さて……


「がんばりなよ……四葉ちゃん」


 公園から家に戻るなり、アタシたちはすぐさま別れた。
 四葉ちゃんは……花穂ちゃんの部屋へ。
 そしてアタシは、自分のラボへ向かって、


『ザッ……ザ、ザザッ……ザーーーーーッ……』


 四葉ちゃんにつけた盗聴器の周波数を合わせていたりする。

 やー、やっぱ親友としては、事の行く末が気になるわけでして。
 それに普段、四葉ちゃんにはアタシのこっ恥ずかしいプライベートを覗かれてるんだから、
 逆に覗かれる立場に回されようとも、それは因果応報というヤツである。
 ちなみにいつ付けたかというと、「じゃあ行ってきなよ」の時である。ほら、千影ちゃんが登場する直前の。


「鈴凛ちゃん……周波数合いましたか?」

「…………」


 ……更にちなみに、鞠絵ちゃんと一緒に、である。













 

ふえました

その3 −解決しました−














 本当はアタシひとりで鑑賞するつもりだったけれど、アタシの行動などお見通しなのか、
 アタシがラボに入ってすぐラボにやって来て、「四葉ちゃんたちの実況中継一緒に聞いていいですか?」だなんて……。


 鞠絵ちゃんだってほら、四葉ちゃんのチェキの被害者で、だからこれも因果の流れのひとつかなと……。
 大体アタシのこっ恥ずかしいプライベートがチェキられてたら、ほとんど一緒に鞠絵ちゃんのも覗かれてるワケで……
 それに鞠絵ちゃんは花穂ちゃん側からの相談依頼を受けてるから、最後まで見届ける権利があるっていうか……
 だから今のアタシが鞠絵ちゃんの誘いを断れるわけないじゃないのっ!!


「でも意外だったな。鞠絵ちゃんが四葉ちゃんのこと応援するなんて」


 機械の丸いツマミを回して、周波数をチューニングしながら、鞠絵ちゃんへと話しかける。
 手は労働に汗水たらしているけど、口の方は贅沢にも退屈しているので、鞠絵ちゃんとのお喋りに雇うことにしたのだ。


「なにが、ですか?」

「だって鞠絵ちゃん、四葉ちゃんのこと……その、あんまりよく思ってないでしょ?」

「ええ、鈴凛ちゃんを取って行っちゃいますから」


 さらりと口にする。
 口調に抑揚がなかった分、余計に負の感情が醸し出されている……ように感じた……。
 色んな意味で衝撃的だったため、思考が完全にフリーズ。
 ツマミを微調整していた手は、思いっきり回し過ぎてしまい、機械からはザーッとノイズだけが流れ出た。
 途切れたアタシの思考からもザーッとノイズが流れる放送事故が発生中。


「あ、あはは……やっぱ?」


 思考と表情を取り繕って、今の発言を冗談で済ました。というか済まさせた、是が非でも。
 鞠絵ちゃんは優しい子です。
 マリエちゃんはヤサしいコです。
 鞠絵チャンハ優シイ子デス。


「でもだからさ、四葉ちゃんのために協力するなんて、ちょっと意外かなって」


 鞠絵ちゃんが手助けしたのは花穂ちゃんの方だけど、結果的に見れば、四葉ちゃんの手助けをしていることになる。
 まあ、口では悪く言ってても、鞠絵ちゃんが優しい子だってことなのよ。
 うん、間違いない。間違いないです。


「え? だって、花穂ちゃんが四葉ちゃんの相手をしていてくれれば、わたくしが鈴凛ちゃんを独占できるじゃないですか?」

「…………」


 ……なるほど、きちんと裏があったワケですか……。
 優しさと思わせつつ、実は自分のためとは、ちゃっかりしてらっしゃる。
 イメージがしゃーん。
 そういえばそうだった……鞠絵ちゃんは、意外とちゃっかりものだということを、アタシは知っている。


「でもそーいう素直な鞠絵ちゃんって、アタシ好きだよ」

「えっ!?」


 理想を取り繕うつも……ではなく、からかうつもりで言う。
 そんな軽い意味での言葉だったのだけど……鞠絵ちゃんは、ボッと、顔から火が出んばかりに、アタシの「好き」に反応してしまった。


「え? あ! いや、えと……」


 その反応に、アタシもハッとしたように自分の発言の意味に気づき、つられて真っ赤になってしまう。
 どうにも、冗談が冗談で終わらなかったせいで、照れくさい空気が漂ってしまった……。


「鈴凛ちゃんのお陰ですから……」

「え?」

「素直なわたくしでいられるのは……」


 赤く染まる顔で、アタシを更にドキドキさせる口説き文句が炸裂。
 お陰でアタシの中のドキドキは更に肥大。頭が一気に沸騰しそう……。
 言ってて、鞠絵ちゃんも更にドキドキしたらしい。顔が更に赤く染まっていて……かわいかった……。
 四葉ちゃんたちがうまく行くかの瀬戸際のドキドキの他に、別のドキドキがラボの中を埋めてしまった。
 ……アタシってなんて自己チュー薄情モノなんだろう。
 もじもじと、指で「の」の字を書く代わりに、一生懸命チューニングのツマミを回して、一生懸命気を紛らわそうとした。


「ねぇ……なんであの時、アタシのキスしたの?」

「はい……?」

「ファーストデートの……ファーストキスの時……」


 ドキドキが埋め尽くした空気と、さっき四葉ちゃんに話した思い出話。
 そのふたつが重なったのがきっかけなのかしら……。
 不意に、その時のことが疑問に変わって、湧き上がってきたの。


「あんなウソまでついて……っていってもエイプリルフールだったからウソついたのは別に良いんだけど……。
 それ抜きにしたって……キス、しちゃったんだよ? アタシに……姉妹の、女の子に……」


 言っててやっぱり恥ずかしくなった……けど、ドキドキついでで勢いで聞いてしまう。
 そりゃアタシ相手だったら、きっと冗談で済ませられると思う。
 「軽く試しにやってみよっか」とか「女の子同士はノーカウントだから」みたいなノリで。
 自分でもそういうキャラクターしてるって思うし、当時はまさにキスや「初めて」にこだわりなんてなかったから。
 今は……もう「鞠絵ちゃん以外の誰かとは絶対したくない」ってこだわりができちゃってる……。

 でも鞠絵ちゃんは……絶対そういうことを大切にするタイプだと思う。女の子同士でも、無視することなんてできずに。
 今でこそこんな関係だけど、普通に考えて「恋に成り立たない相手」、「ライクで止まってしまう関係」に、
 大事な……大事な初めてのキスを、使ってしまったんだ。
 いくら好きだからって―――……あ、ここではライクの方ね。―――そんなに大切なものを……真剣なものを、
 アタシなんかに捧げてしまうなんて……信じられないし、不思議でもあった。
 まあ、そんなの、アタシの勝手な鞠絵ちゃんのイメージってだけで、実際は違うのかもしれない。
 現に今だってイメージがっしゃーんだし。
 だからこそかもしれない、聞きたくなった。


「……逃げたく、なかったんです……」

「……? 逃げたくなかった?」

「だって……―――」

『ザザッ……―――や……よ……―――ザザッ……』

「あ……はじまっちゃったみたい……」


 どうやら鞠絵ちゃんとの話が盛り上がっている間に、四葉ちゃんたちの会話が始まってしまったみたい。
 今わずかに聞き取れた舌っ足らずな声は、恐らく花穂ちゃんのものと推測される。
 鞠絵ちゃんとの話は気になるけれど、それは中断して、
 今だけ生中継ライブの四葉ちゃん一世一代の大舞台へ、ふたりして耳を傾けた。


『その……花穂ちゃ…―――……ザザッ―――エエト……四葉……』


 まだちょっとノイズの入る機械の周波数を、更に微調整。
 調整を進めるごとに、更にハッキリと聞こえてくるふたりの声。


『えっ……?! 花穂ちゃ……』

『…………たくない……』



 チューニングが合うと、市販のものよりも断然クリアに聞こえてくる。
 内容がとても聞き取り易くなって、思わず自己陶酔に陥ってしまいそう。
 さすがアタシの作ったメカ、感度が違うわ。


『離れたくない……離れたくないよっ!!』

『でも四葉、花穂ちゃんのタイセツ、ダメにしちゃって……!!』



 機械越しのふたりの声は、鮮明に流れてくる。


『だって花穂、すごく嬉しかったよ! その……ヘンな意味はなくて……四葉ちゃんが助けてくれたのは、事実だもん!!』


 その言葉の奥の、心の形まで……横から奪ってしまうくらい……。罪深いほどに……。


「…………」


 真剣なふたりの声を耳にして、こんな盗み聞きするような自分に、罪の意識が芽生え始めた。
 もともと盗聴なんて犯罪だけど……いくら親友だからって、
 いくら普段の仕返しだからって……今日のこの真剣な場面では、とても不謹慎なものに感じた。
 ふたりの声は、依然機械から流れてくる。けれど、アタシの耳にはもう、なにも入っていなかった。
 これ以上は……聞けない。聞くことなんてできない、聞いちゃいけないんだ!

 鞠絵ちゃんには悪いけど……ここは、四葉ちゃんとの友情を守りたい。
 だからアタシは、機械のスイッチを切ろうと、おもむろに手を差し伸べた。


「「……あ」」


 そこで、ふたり同時に、同じ想いで差し伸べた手が、重なった。
 お互い、ドキッとして、赤くなった顔を合わせてしまう。


「あはっ! なによ……あんなに乗り気だったクセにぃ」

「鈴凛ちゃんの方こそ……主犯のクセに……うふふっ」


 なんだ……結局ふたりの心はひとつってコトみたいね……。
 向かい合わせた顔で、にっこりと笑いあう。
 そうしてから、特に口裏を合わせた訳でもないのに、ふたり一緒に、重ねたままの手で機械のスイッチをオフにした。


『デモっ、よつ―――ザザーッ…………プツッ―――』


 さっきまで音を発していた機械がその機能を止めると、他に音の出るものはなく、防音の効いたラボの中はとても静かだった。
 スイッチを切った後も、重ねたままのふたりの手。
 言葉なしに通じ合うふたりの繋がった心の象徴のよう。

 鞠絵ちゃんのぬくもりを感じて、鞠絵ちゃんとの絆も感じて、それがどうしようもなく幸せに感じて……。
 こんな幸せな思い、四葉ちゃんにもして欲しいな、なんて思って……ガラにもなくまた祈った。
 こういう時だけ信じてもいないカミサマに頼るなんて、えらく都合が良いヤツかもしれないけど、それでも良いから祈らせてもらった。
 四葉ちゃんが、うまくいくことを。

 アタシと同じじゃなくて良いから。
 恋じゃなくても良いから。
 アタシの時以上の探偵団で良いから。
 だから……ふたりの仲が今までみたいに、今まで以上に仲良しになれることを、祈っています……。























「四葉ちゃーん、アタシの部屋のデジカメ持ってったー?」


 数日後。
 アタシは、家の中を四葉ちゃんの名前を口にしながら家の廊下を歩いていた。

 なぜかというと……まずアタシは、色々あった四葉ちゃんへの激励にと、愛用していたデジカメの改造を請け負ったのだ。
 しかも、友情割引としてタダで。そう、タダで。タ・ダ・で。
 ただ……肝心の改造中のブツは、学校から帰ってきた途端行方不明に。
 一応使える状態にはなっているので、せっかちな四葉ちゃんが無断で部屋入って持ってっちゃったんではないかと、元・探偵団助手のアタシは推理。
 という訳でアタシ、現在四葉ちゃんの捜索中なのである。


「ったく……あの焼肉娘め……」


 などと、なかなか見つからないことにちょいとばかし腹が立って、彼女にとってトラウマめいたあだ名で小さく愚痴ってしまう。
 折角、学校帰りに電気街に寄って、パワーアップ用の部品取り揃えてきてやったってのに、
 改造してあげる相手のせいでそれが滞ってるんだから、愚痴のひとつも言いたくなる。
 というか、勝手に人の部屋に入って、無断で持っていくって言うのはどうなのかしら?
 まあ、今までのチェキから比べれば、その程度大したことじゃないか……。

 あの日、四葉ちゃんから花穂ちゃんとどうなったか、アタシは聞いていない。
 あえて聞くようなことはしなかった。
 ただ……離れたくない、そう望んでいたふたりだから、きっと……


「四葉ちゃーん、よーつーばーちゃーんっ」


 更に声を張り上げて呼びかけてみるも、返事は来ない。
 真っ先に四葉ちゃんの部屋へ向かったのだけど、彼女は自室には居なかった。
 でも玄関に靴はあったし、無駄にカモフラージュしていない限り家の中に居るはず……。
 こんだけ声を張り上げて、聞こえていないってことはないはず。
 いや、あの子の思考回路はたまに解析不明だから、可能性はなくはないけど……。
 あんまり大声を張り上げてると、そろそろ我が家の最高権力を保持している長女に怒られてしまう。


「うるさいわよっ! 鈴凛ちゃん!」


 ……手遅れでした。
 よくよく見てみたら、今アタシが居るのは咲耶ちゃんの部屋の前でした。
 こりゃさすがに怒られるか。ちくしょう。


「うるさいのー」


 …………。
 なぜか亞里亞ちゃんにまで怒られてしまう。
 ってかなぜ亞里亞ちゃんの声が咲耶ちゃんの部屋から出てくるのだろうか?


「ボクもうるさいと思うよっ! 鈴凛ちゃん!」

「…………」


 また咲耶ちゃんの部屋から……ああ、もうワケ分わかんねぇ。
 ってか、体育会系の鍛えられた腹筋から出される元気ハツラツな声の方が、より大きく、うるさく感じたわよ。
 いや、まあ、そんなきかんぼうな屁理屈、八つ当たりは置いておいて……。
 そっか、(なんでかはサッパリ分からないけど)亞里亞ちゃん、衛ちゃん同様、他の誰かの部屋に居るのかもしれないか。
 他の誰か、チェキ甲斐のある人の部屋(に無断進入)か、もしかしたら……。
 思い立つなり、一番に心当たりのある部屋へと足を進める。
 到着するなり、ドアを開け、探し人がいないか、部屋主へと問いかけた。


「花穂ちゃーん。四葉ちゃん、お邪魔してなーい?」


 ……うん、まあね、アタシもね、デジカメばかりに頭がいってたとか、うっかりノック忘れちゃったとか、悪い点は認めます。ごめんなさい。
 開けたドアから飛び込んできた映像は、なんと言いますか……ちょっとタイミングが悪かったというか、プライバシーを覗き見てしまったというか。
 お陰さまで、硬直。一時的に言葉を失ってしまった。


「…………。あー……お邪魔したのはアタシの方だったかしら?」


 真っ赤な顔で、グッと目をつぶる花穂ちゃんに、四葉ちゃんはうす目で顔をゆっくり近づけて……
 俗に言う、「キスシーン」の真っ最中のおふたり。


「……はっ!?」

「……ふぇ!?」


 アタシの存在に遅れて気がつく四葉ちゃん花穂ちゃん。
 近づく顔が、触れ合う寸前でストップ。
 顔を向かい合わせたまま、目だけをアタシに向けて、今度はふたりが硬直。


「ぎゃわわわわデス〜〜〜っっ!?」

「ふぁえぇぇぇ〜〜〜っっ!?」



 そして一拍の後、ゆでだこみたいにオーバーヒートして、あわてて距離を取り合うおふたりさん。
 しかし、時既に遅し。
 アタシは、ふたりの行為を、未遂とはいえバッチシ見てしまったワケで……。


「……まあ……うまくいっていたようで、親友としてもアネキとしても嬉しいわ」

「ち、ち、ち、違うんデス! こここ、これはナンといいマスか……べ、別に四葉、花穂ちゃんとはソーイウ関係になったワケじゃなくて!!」

「そ、そうなの! 別に花穂たちお付き合いするって決めた訳じゃないの!!」


 必死で自分たちの関係を否定するも、百聞は一見にしかずとはよく言ったもの。
 この目で現場を見てしまったのだから、百の言葉の説得性なんてあったもんじゃない。
 なんか言葉の使い方違うけど、よーするにそーいうコト。


「いやー、早速アツアツでおねーさん嬉しいやら恥ずかしいやら」

「誤解デス! ってか絶対誤解してマス! ……ア〜、誤解されるようなコトしてたのは認めマスケド……」

「でも違うの! これ実験なの! 調査なの! チェキなの! そ、そうだよね? ね!?」

「That's rightデス、花穂ちゃん! 
 そーなんデス! これはコーキシンとタンキューシンからくる実験、と言いマスか……
 その……じ、ジンセー経験のためなんデス! 調査のためデス!
 将来立派な名探偵を目指す身としては、やっぱイロイロな経験や調査の積み重ねが必要だと思いまして……」

「うんうん!!」

「四葉たち……キ…………しちゃったことはしちゃってるんデスけど……ど、ドンナだったかお互いよく覚えてなくて……」

「えと……それで1回しちゃってるんだから、もう1回しても変わらないかな……? って、花穂が言って……」

「そーデスそーデス!!」


 お互いがお互いの言葉を補い合って、一生懸命アタシに誤解を解こうとする。
 四葉ちゃんの言葉を補助する花穂ちゃんは、見事に助手の役目を果たせていた。
 それだけ、ベストパートナーになりつつある花穂ちゃんに、元・助手としては、ちょっと嫉妬しちゃうかな……。


「アタシの経験上、少なくとも"好き"じゃないと自分からキスできないわよ〜」

「ウ……。そ、そりゃ……好きなのは認めマス……認めますケド! ら、ら、らら、ラブじゃないデス!!」

「そうなのそうなの! まだラブじゃないの!」

「まだ、ってことはそのうちゴールインするつもりなのね……そりゃあおめでたいわ〜」

「ふぇぇぇぇ!?!??」

「ちちちち違いマス違いマス違いマスーッ!!」


 ふたりの言いたいことを察しつつも、わざとからかった解釈をしたように返した。
 アタシ命名・ドジっ娘同盟のふたりだ、精一杯のフォローの言葉を言っても、ますます泥沼に陥ってしまう。
 というか、面白いからと、分かってるクセにわざと泥沼になるように受け取るアタシが原因なんだけど。
 予想通りオロオロするふたりの様子は、見ていて本当に楽しかった。我ながらなかなか良い趣味している。


「だーかーらーっ、そーいう意味はナイんデスー! 本当なんデスー!!
 チェキのための体当たり取材で、気持ちワルいの我慢して……」

「そうなのそうなのそうなの! 気持ち悪いのガマンし…………あ……そ…そうなんだ……。
 ……気持ち悪い、んだ……。……そう、だよね……」

「ああアアああァっっ!? ちちち違っ!? 好きデス! 好きデスよ!!
 四葉、花穂ちゃんのコト好きデス! だから……」

「わぁお 熱烈プロポーズぅ〜」

「ぎゃワアああああぁぁああッッ?!?!?!」


 落ち込む花穂ちゃんとからかうアタシに挟まれて、サンドイッチ状態の四葉ちゃん。
 どっちをとっても、四葉ちゃん的によろしくない方向へ転げてしまう、まさに底なし沼状態。
 オロオロしたり慌しかったりする、そんな彼女の様子を見て……ふと、「ああ、いつも通りに戻ったんだ」と気がついた。
 そしたらなんだか嬉しくて、ついつい笑いがこぼれてしまった。


「ぷっ……、あははっ……!」

「ムーっ! 鈴凛ちゃん、ナニ笑ってるんデスか!!」

「いやいや。別にー」


 あの日の答えを……アタシは聞いていない。
 でもそれは、まだできあがっていないから。

 本人たちさえも、その答えが友情、姉妹、パートナー、恋愛……どの意味での「上手くいった」なのか分からないから。
 だってそれは、これから作られていくものだから。
 まだ見えない、未来へと作られていく絆だから。
 それでもハッキリしたことは……どんな形でも、ふたりがうまく行くという、確信めいた予感があるってこと。

 とりあえず、神様。信じていないけど神様。
 報告です。この度、我が家にヘンタイさんが増えました。……いや、まだ候補か。
 四葉ちゃんたちがこれからどうなるか分かりませんが……不信心なアタシのおねがい、聞いてくれてありがと。
 アタシの親友に幸せな結末をくれて、どうもありがとうございました。

 もし今度、鞠絵ちゃんと神社に行くようなことがあったらその時は、
 せめてもの感謝のお礼に、お賽銭の資金援助、させていただきますね……。




























おまけ


「おめでとうございます、花穂ちゃん」

「う、うん……。鞠絵ちゃんのお陰でうまくいったよ……。その……別に鞠絵ちゃんたちみたいな関係じゃ、ないんだけど……」

「本当に良かったですね……。四葉ちゃんと、今まで以上に仲良しさんになれて」

「いや、だから……まだそういう関係じゃなくて……えと、分かってるんだよね?」

「うふふっ……。花穂ちゃん、お幸せに……」

「だから花穂たちまだ……うん、でもありがとう」

「今度、わたくしたちとダブルデートでもしませんか……? うふふっ……

「だ、だからぁ……!」

「花穂ちゃん……これからも四葉ちゃんのお相手、おねがいしますね……

「……ねぇ。気のせいか鞠絵ちゃん、ちょっとテンション高く見えるよぉ……」











あとがき

まりりんほのらぶストーリー "〜ました"シリーズの第10弾!
とうとうなのか、やっとなのか、このシリーズも3年以上掛けて10作目を迎えることができました!
前回「そんなに間を置かずアップさせる」とあとがきで公言しておきながら、結局はいつものローペースでしたが……(汗

さて、構想3年、3部構成、第3カプ発生の怒涛の展開!
実はシリーズ開始当時から、この展開まで計画済みでした、前回のおまけを含めて。
なので、前回の衛へのサービスが多めだったのはこのためです(笑
今回鞠絵の出番は少なめですが、メインカプ以外にもスポットライトの当たるような、
こんな話もあるべきと考えついてから、長い年月を経てやっと具現化です。
ネタが思いついても、書き上げるまでには時間が掛かるということをしみじみ思い知らされます……。
それでも、メインはまりりんなので、一応ほんのりらぶらぶしています(笑

作中、真面目な話をしている最中にネタを織り交ぜてしまいましたが、
シリアスならシリアスなままで通して欲しいと考える方もいると思うので、やや不安が残りますが……
個人的には本当の本当に真面目な時以外、シリアスにボケを織り交ぜるのが乙だと感じているので、そのまま突っ走りました(苦笑

基本的に鈍行進行、話数が進むたびに書式などの変化が目に見えて分かるシリーズですが(苦笑)、
新戦力も加えますますカオスに続けていくつもりですので、待っていてくれる方、ゆっくりのんびりとお願いします。
あ、ちなみに、いつになるかは分かりませんが、よつかほサイドの話も、もちろん書く気でいますので、あしからず。


更新履歴

H18・7/5:3話目掲載・完成


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