「よーむちゃん! ポッキーゲームしよ!」


 11月11日はポッキーの日。
 ということでルーミアちゃんに仕込んでみたら、庭掃除中の妖夢が盛大にバランスを崩してすっ転んでいた。







 

小話みょんミア! 1
みょんミア P.S.







 本日11月11日は、幻想郷の外の世界では「ポッキーの日」というものらしい。
 なんでも「1」の並ぶ様子が、外の世界の棒状のお菓子、「ポッキー」を並べた様子に似ていることに由来するらしい。
 そんなことを、外の世界に精通している親友の紫が、以前私―――西行寺幽々子に高説してくれたことがあった。

 棒状ならなんでも良いと言うなら、いっそのこと「おはしの日」にしてくれれば良かったのに!
 ……と私の切実な願いを叫んだら、紫は「おはし4本並んで『いただきますの日』でもあるわよ」と追加で教えてくれた。
 私は断然こっちを推奨したい。おはしを使ってご飯をいっぱい食べまくろうの日。うん、素敵。外の世界の人たちのセンス、YESだわ。
 おっと、話がそれちゃったわね。

 さて、このポッキーの日とやら……ただお菓子を祝すだけならば、別段大したことはないのだけれど。
 大したことがあるのは、このポッキーを扱った「ポッキーゲーム」という遊戯の方である。
 これも紫が教えてくれた。むしろ紫は、この遊戯を紹介したいがために、ポッキーとポッキーゲームについて語ってきたのだけれど。


「ぽ……ぽっきぃげえむ、って……。
 あの……外の世界の棒状の洋菓子を両端からくわえて、同時に食べ進むっていう……あれですか……?」

「うん! それ!」


 今妖夢が、複雑な表情で解説した通りのものである。
 要は遊戯にかこつけてキスする口実よねー。

 かくいう私も、以前女好き変態妖怪の親友から、教わると同時に誘われてしまった訳だけど。
 その時はキモいという言葉と共に頬に右ストレートを丁重にぶち込んだ記憶がある。
 あの時はむしろ気持ち良いと返されてこっちが気持ち悪くなったので、2撃目は拳に死の力を込めて殴った。ぺちん、って殴った。
 結果、あの大妖怪様が1週間は死の呪いに苛まれ寝込んだらしいけれど、それはまた別の話である。

 ルーミアちゃんが、自分をとてつもなく恥ずかしいことに誘っていると知り、妖夢は引きつった表情を真っ赤に染め上げた。
 ちなみに、この遊戯の知識は、いざと言うときのためにと予め妖夢にも仕込んでおいた。
 やったね妖夢ちゃん! いざという時来ちゃったね☆
 大丈夫、ゲームの様子は、あなたのご主人様がしっかりと、桜の木の陰からインスタントカメラで撮影してあげるから!


「で、ですけどそれって、確かぽっきぃという外の世界の洋菓子がないとできない……」

「はい! これ!」

「なんで持ってるんですか!?」

「んーっとね……ゆゆちゃんがね、これでよーむちゃんとポッキーゲームしなさいって、くれたの!」


 はい、ゆゆちゃんがポッキーゲームしなさいってルーミアちゃんにあげました!


「わかりました。では幽々子さまの明日のみたらし団子は抜きにしましょう」

「なんでっ!?」


 木の陰に隠れているのも忘れ、思わず抗議の声を上げてしまった。
 妖夢の、余計なことしてくださりやがってこンのくいしん亡霊と恨めしく不忠義な視線が突き刺さってくる。
 おー、こわっ。……だけどね、よーむちゃん。あなた……そんなことしている余裕なんてあるのかしら……?


「…………だめ……?」

「うっ……」


 出た。ルーミアちゃん必殺、上目づかいおねだり。
 あの可愛さを前に、妖夢がルーミアちゃんに折れたことはただの一度もなァーーーーいッ!
 (※私も回避したことない。)

 自らを冥界一硬い盾と自負していた妖夢に、今ルーミアちゃんのピュアな瞳が最強の矛となって突き刺さる。
 どころか、うつむき加減な瞳には、じんわりと涙が溜まっていくという、第2の矛での追い討ち。
 最強の双矛と冥界一の盾、果たして勝つのは……! ……まあ勝負は目に見えているけど。


「わ……」

「わ?」

「分かりました……じゃあ……い、1回だけですよっ!」

「ほんとっ! わぁ〜いっ♥♥


 大方の予想通り、冥界一の盾の方が粉々に粉砕された。
 観念したようなため息を吐いて、その無邪気な笑顔へ頷く。
 その顔は……恥ずかしさ以上に、どこか、なにかを期待するように……赤らめながら……。
 あらあら〜、リア充爆発しろっ!


「仕込んだ本人がなに言ってるんですか!?」


 あ、いっけな〜い、つい声に出ちゃった てへっ♥♥
 なーんて、おちゃめに舌を出す私……の頭上を、飛んできた斬撃が掠めた。
 お気に入りの頭巾が、従者の忠義なき一閃で飛ばされて宙を舞う。ぎゃあー。

 一方、念願叶ったルーミアちゃん、顔中を満面の笑顔で満たしていた。
 それでも溢れ出るのを止められない嬉しい気持ちを、体で表現するよう、両手を広げてその場でくるくるくる〜、っと。
 まるで自分のしっぽを追いかけ回す子犬の様にはしゃいで回っている。
 妹のように愛でている子の無邪気な姿は……折れた桜の木に潰されて眺める私の胸を、どこか暖かくしてくれるのだった……。


「えへへっ……じゃあ……はいっ

「うっ……」


 一通り回り終わると、ルーミアちゃんは嬉々としてポッキーの小袋を開けて、中のポッキーを妖夢へと差し出した。

 妖夢は、少し躊躇いを見せた後、観念したようにポッキーを1本手に取って。
 そんでまた更に躊躇うよう、その1本をまじまじと眺めてから……意を決したように、ポッキーの端を口にくわえた。
 しかもわざわざチョコのついていない"持つ側"をである。
 おいしいチョコの部分をさり気なくルーミアちゃんに譲るとは、さすがよーむちゃん、ルーミアちゃんの前ではイケメンである。
 厳密に言えばイケウーメンである。


「えへー……


 ゆゆゆゆ! ついに遊戯開始かしら?
 覚悟を決めて、冥界一ガッチガチに固まってる盾ちゃん。
 きっと今なら普段以上の硬さで、最強の防御力を発揮してくれるだろう。さっき粉砕したばっかだけど。
 準備万端の妖夢を前に、顔をとろけさせるルーミアちゃんは……ほんと、心底嬉しそう……。
 カメラを持った方の手が木に挟まれていなければ、
 訪れる決定的瞬間を収めようと、某烏天狗のようにカメラを構えていたのに……ほーんと、もったいないなー。


「……えと…………、……どうするんだっけ?」


 そして、ルーミアちゃんのこの一言である。

 どうやらルーミアちゃんは手順を忘れてしまったらしい。
 緊張で固まっていた体は、ガクッとバランスを崩していた。


「ふぉふぃふぁふぇふ、ふぁんふぁいふぁふぁふぉ……。……ん?」


 お陰か、妖夢の方の緊張は解けたらしい。くわえたまま、ルーミアちゃんに説明をしようとする妖夢だったけれど……
 くわえたままの状態では、他者が理解できる言語が出てくることはなかった。
 まあ、あの子が腹話術なんて器用な芸当を取得している訳がないしね……。
 やむなく、一度口を塞いでいるポッキーを口から取って、


「ふぅ……えっと。ですからとりあえず、反対側をくわえ―――んむっ」


 そして今一度口を塞がれて、声が出せなくなってしまった。


「…………」


 ルーミアちゃんの、小さくて柔らかなくちびるで、覆われて……。


「……………ん…っ」



 ……ゆ、


「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっ!?!!?!?!?!!?!?!?!」


 YUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGA!


 最高よ! ちょう幽雅YUUGAよルーミアちゃん!

 妖夢の声にならない声を聞きながら、ルーミアちゃんの不意打ちに、思わず木の下でガッツポーズの気分。
 実際には手が挟まってできてない。
 ああもう、手が挟まれてなければ今すぐカメラで撮りまくってたのに……!!


「……んっ、ぷぁ…… めんどうくさいからもうポッキーなしでいいよ


 くちびるが離れると共に、妖夢は口と鼻から盛大に血を吐いて、膝から崩れ落ちる。
 その体内では心臓が激しく伸縮を繰り返し、全身の血管という血管が激しく蠕動して。
 血液は濁流のように激しく流動、脈打つ鼓動は体中の毛細血管を蹂躙していった。

 もともと色恋沙汰には疎くてウブで免疫の欠片も……まあルーミアちゃんのお陰で最近ようやっとわずか身についてきていたけれど……
 それでも全っ然まだまだ免疫のつかない妖夢には、不意打ちの刺激は強烈だったらしい。
 体中の穴という穴から今にも血を吹き出しかねない半死半生の状態に、幸福に抱かれながら陥っていた。
 生きている半分が半分死にかけているので、正確には4分の3が死んで残りの4分の1が生きているという状態だけど。

 なんともまあ、幸せそうな赤面ね……。私、幸せそうに痙攣する人なんて初めて見た。
 瀕死の重傷……むしろ瀕死の"充傷"を負わされながら、辛うじて口だけがぱくぱくと金魚のように動いていた。

 もっとも、それはだだもがく意味で口を動かしていた訳ではなく。
 耳をよく澄ませてみれば……「それじゃあポッキーゲームの意味ないじゃないですか」と、
 言葉にならない声で、途切れ途切れに、ルーミアちゃんのポッキー不要の暴挙に対する抗議を唱えていてのことだった。


「え……? だって、ゆゆちゃんが……。
 ポッキーゲームすれば、よーむちゃんとちゅーしても良いんだよ、って言ったから……」


 ……ああ。
 いや、確かにそう言ったけど……私そう言ったけど! そういう意味じゃないのよ、ルーミアちゃん!!
 ゲームにかこつけて、あわよくばしちゃえる、って意味だから!
 ゲームそのものを破棄しちゃったら、ポッキーの意味全くないから!


「えー、だって別にポッキーいらなーい……。むしろ邪魔〜……」


 ルーミアちゃんったら……。
 多分、ルーミアちゃんの中ではポッキーゲーム了承=キスOKという解釈になってて……。
 それだけ理解したから、肝心のゲームの内容なんて、もうどこかに行ってて……だから手順もなにも忘れちゃってたのね……。
 ポッキーゲームの意義そのものを否定して……ルールそのものから覆してしまうとは……ピュアっ娘、恐るべし。
 ごちそうさまでした。



 ちなみに、私の明日のみたらし団子は、予定通り抜きにされた。















あとがき

予てより考えていた小話みょんミア!シリーズ第1弾ー! どんどんぱふぱふ〜。
という訳で第1弾の、東方版ポッキーの日SS、いかがでしたでしょうか?

本編が、連続モノの長編になってて、完成までがとても重い。こんな重い状態じゃあ回転率も悪くなる。
また、そんな長いものよりも、短くサクッとみょんミアSSを読みたいと思う客層のためにもよろしくない。
そこで合間合間に短く短編SSを挟めるよう考えたのがこの「小話みょんミア!」シリーズです。
妖夢とルーミアがらぶらぶ前提、と言うことだけ了承いただければ、
本編を読まなくても楽しめる仕様です、そのつもりです! そ、そのつもりなんだよぉ……。
シリーズのタイトルは行き当たりばったりで決定してしまいました。絶対後で変えたくなる(爆


さて、肝心のSSの内容ですが、案自体は大分前に閃いていたのですけど、
いかんせん時期ネタということで、この日までとって置いておいた次第です。
時期ネタに絡むのが苦手ななりゅーさんも、久しぶりに時期ネタに参加できましたよ……。
ルーミアなら途中の細かいことがどうでもよくなりそう、って思ったらパパッと出来上がってました(笑
なぜなら、彼女はの型は闇ゆえの「無形」! 通常弾幕からも、パターンが決まっていないことからそれを読み取ることができるのです(ぉ


さて、実はこの作品、執筆は4日前に開始&シスプリ版と2本同時敢行という、
切迫した(させた?)状態でモチベーションが高まったこともあいまって、
今回は「細かいこと考えずに短く書き上げる!」をテーマに仕立ててみました。
だから細かい点をセルフ指摘したくて仕方ないというか(笑
逆に、細かいことを気にしないで書く重要性と言うものも身につけてみたかったんですよねっ!


今回みたいな小話みょんミア!シリーズは今後続ける予定ではありますけど、
正直保証はしかねるので、絶対とは言えないのですが(苦笑
気が向き次第、短編みょんミアを増やして行こうと思いますっ!


更新履歴

H23・11/11:完成


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