」
「「・・・・・・(汗)」」


    バタンッ


「ちょっと待て・・・!」

二人は何も無かったかのようにクローゼットに戻って行った。

「ささ、四葉達に気にせずドウゾ続けて下サイ」

中から四葉ちゃんがそう言ってきた。
アタシはクローゼットに背中を向けて体全体でクローゼットの扉を塞いだ。

「鞠絵ちゃん」
「なんですか?」
「この中って狭いんだよ」
「ええ」
「だから二人入ったら密着状態になるしかないんだよね」
「はい」
「それに花穂ちゃんにはまだ電撃ビリビリ口封じ君着けたままだたっし・・・」
「そうでしたね」
「あと四葉ちゃんはもう回復してるはずだから・・・」

アタシはひと息吸って中にいる二人に聞こえる位の大きな声でハッキリとこう言った。

「たっぷり流してあげて!!」
「チェキぃっ!? や、やめて下サ―――」「ま、待って! 花穂ここから出るか―――」

アタシの後ろから二人のそんな遺言が途中まで聞こえた。

「分かりました!」


    ポチッ

    ビリビリビリビリビリビリビリビリ
・・・
「チェキぃぃぃいいいいいッッ!!」「ひゃぁぁぁあああああッッ!!」


二人が悲鳴と共にクローゼットを開けようと必死で扉を叩いてるのを感じながら、アタシは後ろからする香ばしいニオイで、

「・・・・・・久しぶりに焼肉食べたいな・・・」

こんな事を考えるのだった。
























おまけ

「亞里亞ちゃん、見て! これカッコいい思わない?」
「・・・・・・?」
「このブレスレットね、その・・・ か、花穂ちゃんと・・・、お、お揃いのなんだよ!」
「・・・お揃いなの?」
「そ、そう! か、花穂ちゃんとお揃い・・・、えへへ・・・」
「亞里亞は〜、これが好き〜」


    ポチッ

    ビリビリビリッ
・・・
「うあああぁぁぁぁぁッッ!?!??」





あとがき

まりりんほのらぶストーリー “〜ました”シリーズ 第5弾
・・・“ほのバカ”だった気がする・・・。
大体、四葉がメインっぽいし・・・。
完全にギャグモノになっているし。
オチがイマイチな感じがするし。
・・・・・・。
なんだか悪い所しか見えない・・・。


更新履歴

H15・7/22:完成
H15・7/24:修正
H15・8/9:また修正
H15・9/5:色々修正
H15・10/28:またまた修正


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