「咲耶ちゃん。今日はありがとう」

これは夢だ・・・。

「いいわよお礼なんて。私も楽しかったから」

私はすぐにそうだという事が分かった。

「? どうしたの、そんな顔して?」
「だって・・・もう咲耶ちゃんとお別れしなきゃいけないんだもん・・・」

ああ、これは先週、彼女と一緒に出かけた時の夢だ・・・。

「可憐、もっと咲耶ちゃんと一緒に居たかったな・・・」
「可憐ちゃん・・・」

それは私も同じだった・・・だから・・・。

「・・・ねえ、可憐ちゃん。来週も予定空いてる?」
「えっ?」
「もしよかったら・・・来週も一緒に出かけない?」
「本当ですか!?」

そして、この後彼女は笑顔でこう言ってくれた・・・。

「もちろんです!」






でも・・・もう彼女は私に微笑んでくれる事は無い・・・。












涙の理由














「私って最低・・・」

夢から覚めた私の第一声だった・・・。
彼女の事を思い出すと次に“あの事”を思い出す。
そしてその度にそう呟く。
もう口癖になっているかもしれない。
その位言ったと思う。

私が今のが夢だと分かったのには理由がある。
彼女が私に向かって笑ってくれたからだ。

「そんな事・・・もう無いのに・・・」

そう、そんな事はもう無い。
だって彼女はもう私の事なんて嫌いになっているはずだから。
でも夢の中で彼女の笑った顔が見れたのは嬉しかった。
現実ではもう見ることはできないから・・・






私には11人も妹が居る。
事情があって一緒には住んでいないが、みんな会おうと思えば何時でも会いに行ける。
もっとも予定が合えばの話だけど・・・。
彼女は、可憐は私にとってその11人いる妹の内の一人だ。
ピアノが上手でちょっぴり甘えん坊で健気な女の子。
私は11人の妹の中で特に彼女とよく会っていた。
ほとんど彼女から会いに来ることが多かったが私も嫌ではなかった。
いえ、寧ろ私自身彼女に会うのが楽しみだった。
いつの間にか彼女と居るととても嬉しく思えるようになっていた。
特別に何かをする訳ではない。
ただ一緒に居るだけでそう思えた。

どうしてそう思うのだろう・・・。

いつもそう思っていた。
そして、それが分かったのはつい最近・・・三日前の事だった。
それと同時に・・・



私は・・・



彼女に取り返しのつかない事をしてしまった・・・・・・
























「パーティー?」
『そうなの。四葉ちゃん達が来て丁度一年がたつでしょ?
  だからその記念にって・・・咲耶ちゃん、明後日、大丈夫?』
「えっと、もっと詳しく聞かせて」

五日前、彼女から電話がかかってきた。
四葉ちゃん達が来た記念日のパーティーをするというものだった。

「・・・ええ、大丈夫よ。
  まあ、少し遅れるかもしれないけど」
『本当!?』
「ええ、他のみんなは?」
『他のみんなも可憐も大丈夫です』
「そう」

私は、「もう一年か・・・」なんて少ししみじみしていた。

『ふふふ』

すると突然彼女は笑い始めた。

「可憐ちゃん? どうしたの、突然笑ったりなんかして?」

不思議に思った私はその事を彼女に聞いてみる事にした。

『えっ、だってまた咲耶ちゃんに会えるんだもん』
「へっ?」

さらに不思議に思う私を他所に彼女はそのまま次のように続けた。

『それに今週は土曜日にも咲耶ちゃんに会えるし。
  そう思ったら思わず笑いがこぼれちゃいました』
「な、なんで?」

私には彼女の答えた意味が良く分からなかった。
そして彼女はこう答えた。

『だって可憐、咲耶ちゃんに会えるだけで嬉しいから』
「!!」

その言葉を聞いた私は顔を真っ赤にして何も言えなくなってしまった。

「・・・・・・」
『? 咲耶ちゃん?』。
「も、もう、何言ってるのよ! と、とにかくもう切るわよ!」

このまま、まともに話せるとは思えなかったので私は電話を切る事にした。

『えっ、あ、うん』
「じゃあ、おやすみ!」
『あ、はい、おやすみなさい』

     ピッ

「もう、可憐ちゃんったら・・・一体何考えてるのかしら」

私は電話を切るとそう呟いた。
でも悪い気はしない、寧ろ嬉しいくらいだ。
そう考えながら私はベッドに横になった。



    『咲耶ちゃんに会えるだけで嬉しいから』



ベッドに横になるとさっきの電話越しに聞いた彼女の言葉を思い出した。
すると、まだ赤みの残ってるだろう顔がさらに赤みを増した気がした。

「もう、何考えてるのよ私は・・・」

自分で自分にツッコミを入れる。

「会えて嬉しいのは私の方よ・・・」

そう呟きながら私は目を瞑りそのまま夢の中に入って行った。












そして、パーティーの日がやって来た。

その日は平日だったので学校はいつも通りある。
だからパーティーは夕方に集まってみんなで準備してから行おうというものだった。

「お待たせ、みんな」

私は学校で用事があったため少し遅れてパーティー会場である千影の家に着いた。
ちなみに始めは亞里亞ちゃんの家でやるつもりだったらしいが今日は都合が悪いらしい。
そこで広い上に家の人に文句を言われることが無い千影の家になったと言う訳だ。

「もー、咲耶ちゃん遅いよ!」
「そうデス、遅刻デスよ!」

遅れてやってきた私に鈴凛ちゃんと四葉ちゃんが文句を言ってきた。
みんなは既に揃っていたので私が最後という事になる。

私が来る前から準備は進んでいた様で、
一時間位で準備は全て終わりパーティーを始める事ができた。

パーティーはとても楽しいものだった。
白雪ちゃんと春歌ちゃんが作った料理をみんなで食べたり、
みんなそれぞれ特技を披露し合ったり、
結局みんな好き勝手はしゃいで、
パーティーと言うより宴会みたいでとても楽しかった。

「咲耶ちゃん!」

パーティーが始まってから一時間位たって私は突然誰かに声を掛けられた。
いえ、誰かは声で分かった。

「なに、可憐ちゃん?」
「あの、さっきの演奏、どうでしたか?」

“さっきの演奏”と言うのはみんなで特技を披露し合った時に可憐ちゃんがやったピアノ演奏の事だ。

「とても良かったわよ」
「本当!?」
「本当よ、素敵な演奏だったわ」
「可憐・・・可憐とても嬉しいです」

彼女はとても素敵な笑顔を私に向けて来た・・・。



・・・その時、不意にその笑顔に「ドキッ」とした・・・。



(えっ?)

不思議な感じがした。

(・・・なに、今の・・・)

今まで彼女に感じていたモノとは違う感じ・・・。

「・・・・ゃん・・・ちゃん・・・」

違う、今まで彼女に感じていたモノが“それ”に変わった感じがした・・・。

「・・・やちゃん、さくやちゃん・・」

一体・・・

「咲耶ちゃん!」
「えっ、あっ、な、なに?」

私は彼女の声で急に現実に引き戻された。

「あの、咲耶ちゃんが急にぼーっとしたから・・・その」
「えっ、ええ、ごめんなさい・・・」
「その、大丈夫・・・ですか?」
「大丈夫よ・・・」

とは言ったものの、私自身はそうは思ってなかった。
体の奥から熱くなっていく感じがしていたからだ。

「咲耶ちゃん、どこに行くんですか?」
「ちょっとのぼせたみたい、風に当たって来るわ」

そう言うと私は庭へ向かった。












「何だったの、今の・・・」

外に出ると私はさっきの事を考えた。

「私、可憐ちゃんに・・・ドキッとした・・・」

不思議な感じだった・・・。

「もしかして私・・・可憐ちゃんの事・・・」

・・・・・・

「あははははは・・・、まさかそんな・・・」

そうだ、有り得ない。
それが“答え”で有るはずがない。

「だって私と可憐ちゃんは・・・」
「可憐と咲耶ちゃんがどうかしましたか?」
「!! 可憐ちゃん!?」

驚いた・・・突然後ろに今私を悩ませた張本人が来たのだから。

「あ、あの、どうしました!?」
「ななな、な、なんでも・・・ない・・・なんでも・・・あははは・・・」

何で私は動揺しているんだろう。

「そう・・・ですか?」

そう言う彼女はかなり不思議そうな顔をしていた。
と言う事は今の私はよっぽど動揺を見せているのだろう。

「そ、それで、どうしたの?」

話をそらすため単純に疑問に思った事を聞いてみた。

「あの、お水・・・持ってきたんですけど」
「水?」
「のぼせた、って言ってたから・・・、
  その・・・これでお体冷やしてもらおうと・・・・・・迷惑・・・でしたか?」
「そんな事ないわ!」

つい大声を上げてしまった。
彼女が自分を責めようとしているのを見たくなかったため焦って声を出したからだ。

「あっ、ごめんなさい。つい・・・」

でも、なんで・・・
妹だから?
そうよ、きっとそうに違いない・・・

「お水、貰っていいかしら?」
「あっ、はい」

そう言って彼女は私にコップを手渡してくれた。

「あっ・・・」

受け取る時、不意に「もし手が触れ合ったら」なんて考えてしまった。

「・・・? 咲耶ちゃん?」

実際には手は触れ合わなかった
だけど、私はそれを期待していた・・・

「飲まないんですか?」
「え? え、いえ、今飲むわ」

そう言うと私は今考えていた事を振り払うかのようにコップの水を一気に飲んだ。











その後しばらく、私達はそのまま何もせず黙って立っていた。
何もせずにただ黙って一緒に居る・・・。
それだけなのに私はとても嬉しかった・・・。
でも理由は分からない・・・。
それに、何故だか今は前よりも嬉しいと感じている・・・。
ますます分からない・・・。
私はさっきまで自分が感じていた事、思っていた事も含めその事について考えていた。


可憐ちゃんの笑顔に「ドキッ」とした事。
可憐ちゃんが来た時に動揺して始めた事。
可憐ちゃんが自分を責めようとしているのを見たくなかった事。
可憐ちゃんと手が触れ合ったらなんて考えてしまった事。


何でそう感じたんだろう?
何でそう思ったんだろう?

何でこんなに・・・嬉しいんだろう?

そんな事を考えていたら可憐ちゃんが突然話し掛けて来た。

「ねぇ、咲耶ちゃん・・・」
「え、な、なに?」

突然話し掛けられたので少し驚いてしまった。
だけど・・・

「キス・・・したことありますか?」

彼女の次の台詞の方がもっと驚いた。



「なな、な、何でそんな事!!?」

何とか声を絞り出して聞いた。

「ご、ごめんなさい! 可憐、変な事聞いちゃって!」

可憐ちゃんの顔を見ると耳の先まで真っ赤になっていた。

「あの・・・昨日見たドラマで・・その・・・そう言うシーンがあって・・・、
それ見たら・・・あの・・咲耶ちゃんは如何なのかな・・・って、思って・・・その・・・」
「わ、私が!?」

突然の事に私ははっきり言ってパニック寸前だった。

・・・キス・・・

それは女の子にとってとても大切なもの・・・。
でも今の私にはあまり関係ないと思っていた・・・。
だって、相手がいなかったから・・・。
したいと思える相手が・・・―――



―――えっ!?



(今、私・・・何を・・・)
「だって、咲耶ちゃん・・・綺麗だし・・・かっこいいし・・・素敵だし・・・・」

可憐ちゃんの話はほとんど耳に入ってなかった。
私は今“本来望まない事”・・・いえ“望んではいけない事”を望んでしまったからだ。
それはさっき否定した“答え”に繋がっていた。

(そんなはず・・・有り得ない・・・有り得ないわ!!)

もし“否定した答え”が“答え”だとすれば私が抱いていた疑問はすべて解決した。
でも、それを肯定する訳には行かない。
頭の中で必死に否定する。
頭の中で他の答えを探してみる。
しかし、“否定した答え”以外の“答え”では“答え”になりはしない。

「どうなんですか・・・咲耶ちゃん?」
「えっ!?」

私は急に現実に引き戻された。

「聞いてなかったんですか?」

助かったと思った。

「え、ええ、ごめんなさい・・・」

あのままでは“否定した答え”を否定できなくなりそうだったから。

「もう一度言ってくれる?」

今考えていた事から離れよう。
そう思って可憐ちゃんとの会話をしなおした―――

「だからその・・・咲耶ちゃんは・・もう・・・しちゃったのかなって、 ・・・あの・・ふぁ、ファースト・・キス・・・」

―――のは間違いだった・・・。

「なっ!?」

だって可憐ちゃんの話を聞いて今考えていた事を考えてしまったのだから・・・。



「咲耶ちゃん?」

頭の中ではさっきの続きが始まった。
このままでは“否定した答え”を肯定してしまう。
だから単純に疑問に思ったことを聞いて早く頭を切り替えようと思った・・・

「可憐ちゃんはどうなの?」
「可憐ですか!?」

でも既に、私はまともに考えられなくなっていた。

「可憐は・・・その・・・まだした事・・ないです・・・」

それは逆に引き金となり―――

「・・・けど! ・・・その・・“大好きな人と”って・・決めてるから・・・」

それを聞いた時私は私の中で何かが壊れたのを感じた・・・



“ファーストキスは大好きな人と”
女の子なら誰でも持っている様な願望だ。
可憐ちゃんもそうだっただけなんだ。
そう、大好きな“男の人”と・・・



「可憐ちゃん・・・」

この時私は何を考えていたか覚えていない・・・。

「なんですか?」

でも、何を言ったか、何をやったかはハッキリと覚えている・・・。

「私のファーストキスはね・・」
「えっ?」
「みんなで集まってパーティーをした時にね」

私は淡々とした口調で話を始めた。

「ちょっとのぼせちゃってね、それで外に風に当りに行って」
「あ、やっぱり・・あるんだ・・・」
「その時その人がベランダまで水を持ってきてくれてね」
「えっ?」
「そのままその人とキスについて話していた時に・・・」
「あの、咲耶ちゃん、何だかそれ今の可憐達みたいですね」
「そうよ・・・」
「えっ?」

私は可憐ちゃんの両肩を掴んで可憐ちゃんを私と向かい合わせにし、

「だって・・・」
「あの、咲耶・・ちゃん?」

そのまま彼女の体を引き寄せ―――

「これがそうなんだから」
「えっ!? 咲っ・・・ぅむっ・・」

―――無理矢理可憐ちゃんの唇を奪った・・・。
























    ガシャーーーン

「あっ・・・」

また“あの事”を考えていた。
お陰でコップを落として割ってしまった。
割れたコップを見ながら私はこう呟いた

「私って最低・・・」

何であんな事をしたのか・・・・・・答えは簡単だ。
私は可憐ちゃんの事が好きだったからだ。
ただしそれは“妹”としてではなく“恋愛感情を抱いた相手”として・・・。
そしてそれは私が必死に否定した“答え”だ。

今なら分かる・・・

あの日、彼女の笑顔に「ドキッ」とした時、
今まで彼女に感じていた“好き”が“恋愛感情”に変わった・・・
いいや、そうじゃない!
それは既に“恋愛感情”だったんだ!
いつからそうなったのかは分からない・・・。
ただ彼女に会うたび“それ”は心の奥に溜まっていって・・・
あの時爆発しただけなんだ・・・。
だから彼女に感じていたモノが変わったのではなく、
それが突然大きくなったため別のモノに見えただけだ・・・。



だからあの時彼女の笑顔に「ドキッ」とした・・・

だからあの時彼女と手が触れ合ったらなんて考えた・・・

だからいつも彼女と居るととても嬉しく思えた・・・


そして・・・



だからあの時、彼女にキスしたいと望んだ・・・



「馬鹿じゃないの・・・?」

自分で自分にそう言った・・・

「妹に恋愛感情を抱くなんて・・・」


“大好きな人と”って・・決めてるから


彼女の声が焼きついて離れない・・・

ファーストキスを大好きな“男の人”に捧げたい。
そう思うのは女の子なら誰でも持っている様な願望だ。
“女”である私はその候補にすらなれない。
だからあの時嫉妬した。
居るかどうかも分からない彼女の“大好きな人”に。
そして堪らなく嫌だった。
彼女が自分以外の相手とキスするのが。
だから無理矢理奪った・・・


「・・・私って・・・」

 ファーストキスを大好きな人に捧げれた時、

「・・・ほんと・・・」

 それがどんなに嬉しい事なのか、どんなに幸せな事なのかを私は理解した・・・

「最低よ・・・!」

 可憐ちゃんのファーストキスを犠牲にして・・・。












割れたコップからこぼれた水を見て前に国語の授業で聞いた事を思い出していた・・・
“こぼれた水はもう元には戻らない”
まさに今の自分がそうだ。






あの日あの後私は逃げるように家に帰った。
いや、事実逃げたんだ。
みんなには用を思い出したとでも言っていたと思う。

唇を奪った時、彼女は自分に何が起こっているのか分からなかったのか何もして来なかった。
私は彼女に抵抗されるのが・・・拒絶されるのが怖くて彼女が何かをする前に唇を離した。
そして彼女の顔も見ずにその場から離れた・・・。
見なかったんじゃない、見れなかった・・・!

どんな顔をしていたのだろう・・・
私が同性にあんな事をする人間なのか、と非難する顔だろうか?
それともファーストキスを同性に奪われた事による絶望の顔だろうか?

少なくとも私が望む顔ではない。

彼女は私の事を嫌いになっているはずだ。
認めたくない・・・でも、間違いない。
私は彼女にとってとても大切なものを奪ったんだから・・・。



今日は約束の土曜日
本当は彼女と出かけるはずだった。
少し前まではあんなに楽しみにしてたのに・・・
あの日が来るまではあんなに楽しみにしてたのに・・・。

     ピンポーン

玄関のチャイムが鳴った。

「誰かしら・・・?」

どうせ、宅配便か何かだろう。
とりあえず出ない訳にはいかないので私は玄関に向かった。
その時ふと目に入った時計の針は10時を少し過ぎたところだ。
あんな事しなければ彼女が家に来るはずの時間だ。

「もしかして・・・」

私は少しだけそうである事を期待してしまった。
でもそんな事は有り得ない・・・
そうだと分かっているはずなのにそれを期待している自分に嫌気がさした。

「・・・馬鹿じゃないの?」

だからまた自分で自分にそう言った・・・

「そんなはず・・・」

有る訳ない。












「咲耶ちゃん!」






そう・・・思ってた・・・。












「か・・れん・・・ちゃん・・・?」

夢かと思った。
幻かと思った。
でもすぐにそれが現実だと分かった。

「あの、咲耶・・ちゃん。あの・・えっと・・・その・・・」
「何で・・・!?」

そう聞いて後悔した。
決まっている。
私に直接“あの事”について話に来たんだろうから。

「? 何でって・・・」

お願い、言わないで・・・!
貴女からは聞きたくない・・・!
他の誰から言われても構わない・・・!
貴女でなければ『変態』だろうが『異常者』だろうが何を言われても構わない・・・!
でも、貴女から『嫌い』だなんて言われたら・・・私は・・・!












「一緒に出かけようって言ったのは咲耶ちゃんじゃないですか」







えっ?






「今、なんて・・・?」

余りに拒否しすぎて幻聴でも聞こえたんだろうか?

「だから、来週も一緒に出かけないか、って言ったのは咲耶ちゃんですよ、って」
「・・・・・・」

今私はどんな顔をしているのだろう・・・?
間違いなく間の抜けた顔をしているだろう。

「準備・・・まだしてないんですか?」
「準備・・・って?」

何を言ってるの?

「だから、お出かけの」

だって、私は可憐ちゃんに・・・

「咲耶ちゃん、どうかしたんですか?」
「どうかしてるはそっちの方でしょ!!」
「!!」

しまった!
つい大声をあげてしまった。

「ごめんなさい・・・でも、その・・なんで・・・?」
「だから先週、来週も一緒に、って・・・」
「違うわよ!」
「えっ?」

なんで?
私は可憐ちゃんに取り返しのつかない事してしまったのに!
それなのに、まるで何もなかったみたいに・・・!

「そう言う事を聞いてるんじゃないの・・・!」
「あの、じゃあ・・・」
「私は可憐ちゃんからファーストキスを奪ったのよ!!」

半ばやけくそに聞いた。
言ってからその事に触れたくなかった事を思い出したけどもう遅かった。

「えっ・・・? あっ・・・!」

可憐ちゃんが真っ赤になっていくのが分かった。
もしかしたらあれは夢なんじゃ・・・
彼女を見た時そう思ったりしたがこの反応だとあれは夢なんかではないようだ。
だったらなおさら分からない!
なんで可憐ちゃんはここに来たの?

「あの・・・」
「分かってるんでしょう!?」
「えっ?」
「私は可憐ちゃんの事が好きなのよ! 女の子同士なのに! 妹なのに!!
 だからあんな事・・・・・・なのに・・・なのになんで・・・!?」

貴女の考えが分からない!

「えっ、あっ、あの・・可憐も・・・」

何がどうなってるのか分からない!

「その・・咲耶ちゃんの事・・・」

一体何で!?
どうして可憐ちゃんは・・・

「・・・好き、ですよ・・・」
























「なっ!?」

一瞬時間が止まったかと思った・・・

可憐ちゃんが私の事を・・・・好き・・・・?

「だから・・・」
「か、可憐ちゃんの“好き”と私の“好き”は違うのよ!!」

そうだ! 私は何を期待しているんだ・・・!

「私の“好き”は“妹として”じゃないの!」

そんな事・・・

「分かるでしょ!?」

そんな事有るはず・・・

「違わない!!」
「えっ!?」
「違わないよ! だって可憐、咲耶ちゃんの事、本気で・・・」

何? 今度こそ本当に幻聴でも・・・

「本気で好きなんだからぁ!!」
























「「・・・・・・・・・」」

取り合えずずっと玄関に居る訳にもいかないので私達は家の中に入る事にした。
私達はただ黙って向かい合わせに座っていた
お互い顔を真っ赤にして・・・。

「「あの・・・」」

二人同時に出した声が重なった。

「咲耶ちゃんからどうぞ・・・」「可憐ちゃんから話して・・・」

今度はお互いに譲り合った声が重なった。

「「・・・・・・・・・」」

そしてまた沈黙・・・。

「可憐ちゃん・・・」
「はい!?」

このままでは埒があかないと思い私から話す事にした。
可憐ちゃんはビックリしたのか声が裏返ってしまっていた。

「私の事本気で好き、って事は・・その・・・」
「・・本当・・です・・・」

それを聞いて私は胸の奥が熱くなるのを感じた・・

「可憐、咲耶ちゃんの事・・・その・・ずっと前から・・・お姉ちゃんとして・・じゃなくて・・・」
「もういいわ・・・」
「あ・・・」
「可憐ちゃん、分かっているの? それがどういう意味なのか」

何で私はこんな事を聞いてるんだろう?
折角可憐ちゃんと両想いになれるって言うのに・・・。

「分かってる! 分かってる・・けど・・・」
「けど?」
「可憐、それでも咲耶ちゃんの事・・・!」
「可憐ちゃん・・・」

ああ、そうか、確かめたかったんだ・・・
本当に私なんかを好きになってくれたのかが・・・。

「そういう咲耶ちゃんはどうなんですか?」
「え!?」
「だって、その・・・・・・無理矢理・・・可憐に・・・キス・・・」
「あ、あれは・・・!」

そうだった、自分では「それがどういう事なのか分かってるのか」とか言いながら、その原因を作ったのは私だ。
それに本当は私の事が好きだったとはいえ、私は可憐ちゃんに無理矢理あんな事をしたんだった・・・。

「・・・その・・・・ごめん・・・」
「あ、謝らないで下さい」
「えっ」
「だって、だって可憐、その・・・・とても嬉しかったから」

彼女は顔を更に赤らめながらそう言った。

「本当・・・?」
「本当だよ! だって、だってずっとそうなって欲しいって思ってた!
  ・・・けど、そんな事・・・有るはずない、って諦めてたから・・・」
「可憐ちゃん・・・」
「だから、嬉しかった! 咲耶ちゃんが可憐のファーストキスの相手になってくれて!」
「本当に? 本当に相手が私でよかったの?」
「はい!」

そう言うと可憐ちゃんはとっても素敵な笑顔を私に向けてくれた。

「さ、咲耶ちゃん!?」
「えっ?」

可憐ちゃんがとても驚いた声を出していた。
何でかはすぐに分かった。
私の頬を涙が伝ってたからだ。

「ど、どうしたんですか!?」
「えっ、あ、あれ? どうし・・・」

最初は良く分からなかった。

「咲耶ちゃん!? どうしたんですか!?」

でも、これもすぐに理由は分かった。

「可憐ちゃんの所為よ・・・」
「えっ! か、可憐の!?」

そう、この涙は可憐ちゃんの所為だ。

「だって、可憐ちゃんが・・・」

もう二度と見れないと思っていた―――

「とびっきり素敵な笑顔で笑ってくれたから・・・」


あとがき

この『涙の理由』はなりゅーが調子に乗って書いた第一作目のSSです。
これを書く一ヵ月前まではSSを見ているだけの人間だったのでかなり出来が不安です。
しかも自分の文章力の無さを痛感しました。
自分では文章がかなりクドくなってしまったと思っています。
こんなモノでも読んでくれる人が居て、更に楽しめた人が居たのなら嬉しいです。

この後のお話



更新履歴

H15・5/26(多分):完成
H15・6月上旬くらい:修正
H15・8/5:また修正
H15・8/6:やや修正
H15・8/14:更に修正
H16・7/4:また更に修正

 

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