♪〜♪〜♪〜〜♪〜♪〜〜〜
とある豪邸、その一室から綺麗なピアノの音色と共に可愛らしい歌声が響き渡ってきます。
♪〜♪〜〜♪〜・・・・・・
突然歌声が途切れ、代わりにこんな言葉が聞こえてきました。
「・・・そこ、音程違います」
「え? あ!? ご、ごめんなさい」
音を外してしまったピアノの演奏者は歌い手に謝るのでした。
それを聞いた歌い手は「気にしてないよ」の意味を込め、ピアノの演奏者にニコリと微笑みました。
演奏者は歌い手の言いたい事が分かると心の中でホッとするのと同時にガッカリと肩を落とすのでした。
「可憐の方がお姉ちゃんなのに・・・」
演奏者である可憐はそう一言呟くと、間違えた箇所の少し前から演奏を再開しました。
そして、それに合わせて歌い手である亞里亞ちゃんの綺麗で可愛らしい歌声が再び響き始めました。
お姉ちゃんとして
「そろそろ終わりにしようか」
窓から見える景色からお日様の光が差し込まなくなった頃、可憐はピアノの演奏を止めてそう言いました。
可憐のその意見に亞里亞ちゃんは首を縦に振って答えてくれました。
すると、それとほとんど同時に可憐達の居る部屋をノックする音が聞こえ、そのすぐ後に、
「亞里亞さま、可憐さま、お食事の準備ができましたよ」
部屋の外からじいやさんのそう言う声が聞こえてきました。
「亞里亞ちゃん、丁度よかったね」
可憐は、亞里亞ちゃんにニコッと笑って亞里亞ちゃんの手を取ると、そのまま亞里亞ちゃんと一緒に部屋を出ました。
今日、可憐は亞里亞ちゃんのお家にお泊りに来ました。
でも遊びに来たんじゃありません、練習しに来たんです。
可憐達は今度、みんなで集まってパーティーをする事になったの。
姉妹なのに普段は会えないからたまにはこう言う事もやろう、って咲耶ちゃんが。
でもね、そのうち色々あって、「折角だからみんなでそれぞれ出し物でもしよう」って話になっちゃったの・・・。
可憐はピアノが弾けるからピアノの演奏を出し物にしようって思ったんです。
それをたまたま亞里亞ちゃんにお話してあげたら、亞里亞ちゃんはみんなにお歌を披露したいって言ってきたの。
そこで、どうせなら可憐のピアノの演奏と亞里亞ちゃんの歌を一緒にやらないかって事になったの。
だから可憐達は一緒に出し物をするための練習をしていたんです。
でも・・・
「はぁ・・・」
「どうかしましたか可憐さま?」
「いえ、なんでもないです・・・」
じいやさんに案内されて廊下を歩いている途中、思わずこぼれたため息でじいやさんを心配にさせちゃったみたいです。
でも、じいやさんには関係のない事なので可憐はそうやって話をはぐらかしました。
(可憐は全然ダメだなぁ・・・)
ため息をついた時、可憐はそう考えていました
亞里亞ちゃんは歌が上手です。
物凄く上手なんです。
って言うか歌う時人が変わります。
人って言うか喋り方が・・・まあ、そんな事はどうでもいいんだけど・・・。
それに比べて・・・可憐のピアノはまだまだです・・・。
何回も音を外したり、リズムが狂ったりと、間違えてばかり・・・。
しょうがないじゃないですか!
可憐、絶対音感なんて持って無いんですから!!
本当は・・・亞里亞ちゃんにお姉ちゃんとして凄い所を見せてあげたかったのに・・・全然ダメだったなぁ・・・。
亞里亞ちゃんを優しく指導してあげようと思ってても亞里亞ちゃんは全然失敗らしい失敗を見せないの・・・。
亞里亞ちゃん・・・普段おっとりしているから可憐がそうしてあげなきゃ、って張り切ってたんだけど・・・
でも、亞里亞ちゃんはこう見えて英才教育っていうのをされてるみたいだから、寧ろこう言う事は可憐よりもすごく上手いの。
だから・・・可憐の張り切ってる気持ちも結局空回り・・・。
さっきも逆に可憐が亞里亞ちゃんに指導されちゃった・・・。
それに一緒にやろうって言い出したのも亞里亞ちゃんからだった。
最初は、一人じゃ心細いとか、自信が無いとかそう言う意味で一緒にやりたいって言ってるかと思ってた・・・。
でも、亞里亞ちゃんは二人でやった方がよりいいものができるって言う意味でそう言ったって事を痛いほど実感させられました。
だってかえって可憐が足を引っ張っちゃってるんだもん・・・。
これじゃあどっちがお姉ちゃんか分からないや・・・。
「・・・・・・」
可憐は絶句しました・・・。
「どうかなさいましたか? 可憐さま」
「い、いえ・・・」
さ、さすがは亞里亞ちゃんのお家です・・・。
じいやさんに案内された部屋には、見た事も無いような豪華なお食事がテーブルの上に並んでいました・・・。
「ささ、早く食べないと冷めてしまいますよ」
「え? あっ! そ、そうですね・・・い、いただきます・・・」
なんだか可憐は萎縮しちゃいました・・・。
「はい、どうぞ召し上がってください」
「いただきます・・・」
可憐に続いて、亞里亞ちゃんも可愛らしい声で「いただきます」を言いました。
お料理はどれも豪華そうで、そして何より美味しいです!
さすがは亞里亞ちゃんのお家です!
ふと亞里亞ちゃんを見てみると、亞里亞ちゃんも美味しそうに・・・
・・・・・・
可憐はまたやっちゃいました・・・。
「あの・・・お口に合わなかったでしょうか?」
ある事に気づき、止まってしまった可憐をじいやさんは心配してそう聞いてきました。
「い、いえ・・・そんな事ありません、とても美味しいですよ」
可憐はじいやさんにそう答えました。
・・・でも、合わなかったのは当たってるかも・・・。
可憐はテーブルマナーなんてよく分かりません。
亞里亞ちゃんは立派にこなしてるのに、可憐はそんな事お構いなしに食べちゃってました。
それが可憐が気づいた事です。
(ああ・・・可憐、また亞里亞ちゃんに・・・)
お料理は美味しかったけど可憐はますます落ち込んでしまいました・・・。
夕ご飯を食べた後、可憐は亞里亞ちゃんと遊んだり、お話したりと、練習とは関係無い事ばかりして時間を潰しました。
頑張るのは大切だけど、でも、たまには息抜きしなくちゃね。
そう思って可憐がそうしようって亞里亞ちゃんに言ったの。
そしたら亞里亞ちゃん、喜んで賛成してくれたんだ。
・・・・・・でも調子に乗り過ぎちゃって夜にも予定していた練習まで潰れちゃったけど・・・。
ああ、可憐はやっぱりダメなお姉ちゃんなんだ・・・。
咲耶ちゃんみたいには上手く行かないよぉ・・・。
「・・・おっきいショコラ・・・・・・おいしそう・・・」
・・・なんて可憐が落ち込んでたら、自分のベッドの上で眠ってる亞里亞ちゃんがそんな寝言を言いました。
今はもう亞里亞ちゃんにはお休みの時間です。
可憐は亞里亞ちゃんにお話を読んであげました。
亞里亞ちゃんはお昼からの練習と、さっきまでのお喋りと遊び疲れで、もう夢の中に居ました。
「大好きなチョコレート食べてる夢でも見てるんだね・・・」
亞里亞ちゃんらしいや。
「ふふふ・・・亞里亞ちゃんったら可愛いなぁ」
可憐は亞里亞ちゃんの寝顔を見て思わずそう言っちゃいました。
こうして改めて見ると、やっぱり亞里亞ちゃんは可憐の可愛い妹。
それなのに・・・可憐はダメなお姉ちゃん・・・。
はぁ・・・。
ううん、こんな事で挫けちゃダメだよね!
明日は可憐がきちんと亞里亞ちゃんを引っ張っていかなきゃ!
お姉ちゃんとしての威厳がかかってるんだもん!
「いただきます・・・」
可憐がそんな決意を胸に抱いているとも露知らず、
亞里亞ちゃんは手を伸ばして夢の中のチョコレートを捕まえ・・・って、え? ええッ!?
「あ〜ん・・・」
「あ! ちょ・・・! ま、待って亞里・・・―――」
可憐の言おうとした言葉は途中で止まって・・・そのまま何も言えなくなりました・・・。
あまりに衝撃的な事が起きた為、可憐の頭の中は真っ白になってしまい、
たった今固めた決意はあっという間にどこかへ飛んでいってしまいました。
しばらくして、 だんだんと頭がハッキリしてきて、事態を呑み込める様になった時、
(どどどどど、どうしよう・・・っ!)
可憐はそう心の中で言いました。
心の中で言ったのは、今、声が出せなくなってしまってるから・・・。
可憐の心臓は今、物凄い速さで動いています・・・まるでこのまま爆発しちゃいそうなくらい・・・。
だって・・・亞里亞ちゃんがチョコだと思って引き寄せたのは・・・可憐の顔で・・・
可憐はそのまま・・・亞里亞ちゃんと・・・して・・しまったんです・・・
その・・・
・・・・・・キス・・・。
しばらくして、亞里亞ちゃんが掴んでた可憐の顔を離してくれました・・・
「・・・ごちそう・・さま・・・・・・」
夢の中で大好きなチョコレートを食べ終えた亞里亞ちゃんはそんな寝言を言いました。
可憐はと言うと・・・人差し指で自分の唇をなぞっていました・・・
たった今まで・・・亞里亞ちゃんの小さな唇が触れていた・・・可憐の唇を・・・。
「・・・可憐の唇・・・亞里亞ちゃんに奪われちゃった・・・」
どうしよう・・・可憐・・・亞里亞ちゃんと・・・キスしちゃった・・・。
可憐の大切な・・・ううん、亞里亞ちゃんにとっても大切な・・初めての・・・キスだったのに・・・。
・・・・・・
これは・・・事故・・になるのかな?
・・・事故・・・だよね・・・。
うん・・・事故、事故だよ。
事故に決定!
可憐が決めました、これは事故です!
でも・・・例え事故でも・・・可憐と亞里亞ちゃんが・・・その・・・キスしちゃった事には・・・変わり・・ないんだよね・・・。
こんな事・・・亞里亞ちゃんが知ったら・・・どうなるんだろう・・・。
女の子同士でキスしちゃったなんて・・・
今はよく分かってないかもしれないけど・・・将来、大きくなった時、ガッカリしちゃうんだろうなぁ・・・。
大切なファーストキスを・・・女の子と・・・
・・・・・・
そうだ・・・
「亞里亞ちゃん・・・今の事は可憐の胸の中にそっとしまっておきますね」
この事は・・・亞里亞ちゃんには黙っておこう・・・。
「亞里亞ちゃんの中では・・・亞里亞ちゃんはキスなんてしていなんです・・・」
そうだよね・・・
その方が亞里亞ちゃんのためだもんね・・・。
「だから・・・亞里亞ちゃんは本当に大切な人と、もう一度ファーストキスをしてね」
こういう損な役回りはお姉ちゃんとして可憐がなってあげなきゃ・・・。
でもね、可憐は別に損だなんて思ってないの。
だって亞里亞ちゃんにお姉ちゃんらしい事ができたんだもん。
それに・・・
「・・・可憐はね・・・亞里亞ちゃんになら・・・別にいいの・・・」
亞里亞ちゃんとキスした事は・・・なんだか嬉しかったから・・・。
それにしても可憐はなんだか疲れました・・・。
出し物の練習、遊んだりお喋りしたり、そして・・・・キス・・したり・・・
色々あったからだね・・・。
だから、いつもの可憐が寝る時間より早いけど今日はもう寝る事にするね。
「・・・おやすみ、亞里亞ちゃん」
大変な事があったなんて知らないですやすやと眠ってる亞里亞ちゃんにそう言うと、
可憐はそのまま亞里亞ちゃん眠っているお布団の中に入りました。
今日は亞里亞ちゃんと一緒に寝てあげようと思って・・・。
だって折角のお泊りなんだもん・・・。
大丈夫・・・じいやさんにはちゃんと言ってお許しを貰っているから・・・。
いいよね?
今日は可憐が・・・亞里亞ちゃんを優しく包み込んであげます・・・。
お姉ちゃんとして・・・ね。
あとがき
当時、桜館さんが「“かれあり”探したけど見つからない」と言っていたので、
「じゃあ作りましょうか?」と、ぶっちゃけ勝手に引き受けたリクエスト、可憐×亞里亞でした。
・・・思いっきり失敗しまくってる気がする・・・(泣)
しかも気軽に引き受けた割にかなりの難産・・・(汗)
希望内容は「亞里亞に翻弄される可憐」なのに・・・(凹)
しかも可憐×亞里亞じゃなくて可憐→亞里亞になっているし・・・(鬱)
一応ラストは希望のベッドシーン(非18禁)にはできました。
それが満足いく物だったかどうかは分かりませんけど・・・(虚)
更新履歴
H15・9/8:一応この日に完成
H15・11/14:誤字修正
H15・12/10:誤字脱字修正
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