「では次に行きマス!」

アタシは今、ラボで新しいメカの調整をしているところだ。

「質問67、鈴凛ちゃんが今情熱を持ってやっている事は?」
「メカの製作・・・ってこんな事までいちいち聞くの?」
「そうデス! もしかしたら別の事に変わっているかもしれませんから!」
「ふーん・・・」

そして、そのついでに四葉ちゃんのチェキに付き合っている。
なんでも「そろそろミンナの新しいデータを入れるべきデス!」らしい・・・

「でも、今まで見てて変わってると思った?」
「思いませんデシたよ」
「それでも聞くんだ・・・」
「ハイデス!」

そんな事を話しながらアタシの方はもうすぐ作業が終わるところだった。

「こんなもんかな・・・」
「では、質問68デス!」
「はいはい・・・」

そんな感じで出てきた四葉ちゃんの次の質問が原因で今回のような事が起こった。

「鈴凛ちゃんの恋愛対象は男の子デスか? 女の子デスか?」
「・・ぅえぇっ!!?」


    ガンッ












ケガをしてしまいました













「う゛ー・・・」
「大丈夫ですか?」

心配そうに鞠絵ちゃんがそう言う。

「痛い・・・」

アタシは正直にそう答えた。

「スミマセンデシた、四葉がヘンな事を聞いたばかりに・・・」
「・・・痛い・・・」

そう言ってアタシは四葉ちゃんを睨む・・・

「う・・あの・・・鈴凛ちゃ・・」
「・・・痛い・・・」

そう言ってもう一度四葉ちゃんを睨む・・・

「スミマセンデシた・・・」

申し訳なさそうな顔をしながら四葉ちゃんはそう言った。

状況を説明すると、四葉ちゃんがさっきの質問68をアタシに聞いてきた時、驚いたアタシはそのままメカに両手をついた。
で、そこはメカの蓋の所で、運の悪い事に両手をついた衝撃で開いていたメカの蓋が閉まり、アタシの両手は見事にメカの蓋に挟まれた訳だ。
さっきの「ガンッ」って言うのがそれ。

「鈴凛ちゃん、右手終わりましたから今度は左手を出して下さい」
「うん・・・」

今は鞠絵ちゃんがアタシの両手に包帯を巻いているところ。
鞠絵ちゃんはこういう事が上手だから、
四葉ちゃんは真っ先に鞠絵ちゃんに知らせに行ってくれた。

「鈴凛ちゃん・・・あの・・・」
「・・・痛い・・・」
「うぅ・・・」
「鈴凛ちゃん・・・もうそろそろ許してあげたらどうですか? 四葉ちゃん、真っ先に知らせてくれたんですから・・・」

まあ、確かに少しいじめ過ぎたかな・・・?

「鈴凛ちゃん・・・」
「分かってるって、四葉ちゃんが悪い訳じゃないんだから・・・」
「本当デスか?」
「うん・・・・・・あんな質問に動揺したアタシが悪いんだから・・・」
「チェギッ!!」

でも、やっぱりまだ止めておこう・・・

「でも四葉ちゃんが知らせに来てくれた時は本当にビックリしましたよ。
 鈴凛ちゃんが機械に挟まれたって四葉ちゃんが言うから、わたくし、てっきり腕の一本は持っていかれたかと思いましたよ」

さらりと怖い事を言う・・・

「鞠絵ちゃん・・・コワイデス・・・」

そう言う四葉ちゃんはちょっと青ざめていた。

「はい、できました」

鞠絵ちゃんがそう言うとアタシの両手は見事に包帯でグルグル巻きにになっていた。

「それで鞠絵ちゃん、鈴凛ちゃんの手は・・・?」
「骨は折れていないみたいですけど・・・しばらく両手は使えませんね」

どっちにしろこんなにグルグル巻きにされたら使いたくても使えない・・・
なんて言うか・・・“某ネコ型ロボット”みたいだ。

「チェキ〜、鈴凛ちゃん、ドラ○もんみたいデスね」
「四葉ちゃん! アタシがあえて伏せておいた事を言わないの!」
「チェキッ! スミマセン・・・」

四葉ちゃんは謝りはしたけど「“伏せた”ってなんの事デスか?」って顔をしていた。






















「暇だ・・・・」

居間で一人そう呟いた。

アタシは今、両手が使えないからなんにも出来ない。
いつもだったらメカをいじってたりしているんだけど、両手がこの様じゃあそれはまず無理。
普段はやる気の出ない学校の勉強をしようにも教科書は開けないしペンは握れない。
パーツを買いに行ったところでこの手じゃ持てないし、
なにより安静にしてなきゃダメだから外に出る訳にはいかない。
仕方ないから頭で新らしいメカについて考えればすぐにでも設計図に描きたくなってかえって辛くなる。
と言うか既になっている。
ちなみに今思いついた新らしいメカ案は『両手が使えなくても安心君1号』だ。
こんな事になってしまったので一刻も早く作りたい・・・。

とにかく手が使えないと全くやる事が無い。

「安静にしてろって言うけど・・・」

暇でしょうがない・・・。

「鈴凛ちゃん」
「ん?」

そんな事を考えてたアタシに鞠絵ちゃんが話しかけてきた。

「なに? 鞠絵ちゃん」
「鈴凛ちゃん、今両手が使えなくてなんにも出来ないですよね?」
「うん」
「だから退屈だと思いまして、よろしければ一緒にビ―「鈴凛ちゃん、一緒にビデオでも見まショウ!!」

鞠絵ちゃんが話している途中、横から四葉ちゃんが口を挟んだ。

「・・・・・・」
「どうしたんデスか?」
「四葉ちゃん、もう少し礼儀ってものを考えたほうがいいと思うけど・・・」
「チェキ?」
「『チェキ?』じゃない・・・」






「つまり・・・」

つまり二人ともアタシがなんにも出来なくなっていて退屈してる事が分かっていたから一緒にビデオを見て暇つぶしを、と考えた訳だ。

「もし迷惑でなければ・・・ですけど」
「そう言う事デス!」

そう言う二人の手にはビデオテープがそれぞれ一本ずつ握られていた。

「いいよ、見よう」
「ホントデスか!」

アタシはビデオの内容も聞かずに即答でOKした。
と言うかその位退屈だった。
それに四葉ちゃんの方は大体予想はつくし・・・

「で、何分くらい?」

時計をチラリと見てみると夕食まで大体後二時間ぐらい。
アタシはビデオがどれくらいの長さかを聞いてみた。

「わたくしのは二時間くらいですね・・・」
「四葉の方はたっぷり二時間の推理モノデス!!」

ああ、四葉ちゃんの方は予想通りだ・・・。
とにかく、片方だけしか見れない訳ね・・・。

「じゃあ、どっち見る?」

アタシがそう聞くと、

「ではわたくしのを・・・」「では四葉のを・・・!!」

鞠絵ちゃんと四葉ちゃんは同時にそう言った。
アタシは鞠絵ちゃんの言葉にちょっとだけ驚いた。
だって、鞠絵ちゃんの事だから「四葉ちゃんの方でよろしいですよ」って言うと思ってたから・・・。

「四葉の方が面白いデスよー!」
「そんな事、見てみなければ分からないと思いますが?」
「デモ・・・」

双方退く気は無いらしい・・・。
またアタシは驚いていた。
今度は鞠絵ちゃんが退かない事に。
鞠絵ちゃんってこんなに積極的だったんだ・・・。
それともそんなに面白いのかな?

「鈴凛ちゃんどっちデスか!?」
「え!?」

考え事をしていたアタシに四葉ちゃんが突然話しかけてきた。

「ですから鈴凛ちゃんが見たい方を見ようと言う事ですから・・・」

どうやらアタシが考え事をしていた時にそう言う話になったらしい。

「えっと、じゃあ・・・」

どっちにしよう。
アタシは鞠絵ちゃんがどんなものを進めてくれたのかが気になるなぁ・・・。
だったら・・・

「鈴凛ちゃん・・・」
「ん?」
「鈴凛ちゃんは四葉の所為でコンナ目に遭ってしまったんデスよ・・・。 だから四葉、鈴凛ちゃんに少しでもツグナイをと・・・」

そう言う四葉ちゃんは少しうつむいて寂しそうな表情をしてた。

「えっ・・・と・・・」

それを見たアタシは少し戸惑ってしまった。

「四葉は・・・四葉は・・・」
「うう・・・」

今にも泣きそうな四葉ちゃんの声・・・
四葉ちゃん、そんな事考えてたんだ・・・

「四葉ちゃん・・・・・・分かりました・・・」

鞠絵ちゃんもそんな四葉ちゃんを見て心動かされた―――

「ジャンケンにしましょう!」

―――りはしなかった。

「チェキッ!? じゃ、ジャンケンデスか!?」

そう聞いた四葉ちゃんは驚いて顔を上げた。

「あ!」

その四葉ちゃんの顔を見てアタシは思わず声を上げた。
だって・・・

「四葉ちゃん・・・ウソ泣きしてたの!?」

・・・という事だ。

「チェキッ! しまったデス!!」
「鈴凛ちゃん、危うく騙されるところでしたね」

鞠絵ちゃんはこっちを向いてニッコリと笑いながらそう言った。
全く、ホントに騙されるところだった・・・












『大変だ! 旦那様が!!』
「チェキッ! 事件デス!!」
「・・・・・・」

・・・けど結局結果は一緒だったりする。
鞠絵ちゃんはジャンケンに負けたのでした。
今、アタシ達は四葉ちゃんの持ってきた推理物の映画を見ている。

『一体誰がこんな事を・・・』
「分かりました、ハンニンはコノ中にいマス」
「・・・・・・」

四葉ちゃんがかなり食い入って見ている反面、鞠絵ちゃんは無言で見ていた。
ちょっと不機嫌そうに・・・。

「アハハ・・・仕方ないよ、鞠絵ちゃん、負けちゃったんだからさ・・・」
「・・・・・・」

鞠絵ちゃんは無言のままそう言ったアタシを横目で見た後また画面に目を向けた。
アタシは軽くため息をついた。

「・・・ねえ、鞠絵ちゃん。 折角なんだからさ、楽しんで見ようよ」
「・・・・・・」

不機嫌そうな鞠絵ちゃんを見兼ねたアタシはそう話し始めた。

「ほら、これだってそれなりに面白いんだしさ、アタシだって退屈しないで済んだんだし」
「・・・・・・」
「それにアタシ・・・・・・そんな鞠絵ちゃん見たくない・・・」
「・・・!」
「ほら、なんでも楽しんだ方が得だよ、だからさ・・・」
「・・・・・・ですよね」
「え?」
「どうせだったら楽しんで見た方が良いに決まってますもの」
「鞠絵ちゃん・・・」
「すみません・・・、嫌な思いをさせてしまって」

そう言って鞠絵ちゃんは不機嫌な顔をやめていつもの顔に戻ってくれた。
鞠絵ちゃんはなんとか機嫌を直してくれたようだ。

「二人とも今なにを話してたんデスか?」
「なんでもありませんよ」

それにしても鞠絵ちゃんがあんなに不機嫌になるなんて珍しいなぁ・・・。
あのビデオ、そんなにアタシに見せたかったのかな?






『つまり犯人はこの中に居る人達の誰かという事になるんですよ!!』
「ムムム・・・いよいよ推理が始まりマス・・・チェキ!」

ビデオもクライマックスに近づいてきて四葉ちゃんは少し興奮している。

『一体誰だと言うんだ!? 早く言いたまえ!!』
『まあ、待って下さい物事には順序というものが・・・』
「そんなの良いから早く言うデス!!」
「・・・・・・」

訂正、すごく興奮している。

「ところで鈴凛ちゃんは誰だと思いマスか?」
「え?」
「四葉の推理では・・・ズバリ、殺された旦那様の奥さんデス!!」

四葉ちゃんは自信たっぷりにそう言った。
誰が犯人か、ねぇ・・・
今までそんなの考えながら見てた訳じゃないからそんなのよく分かんない。

「鞠絵ちゃんはどう思う?」

アタシは鞠絵ちゃんにも話を持っていった。

「・・・ちょっと分かりませんね」

どうやら鞠絵ちゃんも一緒らしい。

「ダメデスね! そんなんじゃあ二人とも名探偵への道のりはまだまだデスよ!!」

そんな事言われてもアタシは名探偵になるつもりはない。
多分、鞠絵ちゃんもそうだろう。

『・・・つまりこれを使えば犯行は可能となる!』

そんな話をしているうちにいよいよ犯人が分かるらしい。
でも“これ”ってどれ?
話してたから分かんなかった。

『そしてそれが出来るのは・・・・奥さん・・・あなただけと言う事になる』
『ええっ!?』「ええっ!?」「チェキッ!?」

画面の“奥さん”と一緒にアタシは驚いた。
四葉ちゃんの推理が見事当たってたからだ。
・・・っていうかなんで四葉ちゃんまで驚いてるの?

「・・・・・・」
「四葉ちゃんの推理・・・当たりましたね・・・」
「・・・アハハハ・・・ハハハハ・・ハハハのハー!! 見てクダサイ! 四葉の言ったとおり犯人は・・・」

鞠絵ちゃんの一言で(何故だか)止まっていた四葉ちゃんは自信満々にそう言い始め―――

『・・・と、犯人は思わせたかった!』
「!! ・・・・・・」

―――再び止まった。






『旦那様が・・・旦那様がいけないんだぁぁぁッ!!』
『例えどんな理由でも・・・人を殺す理由にはなりませんよ・・・』

結局、犯人は執事の人だったらしい。

「・・・・・・」

ちなみに四葉ちゃんは止まったままだったりする。

「四葉ちゃん?」

アタシは止まっている四葉ちゃんに話しかけてみた。

「あのさ・・・」
「・・・クフフフゥ」
「ぅえっ!?」

そしたら突然四葉ちゃんが笑い始めるもんだからビックリしてヘンな声を出してしまった。

「サスガデス! この名探偵の目を欺くとは! やりますね執事さん!!」
「・・・よ、四葉ちゃん?」
「今回は四葉の負けデス! しかぁーしっ! 次は負けマセン! その時は覚悟してくだサーイ!!」

そう言って四葉ちゃんはどっかに行ってしまった。

「・・・“次は負けない”って・・・」
「もう一度見たところで内容が変わる訳ないですから・・・」
「そりゃ負けないけど・・・それってなんかヘンじゃない?」
「ですね・・・」

四葉ちゃんが去った後、残されたアタシ達そんな会話をした。
そんな事には無関係にテレビの画面にはスタッフロールが流れていた。












夕食の時間が来た。

「どうしよう・・・」

そしてアタシは困ってた。

「食べれない・・・」

おはしもスプーンもフォークも握れないこの状況に!
このままでは夕食抜きになってしまう!
そりゃメカの開発に熱中しすぎてごはんを抜いた事はたまに、と言うかしょっちゅうある!
でも、それは空腹に気づかないくらいメカの製作に集中しているからだ!
こう目の前に、しかも美味しそうな夕食を並べられた時とは違う!
しかも今は凄くお腹が空いている!

「はい、鈴凛ちゃん」

今日はお昼ごはんを抜いたからだ!

「あーん、して下さい」

これは拷問だ!

「・・・あーん・・・ムグムグ・・・」

どうにかしないと・・・・・・って、

「ふぁりふぇふぁん?」

口の中に物が入っていてそうなったが“鞠絵ちゃん?”と言ったのだ。

「はい、次です」

そう言う鞠絵ちゃんはおはしで今夜のオカズをアタシに差し出していた。

「え? なんで?」
「なんで、って鈴凛ちゃん両手が使えないんですから食べさせてあげてるんじゃないですか」
「え? え!?」
「はい、あーん」
「え! ええッ!!?」

食べさせてくれるって・・・!
そ、そんな・・・

「鈴凛ちゃん、口を開けて下さい」
「そんな事言われたって、は、恥ずかしいよ!」
「でも、もう一回食べてるじゃないですか」
「え!?」

あ! さっきのアレか・・・

「それに食べさせてあげないと、鈴凛ちゃん、ごはん抜きになりますよ」
「う゛・・・」
「しかも鈴凛ちゃん、お昼は作るのに夢中になって食べていないんですから・・・」

恥ずかしいなんて言ってられない・・・。






「次はどれがいいですか?」
「じゃあニンジン・・・」
「分かりました」

結局、アタシは鞠絵ちゃんに食べさせてもらうしかなかった・・・。

「はい」
「あーん・・・」

ううう・・・やっぱり恥ずかしい・・・。

「うわぁ〜」
「アツアツですね・・・」
「女の子同士で?」
「でも、仕方ありませんし」
「そうだよ・・・そうだけど・・・」
「亞里亞も・・・たべさせてほしいの・・・」
「亞里亞くん・・・・・・あまり甘えるのは・・・・・・いけないね」

みんなの声(上から各敬称略で花穂、可憐、咲耶、春歌、衛、亞里亞、千影)が聞こえる・・・。

「鈴凛ちゃん、姫の料理はどうですか?」
「お、おいしいよ」

味なんて全然分かんないけど・・・

「鈴凛ちゃんをチェキ!」

パシャ

写真に撮んなこの(兄チャマに怒られそうなので削除)!!(怒)

「鈴凛ちゃんと鞠絵ちゃん・・・」

今度はなに言われるんだか・・・

「なんだか新婚さんみたい・・・」


    ブゥゥゥッッ


ひ、雛子ちゃん!?
アンタなんて事を・・・!?
あ、アタシと鞠絵ちゃんが、しし、新婚!!?

「・・・・・・」

そ、そんな・・・そんな事・・・

「鈴凛ちゃん・・・」

ままま鞠絵ちゃんが・・・アタシの・・・

「鈴凛ちゃん・・・あの」
「ナに!!?」

声が裏返ってしまった・・・。

「り〜んり〜んちゃ〜ん」
「へ?」

目の前には顔面ニンジンまみれの咲耶ちゃんがとても怒っている顔でアタシを睨んでた。
えーっと、つまり・・・

「なんて事してくれたのよーっ!!」
「ご、ゴメーン!!」












「はい」
「あーん・・・」

しばらくしてテーブルには(頭にたんこぶをつけた)アタシと鞠絵ちゃんだけになった。
アタシは食べさせてもらっているからどうしても遅くなるし、鞠絵ちゃんはそんなアタシに構ってばかりだからごはんに手も付けていない。
だから他のみんなは既に食べ終わり、二人きりでテーブルに残っているのだ。

「はい、これが最後です」
「うん・・・あーん・・・」

もう最後か・・・。
これで鞠絵ちゃんやっとごはん食べれるな・・・。
でも、誰にも見られてなかったら食べさせてもらうのって・・・結構幸せかも・・・。

「ご苦労様、鞠絵ちゃん」
「いいえ、鈴凛ちゃんの為ですもの・・・」

鞠絵ちゃん、なんてやさしいんだろう・・・。
ああ、でも、もう食べさせてもらうの終わりか・・・。

「では、わたくしの方もいただきますね」

なんか勿体無・・い・・・

「なーーーーーーーーーーーーッ!!!!?!?」
「え!? ど、どうしたんですか!?」
「どどどどどどどどうしたじゃな・・・いイぃッ!!!??」

アタシは驚いた!
力の限り驚いた!!
そんでもって大変な事に気づいた!!!

順序良く説明すると、
鞠絵ちゃんはアタシに食べさせていたおはしのままで自分のごはんを食べ始めたのだ!
もうこの時点でアタシの顔は真っ赤だろうし心臓はバクバク言っていた!
けど!
もっと大変な事に気がついた!!

「あ・・あああ・・・」
「鈴凛ちゃん?」

アタシは今まで“鞠絵ちゃんのおはし”で食べていたのだ!!

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!!!!」

叫んだ。
もう恥ずかしいのと、照れるのと、大変なのと・・・
とにかく色々な感情が一気に溢れ出した!
訳が分からなくなってとにかく叫んだ!

「うるさい!! 今、良いところなんだから静かにしてッ!!」

咲耶ちゃんに怒られた・・・
咲耶ちゃんは居間でテレビを見てたのだった。

「鈴凛ちゃん、どうしたんですか?」

どうしたもなにも、鞠絵ちゃんがとんでもない事を平然とやってるからだ。
「何でそんな事平気でできるの!?」と言おうとしたけど、

「な、で・・そな・・こ・・へ、で・・きの!?」

実際にはこうだった。

「え?」

そりゃ分かんないだろうな・・・。
アタシは一回深呼吸をして言い直した。

「な、何でそんな事平気でできるの!?」

あ、今度は言えた。

「なにが・・・ですか?」
「おおおお、おは・・おは・・おおは・・はし・・はしし」
「おはし? ああ・・・」

今度は震えていたけど伝わったみたいだ。

「別に平気ですよ・・・姉妹ですし」

アタシは平気じゃない!

「だだだだだだって・・・」
「間接キスになるからですか?」
「――――ッ!!」

もう声にならない叫び。
大体それ以上な気がする・・・。
もうアタシの心臓は全力疾走した直後くらいにバクンバクンいっていた。
このままだとアタシの心臓はもたない・・・

「それくらい平気ですよ、だってわたくし達――――」
「あ゛ーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

アタシはもう一回叫んだ!!
鞠絵ちゃんは誰かに聞かれたら物凄くヤバイ
アタシ達だけの秘密を口に出したからだ。

「鈴凛ちゃん! うるさいって言ってるでしょ!!」

また咲耶ちゃんに怒られた。
みんなの様子をからして聞かれてはいない様だ。
アタシはほっと一安心・・・

「鈴凛ちゃん・・・わたくし耳が・・・」

・・・できない!

「ま、鞠絵ちゃん、ゴメンね! あ、アタシ部屋に行くから! それじゃ!」

そう言うとアタシは逃げるように部屋に向かった。
























今は鞠絵ちゃんの顔が見れないくらい恥ずかしかった。
とにかく鞠絵ちゃんから少し離れたかった。

今、アタシは自分の部屋のベッドで寝転んでいた。
部屋には手首を使えばドアノブくらい回せるので一人でも入れた。

「うー・・」

ベッドの上で一人そう声を漏らす。
アタシは今顔が物凄く熱い・・・
絶対真っ赤だ・・・
動悸も滅茶苦茶速い・・・
とにかく今は落ち着きたかった。

何にも考えない様にしようと思うが、そう言う時ほどそう言う事を考えてしまう・・・
それでも別の事を考えようと頑張る。
でも結局・・・

「あーーーーーッ!!」

鞠絵ちゃん・・・アンタは罪な人だ・・・。












    コンコン

しばらくしてアタシの部屋に誰かがやって来た。

「入っていいよ」

    ガチャ

「失礼します・・・」
「・・・って鞠絵ちゃん!?」

それは夕食を食べ終えた鞠絵ちゃんだった。
アタシはやっと落ち着いてきたところだったのに張本人を目の当たりにして再びドキドキし始めた。

「な、なに・・・?」
「鈴凛ちゃん、お風呂」
「へ?」

お風呂?
お風呂って・・・まさか・・・

「一緒に入ろう、とか?」
「・・・そうですけど」

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!??!」

さっきから大声上げてばかりだ・・・。
多分、この調子だと明日にはアタシは喋れなくなる・・・。












「本当に良いんですか?」
「いいよ、いいよ、そこまで面倒掛ける訳にいかないから・・・ハハハ」

結局、アタシは今日お風呂に入らない事にした。
鞠絵ちゃんはアタシが両手を使えないからって一緒に入ろうとしていたけど、そこまで面倒掛ける訳にはいかないから・・・

「でも・・・」
「いいの!!」

それにいくら女の子同士だからってそれはちょっと・・・

「そう・・ですか・・・」
「そうそう・・・アハハ」

そう言う事になってアタシはホッとした・・・
逆に鞠絵ちゃんはちょっと残念そうだった・・・

・・・・・・

・・・なんで?






「それにしてもなんか意外だったよ」
「え?」

アタシと鞠絵ちゃんはベッドの上で並んで座ってそう話し始めた。

「鞠絵ちゃんがそんなに積極的だったなんてさ」
「そうですか?」
「そうだよ、さっきもビデオを見る時だってさ、アタシてっきり四葉ちゃんの方で良いって言うと思ってたのに鞠絵ちゃん譲ろうとしなかったし・・・。
 それにジャンケンで負けて悔しかったんでしょ? なーんか、意外だったよ」
「・・・・・・」
「鞠絵ちゃん?」
「・・・譲りたくなかったんです」
「え?」
「・・・特に四葉ちゃんには」

譲りたくなかった?

「え? どう言う・・・」
「四葉ちゃんには・・・負けたくなかったんです!」
「え? え?」

負けたくない?
アタシは鞠絵ちゃんの言う意味がよく分からなくて少し困惑していた。

「だって・・・四葉ちゃん、鈴凛ちゃんと仲良しですから・・・」
「うん、まあ、そうだけど・・・」
「鈴凛ちゃんを取られたくなかったんです!!」
「ええッ!?」

アタシを取られたくなかった?
それってつまり・・・

「鈴凛ちゃん・・・わたくしは・・・」
「鞠絵ちゃん・・・」

そう言うとアタシと鞠絵ちゃんは顔を向かい合わせにし・・・

「わたくしは・・・」
「鞠絵ちゃん・・・」

そして・・・



「・・・口にケチャップ付いてる」
「え?」

アタシは鞠絵ちゃんの口にケチャップが付いてるのを発見した。

「え、あ! や、やだ・・・そ、そんな・・・」

鞠絵ちゃんは近くにあった鏡で自分の顔を確認すると顔を真っ赤にしてしまった。

「・・・ぷ・・ハハ・・・アハハハ・・!」

アタシはつい笑ってしまった。
それを見た鞠絵ちゃんは更に顔を赤くして恥ずかしそうにアタシの方を見ていた。

「アハハハハハ・・鞠絵ちゃんでもやっぱりそう言う風になるんだね」

どうでも良いけどそのケチャップは夕食の付け合せのスパゲッティのケチャップである。

「り、鈴凛ちゃん!?」
「ゴメン・・ククク・・・笑っちゃ・・ハハ・・ダメだって・・分かってるんだけど・・・ハハハ・・・」

笑いが抑えられない。
でも顔を赤くして恥ずかしそうにしている、
そんな鞠絵ちゃんを結構可愛いと思った・・・。

「もう! 鈴凛ちゃん、笑わないで下さい・・・・」
「ゴメン・・・ほら、ティッシュ、ここ」
「・・・・・・」

鞠絵ちゃんはちょっと不機嫌そうにティッシュに手を伸ばした。
ちょっと笑いすぎたかな?

でも、さっきからアタシの事あんなにドキドキさせたんだから、ちょっとくらいは良いよね・・・

アタシがそう思ってると、鞠絵ちゃんの手がティッシュに触れそうな所で止まった。

「鞠絵ちゃん?」
「鈴凛ちゃん・・・」
「なに?」
「鈴凛ちゃんが・・・取ってくれません?」
「・・・へ?」
「鈴凛ちゃんにケチャップを拭ってほしいんです」
「なに言ってるの? アタシはこの通り両手が使えない・・・」
「だから・・・代わりに使えるところで拭ってほしいんです」
「へ?」

代わりに使えるところ?
足かな?
いや、そんな失礼な事できる訳ない!
第一アタシは自慢じゃないがそんなに身体が柔くない!

・・・って事は・・・、

「もしかして・・・」
「お願いします・・・」
「!!!!」

そう言うと鞠絵ちゃんはアタシの方を向いて目を瞑り思いっきり顔を近付けて来た。
代わりに使えるところ、つまり・・・

「く、口でしろって事!?」

鞠絵ちゃんは顔を赤くしたまま何も言わずコクリと頷いた・・・。
く、口でするって事は・・・
つまり・・・その・・・
あわわわわわわわわわわわわわ・・・・・・

「・・・・・・今更恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか」

なかなか行動に出ないアタシに鞠絵ちゃんはいったん体勢を崩して話しかけてきた。

「だ、だって・・・」
「さっきも言ったじゃないですか・・・わたくし達、間接キスどころか何回も直接キスしてるんですから、って」
「う、あ! え、いや・・・それは・・そうだけど・・・」

そう、鞠絵ちゃんの言うとおりアタシ達は隠れてキスしている・・・。
女の子同士なのに・・・
姉妹なのに・・・
それがさっき言ってたアタシ達だけの秘密・・・。

「それとも・・・本当は気持ち悪いと思ってたんですか・・・?」
「そんな事絶対ない!!」
「・・・だったら」

そう言って鞠絵ちゃんはまたさっきの体勢に戻った。

「う・・・」

でも鞠絵ちゃん・・・
恥ずかしいのはいつまで経っても変わらないんだよ・・・
だから・・・

「鈴凛ちゃん・・・」

未だ行動に出ないアタシに鞠絵ちゃんはとうとう悲しそうな声でアタシの名前を呼んだ・・・

・・・・・・

鞠絵ちゃん・・・不安にさせちゃってゴメンね・・・。
アタシは覚悟を決めた・・・






アタシはゆっくりと鞠絵ちゃんの唇に自分の唇を重ねた・・・
























    『鈴凛ちゃんの恋愛対象は男の子デスか? 女の子デスか?』











キスしてる最中・・・四葉ちゃんの言葉を思い出した・・・。

四葉ちゃん・・・
これは四葉ちゃんには教えられないけど・・・
アタシの恋愛対象はね・・・






実は“女の子”なんだよ・・・。
























「では次の質問デス!」
「はいはい・・・」

数日後、既にケガの治ってるアタシは新しいメカを作っていた。
ついでに言うと四葉ちゃんのチェキにまた付き合ってる。
前回、中断したからその続きらしい。

「質問79、今、鈴凛ちゃんの欲しい物は?」
「研究資金」
「ナルホド・・・予想通りデスね」

ケガの間にでもしてくれればいい暇つぶしになったと思うのになんでかは知らないけどしてこなかった。
ちなみに今回は質問69から始まった。

「質問80、鈴凛ちゃんは四葉の事を好きデスか?」
「・・・・・・それってどっちの意味で?」
「チェキ?」
「だから『ライク』か、『ラブ』か、どっちなのかって聞いてるの」
「ヂェギッ!!?!?」

アタシにその台詞に四葉ちゃんは顔を崩してかなり驚いてた。
それにしても『ヂェギ』って・・・

「そ、そんなの『ライク』に決まってるじゃないデスか!? な、なにを言ってるんデスか!? 女の子同士で!!」
「そうだよね」
「当たり前デス! 女の子同士で『ラブ』だなんて・・・そんな事ある訳ないデス!」
「・・・・・・そうとも限らないんだよね・・・」
「何か言いましたか?」
「別に・・・って言うか、そう思うならなんで恋愛対象が男か女かなんて聞いてきたの?」
「あ、アレはちょっとしたジョークデス」
「ふーん・・・」

お陰でアタシは大変な目に遭ったけど・・・。

大体、アタシ、あの質問には正直に答えられないし・・・。

「で、四葉の事は好きなんデスか?」
「うん、好きだよ」
「そうデスか、それは嬉しいデス・・・」

そう言って四葉ちゃんはちょっと照れていた。

「こんなもんかな・・・」
「ところで今回は何を作ってるんデスか?」
「春歌ちゃんの修行相手」
「・・・チェキ?」
「どうしたの?」
「いえ・・・鈴凛ちゃんの事デスからてっきり両手が使えなくても安心君1号とかデモ作るのかと思ってマシタから・・・」
「へー、四葉ちゃん意外と鋭いね」

って言うか、ある意味大当たり。

「チェキ?」
「実はそれを作ろうかと思ってたけど止めたんだ」
「なんでデスか?」
「秘密」
「なんでデスかッ!?」

なんでって・・・

『それを作っちゃったら、またあんな事になった時もう鞠絵ちゃんに甘えられなくなるからだよ・・・』

・・・なんて言えないからだよ。






「ひょっとして鞠絵ちゃんにもう甘えられなくなるからデスか?」
「・・ぅええぇッ!!?」

    ガンッ

「チェキ!」

・・・・・・。

やっぱり作ろう・・・。





あとがき

“〜ました”シリーズ 第3弾。
自分的には・・・・・・失敗したかも・・・(汗)
なんだか“〜ました”シリーズの鞠絵の性格が違う気がしてきました・・・。
ついでに言うと続編としても一話完結としても中途半端な出来な気がする・・・。
内容も・・・もうこれ以上悪い方向に考えたくないです!
こんなものでも楽しめる人は居るんでしょうか?


更新履歴

H15・6/11:完成
H15・6/12:修正
H15・6/19:一ヶ所だけ修正
H15・7/24:またまた修正
H15・8/6:更に修正
H15・10/22:更にまた修正


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