今日は3月16日・・・から数日経った日です。
 わたくしはコレといって用事もなかったので、家で一人くつろいでいました。
 昨日の騒ぎは嘘みたいに、人口密度計算の対象がわたくし以外居ない家の中は静まり返っています。
 ・・・少し寒いですね。春は一体何してるんでしょう? 職務怠慢で直訴しなきゃ。

 と、こんな具合にあまりにも暇だったので無駄に思考が広がっていく。そんなとき。


   ピンポーン


 急なチャイムの音にちょっぴり驚き、それと同時に、
 この退屈から連れ出してくれるかもしれないという期待に胸が躍ります。
 やっぱりわたくしの感は的中して。玄関を開けるとそこには――











 

ありがとうはいつだって













 「いらっしゃい、鈴凛ちゃん」


 扉を開けながらその人の名を口にした私の目の前には、
 愛しの鈴凛ちゃんが困った顔して立っていました。
 すぐに目を引くのは右手に抱えた、
 プレゼントボックスという名にふさわしい真四角の箱。
 まぁそれを見た瞬間、私の気持ちも少ししぼんだわけですが。


 「こんにちはー…って、鞠絵ちゃん、よくアタシだってわかったね」


 それは愚問ですね。
 わたくしはそれこそ全身包帯でぐるぐる巻きどころか
 100個のパーツに分けられていたとしても、それが鈴凛ちゃんなら
 必ず見つけ出す事が出来ると自負しています。


 「…なんか、気の所為か急に寒気が……」
 「そんなところでつっ立ってるからです。早くあがってください」


 気温以外の理由が深く関わっている気がしないでもないですが
 説明が面倒なので気が付かない振りして奥に通します。
 リビングのソファーに適当に座ってもらい、
 わたくしも二人分のココアを用意して隣に座りました。


 「ところで、今日は何か用があるんじゃないですか?」


 いつものわたくし達なら‘一緒の時間の為に会う’のが大抵の理由ですが
 今日の鈴凛ちゃんはそうじゃないこと。わたくしは知っています。
 ・・・あの人・・・ですね。


 「あ……うん…えっと、昨日ってさ、その…鞠絵ちゃんの」
 「兄上様の誕生日ですがなにか?」


 あまりにも歯切れが悪いのでちょっと意地悪しちゃいました。
 そう。3月16日はわたくしの実の兄上様の誕生日なんです。


 「……そのアニキに、遅れたけどお祝い……」
 「…ありがとうございます。でも要りません」
 「!?」
 「そんな顔しないでください」


 別に「兄上様はわたくしのモノです!」とか言うつもりありませんし
 祝ってくれる人が居る事は自分のことのように嬉しいんです。
 でも、鈴凛ちゃんが。となると、意味が変わってきます。


 「大体、あの年頃の方は誕生日祝ってもらっただけで自分に気があるんじゃないかと
  思い上がるんですよ。あまり甘やかさないでください」
 「え?……そういうもんなの??」


 絶対違うと思います(ぇ
 でも、でもですよ? わたくしは―――


 「…いつも、“常識”に負けそうで、怖くて、仕方が無いんです」





 「……え?」


 その言葉を言われた時、最初意味が分からなかった。
 ただ、鞠絵ちゃんは少し顔を赤く(いつもの彼女ならありえないことだ)して
 尚且ついつも通りの意地悪な(勿論可愛い)笑みをたたえていて。
 それはつまり、ほんの少しの勇気のあらわれで――


 「兄上様と鈴凛ちゃんはどちらにせよ、
  義理のキョウダイになるわけですし。初めての対面は
  わたくしたちのケーキ入刀の直前でも良いぐらいです」


 いや・・・それは流石に遅いと思うよ?

 まさか鞠絵ちゃんの辞書に不安なんて文字があろうとは
 アタシにも予測できなかった。少々不甲斐ない。
 だって今まで、アタシと鞠絵ちゃんの距離を縮めてくれたのは
 鞠絵ちゃんの迷いの無い真っ直ぐな心。そのものだったから。

 そして、そんなアタシ達の可能性を提示してくれたのは
 例のあの人。
 アタシには良くわからない。でも知ってる。
 こうしていられるのも、全部貴方のおかげだってこと。

 だから。
 誕生日ありがとう。なりゅーアニキ♪










 


あとがき

  え〜誕生日おめでとうSSでしたがいかがでしたでしょうか?
  まりりんとNさんとBDという企画でしたが、実際どうなんでしょう、
  書いてる間に頭からこぼれ出たアイデアもあるかもしれません。
  というか真っ先に言うべきなのはごめんなさいですね。(ぇ
  勝手な設定でごめんなさい、そして付き合ってる前提で申し訳ありませんっ!

  この話で大事なのは、可能性と結果は直結しているけれど
  結果は二人で作っていく物だってところです。
  まりりん。その言葉さえあれば、あとは若い者でなんとかやります(笑
  勿論、それを世に送り出すのは物書きさんなのですが。
  お互いを知り合わせたのはなりゅーさん。
  今もまりりんは奥手なのか大胆なのか判別難しい進展を続けているんですね。

  とにかくこの作品は『誕生日ありがとうございます』につきます
  3月16日という日にも、改めて感謝した赤堂がお送りしました。


なりゅーの感想

きちんと、明確に"なりゅーのBDSS"として書いてくださった、
ものすごくありがたく贅沢な一品でした!
ちなみに、これが赤堂さんの初投稿SSだったりします。

……なんか、かえって萎縮しちゃいますね(苦笑
ああ、なりゅーはなんて幸せモノなんでしょうか……。
しかもそれをわざわざなりゅーの大好きなまりりんで行なってくれるだなんて、
赤堂さん、本当にわざわざどうもありがとうございました!
他の方すみません、ひとりだけ良い目見ちゃって(笑

付き合ってる前提ですけれども、特に危惧している「読み手を置いていく」ことも、
この短い中でならなくも見えるので、全然大丈夫かと思われましたね。
まあ、個人的にですが(苦笑

「100個のパーツでも見極められる」とか、「ケーキ入刀の直前」とか、
鞠絵のちょっと大胆な独占欲も、個人的には楽しめました(爆

このSSでの「常識に負けそうで怖い」といい、「お誕生日ありがとう」といい、
いつもなにか重いメッセージを残してくれる赤堂さん……。
そんな赤堂さんに感謝される自分が申し訳ないようでもあり、嬉しくもあります。
だから、素直に「こっちもありがとう」と返したいです……。

ちなみに、「お誕生日ありがとう」は、赤堂さんのサイトの方に掲載されてますSS、
「幸せは貴方のカタチ」にて解き明かされますので、まだ見ていない方は是非(宣伝


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