「千影ちゃーん、遊びに来たよー」

アタシは千影ちゃんの家に遊びに来た。

「鈴凛くんじゃないか。 一体どうして……?」
「特に理由なんか無いよ、ただなんとなく……」

なんとなくなのは合っているけど、理由は無い訳じゃない……。

「まあいい…………とにかく入ってくれ……」
「お邪魔しまーす」

理由は……千影ちゃんに逢いたかったから……。












正反対














「コーヒーで良いかい?」

千影ちゃんはお茶の準備をしながらアタシにそう尋ねてきた。

「いいよ。 ブラックでお願いね」
「分かったよ……」






「お待たせ……」

しばらくしてクッキー等のお菓子が入ってる器と
コーヒーの入ってるカップを乗せたトレイを持った千影ちゃんが
椅子に座って待ってたアタシの元にやって来た。

「美味しそうなクッキーだね。 どこで買ったの?」
「…………知りたいかい?」

アタシの質問に千影ちゃんは手に持ってたトレイをアタシの目の前のテーブルに置きながら答えた。

「いや、知りたいから聞いたんだけど……」
「…………」
「…………」
「……まあ…………どうしても、と言うのなら……」
「…………」
「…………」
「……やっぱ、いいや……」

そんな言い回しされるとなんか怖いんですけど……。






「しかし…………驚いたな……」

器の中のクッキーに手を伸ばしていたアタシに千影ちゃんがそう話し始めた。

「なにに?」

クッキーを口に頬張りながら千影ちゃんがなにに驚いたのかを聞いた。

「……丁度私が君の家に行こうと思っていた時に来てくれるなんて……」
「え! そうなの!?」
「ああ……」
「なんで?」
「なんで、って…………今日は君の誕生日だろう? だから祝いに……」
「え゛!!?」

アタシは千影ちゃんの言葉にすごく驚いた。

「…………まさか…………忘れてたのかい?」
「…………」
「…………」
「……アハハハハ……」

はい、忘れてました。
ずっとラボに籠っていたから今日が何日かなんて知りませんでした。

「まったく…………君と言う人間は……」

千影ちゃんが呆れた顔でアタシにそう言った。






「アタシと千影ちゃんってさ……なにもかも正反対だよね……」

アタシ達はお菓子を食べながらしばらくお喋りをしてた。
そして器の中のクッキーが半分くらい無くなった時にアタシがそう言った。

「ああ…………確かに……そうだね」
「アタシはメカとかコンピュータとかが好きで、千影ちゃんは幽霊とかオカルトが好き」

まるで正反対……

「で、君は明るいが…………私は暗いと……」
「いや、そういう事を言いたいんじゃなくて……」
「で、君は人を楽しませ られるけど、私は人を怖がらせると……」
「だからそういう事を言いたい訳じゃなくて……」

……でも、実はそれも含んでました……。

「……ホント正反対……」
「ああ…………その通りだね……」

アタシの言葉に千影ちゃんがそう続けた。
そしてアタシは呟くような小さな声でこう続けた。

「それに……好きになるタイプも……」
「何か言ったかい?」

よく聞こえなかったみたいで千影ちゃんはアタシにそう聞き返した。
でもアタシはその事を誤魔化すかの様に「別に……」と答えるのだった。






千影ちゃんはアタシと好きになる人のタイプが違う。
そしてそれは……性別も……。

千影ちゃんには好きな人が今は居ないかもしれないけどきっと男の人を好きになる。
でも、アタシは……女の人を好きになっちゃった……
しかも血の繋がりのある人間を……。

今、目の前に居る自分の姉を……。






「でも…………なにもかも、と言う訳じゃないだろう?」
「え?」

ふと違う事を考えてた為、アタシは千影ちゃんの声に不意をつかれた感じになった。
その事に千影ちゃんは気づく様子も無くこう続けた。

「君も…………コーヒーはブラックの方が好きなんだろう?」
「……まあね。 アタシってよく新しいマシンを作ってて夜更かしするから……」

千影ちゃんの問いにアタシはそう答えた。
でも最近は、千影ちゃんと同じ、って事が一番の理由かもしれない……。

「それに…………性別は同じ“女性”だろう?」
「……うん。 ……そうだね……」

アタシはその言葉に続けて千影ちゃんには聞こえないよう、
呟くように「だけどそこは違ってて欲しかったな」って続けるのだった。






なんでだろう……?
女の子同士なのに……。

始めは千影ちゃんの事を綺麗だなって思っていた。
女のアタシが見てもそう思うくらい綺麗なんだって思ってたけど……
最近それが“恋”と言う事に気づいた。






「そうだ…………」

そう言って千影ちゃんはポケットの中に手を入れた。

「どうしたの?」

アタシがそう言い終わったのと同時くらいに千影ちゃんは何かを握ってポケットから手を出した。

「君への誕生日プレゼント…………今渡しておこうと思ってね」

そう言って千影ちゃんはアタシの方に手を出してきた。

「プレゼント?」

千影ちゃんの手を見てみるとそこには小さな小箱が乗っかっていた。
そのまま千影ちゃんはゆっくりと小箱を開けてアタシに中を見せてくれた。
中には……

「……これって……」

小さな宝石の付いた指輪が赤い輝きを放っていた。

「……指輪?」
「……ああ……。 …………血のように紅い…………ルビーの……ね」
「…………」

千影ちゃんの言葉に一瞬言葉を失う。

「気に入らなかったかい?」
「気に入らなかったのは今の千影ちゃんの台詞……」

アタシは少し呆れ気味に顔に手を当てる。

「だったら…………この指輪は気に入ってくれたのかい?」
「え!? ひょっとしてこれがプレゼント!? ちょ、ちょっと待ってよ!」
「どうしたんだい?」

慌てるアタシに千影ちゃんは冷静に聞いてきた。
なんでアタシが慌てたかと言うとこう言う物は大抵物凄く高価だからだ。

「こんな高価なもの……アタシ受け取れないよ!!」
「でも…………君はいつも他のみんなからお金をせびるじゃないか?」
「…………それはそうだけど……」

でもアタシはみんなから少しずつ資金援助として貰っているだけで
決して高価な物に囲まれたいからと言う考えではない。

「アタシってこう言うオシャレってちょっとよく分かんないから……、こんな高価な物……」

貰ったところでネコに小判、豚に真珠。

……自分で自分の事豚って言うのもヤダな……。

「いいんだ…………私が君にあげたいんだから…………君は黙って受け取ってくれればいい……。
 それに……値段を気にしているなら大丈夫さ…………。
 ……そんなに高い物じゃあない」
「で、でもやっぱりこう言う物は……」
「その後…………質屋に持って行かないのなら……」
「いや、いくらアタシでもそこまではしないよ……」

確かに研究資金は欲しいけど……。

「…………まあ、そんな事しても何処も買い取ってはくれないだろうけど…………」
「…………」
「…………」
「……ひょっとしてこれって“いわくつき”?」
「…………」
「…………」
「…………大丈夫さ……」

だったら千影ちゃんはなんで目を背けるの?

「まあとにかく…………試しに一度はめてみてくれないか?」
「え!」
「君の為に用意したんだ…………君に似合うのか気になってね」
「でもアタシ受け取る気は…………まあ、はめてみるくらいならいいか……」
「そうか…………ありがとう……」

オシャレについてはよく分からないけど興味が無い訳じゃない。
だからアタシは指輪をはめてみる事にした。






アタシは小箱の中から千影ちゃんの指輪を取るとそれを自分の指にはめようとした。

「…………」

しかしアタシの手はそこで止まってしまった。

「どうしたんだい?」

そう聞く千影ちゃんにアタシはこう答える。

「……これ、はめたら外れなくなるなんて事……無いよね?」
「どうしてだい?」
「“呪い”で」
「…………」
「…………」
「……多分…………大丈夫だろう?」
「なにそれ!? なんで 疑問形!?」
「いいから早くはめてくれないか…………」

やっぱり“いわくつき”なんだろうか……。
そう思いつつもアタシはそのまま自分の指に指輪を近づけていった。

「待ってくれ……」
「え?」

すると千影ちゃんは、突然指輪をはめようとするアタシを止めた。

「そっちじゃ…………ないんだ」

そういうと千影ちゃんは片方の手でアタシの手から指輪を取り、
もう片方の手でアタシの左手を取ると……

「これは…………この指にはめて欲しいんだ……」
「え!!?」

……アタシの左手の薬指にそっとその指輪をはめてきた。






「ち、千影ちゃ……」
「これは…………こう言う意味で送りたいんだ……」
「こ、こう言う意味って……」
「君は…………変に思うかもしれないが…………私は本気だよ……」
「えッ!!?」

本気……? それって……つまり……

「私達は…………確かに正反対かもしれないね……」

千影ちゃんはゆっくりとした口調で話し続けた。

「だからこそ…………私は君に魅かれた……。
 私に無いものを持っている君を……」

その内容はアタシにとって信じられないものだった……。

「やっぱり…………君とは正反対なんだろうね」

だって……在り得ないって思ってたから……

「なんせ…………私は同性に そういう感情を持っているんだから……」

アタシは千影ちゃんに……

「そう…………君に……」

“告白”されたのだ……。






「…………」

突然の千影ちゃんの告白にアタシは驚きのあまり何も言えなくなってしまった。

信じられなかった……。
アタシ達は姉妹と言う関係でありながら両想いだったんだ……。

千影ちゃんはどんな気持ちでそう言ったんだろう?
アタシの手を握っている千影ちゃんの手から震えが伝わってくる。
きっと不安でいっぱいだったと思う……。
だから……

「なんだ……まだ同じ所があったじゃない……」

だからアタシも千影ちゃんに自分の気持ちを伝えなくちゃって思った。

「アタシも……そうなんだよ……。
 ……女の子に……千影ちゃんに……そういう感情持ってるんだよ……」

これを聞いた千影ちゃんはどんな顔をしているんだろう?
目が霞んでよく見えないから分からない。

「千影ちゃん……ずるいよ……。
 アタシこれ受け取るつもりなんか無かったのに……」

目が霞むのはアタシの目から涙がいっぱい溢れ出て来たから。
でもそれは悲しいからじゃない……嬉しいから……。

「そういう意味で贈られたら……、アタシ……これ受け取るしかないじゃない……」

アタシは霞む目を自分の指にはめられてる指輪に向けてこう言った。

「千影ちゃんの嘘つき……。
 やっぱりこれ……外せなくなっちゃったじゃない……」

だけどそれは“呪い”なんかじゃない……
アタシの“想い”がそうさせてるんだから……。


あとがき

この話はなんとなく失敗した気がする鈴凛のBDSS第一弾です。
この話、相手は千影です。
なりゅーはよく知らないのですけど、このカップリングは結構多いみたいですね。
何かで見た記憶があります。(勘違いかもしれないけど)
だったらこの話はあんまり自信が持てません。(汗)
ちなみになりゅーの作った鈴凛のBDSSはまだあります。
もし宜しければそちらの方も読んでください。
しかし鈴凛と四葉は誕生日の間隔が短いのでなんだか「もう誕生日!?」って感じがします。
最後に一言、鈴凛の浮気もn(ただの思い込みの為削除)
間違えました、鈴凛誕生日おめでとう。


更新履歴

H15・7/6:完成
H15・8/6:修正
H16・11/4:誤字他修正


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