「ぐすっ……ひっ、く……」


 それは、まだ幼い頃の話……。
 わたくしの体が、まだ、病気で倒れてしまう前の、元気だった頃の話。


「どうしたの? 鞠絵ちゃん」

「……ぐすっ……鈴凛…ちゃん……?」


 泣いてるわたくしの前に現れた、まだ小さな……そして大きな、わたくしのヒーローの思い出……。











 

忍者と海賊とお姫様













「みんなが……幼稚園のみんなが………ひっく……まりえのこと、忍者だって……くノ一だって……ぐすっ……バカにするんです……」


 涙の原因は、幼稚園での些細な出来事から。
 わたくしが、みんなの前で兄上様のことを「兄上様」と口にした事からはじまりました……。

 自分の兄のことを、そんな変わった呼び方をするのはわたくしだけでした。
 その呼び方を聞いた同じ教室の子が、わたくしのことを「忍者みたい」と、言い始めたのです。
 わたくしは女の子だから「くノ一」だ、とも……。
 わたくしは知らなかったのですけど、当時放送されていたテレビの番組に、ちょうど忍者が出てくるお話があったそうです。
 その子はそれを楽しみに見ていたそうで、その影響で……。

 それは子供らしい単純な発想からはじまった、些細な冗談。
 でも、子供だから残酷で、子供だから耐え切れなかった、苦い苦い時間の始まりでした……。

 ちょうど良い。ピッタリだ。
 まわりのみんなは、口々にそう言い始めると、その子の言うことに同意してしまい、
 わたくしが忍者だということが、あっという間に周りのみんなに広がってしまいました……。


「そんなことがあったんだ……」

「っく……ぐすっ………」


 別に忍者扱いされるのがイヤだったわけじゃない。
 ただ、集団からそう決め付けられ、からかわれるように言われることが、バカにされているようで、悲しかっただけ……。

 もちろん、そんなことないって言い返そうとはしました。
 でも、そう言おうとするわたくしの言葉は、言い切る前に大勢で差し押さえられてしまって……
 わたくしはひとり無力に聞き入れるしかなくなって……自分の訴えも届かないまま一方的に押し付けられて……。
 それが、とても悔しくて、悲しかった……。

 「忍者なんて格好良いじゃない」、「褒めているんだよ」、そういう意見もあったけど、
 どんな言葉も、もうバカにされたような言い方にしか聞こえなくなって、
 「忍者」という存在も、「兄上様」という呼称さえも、嫌いになってしまいそうでした……。


「元気出してよ。アタシなんて海賊だよ」

「……海賊……さん?」

「そ。アニキのコト『アニキ』って呼ぶから、お前は海賊の子分だー、って。鞠絵ちゃんと一緒だよ」


 確かに、海賊の子分が、憧れを抱く人物に対して「アニキ」と呼称する姿は、当時のわたくしも知っていました。
 だから鈴凛ちゃんも、わたくしが「忍者」と呼ばれたのと同じように、「海賊」と呼ばれていたのです。
 お互い、大好きな兄の呼び方でからかわれるなんて、本当に偶然。
 ただ違うのは、鈴凛ちゃんはそれでへこんだりなんかしないで、わたくしは落ち込んでしまった……そんな、心の強さだけ……。


「海賊に比べたらさ、鞠絵ちゃんの方がカッコイイよ。海賊なんてゴツゴツしてそうだけど、忍者は……ほら、スマートそうじゃない!」

「でも、忍者さんは暗くてじめじめしてて、まりえにピッタリだって……」


 わたくしは、当時からひとりで本を読んでいることもよくあって、
 みんなとも元気に遊んではいたけれど、そのイメージの方が強かったのか、そんなことを言う子まで……。
 わたくしのことが嫌いだったからじゃなくて、だんだんとエスカレートした結果出てきた、単なる悪ふざけだったんだと思います。
 でも、自分には大したことはなくても、それでとても傷つく人だって出てきてしまう。
 当時のわたくしには、それがまさにそうでした……。
 言い返しても、言い返しても、話を聞き入れもしてくれなくて……自分がそんなイヤな存在にされてしまうことがとても悲しかった。

 わたくしの言葉に、鈴凛ちゃんの方もついに忍者ではフォローしきれなくなったのか、
 苦そうな顔をして、なにも言えなくなってしまいました。
 だけど、しばらくしてから、まるでなにかを閃いたように、


「じゃあ、鞠絵ちゃんは忍者なんかじゃないよ! 鞠絵ちゃんはお姫様!」

「え?」

「あのね、ジジが見ていたテレビでね、お姫様がアニキのコト『兄上様』って呼んでたんだよ!
 だから鞠絵ちゃんは忍者なんかじゃなくて、その忍者さんやお侍さんが守ってくれるお姫様!」

「まりえが……おひめさま?」


 突然、「暗くてじめじめした」から一点、きらびやかな立場に当てはめられて、その落差に戸惑ってしまいました。
 最初は、洋風のお城で、綺麗なドレスやティアラを纏ったお姫様を想像していました。
 でも、それは鈴凛ちゃんの意図したものとは、ちょっと違いました。
 話を聞いていると、それは鈴凛ちゃんのおじいさまが見ていた時代劇の話。
 確かに、その中では忍者もお城のお姫様も、自分の兄のことを「兄上様」と呼んでいました。


「それに、こんなに可愛いんだからね

「えっ?!」


 可愛いから。
 そんなことを理由にされて、なんだか嬉しくて恥ずかしくて、顔から火が出そうなほど、真っ赤になってしまいました。
 自分が、暗くてじめじめした存在だと思っていたから、余計に……。


「そうなると……海賊さんはお姫様をさらわなきゃね

「ええっっ!?」


 そしてもう一度紡がれた鈴凛ちゃんの言葉に、わたくしはただ驚き、もう赤くなるしかありませんでした。
 それは、鈴凛ちゃんにとっては些細な励ましだったのかもしれない……。それこそ、幼稚園のみんなのような。
 けど、嫌いになってしまいそうだった、「兄上様」という呼称も、
 自分がお姫様になれる呼び方だって思うと、前以上に好きになれそうで……
 幼かったわたくしには、それはどんな物語の英雄よりも格好の良い、ヒーローそのものでした。

 でも、この後に言った台詞は、きっと、お姫様失格ですね……。



「……こんな海賊さんになら、さらわれたいです……」




 ・

 ・

 ・

 ・

 ・












「ん……」


 夢から覚めると、そこは療養所のベッドの中でした。
 いつもの、馴染んだおふとんに包まれて見た、子供の頃の夢……。
 まだ元気だったあの頃の……兄上様のお側で暮らせていた、あの日の……。
 その生活の中で起こった、ひとつのエピソード。


「懐かしい夢……」


 それは本当に小さな、気の持ちようでなんともなる話でした。
 でも、幼い自分には、それはとても難しいことで……だから、そんな些細な励ましが……何よりも嬉しかった……。
 そんな気持ちを持たせてくれたあの時の鈴凛ちゃんは……わたくしにとってのヒーローそのものでした……。


「鈴凛ちゃんは女の子だから、本当はヒロインなんですけどね」


 自分でヒーローに仕立て上げておいて、自分で語弊を指摘するだなんて、少しおかしい気持ちになりました。
 幼かったあの頃は、ヒーローとヒロインの区別なんて良く分かっていなくて、
 でもそれ以上に、救ってくれたあなたの存在が、自分の中ではとても大きくて……。
 本当に些細なことだったけど……あの時のあなたは、紛れもなくわたくしのヒーローです。

 でも……病に伏してしまった今では、あの時拒否していた忍者やくノ一のような、
 元気に動き回れる存在に憧れているなんて……ちょっぴり、皮肉です……。


「あ、メール……入ってます」


 そんなことを考えながら、手元にあったモバイル型のノートパソコンを開いて、いつもの習慣のようにメールをチェックすると、一通の新着のメールが。
 これは、療養所でただひとりのわたくしと……わたくしの兄妹とを繋げる絆……。
 機械を通した温かみの無いやりとりと例える方もいますけど……
 でも、普段は会うことさえ叶わない今のわたくしにとっては、大切な繋がりのひとつです……。
 みんなとお話ができて、その中に暖かいメッセージが含まれていると、それだけで、この療養生活の励みになってくれます。
 この一通も、きっとそういうメッセージが含まれているはず……。
 一体誰からとわくわくしながらメールを調べてみると……。


「え!? 鈴凛ちゃんから……!?」


 そのメールは、なんとちょうど夢に出てきたその人物からのもの。
 夢に見たその直後にメッセージを頂けるだなんて、その偶然に、ひとりくすくすと笑ってしまいました。
 わたくしは、早速メールを開いて、鈴凛ちゃんからのメッセージを読んでみました。


『やっほー、鞠絵ちゃん元気? 明日、海岸でお祭りがあるんだって。
 し・か・も、偶然も鞠絵ちゃんの療養所の近くで!
 だから、体調が良かったら一緒に来ない? もちろん、アニキも来るよ
 OKだったら、夕方くらいにアタシの最新メカで迎えに行くね。
 お祭りでいっぱい楽しんで、その後はお楽しみアニキと夜の海岸デート。
 たまには鞠絵ちゃんにもアニキを堪能させてあげなきゃね


 お祭り……それはとても楽しそうなイベントです。
 わたくしは、体がそんなに丈夫じゃないから……こういう行事には積極的に参加できないけど……。
 でも、気持ちだけなら、誰よりも参加したいって思っています。
 それに、ふたりも保護者がいてくれるなら、万が一わたくしの体調が優れなくなっても大丈夫のはず。
 早速わたくしは、お医者様から許可を貰いに行こうと思いました。


「あ……」


 でもよくよく見てみると、それは昨日付けのメールでした。
 昨日は、お体の検査や、療養所でのお勉強が忙しくて、メールをチェックしないまま眠ってしまいました……。


「もう……間に合わない……わよね……」


 昨日の明日、つまりは今日のこと。お祭りは、今日の夜に行なわれます。
 折角の鈴凛ちゃんの誘いもお医者様の許可がなくては、参加することもできません。
 お医者様から許可を貰おうにも、今からじゃ夕方までもう時間がありません……。
 どうしてこんな肝心な時に、見忘れちゃったんでしょうか……?
 自分の不運さが、とても残念でなりませんでした……。


「お返事……返さなきゃ」


 今日の夕方に迎えに来る予定だったのに、当日になっても返事が返ってこなくて、きっと、不安がっているはずです……。
 わたくしはすぐに遅れた謝罪とお誘いのお断りのメールを書くことにしました。


『お返事遅れてごめんなさい、鈴凛ちゃん。
 実は、昨日はメールの確認を忘れてしまって、今さっきメールをチェックしたところです。
 折角のお誘いでしたけど、わたくしはお医者様への許可も貰っていません。
 だから、わたくしはお祭りにはいけません。どうか、ふたりで楽しんできてください』


 打ち込んでから、はぁ、と落胆するようなため息をつきました。
 もう少し早くに気づいていれば、お医者様からも許可がもらえたかもしれなかったのに……。
 とても……残念です……。

 でもこれだけじゃあ暗い話題しか残らなくて、鈴凛ちゃんも困ってしまうはずです。


『そういえば、わたくし夢を見たんです。もうずっと昔……幼稚園の頃の―――』


 折角なので、さっき見た懐かしい夢の話を、世間話のように書き込んでみることにしました。
 鈴凛ちゃんが、わたくしのヒーローになってくれた、とても微笑ましい思い出の話を……。












「あ、もうお返事届いています」


 夕方頃、もう一度メールを確認してみると、早くも鈴凛ちゃんからのお返事が届いていました。
 さすが鈴凛ちゃん、コンピューターに詳しいだけあります。
 ……それは、関係ないのかしら?

 夢の話もあったので、一体どんなお返事が返ってきてくれたのか、わたくしはとても興味津々でした。
 胸を躍らせながら、早速鈴凛ちゃんからのお返事のお返事を読みました。


『返事が遅かったから心配しちゃったけど、何事も無くてよかったよ。』


 メールを開くと、そんな感じで文面がはじまっていました。
 冒頭の方では、返事が遅れたのはわたくしに大事があったからじゃなくて良かったということが書かれていました。
 わたくしの体が体だから、また余計心配を掛けてしまったのですね……。
 鈴凛ちゃんには、本当に申し訳ないです……。


『アタシは海賊で、鞠絵ちゃんがお姫様か。そういえば、そんなこともあったね。
 懐かしいけど……なんだか照れちゃうよ』


 次の話題では、わたくしが特に興味を持っていた夢の話が書き連ねてありました。
 うふふっ、鈴凛ちゃんも、思い出して照れてしまっているようです。
 どうして昔の話というものは、思い出すと照れてしまうものばかりなのでしょうね……。

 それからしばらくは、思い出に関してのコメントが続いていました。
 そんな大した気持ちで言っていたわけじゃない、子供の言ったことだから。
 メールには、そんな風に謙遜することばかり書かれていました……。
 でも……やっぱり、わたくしにとっては……。


『それからお祭りのことだけど……残念だな……』


 思い出話が終わると、次には、わたくしがお祭りに行けないことを残念に思う文が書かれていました。
 ごめんなさい、鈴凛ちゃん……。わたくしも、とても残念です……。

 でも、今更なにを言ってもどうにもなりません。
 落ち込んでしまいそうな気持ちを取り直して、続きを読むことにしました。


「えっと、『でも、アタシって結構ワガママなんだ。だから簡単に諦めないよ』……?」


 読んでみると……そのなんだか不思議な文面に、ついつい首を傾げてしまいました。
 でも同時に、面白いとも思えて、次に書かれていることが楽しみに感じて、胸を高鳴らせながら、続きを口にしました。


「『お姫様がお城の中に閉じ込められて外に出られない。なら、海賊らしく―――」

「海賊らしく、頂いていく……ってね」


 ……えっ!?


「やっほー」

「鈴凛ちゃん?!」


 突然、部屋の窓から、今読んでいるメールと全く同じ言葉が、知っている声で聞こえてきたのです。
 驚いて思わず目を向けてみると……そこにはなんと、そのメールの主、鈴凛ちゃんの姿がありました。
 鈴凛ちゃんは窓から身を乗り出しながら、突然の展開に驚くわたくしを、楽しそうに眺めていました。
 そして、鈴凛ちゃんはわたくしに手を差し伸べて、一言。


「さぁ、お姫様、アタシと一緒についてきて貰いましょうか












「どう、アタシのメカの乗り心地? 気持ち悪くなったりしてない?」

「あ、はい……大丈夫です……」


 わたくしは今、鈴凛ちゃんが自転車を改良して作った二輪車のメカに乗って、お祭り会場のある海岸へと向かっていました。
 運転を行なっている鈴凛ちゃんは前に。
 その後ろに、わたくしが、振り落とされてしまわないよう、鈴凛ちゃんの腰に手を回して乗っていました。
 ちょうど、バイクのふたり乗りの形そのままです。
 海賊が二輪車だなんて、ちょっと似合わないかもしれませんけど、さすがに陸地では船で行動するわけにも行きません。


「もうちょっと時間があったら、小船型のデザインに改造してたんだけどねー」


 ……だそうです。

 鈴凛ちゃんはまだ免許を持てる年齢ではなかったので、これは無免許運転でいけないことなんじゃないかと思いましたが、
 鈴凛ちゃんが言うには「アタシのお手製で、自動車でもバイクでもないんだから、免許なんていらないいらない」だそうです。
 鈴凛ちゃん……わたくし、こういうことには詳しくないですけど、やっぱりよろしくないんじゃあ……。


「あ、ちょっと地面が悪いから、揺れるかもしれないな……。しっかり捕まっててね」

「あ、はい……」


 わたくしは、鈴凛ちゃんに言われたまま、落ちてしまわないようしっかりとしがみつきました。


「……鞠絵ちゃんの胸……結構、柔らかいんだね……」

「はい?」

「な、なんでもない!!」


 小声での呟きの後、少しだけ覗いた鈴凛ちゃんの顔は、なぜだかほんのり赤くなっていました。
 一体、何かあったんでしょうか?


「でも、良いんでしょうか……? こんな……抜け出すなんてこと……」


 兄上様……鞠絵は、ワガママな悪い子です……。
 手を差し伸べられた時、誘惑に勝てずに、そのまま鈴凛ちゃんの手を取って、お医者様には黙ったまま、出てきてしまいました……。
 自ら海賊にさらわれてしまうなんて……悪いお姫様です……。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ。ノープログレムよ

「でも……」


 わたくしが不安そうにしていると、鈴凛ちゃんはなんとも楽観的に、わたくしを励ましてくれます。
 だけれども、やっぱりわたくしはとても悪いことをしています。
 だって、お医者様や看護婦さんたちは、わたくしの体を治そうと……つまりはわたくしのために頑張ってくれているのに、
 そんな人たちに、自分のワガママで更に迷惑を掛けてしまうだなんて……。


「んー……ほんとはもうちょっと驚かすつもりだったんだけどなー……」

「……?」

「はい」


 抜け出したことに苛まれるわたくしを見かねて、鈴凛ちゃんはしょうがないという口調で、一枚の紙切れをわたくしに差し出しました。


「……これは?」

「お医者さんの許可証。外出のね」

「え?!」

「実は最初から許可は取ってあったんだ」


 最初から……つまり、これは黙って抜け出たのではなく、許可を取った後の正式な外出、ということ。
 お医者様も看護婦も、わたくしが外に出ることは既にご承知済みで、心配なんか全くかけていなかったのです。
 話を聞くと、昨日の内にあらかじめ鈴凛ちゃんの方で電話をして、お医者様から許可を頂いていたそうです。
 そしてさっき、療養所に着いた鈴凛ちゃんは、わたくしが心配した時のために許可証を受け取ってから、
 演出のためわざわざ外に回って、窓からわたくしの元へやってきてくれた、と、そういう経緯らしいです。
 お医者様も、鈴凛ちゃんがそんな演出することを了承していましたし、そのまま出かけることも承諾していたそうです。
 つまり、全然悪いことなんてどこにもなかったんです。


「鈴凛ちゃん……ひどいです。そうならそうともっと早く言ってくれれば……」

「あははっ、ごめんごめん」


 なんだか抱えなくてもいい罪悪感を抱え込んで、わたくしひとり、損してしまいました……。


「でも、もうちょっと味わっていたかったんだよね……」

「なにをですか?」

「鞠絵姫を大海原へと連れ出す、大海賊鈴凛様の武勇伝を、ね


 おどけて言う彼女。
 そんな彼女らしいところを見せられると、今まで押し潰されそうになっていた気持ちも忘れ、許してしまいたい気持ちになってしまう。
 それ以上に……わたくしの心に暖かいものを分け与えてくれるあなたに……わたくしは救われています……。
 今も、昔も……夢で見たあの日も……。

 あの時の小さな海賊の子分さんはこんなにも立派に成長し、今では船のキャプテンを務めています。
 夢という財宝に向かい、未来への大海原へ舵を取って……。
 そんなあなたは……いつまでも、わたくしにとってのヒーローです……。


「あ、見えてきた」

「…………。……でも、わたくしは―――」


 ―――さらわれるだけのお姫様なんかじゃなくて、あなたと一緒に大海原を冒険する、忍者さんになりたいです……。


「ん? なにか言った?」

「いいえ……なんでも」


 兄上様、もう少ししっかりわたくしのこと繋ぎ止めておいてください……。
 じゃないと、そのうち本当に、この大海賊さんに、わたくしのこと取られちゃいますよ……








あとがき

東牙さんの百合祭り便乗用にこしらえたまりりんネタ。
構想は前々からできていたので、書く機会に恵まれて、本人的にも本当に満足しています。
まさか「クロスボーンガ○ダム」の名台詞からこんなほんわかストーリー閃くなんて、
一体誰が予想できますでしょうか?(笑
「兄上様」、「アニキ」のふたりの兄の呼称を見てたら、なぜかこんなネタが仕上がってしまいました。
という訳で、今回は普段は書かない「兄あり」で執筆ってます。
ここ最近は、ほんと「兄あり」の話がよく組み上がります。
「兄の存在」を認めつつ、「兄が好き」、「男の人が好き」でありながら、
それ以上に「相手(女性)に好意を寄せる」というシチュエーションに、ドラマを感じているんでしょうねぇ(笑
今回、幼い頃のふたりの様子を描いていますけど、各妹たちの出会いについては、
原作の方でゲームやらアニメやらで様々な設定が設けられています。
個人的には、大きくなってから出会った形の方が百合妄想しやすいのですが(笑)、
こういう「幼い頃の絆」というのも一度は書いてみたかったので、
今回は、同じ家にしろそうじゃないにしろ、小さい頃から一緒にいたという、
パラレル設定のひとつとして受け取ってくださいまし。

生まれたきっかけがなにかとアレですが、
そんな作品からでも、鞠絵と鈴凛のほんのり風味のいちゃっぷりを楽しんでくだされば幸いです(笑


更新履歴

H17・8/25:完成
H17・8/31:掲載


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