「白雪ちゃん・・・絶対、喜んでくれるよね・・・」

ホットケーキの材料を袋いっぱいに入れて、
ヒナ、お胸をドキドキワクワクさせながら白雪ちゃんの家に向かっていたの。


いつもおやつを作ってくれる白雪ちゃん。
今日は、そんな白雪ちゃんのお誕生日。

白雪ちゃんは、みんなに手作りのお料理を持って来てくれる。
もちろんヒナにも。
ヒナにはおやつをもって来てくれるの。
今までだって、ケーキやクッキー、ゼリーやアイスクリーム、色んなものをヒナのために作ってくれた。

ヒナ、それがすごく嬉しいって思うの。
どれもすっごくおいしくてシアワセな気持ちになれるのv
ヒナ、思わずニコニコ笑顔になっちゃうんだ。


でもね、ヒナ、思ったんだ。

白雪ちゃんはみんなに作ってばっかで、誰からもおやつをもらっていないって。
だからね、今度はヒナがおやつを作ってあげるのv

ヒナ、おやつを貰えた時の、すっごく嬉しい気持ち。
白雪ちゃんにもそのシアワセな気持ちを教えてあげるために、
ヒナがお誕生日プレゼントにおやつを作ってあげることにしたの!


おうちでも、ママとホットケーキを作って、きちんとうまくできたんだから。
だからひとりでも大丈夫。

絶対喜んでくれる。


ヒナ、そう信じていた・・・。











 

こげたホットケーキ













目の前のお皿には、ヒナが白雪ちゃんに作ってあげたホットケーキ。
でも、食べたいって感じるオシャレな見た目も、おいしそうなにおいも、全然ない・・・。

「えっぐ・・・・・・ひっく・・・」
「雛子ちゃん、元気を出してですの」

絶対うまくいくと思ってたのに・・・。

ヒナのホットケーキは・・・ほんとうは、綺麗なキツネさん色になるはずなのにぃ・・・。
まっくろくろに・・・コゲちゃったぁ〜〜。

「ふぁ〜〜ん」

なんでぇ?
なんでコゲコゲになっちゃったの?

前にママと作った時はうまくいったのにぃ・・・。

うまくいったのはママがいたから?

ヒナひとりじゃ無理なの?
ヒナひとりじゃ、ダメなの?

「えっぐ・・・っく・・・・・・ひっく・・・」

作り方も、全部覚えてると思った・・・。
でも、作っているうちに「あれ?」って思って・・・「あれ?」が、いっぱいいっぱい出てきて・・・

気がついたら、ホットケーキはまっくろくろにコゲちゃってた・・・。

「雛子ちゃん・・・泣かないでですの」
「でも・・・でもぉ・・・」

・・・ヒナにはダメだったんだ。
ヒナが白雪ちゃんみたいにおやつを作ってあげるなんて無理だったんだ・・・。

「ヒナ、ヒナはぁ・・・・ひっく・・・・・・白雪ちゃんとは違うんだぁ・・・・・・えっぐ・・・」

ヒナ、わんわん泣きながら、思わずそう言った。
喜んでもらおうって、頑張って作ったのに、できたのはこんなコゲコゲのホットケーキ。
こんな事なら、白雪ちゃんにもおやつを作ってあげようなんて・・・―――

「いいえ、おんなじですの」
「・・・え?」
「雛子ちゃんは、姫と同じですの」

今、白雪ちゃんが何を言っているのか分かんなかった。
ヒナが聞き間違えちゃったのかと思った。

でも今、白雪ちゃんは「ヒナとおんなじ」って言った・・・。

「ち、違うよぉ・・・」

そう言ってから、もう一度ヒナが作ったホットケーキをじっと見たの。

「ほら、ホットケーキだってこんなにまっくろくろで、
 白雪ちゃんが作ってくれた、きれいなキツネさんの色じゃないもん!!」

ここまで、ぜんぜん違うのに・・・・・・なのに・・・

「同じですの」

どうしてそう言い切れるの?

「姫も、昔はよく、ホットケーキをまっくろくろのコゲコゲにしちゃってましたから」
「え!?」

信じられない言葉だった。
あんなに上手に、おいしくてオシャレなお菓子を作れる白雪ちゃんが、まっくろくろのホットケーキを作ってたなんて。

「う、ウソだよ! だって白雪ちゃんは、おいしいおやつをいっぱい作れるんだもん!!」

これはきっと、ヒナを元気にするための“やさしいウソ”とかいうヤツだよ。

「ウソじゃないですの。 雛子ちゃんの知らない所で、姫はいっぱい失敗していますの。
 ホットケーキだけじゃなくても、他にもいっぱいいっぱい失敗してますの」
「あんなに・・・上手に・・・ひっく・・・・作れるのに・・・?」
「あんなに上手に作れるから、ですの」

上手に作れるから失敗している?

「美味しいものを作ろうと、頑張って頑張って・・・何回も失敗して、それでやっとここまで上手になったんですの」
「・・・・・・」
「上手になるには、上手になるための過程が必ず存在するんですの」
「・・・え? “かてい”??」

ヒナ、まだ子供だから、あんまり難しい言葉が良く分からないの・・・。
だから、頭の上にハテナマークがでてきちゃったの。

「あ、えっと・・・つまり・・・」

ヒナがそうなっちゃったから、白雪ちゃんは少し困っちゃった顔をして考え込んじゃったの。
ちょっとしてから白雪ちゃんが、

「雛子ちゃん、雛子ちゃんはおはし使えるでしょう?」
「え・・・うん・・・。 はじめはぜんぜんうまくいかなくて・・・すっごくすっごく困ったけど・・・
 ヒナ、毎日毎日練習して、それで今はもう使えるようになったんだよ」
「それと同じですの」
「・・・おんなじ、なの?」
「姫も最初はお料理が全然上手くいかなくて、だからいっぱいいっぱい練習して、それでやっと作れるようになったんですのよ」

最初、どうしておはしの話になったのかちょっと疑問だったけど、
白雪ちゃんの言いたいこと、“かてい”がなんなのか分かった気がした。

「じゃあ・・・はじめから・・・ぐすっ・・・・作れたわけじゃ・・・ないの?」
「はいですの」

ヒナは勘違いしてた・・・。
白雪ちゃんははじめからおやつを作れたって、勘違いしてた。
白雪ちゃんだってはじめからおやつを作れたわけじゃないんだ。
ヒナとおんなじで、いっぱいいっぱい練習して、それでやっとできるようになったんだ・・・。

白雪ちゃんは一生懸命頑張ったから、おやつだけじゃなくてお料理も作れるんだ・・・。

「それに、姫は今もお勉強の途中ですの」
「お勉強?」
「そう、お料理のお勉強。
 おいしいお料理をたくさん作れるようになりたいから、
 まだ作った事のない新しいお料理を作りたいから、
 今作れるものを、更においしくしたいから、だから毎日お勉強してますの」
「どうして!? 白雪ちゃん、お料理いっぱいできるのに!?」

ヒナの質問に笑うように、ヒナに向けてウインクして、

「うふふ・・・姫、こう見えても欲張りなんですのよ」

って・・・。

白雪ちゃんの話を聞いていたら、いつの間にかヒナ、泣くのをやめていた。
泣いているより、白雪ちゃんの話をもっと聞きたいって思ったから・・・。

「雛子ちゃんや亞里亞ちゃん、それに他のみんなも・・・姫のお料理で幸せにしてあげたいから。
 みんなの幸せそうな顔を、もっと見たいから・・・。 もっともっと見たいから・・・」

白雪ちゃんがみんなにお料理を作ってくれるのは、みんなをシアワセにしたいから・・・。

・・・そうだよね、みんながシアワセだと嬉しいもんね。
ヒナも嬉しいって思う。

白雪ちゃんは知っているんだ、ヒナたちが白雪ちゃんのお料理でシアワセな気持ちになれることを。
だから一生懸命頑張っていたんだ。

「それに・・・姫には、それくらいしか出来ないから・・・」


最後の一言、白雪ちゃんは・・・なんとなくだけど・・・悲しそうな顔になっている気がした。



そうだよ、だったら・・・



「今度はヒナが、白雪ちゃんをシアワセな顔にしてあげる!」
「え?」

白雪ちゃんがヒナたちにしてくれたのとおんなじ方法で、白雪ちゃんをゲンゲンゲンキにしてあげよう!

「白雪ちゃん、もう1回待ってて!」

もう1回、もう1回頑張ってみよう。
ホットケーキの材料は残ってる。
最初作ったのよりちっちゃくなっちゃうけど・・・大きさは関係ないよね。


ヒナがプレゼントしたかったのは、ホットケーキじゃなくて、もらった時のシアワセな気持ちなんだから・・・!



みんなに、そしてヒナに、たくさんのシアワセを分けてくれた白雪ちゃん。
今度は、ヒナがシアワセにしてあげる番だよ・・・。













もう1回ひとりで頑張って作った、2枚目のホットケーキ。
白雪ちゃんの目の前に運ばれてきたお皿の上に乗っているそのホットケーキは、

「・・・ちょっと泥んこまみれキツネさん色・・・」

ちょっとだけ、またコゲちゃった・・・。

「雛子ちゃん、良くできてますのよ」
「うぅ〜・・・またコゲちゃったよぉ〜・・・」
「さっきよりは綺麗ですのよ」
「そ、それはぁ・・・」

2回目だから、さっきより「あれ?」が少なかったの。
だから、さっきよりもちいさくなっちゃったけど、さっきよりうまく作れてるんだよ・・・。

「これは、さっき雛子ちゃんが失敗したから、ですのよ」
「・・・え?」
「あ、悪い意味じゃなくて・・・さっき失敗したから、今度はさっきよりも上手に作れた、という意味ですの」
「あ・・・」

そういえばヒナ、「今度は失敗しないぞ!」って、すっごく気をつけてもいたっけ。

そうなんだ・・・失敗するってそういうことなんだ・・・。
だから白雪ちゃんもいっぱい失敗しているんだ。
あんなに上手に作れるから・・・。

「じゃあ、早速いただきますの」
「え! あ、うん・・・」

白雪ちゃんは、ヒナのホットケーキをナイフとフォークを上手に使って切ったの。
そして、自分のお口に入るくらいの大きさに切ったホットケーキをぱくんって食べたの。

切ってからお口に入るまでの少しの間、ヒナにはとっても長く感じたの。
あんなに絶対喜んでくれるって信じていたのに。

そして、白雪ちゃんはヒナのホットケーキをもぐもぐごっくん、って飲み込んで、

「うん、さっきのよりおいしくなっていますの」
「ほ、ホント!?」

ヒナのホットケーキを褒めてくれたの。

ヒナ、ホントのホントに嬉しかった!
さっきのよりおいしくなっているって・・・―――

「・・・・・・え?」

“さっきの”?

「あ、あれ? そういえば、さっきのコゲコゲのは・・・」
「ああ、それなら・・・・・・うふふ、ここですのv」

白雪ちゃんはクスクス笑いながら、自分のおなかに手を当ててそう言うの。

え? え? そ、それって・・・!?

「さっきの、食べちゃったの!?」
「はいですのv」

ど、どうして!?
あんなに真っ黒だったのに!?
食べたって、すっごく苦くて全然おいしくないって、分かってるのに。

「だって、雛子ちゃんのが一生懸命、姫のために作ってくれたんですのよ。
 だから、どうしても食べたかったんですの・・・」
「あんなにコゲコゲなのに・・・。 苦くて全然おいしくないのに・・・」
「ちょっと苦かったけど・・・でも雛子ちゃんの一生懸命な気持ちが、溢れるくらいに伝わってきましたの・・・」
「・・・え?」
「それに、苦いのは“おいしくない”って意味じゃないんですのよ。 コーヒーだって、苦いのに好きな人がいっぱいいますの」


 白雪ちゃん、まるでヒナのママみたいに、


「失敗しちゃったのはひとりで、誰の力も借りないで作ろうとしたから・・・」


 やさしくて、あったかい顔で、


「雛子ちゃんが姫のため、ひとりで作ろうと頑張ったから・・・」


 ヒナのコゲコゲのホットケーキも褒めてくれた。


「苦いのは大人の味、雛子ちゃんのそういう大人になろうとする気持ちの味・・・」



 ・・・やっぱり、白雪ちゃんはお料理の天才だ。



「だから、コゲててもおいしかったですのv」


 だって、食べさせた相手だけじゃなくて、作ってあげた相手までシアワセにしちゃうんだもん・・・。


 白雪ちゃん、ヒナ分かったよ・・・。

 白雪ちゃんのお料理がおいしいのは・・・白雪ちゃんの一生懸命な気持ちがこもっているからなんだ・・・。






・・・・・・



・・・・・・






・・・・・・












「懐かしいな・・・」

目が覚めてすぐ、ベッドの上で思わず呟いた。

小さい頃の夢。
数年前の今日の・・・白雪ちゃんの誕生日の夢。
私が、白雪ちゃんのために頑張った時の夢。
白雪ちゃんは、私にとってもうひとりの“ママ”だった頃の夢。

あの日、白雪ちゃんに教えてもらったこと・・・それは、私にとってとても大切な思い出。






「準備良し、っと」

顔を洗って、着替えて、朝ご飯を食べて、プレゼントを持って、玄関で靴を履いて、
これで白雪ちゃんの所へ向う準備は終わり。
白雪ちゃん、今から貴女の生まれた日を祝いに行くね。


今日は特別な日になるように、今日こそ失敗しないように頑張ろう。

夢を見たのも、ただの偶然じゃないかもしれない。
私の想いのきっかけの、思い出のホットケーキを作ってあげてから伝えるのもいいかもしれない。

だって、白雪ちゃんが“ママ”から“恋人”に変わる大切な日だから。


あの時より、ずっと大人になった今、私も欲張りになったかもしれない。

もう“ママ”じゃ満足できないの。

白雪ちゃんを私の特別にしたい。
白雪ちゃんの特別になりたい。

いつもいつも伝えられなくて・・・失敗続きだった、貴女への想い。
でも、それも大切な一歩。

失敗は次への大切なステップになる。

これは貴女から教えてもらったこと。



待っていてね。


今日こそ、成功させるから・・・。





 


あとがき

誕生日の当人より相手の方が幸せになるなりゅーのひねくれBDSS白雪編。
テーマも何も考えずに、作りながら内容を考えるという暴挙に出た作品(苦笑)
作り始めた時、在ったのは「ホットケーキを作って焦がす」だけでした。
そのためか、誕生日というのを面白いくらい生かせていないものが完成(汗)

子供の頃、『大人はなんでもできる完全な存在』と思っていませんでしたか?
完璧なものの“過程”を知るということは、生きてるうえで必ず通る出来事だと思います。
なんとなく閃いたんでそういう内容にしてみました。(←てきとー)

雛子視点はかなり大変でした。
理由として、『難しい言葉を使ってはいけない』というものを意識したからです。
しかし、そんなに注意したにもかかわらず、「なんか違う」と思う上に、
雛子の特徴をことごとく生かせていない気が(汗)
しかも、ストーリーの展開が早過ぎで大切な部分を壮絶に抜けてる・・・(滝汗)

しらひなは歌まで一緒に歌ってるくせに、これを書いている今現在、未だ見たことがありません。
白雪×雛子×亞里亞 ならあるんですけどね・・・。

最後の成長後の雛子の自称、ちょっと迷いましたが、
例のシリーズとは別物ということで“ヒナ”から“私”へ変えました。
ところで、果たして“過程”も知らないほど雛子を幼くして良かったんでしょうか?(汗)


更新履歴

H16・2/10:完成


 

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