白玉楼は桜の名所。
 春になると庭いっぱいに植えられた桜は満開の色を示し、その彩りを優雅に披露してくれる。
 いつも妖夢が丹念に世話をしていてくれているだけあって、今年の開花はより美しく、長く咲き乱れて。
 5月も半ばになろうとしているのに、まだまだ衰える様子さえ見せちゃいなかった。

 もしかしたら、宵闇の少女が庭師に招いた春が、桜たちにもより一層の春のぬくもりをお裾分けしたのかもしれない。
 そう思えば……うふふ 今年の桜が美しく、いまだ枯れずにいられるのも当然のことよね。

 そんな、本来なら再び桜の眠り始める季節に、友人の使いが少し遅れて桜を楽しみにやってきた。


「はい。これが今回借りてた分よ」

「ほう……今回もまたたっぷりと借りてたようですね」


 桜の季節になると訪ねてくる彼女は、いつも庭の桜に向かう前にひとつの用をこなす。
 彼女を白玉楼のとある一室まで案内すると、畳の上に並ぶいくつもの風呂敷包みが私たちを迎えてくれた。
 包みの中は、彼女のご主人様から借りた"外の世界"の書物が大量に入っている。


「大丈夫? ちょっと多いかしら……」

「いえいえ、幽々子殿のご心配には及びませんよ」


 言うや否や、なんの前触れもなく畳の上に置かれてた風呂敷が全て浮かび上がった。
 おそらく、彼女の使役する不可視の式神たちが荷を持ち上げたのだろう。

 手で印を組むなり集中して念じたりもせず、自然体のまま悠々と命令を下せるとは……
 彼女自身も式神だというのに、手慣れたものである。
 なんでも長い間式変化していたおかげで自身も式神を扱うことができるようになったとか。
 いかにご主人様アイツがこき使っていたかが、手に取るように分かるわ。


「いつも悪いわね」

「これも式の務めですから。慣れたものですよ」


 こき使われる己の境遇に不満を漏らすでもなく、狐が妖獣は穏やかな微笑みのまま答えた。
 力の象徴である九本の尾が、ふわり風に揺れている。

 彼女は私の親友の忠実な式神。
 この場合の式神とは、妖獣等に鬼神などを憑依させる「式神」という術式を被せ、その上で成り立っている主従の関係のこと。
 九尾が妖狐の彼女もそれにならい、私の親友と契約を交わして長年仕えている。

 彼女は毎年桜の咲く季節になると、冥界の花見名所であるこの白玉楼に足を運び、桜を嗜むのを恒例としていた。
 そして、桜の咲く季節になると、彼女の主のアイツが冬眠から目覚めたと、彼女の口より報せてもらうのが私の通例だった。
 そんなものだから、冬が来る前にアイツから大量に借りた書物を、このタイミングで返却するのもまた習慣であり通例なのである。
 帰りに寄ってくれれば荷物を気にせず楽しめるというのに、気をつかってかいつも庭に向かう前に荷物を受け取ってくれるのだ。

 つまるところ……今年もまたアイツが目覚めたことを、彼女は伝えに来てくれたのだ。


「……にしても、我ながら大量に借りてたものね」


 目の前に浮かぶ風呂敷包みを順に眺めて、その量に改めて感心する。
 その量を運ぶ当人である九尾の彼女は、ただ暢気に、ははは、と笑っていた。

 まー、それも仕方ないわよ。アイツに冬眠されると、当然冬の間はコンタクトが取れなくなるもの。
 そして私の身近で……というかこの幻想郷で"外の世界"に精通しているのはアイツくらいしかいない。
 だから冬眠の前に大量に借り溜めておかないと、冬の間はずっと、貴重な外の知識を堪能できなくなってしまうのだから。


「むしろ、急いで返さなくても良かったのですよ? これだけの量、読む方が骨でしょうし」

「うふふっ。その心配はご無用。なぜなら、まだ読んでない風呂敷ひとつ分は、ちゃあんと確保したままですから」

「おっと、これは余計なお世話でしたね。はははっ」


 今回借りた書物もなかなか面白いものが揃っていて、ついつい先が気になり、気づけばあっという間に読み終えてしまった。
 中でも今回のイチオシは、空の遥か彼方、別の星に居るという王子様がこの地球に降り立ち、「友情」をテーマに悪と戦うといった内容のもの。

 両親の引き起こした不慮の悲劇により地球に捨てられてしまった王子が、
 ある時は規格外の物の怪と戦ったり、オリンピックという公式の大会を勝ち抜き優勝したり、
 またある時は、悪魔を名乗る者にバラバラにされた自分のかけがえのない従者を救うべく、仲間たちの力を借りて戦ったりもした。
 最終的には自らの王位を賭けてニセモノの王子たちと戦い、見事王位を手にする。
 それまでの苦難を通して友情の大切さを伝えてくれる素敵な物語。

 いつも貸してもらえる本とは趣向が真逆だったこともあって新鮮だったし、
 常に不利な状況に陥りながらも奇跡の大逆転をくり返す主人公には、柄にもなく子供のようにはしゃいでしまった。
 あんまりにも面白かったから妖夢にも無理矢理読ませちゃったわ。

 それにしても外の世界では重い物の方が早く地面に落ちたり、幻想郷と違う現象が起きてるのね。ゆゆちゃんお勉強になっちゃった!


「ま、今年はあなたのご主人さまがなかなか起きなかったじゃない。お陰様で読む時間もたっぷり確保できたからね」

「今年は眠るのが遅かったですからね。その分、起きるのも遅かったみたいです」

「あー、博麗神社の温泉の?」


 部屋を出て、廊下で歩きながら話していると、九尾の彼女は「それです」と指を立てて言った。
 聞いた話じゃ、なんでもアイツは昨年末の博麗神社温泉騒動で一役買ってたとのこと。それでいつもの冬眠が遅れたとか……。

 アイツはぐうたらでお寝坊さんで仕事は自分の式神に任せっきりな、それだけ聞けばどうしようもないヤツなのだけど、
 その実、この幻想郷を管理する妖怪の賢者という、とても偉い立場にある。
 だから冬眠を遅らせてでも放っておく訳にもいかなかったのだろう。
 この幻想郷を守るため……幻想郷を愛するがゆえ……。

 ま、その異変を無事解決して頂けたお陰で、私は先日その温泉を堪能させて頂いたのだけどね。ありがとうマイフレンド。


「そちらの方は、この冬の間なにかお変わりがありませんでしたか?」


 今度は、九尾の彼女の方から、私に質問を投げ掛けてくる。まあなんてことないただの世間話。


「私? 私の方は別に…………あ!」


 特にはなかった、と答えようとして、その言葉を一度飲み込む。
 だって、とても良いことがあったじゃあないか。
 私は、「どうかなされましたか?」と目の前の九尾の彼女に向け、おもむろに扇子を広げては口元を隠し、満面の笑みを浮かべた。


「うっふふぅ〜、実はね! 私に可愛い妹ができたの

「ええっ!?」


 さっきからずっと穏やかなまま表情を変えずにいた彼女も、これには驚いた顔をみせた。
 さすがに予想外の台詞だったみたい。歩く足も止め、その場で固まってしまった。


「ふふっ……今度紹介するわ、あなたにも……紫にも、ね」


 はぐらかすように微笑んで口にする。
 依然理解しきれない九尾の彼女からは「はぁ……?」と曖昧な返事が返ってくるのだった。


「まあ、なんであれ、近い内に会う機会をご用意頂ければ大変お喜びになるでしょう。
 なんせ起きて早々幽々子さまが恋しいとおっしゃられていました。
 今頃は寝ておられますので、お呼びがかかればそれこそ今夜にも遊びに来るでしょう」

「相変わらずの夜行生活ねぇ……」


 友人の不摂生な生活習慣に、思わずくすくす笑いをこぼしてしまった
 まあ、人間と妖怪じゃあ物事の価値観も変わってくる。いくらお寝坊さんだろうと、種として"そうある"なら責めるのも筋違いだろう。
 だけどいいのだ、私と彼女の仲なんだから。


「ま。じゃあ近いうちにお茶会でも開―――」






「なにしやがるこの脇がぁぁぁッッ!!! 二百由旬の一閃ンンンンッッ!!!! ぶった斬ってやるあぁぁあああッッ!!」






「〜〜〜〜〜〜っっ!?」

「おや、この声は?」


 お茶会でも開きしましょうか、と言おうとしたところを、突然の絶叫が遮ってきた。
 反射的に耳を塞ぐも間に合わず、キーンと耳鳴りが頭に響いてくらくらする。
 一方、九尾の彼女の耳にも絶叫は響いてたはずなのに、彼女は変わらずのほほん平然としている。
 獣だから私より耳が利いて、私よりダメージを受けるはずなのに……なんか理不尽。


「なによ……あの娘ったら……」


 聞き覚えのある声とスペルカード名。
 絶叫の主が未熟な誰かさんなのは明らかで……
 今頃は庭掃除に勤しんでるはずなのに、一体どこの誰と弾幕ごっこで戯れているのか。職務怠慢も良いところ。
 大体、まんまと頭に血を上らせちゃって、そんなんじゃ勝てる弾幕ごっこも勝てなくなっちゃうわよ?

 それに、友人の使いに対し、大変失礼な振る舞いをしてしまってるじゃない。
 確かにあの娘は今、客人が来ていること知らないけれど、それを差し引いたとしても、あんな大声は礼を欠き過ぎている。
 これは、主としてちょっと従者に教育してこなくちゃならないわね。


「ほんと、まだまだ未熟なんだから……」


 私は、親友の式神に一言断わってから、ドカーンッとかぴちゅーんッとか鳴り響く庭の方へと足を運ぶのだった。







 

みょんミア

一、賢者の目覚めは波乱の序章に……








  ―――15分程度前―――






「ちょっと半レズ、相談に乗ってくれる?」


 いつものように庭掃除をしていると、いきなりやってきた脇に差別用語を吐き捨てられた。


「霊夢さん……それが頼み事をする態度ですか?」

「え? どこか失礼があったかしら?」

「私の呼び方だ、よ・び・か・た……!」

「まあなんだって良いわ。ちょっと相談に乗ってくれる?」

「よくないですっ!」


 穏やかな春の陽気に包まれるある日の午後、霊夢さんがわざわざこの白玉楼まで訪ねてきた。
 しかも玄関を通らず、直接庭から侵入はいって、私に話しかけてきたのである。
 霊夢さんがときどき遊びに来ることはそんなに珍しくもないことで、ついでに問答無用で不法侵入ってくるのもいつものこと。
 決して私の警護がずさんな訳じゃあない、この人が異常なだけである。あらゆる意味で。

 ……ああ、どうせ不意の来客だってなら、ルーミアさんが来てくれた方が良かったな。
 正直ノロケって言われても良いです、こんな巫女よりルーミアさんの方が恋しいです。
 まあ、この間お泊まりしたばかりだし、次に遊びに来るのは明後日って約束したから、それはないんだけどね……。
 今頃、新しいお気に入りスポットに追加したという森の空き家で、のんびりお昼寝でもして過ごしてるんだろうなぁ……。


「なにを遠い目をしてるのよ?」

「いえ、別に。ちょっと現実の厳しさを悟ってただけです」

「いーからすべこべ言わずに相談乗りなさいよ。ちゃんとお礼も持ってきたから。はい」

「そういう問題じゃなくてですね……って、ひも?」


 遠い目をする私の心境などお構いなしに、マイペースに話を進める霊夢さんは、ひもを私に差し出した。


「…………?」


 なんの変哲もないひもである。

 思わず受け取ってしまったそのひもを手のひらに乗せて、きょとんと眺めてしまう。
 見れば、とりあえずそのひもは長〜く続いていた。
 目で追っていくと霊夢さんの後ろの後ろまで続いていて、


「あーんっ! ほどいてー、ほーどーいーてー!」

「るぅーーーーーミアさんんんんんんんっっっっ?!!??!?!」


 某任○堂の鎖に繋がれた鉄球生命体を彷彿させるでっかい黒い球体が、聞き間違えようのない声で泣いていた。























「ひっく……。こわかっ、た…よぉ……ふぇ、え……ひっく……」

「あーもう大丈夫ですよ、ルーミアさん」


 私は庭掃除も放り出し、巫女に虐待されたルーミアさんを、慌てて日の光りの差し込まない客間へと案内した。
 泣きじゃくるルーミアさんの言葉は上手く文章になってはいなかったけど、途切れ途切れ紡がれるキーワードを繋げると、
 のんびりと空を飛んでいたところを襲われてひもで縛られてなんの説明もされないまま連れて来られた、らしい。
 突然問答無用で捕まったため、永琳さん特製日焼け止めクリームも塗る暇もなく、
 お陰でずっと闇を解くことができず、目隠し状態のまま不安な思いをしていたそうな。

 よっぽど怖かったのか(無理もないけど)、屋敷に入ってからも彼女は私から離れようとはしなかった。
 闇自体は解いていたけど、ずっと私の腕にすがって涙している。
 私は空いてる反対の手で、彼女の金色の髪を慰めるようになでてあげるしかできなかった。


「まったくっ! ルーミアさんをまた束縛プレイして引き摺り回すとか、なに考えてんですかっ!?」

「なによー、あんたが一番喜びそうなものを持って来たんじゃないのー」

「ルーミアさんをモノ扱いす・ん・なっ!」


 ちゃぶ台の上に頬杖ついて、半開きの目でのんびり何事もないかのように口にするが、
 妖怪相手とはいえこの脇がやったのは紛れもなく少女拉致事件である。
 こんなのが幻想郷の平和守ってるとか……世も末である。


「ったく……」

「…………ぐすっ……」


    ぎゅーっ……


「…………」


    ドキドキドキ……


「…………


 ……しかし、予定外に会えたことには、まんまと喜んでしまったことは否定できなかったりします。なでなで。


「……えへー

「まんまと喜んでるじゃないの。お手軽だな、あんたら」

「う、うっさいこの鬼脇がっ!」

「ワキガ言うな!」

「いや、そういう意味じゃないです」


 言ってから、そういう意味でもいいやと思った。


「……で、私に相談ってなんですか?」

「え? あ、相談ね、相談……あー……」

「……?」


 一通りルーミアさんのご機嫌が落ち着いてきたようだったので、私は霊夢さんの相談とやらを伺ってみることにする。

 ところが、霊夢さんは突然「あー」やら「うー」など、みょんな唸りをあげ始める。
 相談したいと自分からわざわざ来たというのに、何から話したらいのか考えあぐねているよう。

 仕方ないので霊夢さんが言葉をまとめるまで、焦らず待つことにする。
 その間もルーミアさんをなでてあげていると、その顔はますます嬉しそうにほころんで、とても可愛かった。
 かわいいかわいい、ああかわいい。なでなでなで……。


「実はね、ウザい妖精が居て……」


 なでなでなでなで……。


「えへへー♥♥

「それでそいつ……」


 なでなでなでなでなでなで……。


「えへへへー♥♥♥♥

「聞けや」

「……はっ!?」


 いけないいけない……ルーミアさんがあまりにも可愛いもんだから、ついつい夢中になってしまいましたみょん。

 我に返って軽く反省……私はルーミアさんの頭から手を離すと、改めて霊夢さんに向き合った。
 ルーミアさんは私の手を名残惜しそうに見送ると、中断させた霊夢さんを恨めしそうに睨みつけ、
 霊夢さんが睨み返してきたので、「ひぅっ……!」と小さく悲鳴を漏らしてしまった。

 私も睨み返そうとしたけど、脅えたルーミアさんが、より強く私の腕をギュッと抱きしめたので……
 すごくどきどきして……顔が、熱くなっちゃって……。
 霊夢さんの「ま〜ったく、そこの半レズはな〜にだらしない顔してんだか」というツッコミを入れられてしまうのだった。


「し、失礼しました……それでええっと、ウザい妖精……ですか?」

「そ。あんたもよく知ってるアイツよ、アイツ。あんたのハニーをいじめつくしたあのHバカ妖精」


 言い方は遠回しだったけど、ルーミアさんをいじめるような心当たりなんてひとつしかない。
 だから霊夢さんの言う「Hバカ妖精」というのが、すぐにチルノを指してるものだと分かった。(でもなんでHなんだろう?)


 ……って、


「だっだだだっ、だれがだれのハニーだっていうんですかッッ!!?!」


 ははは、ハニーだなんて……そんな……わ、私とルーミアさんって……ま、まだ恋人って訳じゃ、ないし……。


「あら? 私は誰とも言ってないわよ。幽々子かもしれないじゃない」

「うぐ……」


 はめられた……。


「うー……明らかにルーミアさんのつもりで口にしてるじゃないですかー。その切り返しは卑怯ですよー……」

「あらあら、勝手に勘違いしておいて責任転嫁?」

「だってそもそも幽々子さまがチルノごときにいじめられる訳ないでしょうに……。
 そりゃ確かに幽々子さまのことは尊敬しておられますけど、それ以前に私と幽々子さまは主従の間柄ですし……。
 だからそのようなやましい感情、抱く訳ないでしょうに……」

「……ふーん」

「大体私なんかより遥かに気高く尊い幽々子さまと色恋の間柄だなどと、仮に男と女だったとしても恐れ多い」

「…………」

「抱く抱かない以前に、分不相応にも程があるじゃないですか。そもそも幽々子さまの方が私なんかを見染めるだなんてことある訳―――」

「あーもう、いい加減止まれ。そこまで食いつかれたら本題が話せない」


 自分から横道に逸れるようなこといって来たクセに、私ばかり責められるとかひどい。
 そりゃ過剰に反応をしてしまったことは認めざるを得ないけれども……ああ、どうもその手の話題にはとんと弱いな。
 しかし会話が前に進まないのもまた事実で。無理やりにでも頭を切り替えようと、ゴホンとひとつ咳払いをする。


「えっと、それでチルノがどうかしたんですか?」


 さて……実はそんな質問するまでもなく、チルノの名前が出て来た時点で、頭の片隅では既に心当たりを探り当て終えていた。
 例の、幽々子さまに叩きつけられた挑戦状。
 それに私もわずかながらに関わっていたから、正直霊夢さんとチルノが今どういう展開になっているか、おおよその見当はついている。
 けれど、少なくとも私は巫女と妖精の間で起こってる事は知らないことになっている。
 霊夢さん本人に、第三者がそれを把握してるなど知られるのは、都合非常に好ましくない。
 なので、ひとまずなにも知らないことを装い、素知らぬ顔で対応することにした。
 ……ま、詳細を知らないのは事実だし。


「この間ね……まあ、別に意図した訳じゃないんだけど、たまたまあのバカを助けてやったのよね」

「はあ、霊夢さんにしては超珍しい気の迷いですね」

「そこまでは良かったんだけど……アイツ、それから毎日神社に通って来るようになってね……」

「霊夢さん、針投げないでください。痛いです」

「その時の礼をさせろってんだけど……なにを勘違いしたか、私にしつこく絡んでくるようになったのよ」

「ルーミアさん、針抜いてくれてありがとうございます。お礼にもっとなでてあげます、なでなで」

「助けてやった日から丸々1週間、毎っ日毎日神社にやって来てね……」 

「えへー……

「ほら、あんただってこの間みりんを訪ねに神社に来た時見たでしょ?」

「なでなでなで……そういえば来ていましたね」


 直後に私がぶった斬ったけど。


「まー、その日は助かったわ。お陰で妙に誘われずに済んだから」


 どうにも先日のそれは、結果的に霊夢さんを助けてしまったらしい。

 ちぃッ……! そうと分かっていれば、なんとしても刀を鞘に収めたままにしておくべきだった……!


「……うん? "誘う"? あれ、確かお礼の話だったんじゃあ……」


 途中、霊夢さんの代表的な退魔具・バスウェイジョン・ニードルが飛び出したりした会話の中で飛び出した不思議な単語が気に掛かった。
 チルノがお礼のため、毎日神社に通っているってのは某マスゴミ鴉から聞いていたけど、
 それと"誘う"という表現は、いかんせん噛み合わない気が……。


「…………」

「霊夢さん?」


 私の問い掛けに、霊夢さんは急に押し黙ってしまった。
 不思議に思い更に首傾げる。


「………………で……」


 ほどなくして、霊夢さんの口より……小さく、細々と、続きが紡がれ始めた。


「……デートに……誘ってくんのよ……」

「えええぇぇぇッッ?! でででぇとぉぉぉおおっっっ!?」

「ちょっと、うるさいっ! 静かにしなさいよっ!」


 思わず大声で驚いてしまう。いや……さすがにこれは、驚きますよ……。

 確かに、件の黒幕さんの目的はそれなんだけど、それにしたって、まだ勝負が始まってから1週間じゃないか。
 なのにチルノは、いつの間にかそこまでのアプローチするまでに……もうそこまで籠絡していたとは……。
 さすが、勝手知ったる母と娘。……って言ったら怒られるんだけどね。


「ふたりの間に、一体なにが起こってるんですか……?」

「あーもうっ! そんなん私が知りたいわよ!」


 霊夢さんだって上手く理解できていないらしく、そのことに頭を抱えるように憎々しく吐き捨てるしかできない。
 それ以前に自分が女にデートに誘われているという事実。
 そのテの話題を毛嫌う霊夢さんにとってそれは、口にするのもはばかられるほどいやなことらしかった。


「で、もういい加減なんとかしたくてね。あんたに相談しに来たって訳」

「え? ……えっ?! わ、私にッ!? な、なんでですみょん?!」


 驚いて、思わず声が裏返りそうになった。

 まさか……私が関係者だってバレてる?

 霊夢さんの勘の良さは研ぎ澄ました名刀ように鋭い。
 だから先日隠れて窺っていたことも既にお見通しだとか……。それも有り得ないことではない。
 霊夢さんの鋭い半開きの目に睨まれ、すごく肝を冷やし、更には滑舌までも悪くなってしまう。

 が、どうやらバレということではないらしいことを、霊夢さんは自らの口から告げてくれた。
 ……もっとも、私としてはそっちの理由の方が、更に驚かされることであったのだけど……。


「そりゃ、あんたが経験豊富だからに決まってるじゃない」

「ええッッ!?!?」


 それは純粋に、私という個人を頼っての相談だという。

 それこそ天地がひっくり返り、太陽が西から上り、この脇が善人になるくらい有り得ないことだと思った!

 いやだって、私は普段から半人前だの頼りないだの未熟者だのさんざ言われて、当然霊夢さんからもそう扱われてきたんですよ?
 純粋に私を頼ってくれるのも、ルーミアさんぐらいしかいなかった。
 そんな頼られることの少ない私に、まさかあの百戦錬磨の博麗の巫女が頼ってくるだなんて……信じられず、一瞬夢でも見てるかと思った。

 だけど……よくよく考えてみれば、私は、自分が人間の一生分は軽く生きていることに気づく。
 なるほど。そう考えれば、人間である霊夢さんから見れば、人生経験豊富と取られても合点は


「私、レズ経験持ってるヘンタイ、あんたらぐらいしか知らないんだもの」


 ……そういういみかよちくしょう。


「ま、そんな訳で、女性経験をお持ちでいらっしゃるI半レズの意見を聞きたくて、わざわざ冥界まで足を運んで来たって訳」

「Iってなんですか、Iって!?」

「なによー。私、ちゃんとあんたらがキモ〜くまぐわって肉体関係持った瞬間この目で見てんのよ。今更誤魔化す気?」

「ちょちょちょちょちょッッ……!? ごごご誤解を招くような言い方しないでくださいよッ!?」


 に、肉体関係ったって、そんな肉欲に塗れたことまでやってないですよっ……!

 …………き……キスまでじゃないの……。


「キスまでいってりゃ十分ヘンタイでしょ、この半レズ」


 ……はい、十分ヘンタイさんでした。しくしく。


「で、I半レズはHバカをどうしたらいいと思うかしら?」


 相談に来てるならせめて人の機嫌を損ねるようなことは控えると思うんだけどな。まるでお構いなしだよこの人。
 まあ、今に始まったことじゃないけどさ……はぁ……。
 いちいち気にしても仕方ないので、諦めて私なりに相談に乗ることにしよう。
 ……と、思ったのだけれども、


「んー……その前に。霊夢さんはチルノとは仲良くなりたい……訳じゃないですよね?」


 その前にひとつ、確認しておくべきことがある。
 私は、霊夢さんの問いに答える前に、まずそんな風に質問を返した。


「……は? なに聞いてたのよ。そんなん当然、厄介払いしたいに決まってんじゃない。女同士だなんて気持ち悪い」


 とまあ、霊夢さんの口からはなんとなく分かりきっていた返事が飛び出してきた訳でして……。
 分かっちゃいたけど……面と向かって批判されてる気がして言葉のバスウェイジョン・ニードルが心にグサリ。
 頭を抱えたくなりながらも、予め用意していた返事を霊夢さんに返した。


「あー……でしたら、余所を当たった方が良いかと……」

「なんでよ?」

「なんで、って……。そりゃあ……」


 私は、空いている右手で、自分の左腕辺りを指し示す。


「えへー


 そこには、さっきからず〜〜〜っと私の腕に抱きついて、満面の笑みを浮かべるひとりの少女の姿。
 すっごく幸せそうに……自分で言うのもなんだけど、仲睦まじく。


「……ああ、聞いた私がバカだった」


 その様子だけで、私の"経験"とやらが、どのような方向に役立つのか理解したらしい霊夢さんは、
 頭を抱えて、深く溜め息を吐くのだった。


「はぁ〜……レズのことはレズが詳しいと思ったけど、そうでもなかったわね……」

「すみませんでしたねぇ、期待外れで」

「そうね期待外レズ」

「新出単語を作らんで下さい」

「じゃ、私帰るわね」


 役に立たないと判断するなり、霊夢さんはあっさり席を立った。
 その切り替えの早さと決断力は見習うべきところはあるのだろうけど、
 人と接する態度としては最悪だなぁとか思って、やっぱり見習わなくていいやって思った。


「じゃあね。そこの正露丸製造機は置いてくから、ヘンタイ同士生産性のない愛という名の幻想にキモく酔ってなさいな」

「う・る・さ・い・で・すっ! いい加減人のことばかにするのやめてくださいよ……」


 思い通りにならなかったら罵倒してストレス解消とか……これ本当に博麗の巫女せいぎのみかたの台詞?
 信じられますか? こんなんに幻想郷の平和担われてるんですぜ?
 ほんと人格的に最悪だなこの人。
 さすがの私も、さっきからちょいちょいばかにされまくってるお陰で、
 堪忍袋の緒がギチギチ音を立てて中の繊維数本でかすかに繋がっている状態にまでなっちょります。
 (特にルーミアさんを正露丸製造機とか許すまじ……!)


「そーだよー。なかよしいいじゃなーい」

「あ?」


 しかし、剣士とは、いついかなる時も冷静さを保つ精神力は必要不可欠。
 もう帰るみたいだし、ここは精神の修行と超好意的ポジティブシンキングして、刀を抜くことだけは抑える。
 この魂魄妖夢、滅多なことじゃあ怒りやしません。
 はい深呼吸深呼吸……すーはー。


「うるさいわよ、正露丸製造機。ってか暑キモ苦しいから早く離れなさいよ」


 大きく息を吐いて、瞑っていた目を開くと、気づけば霊夢さんは私たちの近くまで歩み寄っていた。
 差し出した手をルーミアさんのおでこの前に差し出すと、力を溜めこんでいた中指を弾くように、ルーミアさんにでこぴんをくらわ


    ぺちっ!


「あぅっ!?」

















    獄界剣「二百由旬の一閃」


















    \ ぴちゅーん! /


















「気ぃ済んだ?」

「よよよよーむちゃん!? だだだ大丈夫っっっ?!?」


 霊夢さんに脊髄反射でスペルカードをぶっ放した私だったけれど、
 直後、見事返り討ちに遭って、上下ひっくり返った体勢で庭の木にもたれ掛かっていた。

 ルーミアさんは心配そうに、部屋の一番奥からその様子を眺めていた。
 本当はもっと近くに掛け寄りたかったみたいだけど、障子戸は私が体当たりでぶち抜いてしまったため、
 仕切るもののない部屋に容赦なく降り注ぐ光のシャワーを厭い、近寄ることもできずに一番奥から眺めるしかなかった。

 ううう、雪辱を晴らすどころか返り討ちに遭うとは……悔しい。


「じゃ、そういうことで私余所を当たるから。あとはしっぽりヘンタイライフを堪能してなさい、私の見えないところで」


 そして負けた私に追い打ちをかけるように、言葉にわざわざトゲトゲな装飾を施しては容赦なくぶつけてくる。
 私が春を集めた頃と脇巫女は変わってないな。誠に酷く、傍若無人である。


「あ、そだ。カード、ほら渡しなさい」

「……はい」


 ちなみに、勢いで始めたとは言え、決まり事は決まり事なのでカードの交換は一応律義にやっておく私たちでした。


「あらあら、騒がしいと思ったら、博麗の巫女さんが来てたのね」

「あ、幽々子」

「幽々子さま!」

「うわっ、障子ぶっ飛んでるっ!?」


 と、庭でスペルカードの受け渡しを行っていると、騒ぎを聞きつけたらしい幽々子さまが、脇の廊下からお姿を現された。
 そして、私がぶち抜いた障子が庭にででーんと横たわるのを見て、目を大きく見開いて大変驚かれていた。


「申し訳ありません、私の不手際です……」

「なに? これ妖夢の仕業なの?」

「はい……」

「もうっ妖夢〜。元気なのはいいけれど、もっと慎みを持ちなさい。ぱんつ丸見えよ?」

「返す言葉もございません」


 包み隠さず罪を認めた。ぱんつは包み隠すけど。
 霊夢さんの挑発に乗ったとはいえ、仕出かしたのは私自身。
 しかし屋敷の一室をダメにまでして臨んだクセに、結果返り討ちとは、本当に嘆かわしい……。
 己の未熟さを心底恨めしく思いつつ、体勢を直すのも忘れ頭を下げるしかなかった。
 物理的には持ち上がる形になるのだけど、心の中では下げているのだった。


「で? あなたは一体どういう風の吹きまわしでここに?」


 のほほんとした様子のまま、幽々子さまはそのお顔を霊夢さんに向け訪ねる。
 もう帰る体勢に入っていた霊夢さんとしては、最後に一手間増えたとめんどうくさがってるようで、素っ気ない態度のままで答える。


「別に。もう用も終わったし、帰ろうとしていたとこ―――」

「なんでもおんなのこ同士の恋愛に興味があるそうで、そのことについて私に意見を求めに参ったとのことです」


 私は、幽々子さまの疑問を早急に解消できるよう気づかい、霊夢さんに変わって答えを返した。
 そしたら脇の巫女が放った退魔の針がおでこにぷすっ、アーッ!!


「うっさい、余計なこと言うなこの半レズ……」

「事実じゃないですか……痛たた……」


 バスウェイジョン・ニードルを再び額目掛けてとかひどい。
 目にも止まらぬ早業で射ち込んでは、冷めた半目とドスの利いた声で吐き捨ててくる。
 よっぽど気に障ったらしい。おでこは痛いが……ざまみろです。


「お、女の子同士の恋愛って……まさか、博麗の巫女さんがとうとう百合に目覚め――」

「――る訳ないでしょ!! なんか勘違いしたバカ妖精がしつこく絡んでくるから、なにかいい方法がないか相談しに来ただけよっ!」


 あら、あの霊夢さんがムキになるとは珍しい。
 幽々子さまが誤解なさるのを、最後まで言わせずに覆いかぶせるように即座に否定していた。
 いつもマイペースな霊夢さんにしては、相当焦ってたように見えた。

 ……まあ、自分がなにより嫌悪しているヘンタイさんに巻き込まれそうになったんだし、無理ないかも。


「だけどなんで妖夢に?」

「それはあいつがレズだから」


 斬りてぇ……。あの巫女斬りてぇよ……。斬るために強くなりてぇ……。
 なんでこんな残虐非道な脇鬼羅刹わっきらせつが溢れんばかりの才を持ち備えてんですか、ちくしょー。


「やれやれ、白玉楼ここはいつも騒がしいですね」

「……!」


 その時、私たちのやり取りの中にもうひとつ、予期せぬ新しい声色が加わった。

 声の主は、その姿をすぐに私たちの前に現わした。
 青い前掛けにゆったりとした法衣、獣の耳の形になぞった帽子を被り、
 背にはふかふかと気持ち良さそうな尾を9本携えた、狐の妖獣の姿……。
 馴染みのあるその姿に、私は思わずその方の名前を口にしていた。


「藍さん! 来ていたんですか!?」

「ああ、こんにちは。お邪魔させて貰ってるよ」


 幽々子さまのご親友が使役する式神・八雲藍さん。
 互いの主が友好関係にあることもあり、従者同士としてそれなりに深い面識があるお方。
 同じ従者同士とは言っても、従者としての実績は私なんかとは比べ物にならないくらい大先輩。

 九尾の妖狐を基盤にした式神だけれども、その気質は伝承に伝わるような荒々しいものとは違い、穏やかで優しい気性の持ち主だ。
 長年仕える者として過ごしてきた経歴からか、落ち着きがあって慎み深く、常に物事を冷静に見極めることができる聡明さを持つ。
 それでいて、いざとなれば最強の妖獣と謳われる力をもって外敵と戦い、その卓越した実力を遺憾なく発揮する。
 主の命にも忠実で、下された使命は必ずと言っていいほど果たす忠誠心も備えている。

 時には母のように優しく、姉のように見守り、時には獣のように強靭で、武士もののふのように忠義に尽くす。
 従者としては、これ以上ないくらいの理想像。
 私もいつかは藍さんのような従者になりたいと、目標としている大先輩である。


 藍さんは、幽々子さまがやってきた通路の奥より参ると、そのまま幽々子さまの横に並ぶ位置で陣取り足を止めた。
 側には彼女を取り巻くように、いくつかの風呂敷包みが浮かんでついて来ていた。


「毎年恒例の個人的な花見さ。いつも通り、ここの桜を楽しませて貰おうと思ってね。そして君はそろそろぱんつを隠すべきだよ」

「わわっ!? す、すみませんっ……!」


 意外な来客に驚いて、思わずスカートを抑えていた手を離してしまっていたらしい。
 藍さんが穏やかな面持ちで私の下着を覗いては、優しく掛けられた声に、慌てて身なりを整え立ち上がった。

 その様子を見て、先程まではのほほんと眺めていた幽々子さまが、少し困ったような声色で藍さんに話しかけた。


「申し訳ございませんわ。うちの従者が騒がしくしてしまって……。これでも普段は静かで厳かな所なのですけど……」


 そこで今更ながら、自分が考えなしにやかましくはしゃいだ喧騒が、藍さんにまで聞かれていたことに気づく。
 客人に対する粗相は、幽々子さまのお顔に泥を塗るばかりか、この白玉楼の品格を下げさてしまったしまったことと同義。
 藍さんが来ていると知らなかったとはいえ、そんなことは言い訳にならない……!
 常に礼節を弁えて振る舞うことこそ求められるというのに……くっ、主に恥をかかせてしまうとは……魂魄妖夢、一生の不覚……!


「す、すみません! 私が悪……!」

「おっと、失礼。愉快なところだと褒めたつもりだったのですよ」


 しかし、藍さんは特に気にする様子もなく、むしろ好ましいと、穏やかな微笑みのままで答えてくれる。
 付け足すように気にすることはないさ、私に向けてそう一言掛けて下さった。
 私の心境さえも読み取り、気づかえる藍さんの姿に、つくづく、憧れてしまう……。
 私もいつか、藍さんのような落ち着いた素振りを身につける事が出来るのだろうか? 先は長い……。

 それから藍さんは、穏やかなままの表情を、私から霊夢さんに移して、一声掛ける。


「あなたも、相変わらずハチャメチャやってますね」

「うっさい、私の勝手でしょ」


 ハチャメチャなんて微笑ましいもんじゃないのですよ、本当に鬼なんですよ。鬼以上に鬼らしい脇鬼羅刹ですよ。

 期せずして、藍さんの穏やかな表情と霊夢さんの不機嫌な表情が向き合っていた。
 互いの顔の色は正と負真逆。
 向かい合わせてそれぞれのエネルギーを打ち消し合っているようにも思えた。
 無駄に緊張感が走る。

 その時、唐突に、パンッと手を叩く音が響き渡った。


「そうよ! 紫に相談すればいいじゃない!」


 同時に聞こえたのは幽々子さまの声。
 一体なんのことか、唐突に幽々子さまがそんな提案をなさっていた。

 全員の表情が幽々子さまに向けられる。
 先程まで十人十色、穏やかだったり不機嫌だったり話に参加できなくてぽえぽえしてたりと様々あった表情は、
 みんなおんなじ頭に疑問符を浮かべた表情に揃っていた。


「えーっと、なにがでしょう、幽々子殿?」


 この場の全員の意見を代表するよう、一番近くに居た藍さんが聞いた。
 さすが藍さん、空気の読める式神。


「なにって、そこの巫女さんの相談ことよ」


 幽々子さまがあっさり返すと、藍さんは「ああ、女同士がどうとかというやつですね」と納得したように頷いた。
 私はやっと、幽々子さまが話の矛先を、先程の霊夢さんのお悩み相談に戻したのだと理解する。
 藍さんがここに現れる前の会話だったのだけど、その妖獣としての優れた聴覚は、離れたところで行われた会話を聞きとるくらいは容易らしい。

 ……ってことは、私がレズビアンだとかその辺の発言まで聞かれてるってことですよね……?
 うん、あとで誤解解いておこう……。
 え? ご、誤解ですよ誤解! 私まだレズビアンじゃないですって!!

 ……まだルーミアさんへの気持ち、恋愛感情って決まった訳じゃないもん……。


「ゆかりに……?」


 一方、霊夢さんはようやっと言葉の意味を把握したのか、心底嫌そうにひくひくと顔を痙攣させていた。


「そ。なんたって紫はこの幻想郷の賢者よ? それに紫、あなたのこと気に入ってるし。ついでにアレだし。
 あなたのお悩みにも適ってる相手だと思うんだけどねー」


 指を立てて得意気に語る幽々子さまに、霊夢さんは顔の痙攣をますますひどくさせていた。

 八雲紫……藍さんの主であり、幻想郷の中でも屈指の実力を持った妖怪の賢者。
 そして、幽々子さまの親友であらせられる大妖怪のことである。

 確かに、藍さんはいつも紫さまが目覚めるタイミングで桜を楽しみにいらっしゃっては、その目覚めを私たちに伝えてくれていた。
 通例通りなら、既にお目覚めになられていることになる。
 いや、幽々子さまが藍さんと共にやって来たことを考えれば、幽々子さまは既にその事を伝えられており、その上での提案してる違いない。

 霊夢さんの顔の痙攣は、ひきつけを起こしたように更に酷くして、暗に拒絶の意志を示していた。
 ……だけれど、そこはさすが幽々子さまだった。


「そういう訳で先程の話、近い内と言わず、今夜会うってのはどう? うちに来てもらっても良いし、なんなら博麗神社で落ち合うとかでも」

「ちょ、ちょっとちょっと!? なに勝手に話進めているのよっ!?」


 テキパキと話を進め、止める隙も与えず藍さんに話を持ちかける。しかも博麗神社まで会場に組み込む手際の良さで。
 霊夢さんは少し焦った様子で止めに入るが、しかし一手遅い。
 幽々子さまが一手上回った、とも言える。


「ならば夜と言わず、今すぐこちらに呼んできましょう。紫さまのことです、報を知らせ次第足を運んで下さるでしょう」

「「なっ?!」」


 藍さんはすんなりと提案を受け入れたのだった。
 藍さんも幽々子さまと同じ頭の回転の速いお方、色々察して、即断を下したのだろう。
 その様子を見て、驚く声が二重になって響く。
 霊夢さんの声と……私自身の声だ。


「ほんと! ……でも良いのかしら? 紫って基本的に夜行性じゃない。こんな真昼間っからなんて……」

「確かに、余程のことがない限りはいくら起こそうとしても無駄でしょう。
 しかし今は幽々子殿だけでなく霊夢殿も居らっしゃれば、それは紫様にとっては"余程のこと"なのです。
 それに、もうひとり特別な接待役も揃っていることですし、むしろ報を遅らせ、この期を逃そうものなら、私の方が罰せられるというもの」

「……? そーぉ? じゃあお願いしちゃおうかしら?」

「ちょっとちょっと、私は別に紫に会いたいだなんて一言も……!」


 話の進む中、霊夢さんは諦めずに割り込もうとしていた。


「ではひとっ走り、紫様を呼んできますね」

「悪いわね……。桜を嗜みに来たって言うのに、お仕事任せちゃって」

「いえいえ、これも式の務めですから」


 しかし裏で喚いている声など無視して(話題のメインなのに)、着々と話を進める幽々子さまと藍さん。
 本当は聞こえてるのか、それとも集中してて本当に聞こえていないのか。
 ふたりとも知恵者なだけあって、抜かりなく、つつがなく、会話を完遂させるためにパーフェクトなスルースキルを発揮中だった。


「本を傷めてしまう訳にも行きませんし、紫様の本は一度ここに置かせて貰って構わないですか?」

「構わないわ」

「私に構いなさいよ!」


 霊夢さんが上手いことを言っている横で、藍さんは式神が支えさせていた風呂敷包みを、邪魔にならない壁際にそっと寄せる。
 そして軽く念じるように集中すると、藍さんの身体に見えない力が集まっていくのを感じる。
 身体強化の式を自らに憑依させたのだろう。


「では、また後ほど……!」

「待ちなさ―――きゃっ?!」


 藍さんは短く告げると、すごい風速を辺りに巻き起こし、霊夢さんがその風圧に小さく悲鳴を上げていた。
 そうして、妖獣の身体は矢のように飛んで、あっという間に豆粒ほどに小さくなってしまった……。


「あー……」


 霊夢さんは、その様子を情けない声をあげて見送るしかできず、ただただ放心状態に……。
 そして急にストッパーが外れたかのように、今度は幽々子さまの胸倉を掴んでその憤りをぶつけ始める。


「幽々子ッ! あんたなに考えて……!」

「あらあら、久しぶりに目覚めた親友に一刻も早く会いたいって思うのは、おかしなことかしら?」

「だったら私の関係のない時にッ……!」

「け・ど、もう無駄でしょ? 紫はもうあなたに会う気でいるんだから」

「うっ……ぐ……」


 おどけて言う幽々子さまだったが、その態度に釣り合わない深刻さで、霊夢さんは押し黙ってしまった。

 理解しているから。逃げたところで無駄だということに。


「ったく、まためんどうくさいことに……。わーったわよ、もう今更仕方ないからね。
 付き合ってやるから、お詫びにノンカロリーの冥界菓子食わせなさい!」

「はいはい。妖夢〜、この間の生八つ橋、まだ残ってたわよね?」

「…………」

「……? 妖夢ぅー、聞いてるー?」

「あ! も、申し訳ございません!」


 一方、藍さんが飛んでいった方角をずっと眺めていた私もまた、霊夢さんと同じく呆気に取られたように立ちすくんでいて、
 幽々子さまがお呼びになられていたことにすぐには気づけなかった。


「どうしたの、なにかあった?」

「いえ、別に……」

「……そういえば妖夢、紫を呼ぶって決まった時、博麗の巫女さんと一緒に驚いてたわよね?
 なぁに? よーむちゃんは私の親友ゆかりんに会いたくないって言うのかしら?」


 どうやら、しっかり聞き届けておられたらしい。
 さすがは、幽々子さまです……。


「いえ、滅相も……。そんなことは……―――」


 ……ない……とは言い切れない。

 以前の私ならそんなことはなかった。……まあ一昔前でも紫さまの胡散臭さには近寄りがたかったけど。
 それでも今よりはまだとっつき易かった……。
 今は……できることならば、会いたくない。


「けれど、いくら私が会いたくないとは言ったところで、お呼びすると決めたのは他ならぬ幽々子さまです。
 仕える身の私が、主の意向に口出しする訳にもいかないですから」

「もー、心配し過ぎよ〜。確かに妖夢が会いたくない理由は分かるけど」

「ですが……」


 私が心配なのは、ルーミアさんのことだ。

 私は良い……けれど今、ここにはルーミアさんがいる。
 ルーミアさんを紫さまに会わせれば、危険が伴うだろうことは明白で、
 だから紹介するにしろ万全の対策を取ってからという風に話していた、はずだった……。

 なのに今、こんな成り行き任せの無策で臨もうなどと、あの幽々子さまが……いや、"ゆゆこおねえちゃん"自らが言い出すなんて……。
 私が信じられなかったのはそこ。


「まあまあ、今日はルーミアちゃん来ていないんだし、なんとか誤魔化せるでしょ?」

「きてるよー」

「そうそう、こんなかわいいお声でルーミアちゃんいらっしゃ……なんで居られるのですかルーミア様ッッッ?!?!?」

「ええっとですね、霊夢さんが私への相談料ってことで無理矢理拉致って来ました。
 ちなみに日焼け止めクリームは使ってないようで、障子ぶち抜いたところからモロに日の光が差し込むので、
 ずーっと客間の奥の日陰で待機して会話聞いてましたけど」

「みょんだってーッ!?」


 幽々子さまがみょんな叫び声で驚きになられる。
 ああ道理で……紫さまがお訪ねになることをあっさり提案すると思ったら、気づいてなかったんですね……。


「そっか……もうひとり特別な接待役って、妖夢のことじゃなくルーミアちゃんのことだったのね……。
 なんか言い回しがおかしいなー、とは思ってたけど……」


 今更ながらに、藍さんが何気なく口にした言葉の意味を履き違えていたことを理解した幽々子さま。
 その一言に疑問は持っていたのだろうけれど、さほど意に留めず聞き流してしまったらしい。
 そしてそのことを心底後悔なさっていた。
 幽々子さまにしては珍しい凡ミスというか、弘法も筆の誤りというか。


「あー、博麗の巫女さんを逃がさないのにするのに集中してて、スルーするんじゃなかったわ」

「OK、花の下に還りやがれ、頭の中まで春の亡霊」


 額に手を当て天井を仰ぎ、後悔の念に苛まれる幽々子さま。霊夢さんはスルーして。


「妖夢……」


 迂闊だった。
 失敗した。
 許して欲しい。

 我が主の胸中には、それらの悔いがあるのだろう……。
 西行寺家の主としてではなく、"姉"としての。
 その悔いに包まれる面持ちは、すぐに凛々しく整えられ……決意を秘めた真摯な面持ちを掲げ、


「がんばっ」


 ペ○ちゃんみたいに舌を出して親指立ててお茶目に完全なる責任放棄の無茶振りを行うのだった。ちくしょう。
























 藍さんが去ってからしばらく、私たちは客間にて紫さまの到着を待った。
 もちろん、私がぶち抜いた客間とはまた別の部屋でである。

 不安を隠せずそわそわする私と、それとは対称的にのんびりお茶と冥界茶菓子をつまむ霊夢さん。
 外観だけは落ち着かせていたけど、内面は多分私と同じ思いで満たされていたと思う。
 会いたくない理由は山ほどあれど、ここまでお膳立てされた以上はもう正面から向き合うしかない。

 逃げても無駄だから。

 それはルーミアさんにも言えて、ルーミアさん自身はさっきの会話には直接参加しなかったものの、
 藍さんの妖獣として発達した嗅覚は、あの短い間にしっかりルーミアさんの匂いを覚えたに違いない。
 妖獣の嗅覚にて匂いで追跡されてしまえば、場所を特定するのは容易い。
 藍さん自身ルーミアさんを「特別な接待役」として認識している以上、ルーミアさんにも逃げ場はない。

 霊夢さんはもうあれこれ考えても仕方ないと腹をくくったのだろう、どっしりと構えておやつをむさぼっていた。
 霊夢さんらしいと言えばらしい。

 一方、幽々子さまは、久方ぶりに親友に会えるのを楽しみにしておられる模様。
 ルーミアさんの身の安全を考えれば、不安要素はなくならないけれど、一度口にした以上取り消すつもりもないらしい。
 元々、いつかは紹介するつもりだったのだから、それが考えていたより早くなっただけ。
 無策とはいえ乗り切ってみせる。そんな頼れる心持ちいるように見えた。
 勝算の程はどのくらいと見積もってるかは分からないけれど……主がドンと構えている以上、私ひとり逃げることばかり考える訳にもいくまい。

 大丈夫ですルーミアさん……私が、あなたを守ってみせるからっ……!

 その使命感を焚き木に、私はこの試練に立ち向かう決意を燃やす。
 声に出さず、胸の内で、堅く決意した。


「ねーねー、よーむちゃん。ゆかり、って……だれ?」

「あ、そうよね。ルーミアちゃんは紫のこと知らないのよね」


 重苦しいムードの漂う客間で、ルーミアさんはただひとり場違いにぽえぽえとした態度を浮かべていた。
 ルーミアさんは「八雲紫」に対する知識がないのだから、この空気に馴染めないはいたしかたないだろう。
 それでも、殺気立つ私たちの空気を肌で感じてか、ほんの少し心がざわついてるようでもあった。

 幽々子さまは、ご自分から紫さまの説明をなさると私に断わってから、ご親友のことを語り始めるのだった。


「紫は……八雲紫は、まあ私の親友で、幻想郷を見守るとっても偉い妖怪さんなのよ」

「そーなのかー!」

「それでどうすごいかって言うと―――」


 八雲紫。
 境界の境目に潜む大妖怪。

 その能力は驚異的で、「境界を操ることができる」。
 境界とは文字通り境目のこと。紫さまはそれを、自在に操ることができるのだ。
 ……と聞いただけでは、要領を得ないだろう。
 なのでひとつ私が体感した実際の例を挙げるとする。

 例えば、空に浮く月が水面に映っていたとする。
 当然、水面の月は虚像であり、そこに飛び込んだからといって月の都に辿り着くということはない。
 当たり前の話だ。

 だが紫さまが境界を操ったならば、それで月に行けるのだ。

 簡単に言ってしまったが、なにが簡単なものか。
 虚像の月と実物の月、その境界をいじり、水面の虚像を実物への入り口として機能させるなど、
 幻想の集まるこの幻想郷においても夢物語も甚だしいむちゃくちゃ。
 しかし私自身、実際にその水面の月を通り、月まで行ったことがある。
 夢ではなく現実にそれが起きたことは否定しようもない。

 それが「境界を操る能力」。

 またある時は、昼と夜の境界を操り、博麗神社に夜と昼を同時に存在させることだってやってのけた。
 かつて冥界と顕界を分かつ結界をお作りになられたのだって紫さまのである。
 他にも、夢と現の境界、光と闇の境界、生と死の境界だって……。

 あらゆる境界を自在に操ることができる紫さまの力は、この幻想郷を潰す事さえ容易い。
 幻想郷の人間や妖怪がなにより幸福なのは、紫さまがこの幻想郷を愛しておられることにあると言っても過言ではない。
 まさに存在そのものが反則的、それが大妖怪・八雲紫である。


「つまり、"ちーときゃら"なんだね!」

「そーなのよー」


 ルーミアさんがなんかよく分からない理解を示して、幽々子さまがご友人に失礼な感じに頷いていた。


「どう? 怖くなっちゃった?」

「んー……へーき! だってゆゆちゃんのおともだちさんだもんっ」


 その驚異過ぎる能力を知っても尚、ルーミアさんはにこり笑って応えた。
 ルーミアさんらしい、無邪気で明るい反応だった。

 ……というより、あんまり理解していないのかもしれない。
 だけどきっと……幽々子さまのご親友だから。ただそれだけの理由で、信じているんだ。
 なによりも幽々子さまのことを。


「ふふ…… 紫もきっと、ルーミアちゃんのこと気に入ってくれるわよ」

「えへへ、そうかな?」


 ……ああ、だけど……。だけどっ……!


「ルーミアさんは紫さまのことを知らないから、そんな気楽に構えていられるんですよ!」

「ふぇ……?」


 あまりにも楽観過ぎるおふたりの態度に見かねて、とうとう口を挟んでしまった。
 能力自体より、それを扱う人の中身の方が問題なのだ。


「大体幽々子さまは楽観し過ぎです! あの方がどんな方か、分からない訳じゃないでしょう!?」

「それはそうだけど……でもね、妖夢―――」

「お言葉ですが、最低限の警告ぐらいはさせて頂かないと……!」

「あんた人のこと言えないでしょー?」

「うぐっ……!」


 差し出がましくも幽々子さまに意見していると、横から霊夢さんが割り込まれて、ぐうの音も出せなくなる。
 ……霊夢さんの言い分ももっともだと思う。
 私がこれを言うのもおこがましいかもしれない……けど!

 せめてルーミアさんが自衛を意識できる程度には情報を与えさせて頂かないと……!
 どんなに見苦しくたって、これだけは譲れない!


「良いですかルーミアさん!」

「う、うん……」

「紫さまは……! あの方は……―――!」


 そして私は、ルーミアさんに最低限伝えるべき警告事項を伝えた。











「あらあら、藍の言う通り、本当ににぎやかで楽しいことになってるわね……」












「……!」

「この声は……」

「ついに来たか……」


 その時、虚空より物々しさを伴った声が、どこからともなく響き渡った。

 声がしたのは客間の中央。
 部屋の中央にはちゃぶ台があり、その上の空間が縦一文字に裂けていた。
 比喩ではない、"空間そのものに裂け目が走っている"。


「え? え? え?」


 初めて見るルーミアさんは、その見たこともない現象に目を見開き、驚きの感情のまま表情を固めていた。

 しかし私たちは慣れたものである。
 裂け目の両端に飾られているリボン……それは、紫さまがよく移動手段として多用なされている"スキマ"の証。
 境界の力で空間に裂け目を作り、離れた空間同士を繋げる、通称"スキマ"を作る際、おしゃれを意識していつもつけているもの。
 空間さえも操る驚異的な能力に着飾る余裕まで見せつける、その力量はまさに底が見えない。

 やがてスキマは開き、人ひとりが通り抜けられるくらいになると、中の様子が覗けるようになり、
 ルーミアさんが「ひっ……?!」と短く声を漏らした。

 スキマからは、無数の目と無数の腕が蠢く異空間が広がっている。
 スキマの出入口を中継する空間で、それらがなにかは分からない。
 ただ紫さまのスキマの中はそのように在るのだ。
 なにかも分からぬ、この世ともあの世とも異なる亜空間は、そのおどろおどろしさだけを如実に理解させる。


 そのおぞましき空間の奥より、ひとつの人影。
 軽い恐怖を覚えたルーミアさんの表情は……彼女の姿を捕え、不意に感動を覚えたようなそれに変わった。

 中から出てきた者のその出で立ちは、不可思議過ぎる現象に比べ、なんの変哲もない人間の女性の姿そのものだった。
 ……否、なんの変哲もないというには語弊がある。
 現れた彼女は、妖しいほどに耽美で蠱惑的な、美しき淑女の姿だった。

 整った顔立ちで不敵に微笑み、ウェーブの掛かった金色の髪を棚引かせて、亜空の界より歩み出る。
 身にまとった西洋風のドレスは、彼女の名と同じむらさきの色。
 手には純白の長手袋を着け、畳んだ傘を片手に、気品溢れる雰囲気を更に引き立てている。
 可憐なる出で立ちから滾る妖気はそれとは、かけ離れた威圧感を放ち、そのお方は顕現なされた。


「ごきげんよう、皆さん……」


 妖怪の大賢者、八雲紫。

 賢者と呼ばれるに相応しい尊厳な振る舞いで、私たち4人の姿を見回し、にやり、紅を塗った唇の端を上げる。
 そうして、幻想郷の大妖怪は、声高に言った……!






「女の子サイコーーーーーーッッ!!!!!!」






 八雲紫……幻想郷の大妖怪にして、妖怪の賢者。



 そして……無類の女好きだッッ!



















更新履歴

H22・5/11:完成


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