「鈴凛ちゃん、ちょっといいですか?」

アタシがラボで新しいメカの設計図を描いていると、
鞠絵ちゃんがアタシの所までやって来てそう言った。

「なに?」

アタシは手を止めて鞠絵ちゃんの方を見た。

「あ、続けてて構いませんよ」
「そう?」

アタシは再び机と向かい合うと、描きかけの設計図に再びペンを走らせ始めた。

「ちょっとお願いがありまして・・・」
「お願い?」
「はい、実は昨日、四葉ちゃんに写真に撮られてしまって・・・。
 それで鈴凛ちゃん、四葉ちゃんと仲良しですから、その写真を処分してもらうように頼んで欲しいんです・・・」

鞠絵ちゃんは少し困った声でそう言った。
まったく、四葉ちゃんはなんでもかんでも写真に撮るんだから・・・。

「別にいいけど・・・四葉ちゃんがいいって言うかなぁ?」

アタシは設計図にペンを走らせながらそう答えた。

「でも、そうしてもらわないと少し困りますね・・・」

鞠絵ちゃんの声はまだちょっと困った感じがした。

「わかった、鞠絵ちゃんの頼みだからね、アタシがなんとかしてみるよ」
「本当ですか!?」

そう言う鞠絵ちゃんの声は元気が戻ったような感じだった。
やっぱり鞠絵ちゃんは元気な方が良い。

「まあ、できるところまでだけどね・・・。 それでどんなところを写真に撮られたの?」
「鈴凛ちゃんとキスしているところです」
「そう、アタシとキスしてるとこ・・・・・・って、ええぇっ!!!?」

驚いたアタシは設計図に要らない直線を一つ加えてしまった・・・。












写真をとられました














「ままままままままままままま鞠絵ちゃん!!」
「“ま”が多いです」
「も、もう一回言って・・・!」

アタシは椅子から立ち上がり鞠絵ちゃんの両肩を掴んでもう一度聞きなおす事にした。
き、きっと聞き違いだ・・・!
そうに決まってる・・・。

「ですから・・・」
「うんうん・・・!」
「鈴凛ちゃんと・・・」
「アタシと・・・!」
「わたくしが・・・」
「鞠絵ちゃんが・・・!」






「キスしているところです」


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


「なぁぁぁぁあああああーーーーーーーーーー!!?!!?!??!?」






「なんで!? どうして!? いつ!? どこで!? 誰が!? なんの為に!? どうやって!? ・・・」
「り、鈴凛ちゃん・・・少し落ち着いて・・・」
「え・・・あ、うん・・・」

そ、そうだ・・・と、とにかく落ち着こう・・・。

えーっと、なんだっけ?
ああ、そうそう・・・アタシと鞠絵ちゃんがキスしてるところを四葉ちゃんに写真で撮られた・・・

「・・・って、それって大変な事じゃないの!!!」
「ええ・・・、だから少し困ってるんです・・・」
「全ッ然、少しじゃないって!!」

あわわわわわ・・・
アタシと鞠絵ちゃんがよりによってそんな事しているトコを・・・

「それっていつ気づいたのさ!?」
「昨日している時ですよ」

してる時って・・・

「それって撮られてたの知ってたって事!?」
「はい」
「なんですぐ言わないの!!?」
「だって・・・昨日の鈴凛ちゃん・・・積極的・・でしたから・・・。 ・・・その・・・堪能したくて・・・」

鞠絵ちゃんは顔を赤くして少し照れながらそう言った。

「あ゛・・・」

そうだった・・・

昨日アタシは、
今まで上手くいかなかったメカの製作がやっと成功して、
それで浮かれて、
鞠絵ちゃんに報告して、
それで一緒に喜んでもらって・・・
それが更に嬉しかったから・・・
つい・・・



    『じゃあご褒美、頂戴・・・』
    『え? あ・・・鈴凛・・ちゃ・・・』
    『鞠絵ちゃん・・・』
    『・・ん・・っ―――』
    『・・・・・・』
    『・・・・・・』



「わああああああああああ・・・!!」

それか!?
それを撮られたのかッ!?
四葉ちゃんにッッ!!?

「どうしましょう?」
「どうにかしないとヤバイって!!!」
「ですよね・・・」

だってアタシと鞠絵ちゃんがあんな事してるなんて・・・、
女の子同士で・・・
しかも姉妹で・・・
なのにあんな事してるって・・・!
そんなのバレたら・・・

・・・・・・

いや、少なくとも四葉ちゃんにはもうバレた・・・

ああああああ・・・。
それで今朝、挨拶した時四葉ちゃんの様子がおかしかったのか・・・。
・・・いや、この場合おかしいのはアタシ達の方なんだろうけど・・・。

「と、とにかく! 四葉ちゃんのトコ行こう!」
「でも・・・」
「でも、なに!?」
「四葉ちゃん・・・わたくしの事、避けてるみたいなんです・・・」

そりゃあね・・・。

「ですから鈴凛ちゃんにお願いしたんですけど・・・」
「・・・って言うかアタシも同じ様な感じなんだけど・・・」
「でも、こんな事他の誰かに言う訳にも・・・」
「いかないね。 って言うか、いかないよ! って言うか、いかれたら困るって!!」
「ですから、お願いしますね」
「う゛ー・・・」
「大丈夫ですよ、鈴凛ちゃんと四葉ちゃんは仲良しなんですから・・・」
「でも、これは・・・」
「本当・・・仲良しなんですから・・・」
「?」
「・・・仲良し・・・なんですから・・・」
「ま、鞠絵ちゃん!?」
「・・・わたくし・・・なんかより・・・」
「ちょ・・、鞠絵ちゃん!!?」
「うっ・・うっ・・」
「わー、泣かないでー!」
























結局、アタシは今、一人で四葉ちゃんの部屋の前に来た。

「・・・・・・」

とにかく、一刻も早く写真を処分しなくちゃ。
仮に四葉ちゃんが、アタシと鞠絵ちゃんがあんな事してるって言いふらしたとしても、
四葉ちゃんの言葉だけじゃあ多分誰も信じない。
だけど写真という決定的証拠がある以上・・・非常にヤバイ・・・!
そうでなくても写真を他の誰かに見られでもしたら・・・

「・・・・・・」

・・・考えたくない。
・・・って言うか既に考えたくない状況は始まっている・・・。

とにかく四葉ちゃんと話をしなきゃ何にも始まらない・・・。

「・・・・・・」

何にも始まらないけど・・・

「・・・どうすれって言うの?」

四葉ちゃんには間違いなく見られている・・・!
写真に収めているんだから・・・
それに今朝の行動からも・・・

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

「あー! もう! 考えるより先に動こう!!」

ここでどうこう考えても状況は変わらない。
アタシは意を決して四葉ちゃんの部屋をノックした。

    コンッコンッ

「ハイデス」

部屋の中から四葉ちゃんの声が聞こえてきた。

「誰デスか?」
「あ、アタシ。 鈴凛よ!」
「ヂェギィィッッ!?!!?」

うわ〜、露骨に驚いてる・・・。

「ななななな、なんデスか・・・?」
「ちょ、ちょっと話があるの! 入るよ!」

そう言ってアタシは四葉ちゃんの部屋に入った。

この時、アタシの心臓は物凄い速さで全身に血液を送っていた・・・






「「・・・・・・」」

沈黙

「「・・・・・・」」

それだけがこの空間を支配していた・・・。

ちなみにアタシが入って来た時、ドアはキチンと閉めた。
こんな話、他の誰かに聞かれる訳にはいかないから。

「・・・な・・なんの用・・・デスか?」

先に口を開いたのは四葉ちゃんだった。

「・・・え・・っと・・・しゃ、写真!」
「・・・!!」

写真と聞いて四葉ちゃんは少し反応した。

「その・・・撮った・・んだよね?」
「・・・な、なんのデスか・・?」

やっぱり・・・四葉ちゃんもあんまり触れたくないみたいらしい。

「あ、アタシと・・・」

アタシもそうだけど・・・

「アタシと鞠絵ちゃんが・・・」

・・・言わなきゃ進まない。

「!!」

鞠絵ちゃんの名前が出たところで四葉ちゃんはかなり反応した。

「・・その・・・
(ボソボソ)・・してるトコ・・」
「な、なんデスって?」
「だ、だから・・・
(ボソボソ)・・してるトコ・・」
「よ、よく聞こえまセン・・・」

四葉ちゃんは多分、アタシが何を言いたいのか気づいてる。
でも、あんまり聞きたくないみたいだ。
アタシもあんまり言いたくない・・・。

でも、やっぱり言わなきゃ進まないし・・・

「だからアタシと鞠絵ちゃんがキスしてるトコ、写真に撮ったんでしょ!?」
「チェキッ!!」

ああ、よく言ったアタシ!
アタシはちょっとした達成感を味わっていた。
まあ、問題はこれからなんだけど・・・。

「ど、どうなの!?」

強気に言っているけど内心ドキドキ。
ついでに顔は真っ赤だろう。
ちなみに四葉ちゃんの顔は真っ赤になっている。

「・・・・・・」
「四葉ちゃん!」
「・・・ハイデス・・・」

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

ハッ!
いけない、いけない、それ聞いて一瞬意識が遠のいた・・・。

「その・・・四葉知りませんデシた・・・」

あ、四葉ちゃんがなんか言ってる。

「お二人が・・・そんな関係デシたなんて・・・」

うー・・・。
やっぱりね、やっぱりそう言うよね・・・。
そんな関係だって言うよね・・・。
そんな関け―――

「え・・・?」
「チェキ?」

“そんな関係”?



“そんな関係”って・・・・・・どんな関係?



「・・・鈴凛ちゃん?」

アタシと鞠絵ちゃんの関係ってなんなの?

「あの・・・鈴凛ちゃん?」

女の子同士で、姉妹で、あんな事してる・・・。

だけどアタシも鞠絵ちゃんも・・・、

「鈴凛ちゃーん」

まだ一言も・・・“好き”って・・・言ってない・・・。

「もしもーし・・・」

あんな事してるからもうそんな気でいたけど・・・
実際はどうなの?

「り〜んり〜んちゃ〜ん」

“好き”って言ってないって事は・・・
もしかしたら・・・

ヤダ・・・分かんなくなってきた・・・。

「鈴り・・・え!?」

アタシ達の関係が・・・。
鞠絵ちゃんの気持ちが・・・。

「り、鈴凛ちゃん!?」

アタシ達って一体・・・

「どど、どうしたんデスか!!?」
「え・・・?」

そんな事を考えていたアタシは慌てる四葉ちゃんの声で現実に引き戻された。

「だ、大丈夫デスか!!?」
「大丈夫って・・・え?」

そしてその時、アタシの頬には涙が伝っていて・・・

「あ、あれ? な、なんで・・・?」
「鈴凛ちゃん・・・一体、何が・・・?」

そしてアタシの胸には・・・

「なんで・・こ、んな・ぁ・・・うっ・・・ぁっ・・・」
「え!? あ・・・り、鈴凛ちゃん!?」
「うあぁぁぁぁぁ・・・・」

はちきれそうなくらいの不安が溢れ出てきた・・・。





「大丈夫デスか?」
「・・・うっ・・くっ・・・ゴメンね・・・心配かけちゃって・・・」

突然泣き出してしまったアタシを四葉ちゃんは優しく落ち着かせてくれた。

「一体、どうしたんデスか?」
「アタシ・・・怖くなったの・・・」
「え?」
「本当は鞠絵ちゃん・・・、アタシの事、そんなに好きじゃないんじゃないかって・・思って・・・」
「鈴凛ちゃん・・・」

アタシはまだ震えが残るような声で四葉ちゃんに泣いてしまった理由を話し始めた。

鞠絵ちゃんは本当はアタシの事なんて・・・
そう考えたら怖くなったって・・・。
だから泣いちゃったって・・・。

「鈴凛ちゃん・・・、鈴凛ちゃんは、鞠絵ちゃんの事をどう思っているんデスか?」
「・・・アタシは・・・」

アタシの想い・・・?

「アタシは・・・鞠絵ちゃんの事・・・」

そんなの決まっている・・・

「・・・好きだよ・・・大好き・・・」

それがあってる事か間違ってる事かなんて関係ない・・・

「どうしょうも無いくらい・・・鞠絵ちゃんが・・好き・・・」

この想いは本物だから・・・。

「鈴凛ちゃん・・・」
「ヘンだよね・・・アタシ・・・」

でも、そんなの関係ないってアタシはそう思ってる・・・。
だけど鞠絵ちゃんは・・・

「・・・大丈夫デスよ!」
「え?」

四葉ちゃんは自信たっぷりにそう言った。

「大丈夫だなんて・・・、どうしてそんな事言えるの!?」
「四葉も鈴凛ちゃんの事がスキだからデス!」
「・・・・・・・・・・・・へ?」

四葉ちゃんもアタシの事が好き?

「あ、もちろん『ライク』方デスよ」
「でも、それとこれとなんの関係が・・・?」
「四葉だけじゃアリマセン・・・他のみんなも鈴凛ちゃんの事がスキデスよ。 ・・・もちろん鞠絵ちゃんも・・・」
「・・・・・・」
「鈴凛ちゃんはスゴイ人なんデスよ。 誰もマネできないようなスゴイメカを作って、それでみんなを楽しませてくれてマス!」
「でも・・・アタシ失敗ばっかだし・・・迷惑掛けてるし・・・」
「でもそれ以上にみんなの事を喜ばせてくれマス! そんな鈴凛ちゃんをスキにならない訳が無いんデス!」
「でも・・・アタシ達のやってる事は普通じゃないんだよ・・・!
 アタシの好きも・・・その好きとは違うんだよ・・・! だから鞠絵ちゃん・・・本当は・・・」
「鞠絵ちゃんはそんな人じゃアリマセン!!」
「でも・・!!」
「だったらこの写真を見て下サイ!」
「これは・・・?」

四葉ちゃんはポケットからある写真を取り出した。
そしてそれは、昨日のアタシと鞠絵ちゃんがキスしてた時の写真だった。

「この写真の鞠絵ちゃん・・・とても嬉しそうデス・・・」
「え・・・」
「鞠絵ちゃんも鈴凛ちゃんの事がスキに決まってマス! 鈴凛ちゃんと同じくらいに!
 じゃないとコンナ嬉しそうな顔、できるはずアリマセン!」

写真の鞠絵ちゃんは照れながら恥ずかしそうにアタシと重なって写ってた。
でも・・・とても嬉しそうに・・・そんな風に見える。

「そもそもそうでもない相手とコンナ事は出来ません!
 確かに女の子同士でそんな感情はオカシイかもしれませんが・・・
 でも、鞠絵ちゃんも鈴凛ちゃんの事がダイスキに決まってるデス!
 四葉が保証しマス!!」
「四葉ちゃん・・・」
「鈴凛ちゃん・・・自信を持ってくだサイ」

アタシは、普段神様とかそう言うのは信じてないけど・・・。
でも、もし居たら・・・感謝したいって思った・・・。

「・・・ありがとう」

四葉ちゃんと姉妹でいられた事を・・・。
四葉ちゃんに出逢わせてくれた事を・・・。












「鈴凛ちゃん・・・落ち着きマシタか・・・?」
「うん・・・」

アタシはしばらく四葉ちゃんの部屋で気持ちが落ち着くのを待っていた。
結構長い間居座っちゃったけど、お陰でだいぶ落ち着く事ができた。

「ねえ、四葉ちゃん・・・」
「なんデスか?」
「アタシ・・・今から鞠絵ちゃんのとこ行くね」
「!」
「それできちんと言うの・・・“好きだ”って・・・」
「・・・そうデスね・・・それがいいデス」
「ありがとう・・・四葉ちゃん・・・」
「いいえ・・・大親友の鈴凛ちゃんが困っていたんデス。 助けるのは当然の事デス」

大親友・・・か・・・。

アタシは四葉ちゃんのその言葉が凄く嬉しかった・・・。
アタシは鞠絵ちゃんのところに向かおうと部屋を出る事にした。

「あ! 鈴凛ちゃん・・・!」
「え、なに?」

部屋を出ようとするアタシに突然四葉ちゃんが話しかけてきた。

「この写真は処分しておきマス・・・。 誰かに見られたら大変デスから・・・。 デジカメからもデータを消しておきマスね・・・」

そう言えばそれが目的だったっけ・・・。
忘れてたや・・・。

「鈴凛ちゃん・・・頑張って下サイ! 四葉、応援してマスから!」
「うん・・・ありがとう・・・」
























アタシは、今度は鞠絵ちゃんの部屋の前に立っていた。
アタシの心臓は、さっきみたく物凄い速さで全身に血液を送っていた。

「・・・・・・」

正直、鞠絵ちゃんの気持ちを確かめるのは怖い・・・。
鞠絵ちゃん、やっぱり本当はアタシの事・・・



    『鞠絵ちゃんも鈴凛ちゃんの事がダイスキに決まってるデス!』


    『四葉が保証しマス!!』


    『鈴凛ちゃん・・・自信を持ってくだサイ』



そうだよね・・・
四葉ちゃんが保証してくれてるんだ。
自信を持つんだ、アタシ!

「・・・よし」

アタシは一人頷いてから鞠絵ちゃんの部屋をノックした。












「写真・・・どうでしたか?」
「処分してくれるみたい・・・」

アタシが鞠絵ちゃんの部屋に入った後、アタシ達は取り敢えずそんな会話から始まった。

「そうですか、それはよかったです」

アタシの言葉を聞いて鞠絵ちゃんはホッとした様子だった。
アタシは・・・まだ少し戸惑っていた。
不安がまた溢れ出て来る様な感じだった。
でも・・・それでも・・・四葉ちゃんの言ってくれた言葉を思い出して・・・

「鞠絵ちゃん・・・!」

アタシは鞠絵ちゃんの気持ちを確かめる事にした。

「なんですか?」

大丈夫・・・四葉ちゃんが保証してくれてるんだ・・・!

「あのさ、アタシ達の関係って―「恋人同士」―一体な・・・へッ!?」

・・・・・・。

・・・タイミングを逃した。
そんな感じだった。





鞠絵ちゃんも同じ気持ちだったんだ!!
・・・って、喜ぶところなんだろうけど・・・
アタシはあまりの即答に呆気に取られてた。

「恋人同士・・・ですよね?」
「あ、いや、その・・・」

嬉しいよ!
嬉しいけど・・・
なに? このアッサリ「恋人同士」って・・・

そんなにアッサリと言われるとあんなに不安で一杯だったアタシの立場は!?
一人で勝手に悩んで!
勝手に不安がって!
そんでとうとう泣き出しちゃったって言うのに!
なんかアタシ一人バカみたいじゃないの!?

「え? わたくしはそう思っていましたけど・・・」
「え、あ・・いや・・・」
「だって鈴凛ちゃん、わたくしがあんな事しても別に嫌がる感じもしないですし、それに最近は鈴凛ちゃんの方からそう言う事をしてくれますから・・・。
 え? 違うんですか?」
「なんて言うか、その・・・」

ちなみに、ここで言う“あんな事”、“そう言う事”とはつまり・・・き、キスの事よ! 誤解しないでね!!

「じゃあ、鈴凛ちゃんはやっぱり四葉ちゃんとも・・・!?」
「え?」
「わたくしとだけだと思っていたのに・・・」

そう言うと鞠絵ちゃんはかなり落ち込んだ様子になってしまった。
“四葉ちゃんとも”、“わたくしとだけ”って・・・

「え!? あ!! ち、違う!! そんな事無い!! 鞠絵ちゃんとだけだよ!!」
「・・・本当ですか?」
「ホントホント!」

アタシがそう言うと鞠絵ちゃんは少し元気が戻った。

「じゃあなんでそんな事聞くんですか?」
「え?」
「わたくし達の関係・・・」

鞠絵ちゃんは少し心配そうな様子でアタシの質問の意味を聞いてきた。

「それは・・・だってアタシ達まだ・・・一言も“好き”って・・・言ってないじゃない・・・」
「え!?」

それを聞いた鞠絵ちゃんは少し真剣な顔をして少し考え込んでしまった。
しばらく経ってから鞠絵ちゃんは何かを思い出したような表情をしてこう言った。

「ああ、そういえば言ってませんでしたね」
「そう言えばって・・・」
「すみません、わたくしてっきりもう言ったつもりでいました」

・・・ずいぶんと軽い気がするのはアタシだけか?
だったらあんなに悩んだアタシの立場は・・・

「そうですね、じゃあ良い機会ですし、ここでキチンと言っておきましょうか」

・・・・・・

・・・もう考えないどこう。






「鈴凛ちゃん、わたくしは・・・」
「待って!」
「え?」

突然アタシが止めたもんだから鞠絵ちゃんはちょっと驚いていた。

「あの、一体・・・?」
「ゴメンね・・・。 ・・・でも、アタシから言わせて!」

さっき決めたんだ・・・
鞠絵ちゃんに“好きだ”って言うって。
だから・・・

「アタシから言いたいの・・・ダメかな?」

アタシのこのちょっとしたワガママに鞠絵ちゃんは少し考えた後、

「ええ、構いませんよ」

笑顔で答えてくれた。






「・・・鞠絵ちゃん」
「はい」

いざ言うとなるとちょっとだけ照れる。

「アタシ達・・・女の子同士で、しかも姉妹だけど・・・」

でも・・・なんか嬉しい・・・。

「だけどアタシは鞠絵ちゃんの事が・・・」

全然不安じゃないのは答えが分かってるかな・・・?

「鞠絵ちゃんの事が好きです」

だけど・・・それでも“好き”って言うのは・・・
やっぱりドキドキするよ・・・。

「アタシの・・・恋人になって下さい・・・」






「はい、よろこんで・・・」






この瞬間、アタシ達、正真正銘の恋人同士になりました・・・。
























「じゃあ結局上手くいったんデスね?」
「まあね」

アタシは今、四葉ちゃんの部屋で鞠絵ちゃんとの事を四葉ちゃんに報告してる。
あんなに世話になったんだからそうするべきだと思った。

「ところでさ・・・」
「チェキ?」
「四葉ちゃん、アタシの事ヘンに思わないの?」
「思ってマスよ」


    ガスッ


「・・・痛いデス」

アタシは四葉ちゃんの脳天唐竹割りをかました。
要するに頭に手刀を叩き込んだ訳だ。

「だってそうじゃないんデスか!?」
「そりゃそうだけど・・・」

そうハッキリ言われるとムカつく・・・。

「でもさ、別に避けたり、ヘンな目で見たりする様子も無いし・・・」

最初はそうだったけど、今はもうそんな事無い。

「それはデスね、鈴凛ちゃんが本気だったからデスよ」
「本気だったから?」
「そうデス、それを見てたら四葉はそんな事関係ないと思いマシタ」
「四葉ちゃん・・・」
「例え鈴凛ちゃんが同性愛に目覚めたヘンタイさんでも、姉妹で愛しあうイジョウな人でも・・・」


    ガスッ


「・・・痛いデス」
「そう言う言い方やめて・・・!」

アタシは再び四葉ちゃんに脳天唐竹割りをかました。

「・・・とにかく、四葉は応援したいと思いました!」
「四葉ちゃん・・・」

この時アタシはもう一度、四葉ちゃんと姉妹でいられてよかった、って思った・・・












「まあ、とにかくこの事は誰にも言っちゃダメだからね!」
「・・・・・・」
「・・・なんでそこで黙るの?」
「アハハハハ・・・」
「答えろ・・・」
「鈴凛ちゃん・・・怖いデス」
「写真は処分するって言ってたじゃない!! デジカメのデータも消すって!!」
「しゃ、写真は処分しマシタ! デジカメの方もデータを消して・・・」
「じゃあなんで今、黙ったの?」
「それは・・・」
「もしかして・・・、もう誰かに見せちゃったとか・・・?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「アハハハハ・・・」
「答えろ・・・」
「り、鈴凛ちゃん、その顔本気で怖いデス・・・」
「こっちにとっては一大事なんだって!!」
「だ、大丈夫デス・・・まだ誰にも見せてマセン・・・」
「ホント? ・・・ならいいんだけど・・・」

全く、四葉ちゃんったら思わせぶりな事するからアタシてっきり・・・。
もし、ここで見せたって言ったら、アタシきっと四葉ちゃんの頭に脳天唐竹割りをもう一撃・・・―――

「・・・・・・
花穂ちゃん以外には・・・」


    ドガッ


「チェキィッ!!」

―――・・・喰らわせた。





あとがき

“〜ました”シリーズ 第4弾!!
・・・“ほのラブ”だったか?
書いててシリアスっぽくなってビックリしました。
“〜ました”シリーズは一話完結として見れるようにも作りたかったのですが、
この話からほとんど続編っぽくになってしまいました・・・。
“〜ました”シリーズは今後、より前作の影響が出る予定なので、
ますます一話完結として見れなくなります・・・。
ちなみにこの話、本当は『写真をとられてしまいました』と言うタイトルだったのですが、
なんか色々あってコンパクトな『写真をとられました』の形となりました。


更新履歴

H15・6/18:完成
H15・6/20:脱字を一文字だけ追加したらしい
H15・7/24:また修正
H15・8/6:またまた修正
H15・8/11:更に修正
H15・8/16:また更に修正
H15・8/21:懲りずに微修正
H15・10/22:懲りずにまた修正


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