「なになに……『冬の妖怪、一世一代の大挑戦! 冥界の名主に挑む?!』」


 神社の軒下では、傍らにお茶を添えながら、脇丸出しの巫女が広げた新聞を眺めていた。
 その倦怠感丸出しの姿に歩み寄ると、向こうは気配を察してか、紙面に向けていた顔をこちらに向けて一言。


「なによ、来たの? 半人半霊半レズ」

「……またそういう呼び方する」


 さも面倒くさそうに、いつもの半開きの目をこちらに向けて、淡白に応対する神社の主。
 わざわざ幻想郷の最東端に位置するここまで足を運んできた客人に対し、結構失礼なんじゃないかなと思うけど、
 言ったところで聞くような相手じゃないし……。
 そんな不遜な態度に、それでも私は最低限の礼儀と挨拶を返した。


「どうも、こんにちはです。霊夢さん」

「なんの用よ? 私、今忙しいんだから、手短にね」

「どう見ても暇そうにしているようにしか見えませんけど……」


 私の最低限の礼儀に対し、最低限を下回る礼儀で応対する博麗神社の巫女さんは、
 「体を休めることに勤しんでいるのよ」なんて訳のわからない理屈を返してくる。
 それも、とても面倒くさそうに、ヤーさんみたいにガンつけて。
 自分の時間を邪魔する私を一刻も早く追い出そうと、手際良い冷徹さだと思った。


「用があるならさっさと済ませなさい」

「いえ別に……。現世で買い物する用事があったので、ついでに寄らせて貰っただけです」


 ……私だって、本音言えばこの人とはしばらく顔を合わせたくなかった。
 この人のせいで、私は絶対に知られたくないプライベートを露呈され、現在進行形で酷い目に遭っているんだから……。
 正直、例の件がなければ自分からここに寄ることなんてなかったと思う。
 それでも、見届けなければと思ったからこそ……本当はまだ距離を置きたいここに寄ったのだから……。


「そ。じゃあ用も済んだわね。とっととお家にゲットバックなさい」

「で、先日お世話になったお礼の冥界菓子折りを渡そうと持ってきたのですが……まあお忙しいなら仕方ないですね。
 持って帰って幽々子さまと開けることにしま―――」

「Hey freeze!! And half lesbian there!!(動くな! そこの半分レズ!!)」


 今回の犠牲者、その片割れ……博麗霊夢。
 私がレティさんに推薦した、今日より百合色のロードを歩む乙女の姿を……。






 

みょんミア

三、百合色は黒幕の導きに







 ・

 ・

 ・

 ・

 ・



「博麗霊夢を……ですか?」

「あ、いや……! 別にどうしてもって訳じゃなくてですね……。霊夢さんなんかどうかなー、って……。
 ほら、絶対にあり得ないって言ったら彼女だし……私とルーミアさんのこと、レズビアンだの変態だの、相当批難してくる程ですし……」

「うわっ、妖夢!? それめちゃくちゃ難易度高いじゃないの!?」

「で、ですよね……。それじゃあさすがに勝負にならないかも……」

「でかしたわ! それでこそ、この西行寺家に仕えるお庭番!
 主を守るため、その他の者のことなどお構いなしに卑劣に嵌めて行く! ぬふふふ……よーむちゃん、お主も悪よのぅ〜」

「お褒めにあずかり複雑な気分にございます……」

「それは良いですね! そのくらい有り得ない人の方が、私の黒幕腕ブラックスキルの見せどころです! 妖夢さん、ナイス人選です!」

「え?!」

「レティさまも同意してくれているようだし……じゃあ博麗の巫女さんを百合色の世界にご招待ってことで、けってー!」

「そーなのかー!」





 ・

 ・

 ・

 ・












「うまい!」


 テーレッテレー! ……などと効果音を鳴らして背景を光らせんばかりの笑みを浮かべながら、
 霊夢さんは、私が持参した冥界もなかを頬張っていた。
 私もその隣に腰を掛け、お茶だけ頂き一休み。さすがに、お礼として持参した菓子折りに手を出すわけにもいかないだろう……。


 レティさんが初めて白玉楼を尋ねてから、3日が経過していた。
 私は、文さんとの追っかけっこでダメになったほうきを新しく買いに現世へ。
 竹屋の山井さんのところにと足を運び、
 そのついでに、先日、ルーミアさんの特訓に付き合って下さったお礼を霊夢さんに届けに参ったのである。

 ひと月と、霊夢さんには随分と待たせてしまったのは申し訳なかっただろう。
 だけど、私がお礼として目をつけた冥界菓子は、冥界でも有名店のもなかで、予約をして、昨日やっと手に入った希少品なのだから。
 ルーミアさんの人生も塗り替えかねない一大事のお礼だからと、なるべく良いものをと奮発したのが、ほんのちょっと仇になったかもしれない。


「んー、おいしー。これだけ食べてもノンカロリーとか、まさに乙女の夢のスイーツね

「もっと大事に食べて下さいよ。冥界でも人気で、先日やっと手に入れたんですから」

「いーじゃないの、私へのお礼なんでしょ? だったら私がどう扱ったって勝手でしょ?」

「それはそうですけど……」


 貴重な冥界もなかが、次々と、霊夢さんの頬に放り込まれていく。まるで冬眠前のリスのみたい。
 ここにもうちの主に次ぐ暴食魔神が降臨なされたか……。
 ばくばくと口に放り込んでいく様子を見て、こんなことなら質より量で選べば良かったかな、とも思った。
 けれどまあ……頬張る姿はとても満足そうで、どれだけその味を満喫しているのか、表情から美味しさが伝わる。
 ひと月も待たせてしまったが甲斐はあったのだろう。
 普段仏頂面ばかり見せてくるこの巫女にしては珍しい満面の笑みを見て、そう実感させられた。

 これで3日前、霊夢さんが酷い裏切りをしてたなんて判明しなければ、私も喜んで渡せたんだどね……。


「んー、最高〜 さっきは追い返そうとして悪かったわね」

「いえ、別に気にしてませんし」


 もう諦めてるから。


「私ね、てっきりまたあんたのハニーのことで巻き込まれるのかと思ったもんだから、つい、ね。けどこういう用件なら大歓迎よ

「いだっ!?」


 気持ち悪いくらいご機嫌に、フレンドリィに接する霊夢さんが、背中をバンバンと叩いてくる。
 と、その衝撃で体中に走った激痛に、思わず顔を歪めてしまった。


「……? どうしたの?」


 痛がり方が少し尋常じゃなかったからか、霊夢さんは心配そうに尋ねてくる。
 普段邪険に扱う(つーか汚物でも見下すように気持ち悪がってくる)霊夢さんから比べると、凄まじく珍しく優しい……。
 お菓子を持ってきただけで人とはここまで変わってしまうものなのか……?
 などと人の心と物欲の罪深さに軽く悲観しながら、霊夢さんの質問に答えを返す。


「あはは……ちょっと先日無理しちゃって、筋肉痛なんです……」

「筋肉痛ぅ〜?」


 現在、私の体は、文さんを相手に追いかけ回した時のツケが絶賛襲撃中。
 お陰で一昨日は……まあ文さんを無茶して追っかけた翌日ですね。その日はお仕事もできないほど体中バッキバキになってしまった。
 レティさんの診察のために呼んだ永琳さんについでに診て貰ったけれど、ヘタしたらレティさんより酷いと怒られてしまった程だ。
 今日も頂いた痛み止めのお陰で大分楽にはなっているけど、今みたいな軽いスキンシップでも、私の体には激痛を伴うものだった。

 その事を簡単に説明すると、霊夢さんは「気をつけなさいよ?」なんて優しい言葉を掛けてくださって……どうしよう、優し過ぎてきもちわるい。


「無茶と言えば……こいつもそうよねぇ」


 霊夢さんは脇に添えていた新聞を手に取り、その一面記事を私に見せてくる。
 文さん自慢の文々。新聞、それも最新のものらしい。
 すぐさま、先程巫女が声に出して読んでいた「冬の妖怪、一世一代の大挑戦! 冥界の名主に挑む?!」という一面の見出しが、
 私の目に飛び込んで来た。
 見出しの下には、ピースサインで穏やかに微笑みを浮かべるレティさんの写真がでかでかと載せられている。
 と、視界に霊夢さんの手が伸びてきて、立てた人差し指で、見出しの「冥界の明主」の部分を指さし、


「半レズ、これ、あんたンとこの主人のことよね?」


 と尋ねてきた。
 ……っていうか、優しくなっても半レズ扱いは止めてくれないようだった……。

「あ、もう載ってるんですね」

「知ってたの?」

「ええ、レティさんを案内したの私ですし。その際、文さんも同行してましたから。少しだけなら事情も伺ってます」


 答えながら、記事の方を軽く読み流してみる。
 確かに、その記事には幽々子さまとレティさんの勝負について、大々的に取り上げられているよう。
 が、軽く見まわす限りでは、その詳細までは載ってはいないようだった。

 一体どんな勝負が行われて、どう決着をつけるのか。
 ……「女の子同士」がどうたら、「百合」がこうだ……。
 そして間違っても「博麗の巫女をどうにかする」だの、そこまでは一切書かれてはなかった……。


「……一体なにがあったの?」

「さ、さぁ……私は、案内しただけですから……」


 怪訝な顔で伺う巫女に、残念ながら期待に添うような答えは返せないと答えを返す。
 これは本当のことで、実は私自身、この勝負の詳細は伺っていない。
 勝負は一体どういう取り決めになって、なにをもって勝敗を決するのか。私は全然分からない。

 レティさんに例の提案をした後、勝負の細かい内容を取り決める話し合いが行われたのだけれど……
 あいにく、私は立ち会わせて貰えなかったから。
 というのも、どうも私は演技が下手だとかで、余計な情報を当事者(=犠牲者)に漏らしてしまっては困るから、らしい。
 動揺したら"みょんご"とかいうクセが出て一発でバレるから、とかなんとか……私にそんなクセある訳ないじゃないですか。
 そもそも"みょんご"ってなんなんですか?

 いくら私自身いまだ己の未熟を承知しているとはいえ、頭っから決めつけられるのはさすがに不服なので、一応抗議はしてみたものの、
 直後幽々子さまにルーミアさんの相手をしてあげて、と言われたので、つい「そんな餌でこの私が釣られみょーん!」と飛びついてしまい、
 眠そうなルーミアさんを話し合いの場から連れて部屋から出て、お相手して差し上げて、
 折角だから剣術の稽古をつけてあげたり、何気ないおしゃべりを楽しんだり、今度お泊まりしたいとか言われちゃって、
 ふたりで穏やかな、それでも充実した時間を過ごして、
 話が終わった幽々子さまに呼ばれ、そこでようやっと自分が主の護衛をうっかり忘れてしまったことに気づくダメダメ家来なのであった。みょん。

 なので、私が知っているのは、せいぜい「当事者が誰なのか」くらい……。


「っていうか、こいつも春なのに無茶するわねぇ」

「幽々子さま……じゃないですよね。レティさんのことですか?」

「そ」


 短く一言で肯定を示す霊夢さん。
 「春なのに」というキーワードからの二択の問題はどうやら当たりを引けたよう。
 とはいえ、こんなの簡単過ぎる問題か。
 なんせ冬の妖怪が、本能的な眠気をおしてでもこの勝負に臨もうとする熱意を、この目で見ているのだから。
 その姿を思い起こし、改めてよくやるなぁと思い、霊夢さんに頷くのだった。


「そういえば……霊夢さんって、レティさんのこと、ご存知なので?」

「まあ、異変の時に弾幕であっただけよ」

「異変でですか?」

「ええ。春がなかなかやって来なかったっていう、超〜〜〜傍迷惑な異変が会った時にね」


 「超」を強調して言われ、私は気まずく顔を歪めるしかなくなった。
 しかし……よりよってその異変で出会ったってことは……。
 う……なんて因果だろう。レティさんの睡眠が妨害されたのって、どちらも私が原因になるじゃないか……。
 しかも、どちらもおんなじ術で……。
 気まずい顔が、より気まずく複雑に歪んだ。
 もっとも霊夢さんには、私が2段構えで気まずくなっただなんてことは分からないんだろうけど……。


「むしろ私としては、あんたの方に面識ある方が驚きなんだけどね。
 気づいたら宵闇妖怪とイチャイチャらぶらぶちゅっちゅする関係に目覚めていたってくらいに」

「後ろの言葉は余計ですっ!」


 皮肉っぽく余計な一言を付け足された言葉に、真っ赤な顔で言い返すしかない。
 私だって、今みたいな関係になるだなんて思ってもなかったんだから……。
 もう世界を司る何者かからのなんらかの抗いようもない力が作用したとしか思えない……。……後悔はしてないけど……。


「まあ、知り合ったのはそのルーミアさんを経由してです。
 私自身、レティさんに出会ったのは、その記事に載ってる案内した日が初めてですしね」


 私は簡単に、レティさんがチルノの保護者的ポジションにいるということ、その縁でルーミアさんを何度か庇ってくれてたこと。
 その辺の説明を一通りサラッと話した。
 霊夢さんは「なるほどね」と納得して頷いていた。


 そうして、言葉が途切れた。

 別になんてことはない。単純に、これ以上の話題が出なくなっただけ。
 ただ、博麗神社は静かでのんびりとしたいつもの姿に戻った、それだけの話……。
 霊夢さんは、再び新聞に目を向け、興味の方向をそちらに移していて。
 私も、差し出されたお茶に口をつけ……湯飲みの中を空にした。


「じゃあ、用も済みましたので、私はこれで」

「んー、ご苦労」


 元々の用件はお礼のお菓子折りを渡すだけだったし、その用も済んだ以上、長居も悪いだろう。休むことに勤しむらしいし。
 私は縁側から立ち上がり、先程買った新しいほうきを手に取って一声掛けた。
 霊夢さんは顔も向けず、新聞のページをめくって、ながら食べをしながら応える。お行儀悪い。

 本当に、他人のことなんかどうでも良さそうだった。
 まあ、普段のこの人に他人に対する興味を求めたところで高が知れてるんだけど。
 だけどお菓子ひとつでああも豹変するのはどうかと思うよっ!
 
 この人が、いっそ恋でもしようものなら一体どうなるんだか……本当、是非見てみたい。
 そんな夢物語を考えてしまう。考えてみて……まったく想像がつかなかったので、不毛だと理解し、考えるのをやめた。

 私は、そのまま去ろうと、まだ筋肉痛が走る体に力を込めて、空へ飛び立とうとする。
 その時、


「……は?」


 霊夢さんの方からすっとぼけた声が漏れる。
 虚を突かれた感じで、空を飛ぶタイミングを逃してしまった。


「どうかしました?」

「あ、いや……なんでもない……」

 少し気になったので、飛ぶのを一旦止め、振り向いて尋ねてみる。
 霊夢さんは、滅多なことでは動じない彼女にしては珍しく、軽い狼狽を取り繕うように答えるのだった。
 それから、「良かったわね」などと、謎の言葉を短く添え付けられたので、私は「はぁ……」なんて、気の抜けた返事を返すしかできなかった。


「じゃあ今度こそ、これで」

「ええ」


 別に深く突っ込むところでもないと思ったので、改めて別れの挨拶をし、今度こそ空へと飛び立った。


「全く、なにやってるのあの鴉……」


 そんな風に呟く霊夢さんの声を背に受けながら、私は神社から遠ざかっていくのだった。
























「……よし!」


 神社から飛び立って数分。
 神社に居る霊夢さんからは見えないだろう位置まで離れたのを確認すると、博麗神社を取り囲む森の中に降り、着地した。
 土に足がつくのと気配を消し、たった今飛んできた道のりを、自らの足で戻っていく。
 まだ痛む体に響くけれど、遅れるのも悪いと、そこそこ早足で。
 神社から離れるに要した時間と同じかそれ以上を掛け、数分休まず生い茂る木々の中を駆け抜けた。
 しばらくすれば、木々の隙間から神社がその姿を垣間見せた。
 境内では、別れる前に見せた、相変わらず気だるそうに脇を出している霊夢さんが新聞を読んでいて、その姿を視界に捉える共に、


「遅かったじゃないですか」

「おかえりー」


 視界の外から、そんなひと声を掛けられた。
 視点を、神社の境内からそちらに向けると、神社と森との境界線を担う茂みに隠れるように、ふたつの人影が潜んでいた。

 自らをジャーナリストと名乗る鴉天狗の姿と、
 そして、渦巻き模様ひとつ描かれた三角の白い布を携えた、ドアノブカバーのような頭巾を被っている姿。
 ふたり分の姿を確認して、私も、同じく霊夢さんから隠れるよう茂みの陰に入り、側に寄った。


「すみません……遅れました……」

「いえいえ大丈夫です……。主催がまだですからね。開幕には十分間に合ってますよ……」


 軽く息を切らせながら、まずは遅れたことを一言詫びる。
 と、文さんは気にしていないと、お気楽に声をひそめて答えてくれた。

 確かに、今この場にはふたり分……私を含めて3人分の人影しかなく、最後のひとりの到着がまだらしい。
 まあ、今日は永琳さんに頭の具合を診てもらってから来るって聞いているし、特に問題でもないか。
 私は、自分が遅刻した訳でもないことに安心し、ひとまず呼吸を整えることにした。


 さて、御察しの方はもう察しているとお思いますが……ここで僭越ながら私たちの現状を説明させて頂きます。
 結論からいえば、今日この場所……博麗神社にて、幽々子さまとレティさんの勝負が行われる。
 黒幕が裏で糸を操り、女の子同士を恋に落とすという、世紀の対決が……!(……って、改めて自分で言っても訳がわからないなぁ……)

 勝負と言っても、幽々子さまは既に「妖夢(私)×ルーミアさん」という結果を出して居られる。
 なので、あとはレティさんがお手前を見せることで勝敗を競うらしい。
 丁度幽々子さまが先攻、レティさんが後攻という形で進めると考えれば良いかも。
 もっとも、前述した通り、私は細かい内容を伺ってないので、なにをどうやって優劣をつけるかは分からないけど……。
 ともあれ今日は、レティさんの、間違った恋のキューピッドの手腕を見届けるため、こうして集まったのだ。
 レティさんからは昨日、準備が終わったとの連絡があり、この博麗神社を指定して私たちを呼び寄せたのだった。

 一体、あの博麗霊夢が、どのように恋に落ちるのか……?
 かぐや姫だって出さないような新難題を、果たして彼女くろまくは解くことができるのか?

 あとは、その難題に立ち向かうレティさんを加えることで、全員が集うこととなる。
 勝負の瞬間、恋の瞬間は、あと少しでやって来ようとしていたのだった……。


「見てましたよ、巫女とのやり取り」


 呼吸を整えていると、文さんからそんな風に言葉を掛けられた。
 どうやら、私が神社に到着した頃には既に茂みでスタンバっていたらしい。
 新しい新聞が霊夢さんの元に届いていたし、きっと私が来る前には霊夢さんの元を訪ね終え、その後ずっとここに居たんだろう。


「あなたも律義ですねぇ……自分を売った相手に、先日のお礼だなんて」

「買ったあなたが言いますか、それ……? ……まあ、約束しましたし……」


 文さんは、境内の霊夢さんターゲットに見つからないよう、小声のまま、言葉を続ける。
 レティさんが来るまでの間、手持ち無沙汰な時間を潰すための与太話と言ったところだろう。
 私も、小声で文さんの言葉に答える。


「しかもあれ、なかなか上物の菓子折りですよね……?」

「そりゃあ、あの件に関してのみいえば、一応は感謝してますから……」


 私が答えると、文さんは感心したように、「なかなかできませんよ」なんて言ってくれた。
 私としては……むしろ文さんの方に感心してしまったのだけど……。
 だって、境内でのやり取りをちゃっかりチェックのみに留まらず、私の贈った菓子折りの銘柄についてまで、事細かに把握していたのだから。
 さすがは射命丸文。
 洞察力にも驚かされるが、生者でにもかかわらず冥界の有名お菓子店を知っているほどの情報量には、こっそり感服させられた……。


「おれい?」


 と、私たちの会話を聞いていたもうひとりが、その内容に興味を持ち会話に入って来る。
 横で頭巾を被った頭を傾げる彼女は、さすがにそこまでは把握できてなかったらしい。
 お店や銘柄どころか、お菓子の種類さえ判別できてないだろう。これが普通の情報量であって、文さんが異常なのだ。
 私は、目元を覆うサングラスの奥で、ぽやんとしている瞳に向けて説明をしてあげる。


「ほら、先月、ルーミアさんの特訓に付き合って貰ったお礼ですよ」

「あー! そーなのかー!」


 話の内容を理解したルーミアさんは、いつもの口癖と共に、サングラス越しの瞳をぱぁっと輝かせた。
 納得できてちょっとテンションが上がったのか、手をパタパタはためかせては、
 その弾みで、幽々子さまとお揃いの頭巾についている、側面を覆う幕のような布をひらひらと揺らせている。


 さて、ちょっとした余談ではあるけれど、1ヶ月もあったら色んなイベントが陰で進んでいるものである。
 この間なんか、幽々子さまが「あら、あなた。タイが曲がっていてよ」なんて言いながらルーミアさんの赤いタイを直していた。
 それが一体如何なるイベントなのかは存じませぬが、幽々子さまが「これで私もお姉さまッ!」とやたら興奮していたのが印象的だった。

 で、今ルーミアさんが被っている頭巾もそのひとつ。
 幽々子さまが、ご自分の愛用されているお気に入りの頭巾の予備をルーミアさんにプレゼントするというイベントがこっそり終了してたりする。

 永琳さん特性日焼け止めクリームを使う際、クリームでは補えない部分を保護するため、
 ルーミアさんはいつも帽子(笠)とサングラスを併用していた。
 今までは、倉から適当な帽子を引っ張って来て貸し付けていたのだけど、
 幽々子さまはこっそりルーミアさんに帽子をプレゼントしようと画策していたらしく、
 折角なら……と、ご自身の頭巾の予備をプレゼントしたのだった。

 確かに、ルーミアさんには自分用の帽子は必要だったけれど、単純に、自分のお気に入りのものをお揃いで身につけたい、
 プレゼントしてあげたい、そんな気持ちからなんだと思う。
 やはりどんなに立場が偉くとも、幽々子さまも見た目相応な少女な気持ちを持っているってことなんだろうな……。
 ……別に、嫉妬なんかしてないみょん。

 しかしこれがなかなか利便性があって、側面を覆う布が良い感じに日光を遮ってくれて、すごく有効だったりする。
 問題があるとすれば、この純和風な頭巾に純洋風なサングラスのコラボレーションはいかがなものかと言う点だけだろう。


「えへー 今日はねっ、ゆゆちゃんのお帽子でおしゃれしてきたんだよー。似合うっ? 似合うっ?」


 そしてまた解答に困るようなことを、無邪気なこの子は聞いてくるのである。


「え、ええ……! 似合いますよ!」


 脳内補正でサングラスなんて見なかったことにした。
 うん、だって頭巾だけなら普通に可愛いと思うもの。うん! サングラスなんてなかった!!


「今日はねっ! ゆゆちゃんのお帽子かぶって、ゆゆちゃん代わりにわたし、がんばるからっ! えへへー


 気合い十分に意気込むルーミアさん。
 幽々子さまに任された責務を果たそうと、意気揚々としている。
 あんまりにも気合いが入り過ぎて、文さんが軽く注意を促していた。

 ……本当なら、チャンピオン(?)である幽々子さまは、直接の対戦者ということでこの場に立ち会うのが筋なのだろうけど、
 あいにくと本日はお仕事がお忙しいので来られなかったのだ。
 なので、変わりに私たちが行く末を見届ける任を請け負うこととなった。
 ……まあ、厳密にはちょっと違うけど。

 本音を言うなら、私は他人の色恋沙汰を覗くようなマネを良しとは思っていない。だって私が覗かれたくないもん。
 それを知ってだろう、幽々子さまは、今回の勝負を見届けて報告するよう、"ルーミアさん"にお願いしたのだった。
 しかし、だ……ルーミアさんがしっかり報告できるかどうかは少々不安も残るところで……。
 なので、私が自主的に、ルーミアさんに付き添い、任務をしっかりこなせるようサポートに来たのである。

 結局、幽々子さまは、私がどれだけルーミアさんを大切に思っているのか十分理解して、
 "私に見届けさせる"つもりで、"ルーミアさんにお願い"をしたのだ。
 さすがは現役黒幕チャンピオン、素晴らしい策士っぷりである。

 この策の最も恐ろしいところは、私がルーミアさんと一緒に居られる口実ができることにあり、
 それだけには留まらず、帰りに人間の里に寄って一緒にご飯食べて来なさいとまで言われたのだ。
 西行寺家に仕えるべく心身ともに鍛え上げてきたこの私が、そのような餌にまんまと釣られみょーん。
 ああ私ったら未熟者。


 まあ……もっとも今回だけは、ルーミアさんが絡んでいなくても、私自身見届けたいと思っていた。
 ……だって、霊夢さんを推したのは……私、なのだから……。
 あの人があんまりにも私のことをレズビアンだのヘンタイだのばかにするもんだから、
 「じゃあ手前ェも同じ目に遭ってみやがれコンチキショー!!」というストレスが、つい、悪魔の囁きに変わって……
 そうレティさんに提案してしまったのだから……。
 その、自分が誰かを犠牲にしたという罪悪感が……私の胸の中、もやもやと残ってしまったから……。

 罪悪感を胸に抱きつつ、その顛末を見届けにやって来た私。
 だけど……どんな理由でアレ、元気いっぱいに頑張ろうとするルーミアさんを見れば、その胸のしこりも少しは軽くなるよう。
 だから私は、応援のため以外にも、そのお礼の意味も込めて、彼女の頭をなでてあげようと手を差し伸ばした。


「ふふっ、頑張ってください。私も精一杯サポートしますから」

「あっ!? ま、待っ―――いたっ……!?」


 と……頭に手が触れた途端、ルーミアさんは突然痛がって、私の手からすぐさま逃げてしまった。
 いや、それよりも……


「ルーミアさん、ちょっと失礼します……」

「わ、ま、待って……!?」


 一言断りながらルーミアさんの帽子に手を伸ばした。
 なだらかな、球体に近いはずの頭から、手のひらが妙な凹凸を感じ取っていた。
 それが意味する事が気になり、私は帽子の中を確認しようと思ったから。
 ルーミアさんは慌てて拒否するも、私の耳が声を認識するより先に、私の手がルーミアさんの帽子を捲ってしまう。
 そして、その中身を覗いてしまった。
 するとそこには…………






    (゜∀゜) < やあこんにちは。ぼく、たんこぶくん! いっしょにあそぼうよ! )






「ルーミアさんどうしたんですかっ!? そのでっかいたんこ―――むがっ!?」

「わーッ……!? なに大声出しているんですかッ……!? 見つかりますよ、博麗の巫女にっ……?!」


 ぴょこんと飛び出してきた、頭巾に潜む存在が話しかけてきたらきっとそんな感じなんだろうな、なーんてあほな妄想を頭に過らせつつ、
 隠されていた大きなこぶに驚きを抑えきれずに、隠れていることも忘れて大声を上げてしまう。
 文さんが素早く手を伸ばし、私の口を塞いでそれを封じてくれたのだが、それでもわずかに騒音が漏れてしまった。

 しまった……霊夢さんにバレてしまったか……?

 冷や冷やしながら、3人で境内の本日の主役のひとりに目を向ける。
 肝心の霊夢さんはというと……今の騒ぎに気づいてる様子もなく、気だるそうに大きなあくびをひとつしている。とてもだらしない。

 ほっ……。安堵のため息が3つ同時にこぼれ落ちる。
 気が緩むのに連動して、文さんに抑え付けられた口もゆっくりと解放されるのだった。


「まったく……いくら大切な人がキズモノされたからって、はしゃぎ過ぎです……!
 彼女も妖怪……! 大したことないんですから、落ち着いてください……!」

「すみません……」


 潜んだ声で説教をする文さん。
 本当……わざわざ帰ったフリをしてまで隠れているというのに、今ので台無しにしてしまうところだった……。
 文さんがほんの少し機嫌を悪くしてしまうのも当然だ。彼女にしてみれば、折角のスクープが台無しになるかもしれなかったのだから。


「むしろ唇奪ったあなたの方が性的な意味で彼女をキズモノにしてるんですから、こぶくらい大したことないでしょ……!」


 うっさいな。私だってもっと健全な関係で居たかったよ。


「それよりルーミアさん……! どうしたんですか、その頭……?!」


 まあ反省は反省として心に刻んでおくとして……ルーミアさんの容体については、私にとっては紛れもなく一大事。
 注意された直後でもあるので、声のトーンに細心の注意を払いながら小声で訪ねた。
 ルーミアさんも、同じくひそひそ声で、なにがあったかを話してくれた。


「ん……昨日ね、」

「はい……」

「なんか頭に桃のっけた人に襲われて……」

「はい……?」

「あ、でも大丈夫だよっ……。みりんさんが助けてくれたから……!」

「はい……??」


 頭に桃をのっけた人から、みりんが助けてくれてた。
 つまり桃のみりん漬けの完成である。
 なんのこっちゃ。


「あと桃のっけた人はね、チルノちゃんのたいせつな人を教えたからもう来ないって言ってー……」

「……すみませんルーミアさん。ルーミアさんがなにを言ってるんだかさっぱり分かりません……」


 私の言葉に、ルーミアさんは困ったように「むー」、なんて可愛く唸ってしまう。
 困らせてしまって申し訳ないとは思えど、分からないものは分からないので、私もフォローのしようもない……。
 その時、私の望んだそれを、なんと文さんの端的なひそひそ声がもたらしてくれた。


「とりあえず、昨日何者かに襲われた……けれど別の方が通り掛かって助けて貰った、ってことですよ……」

「あ……そうだったんですか……」


 どうやら私が来る前に文さんもちゃっかり確認していたらしい。
 ってことは文さんが、頭巾の下のたんこぶくんを見つけたってこと……? うーん、やっぱり凄まじい洞察力だなぁ……。


「私も、みりんさんというの方が誰かまでは追求してません……。……が、まあ傷の方も、その方が治療して頂いたみたいですよ」

「へぇ……そうなのですか」

「そーなのー」


 サングラス越しの瞳がにこり、文さんの言葉を微笑みで肯定してくれる。


「みりんさんがね、気をつかって治療してくれたって言ってたよ」

「よく分かりませぬが気づかいに長けた味醂なんですね」

「気をつかうのは得意だって言ってたよ」

「大人で紳士な調味料なんですね」


 ルーミアさんの言っていることはファンタズム過ぎてサッパリ分からなかったけど、
 見た感じでもピンピンしているし、容体は大したことないようだ。
 とりあえず大事がないことが分かって……すっごく、安心した。
 安心のあまり、もう一度大きく息がこぼれる。


「……良かったです……大事が無くて……」

「うん、大丈夫……。よーむちゃんに殴られた時程じゃないし」

「あン時ゃほんとにごめんなさいッッ!!」


 即土下座した。
 幽々子さま張りに土下座した。
 昨今の白玉楼の住人は、着実に土下座が上手くなっていきます。


「いいの…… だってそのお陰で、よーむちゃんと仲良くなれたんだもん……

「え……」


 意外な言葉に、不意を突かれたような気持ちになる。
 顔を上げると、嬉しそうにはにかんだ笑顔を向ける彼女がいた。
 その微笑みが、とても可愛らしく……眩しくて……見ているこっちが、ドキドキしてくる……。


「あ、いや……その……」

「よーむちゃん……ありがと……


 あなたを傷つけたはずの私に、むしろお礼を口にする。
 その顔は本当に……本当に、嬉しそうで……。
 それだけ、自分との出会いを喜んでもらえるなんて……それはものすごく、こそばゆくて……。恥ずかしくて……。
 もう……頭の中が、沸騰しそうで……。


「ふふ〜ん……」

「……はッ?!」


 意識の外に追いやってしまった一羽のメディアの鴉が、横からその様子をニヤニヤ笑いながら眺めていることに気づいて、熱が一気に冷めた。


「な……なんですか、文さん……。ニヤニヤしてないで、言いたいことがあるならハッキリ言ってくださいよ……」

「いえいえ、本っ当ぉ〜〜に仲がよろしいなぁ〜と思いまして……」


 なにかを含んだ笑いで答える鴉天狗。
 ちょっぴりしゃくに思いつつ、けれどもなんとも言い返せない私。
 ああもう、ヘンに私たちの関係を知られているから、迂闊に仲良くもできないじゃな―――


「さすが、恋人同士ですねぇ」

「ぶーーーーっ!?」


 心の内で愚痴っている最中に、文さんの強烈過ぎる不意打ちの言葉が炸裂。
 私は動揺のあまり、ついつい吹き出してしまった。


「みょっ、みょっと待ってください!?」

「"みょっと"ってなんですか……? あと声のトーンは下げてください……」


 思わず大きめの声で噛み噛みになってしまう私。
 動揺のあまり、先程と同じ失態をするところだった私に、文さんは注意を促してくる。
 私もしまったと思い、今一度声のトーンに気を払ってから言葉を返した。
 もっとも、内容が内容だったので、気持ちがはやって上手く調整できたかは自信ないけど……。


「あ、あなた、幽々子さまから取材受けて、写真のことは誤解だって伺ったんじゃあ……!?」

「えぇえぇ、伺いましたとも……。なんでも、自分があなたを謀って……笑いのネタにするためにあんなことさせたとかなんとか……。
 だからあなたたちにふたりにそのケはない、と……まあ、そう伺いましたね……」

「だ、だったら……」

「そんなこと、今のあなた方を見て、一体誰が信じるっていうんですか?」


 文さんは小さな声でも饒舌に、現行証拠と共に人差し指を突きつけて、まるでどこぞの名探偵張りに言い放った。
 うっかりとはいえ、今まさにそんな仲良しな姿を見せてしまったのだから、私には言い返し様もない訳で……。
 それに……仲が良いのも……好きなのも……本当のことで……。
 嘘でだって否定なんか、したくないから……もう、どうしようもなくなってしまう……。


「ま……恋人同士、っていうは……私の勘が裏付けなしに口走ったちょっとした早とちりです……。
 不名誉な誤解をさせてしまったなら謝りましょう……」 


 そんな私の心境を察したのだろう。文さんは手心を加えてあげましょう、なんて上から見下ろすような笑みを浮かべて言った。
 謝る、なんて言いながら、全然反省する素振りも見せない。
 その姿に、老獪なこの鴉天狗が、私のボロを誘い出す為、幽々子さま張りの話術で誘導したんじゃないか。そう勘繰ってしまう。
 本当、してやられた。言い返せないことが悔しいなと思ってしまう。
 そんなだから、不満を覚えた感情が、ちょっとした報復と言わんばかりに愚痴をひとつこぼした。


「わ、私としては……写真バラ撒かれた時点で、もう十分に謝って欲しいんですけどね……」


 もちろん謝って貰えるなんて思っていない。報復のために口にしたに過ぎないんだから。


「あははは。まあまあ、それは……この通り、ちゃんと続報で否定しておきましたのでご勘弁を……。
 それこそ、あなたのご主人サマの思惑通りにね」


 と、文さんはいつも持ち歩いているのだろうご自分の新聞を、どこからか一部取り出した。
 チラッと覗けた一面記事には、先程霊夢さんに見せて頂いた幽々子さまとレティさんの記事が書かれており、最新のものだとすぐに分かる。
 文さんはそれのページを手際良く捲っては、2ページ目くらいを開いてから私に差し出してきた。
 受け取り記事を読み始めると、すぐさま差し出されたページの小さな写真と見出しに目が行く。
 それは幽々子さまのお写真と、『庭師の百合色疑惑は主の陰謀?』という見出しの記事だった。


「件の写真についての続報です……。どうぞ、読んでみてください」


 そういえば……幽々子さまにまかせっきりで、私はまだこの記事がどう書かれているか確認していなかった。
 見出しからも分かるように、これで誤解だとハッキリ明記してくれたのだろう。
 まー誤報修正の記事が小さいのは、やはりマスゴミはマスゴミってことなんだろうけど。
 気にもなっていたし、私は差し出された新聞を受け取り、軽くそのを読み進めた。


「要約すれば、『全ては自分がハメたせい、あのふたりは一方的な被害者だ』。そういった内容で書かれてますよね……?」

「あ、すみません……まだ読んでる最中です……」

「おっ、失敬……」




    気をつけよう 自分のテンポと 相手のペース。 ―――白玉楼心のふれあい標語川柳・庭師特別賞受賞作品より。




 などと、たんこぶくんに引き続きまーたあほなことを考えてしまったが、        (゜∀゜) < ぼくはあほじゃないよ! )
 それはさて置き、記事を読み進める。

 そこには文さんの言葉通りのことが書かれていた。
 記事は「幽々子さまの陰謀」から始まり、私たちが望まぬ形でキスしてしまったことは全て幽々子さまのはかりごとであると記載されている。
 キスという本来隠れて行う行為を、狙い澄したような好アングルで激写さているからこそ、作為的であるなによりの証明、だとある。
 証拠の写真そのものが、むしろ否定の材料として取り扱われていた。

 続く文面には、写真の経緯も書かれており、うっかり他者の手に渡ってしまったことや、
 「本当は内輪で納めるつもりが大事になってしまい庭師には申し訳ないことをしたと謝罪している」などの幽々子さまのインタビューまである。
 更には、「庭師本人は恋人ではないと証言している」や、私が「こっちはいい迷惑だ」と発言したとさえ……。


(……確かに、そう言ったこともあったけど……)


 その文面の書き方は、とても巧妙だった。
 書かれていることは全て身に覚えがある事ばかりで……だけど記事を読む限りでは、
 とても私とルーミアさんが今も仲睦まじいとは読み取れなかった。
 私はあの行為を心底厭っていて、ルーミアさんは行為についてまるで無頓着、そういう風に、全てが「いたずらの被害」で解釈されてしまう。
 ……あの件に関して真実を言ってしまえば……本当は……お互い満更じゃ、ないっていうのに……。

 言葉とは不思議なもので、同じ事柄を説明するにも、言い回しひとつでまったく別の印象を与えられてしまう。
 これもまさにそうで……凄く巧妙に、真実だけを書き記し、それでいて私たちが過剰に仲の良くなってしまったことを隠してしまっていた。
 今の私には、曖昧過ぎて否定できないことさえ、全否定している。そう見える文章が書かれている。それでいて、言葉には嘘がない。
 むしろ幽々子さまを知る人なら、少なからず「有り得る」と思ってしまうだろう。
 誰もが信じてしまうような、そういう巧妙な記事が記載されていた。

 これなら……広まった噂を打ち消すには、十分な効果を発揮できるのかもしれない……。


「さすが……幽々子さまです」


 そういえば……この記事は2ページ目。
 神社から飛び立つ前の、霊夢さんのすっとぼけた声を上げていたこと思い出す。
 そっか……自分が楽する為に大勢に知らしめたはずなのに、こんな風に結論をまとめられて、思惑が外れたからなんだろう。


「でしょう〜? この新聞を見れば……まあ、あなたの言う誤解ってヤツは解けるでしょうね」


 文さんは、まるで台本でも読むような心ない棒読みで「ああヨカッタヨカッタ」なんて付け足した。
 文さん本人としては、記事の娯楽性が薄まったこと本意ではなかったのだろう。


「ホント、あなた方はあの亡霊の姫に愛されてますよ」


 真相は、「自分のところの使用人をオモチャにした悪戯好きのお姫様の話」。例の件は、結局そういう形で結論を迎えた。
 あんまり間違っていないけど……それを前面に押すということは、冥界の明主という立場マイナスイメージを植え付けかねない。


「幽々子、さま……」


 それでも、幽々子さまが書かせたのだ……そうなるように。
 本来、私が幽々子さまをお守りせねばならないのに……。
 幽々子さまなりの責任と、覚悟を思い知る……。
 確かに原因は幽々子さまにあるけれども……それでも……。


「だというのに、あなた方ときたらべたべたイチャイチャと……ご主人サマの折角の心づかいを、まるで無にする仲睦まじさ。
 今のあなた方ふたりを見れば、こんな記事の方こそインチキだと言い切れますよ?」

「う……」


 感動に浸りかけていた私の表情は、文さんの責め立てるようなもの言いに再び気まずく歪み始めるのだった。


「べ、別に……仲が良いのは、ほんとうですし……」


 顔を赤くして、それだけ言うのが精いっぱいだった
 だからといって、私が彼女を好きだということを止めるなんて……今更もう、無理……。
 こればっかりは、頭でどうこうしようったって、どうしようもないんだから。


「えへー。そうなのー わたし、よーむちゃんとはいっぱいちゅーして……―――ふがっ?!」

「ぎゃー?! ルーミアさんそれ言っちゃダメですー!」

「ほぅ……なんですか? 2回じゃ済んでなかったんですか? そんなこと、あの亡霊の姫は一言もおっしゃってませんでしたけどねぇ〜」


 そして折角鎮火した禁断の愛疑惑を、またもやものすごい勢いで煙立ててしまう無邪気なルーミアさん。
 焦って、慌てて口を抑えるも一手間に合わず、漏れた新情報をキャッチした文さんにすかさず突っ込まれてしまった。
 ……けれどその言い回しは、新たな情報に心を躍らせるようなものではなく、予想通りと言わんばかりの声色で。
 やはり、記事では私たちの関係を否定しておきながら、全く信じていなかったらしい。
 内心では、私たちが頻繁にちゅーし合ってたと勘繰っていたんだと、分かってしまう……。


「ほらほら、白状してくださいよ〜」

「そ……それは聞かないって! 幽々子さまと約束したんじゃなかったんですか……?」

「彼女との約束は、あなた方のことを無断で記事に載せないこと……。そして載せる場合は必ず幽々子嬢の目を通すこと、って条件です……。
 だから私個人がプライベートに……世間話で伺う程度なら、なんの問題もないはずですが……?」


 くっ……さすが永き年月を生きる天狗。言葉の揚げ足を取って、屁理屈で都合の良いように解釈してらっしゃる。
 伊達に長生きはしていないらしい。むぐぐぐ……。


「大丈夫ですよ〜……。新聞には載せません。噂として広める気もないですって……。さすがに私だって命は惜しいですからねぇ……。
 な・の・で、私個人の好奇心を満たす意味で答えて下さればいいのです……。取材ではなく、世間話としてね……。
 さあ、実際のところどうなんですか〜……?」

「そ、それは……」


 ノリノリで聞いてくる鴉天狗。
 その様子は、どこかの脇みたく女同士ということに嫌悪感を抱くでもなく、
 面白おかしくはやし立ててつだけのようで……けど否定的な気持ちは一切汲み取れない。

 思えば、ルーミアさんだって全然気にしてないし、幽々子さまに至ってはむしろ私たちの仲を応援してくる程……
 これじゃあ、なんだか気にしている自分が馬鹿らしくなりそうだ……。


「そうよ、実際のところどうなの?」

「だ、だから……」


 そして同じくノリノリでレティさんも聞いてきて……。
 ルーミアさんは当事者だからともかく、他の人は他人事だからって好き勝手言ってるだけじゃないの。
 …………って。


「いつの間にか来てるしっ?!」

「ふふっ、お待たせ」


 隠れていることも忘れてワイワイやっていた私たちの輪の中に、新たにのほほんとした声色が挟み込まれた。
 最後のメンバーにして主催のレティさんが、いつの間にか到着していた。
 ルーミアさんも、ぽわぽわした感じで迎え入れていた。


「レティさんいらっしゃ〜い」

「私が一番遅くなっちゃったわね……。ちょっと永琳さんにケガの具合診て貰ってから来たものだから……」

「いえ、大丈夫ですよ」


 遅れたことを謝るレティさんだけれども、最低限の報・連・相は成されているから、こちらとしてはなんら問題もない。


「ようやく登場ですね、黒幕さん」


 文さんも、待ってましたという風にレティさんに言った。
 そしたらレティさんがなんかゾクゾクしてた。
 どうしよう、この人やっぱりヘンな人だ。


「さて、全員揃ったようですし……早速始めて頂きけますか?」


 到着したばかりのレティさんに、促す文さん。
 レティさんはゾクゾクと身を悶えさせるのを中断し、いつも通りの表情に戻して私たちに向き合った。


「そうしたいのは山々だけど……あの娘は来たかしら?」


 "あの娘"と言って、レティさんは私たちに確認を取る。
 それはもうひとりの犠牲者……博麗霊夢の恋人候補のことを指す。
 レティさんがまず神社に目を向けて、釣られるように全員でそちらを見ると……やはり博麗霊夢がひとり、のんびりと脇を出していた。


「まだのようですね」

「あらそう? 私より先に向かったから、先に着いていると思ったんだけど……
 まずはあの娘がこっちに来て貰わないと、はじめられないのよね……」


 神社に向けていた視線を、一度レティさんに戻した。
 その表情は、困ったような口ぶりに比べてのんびりとしたもので、いつものレティさんそのままだと思った。

 "彼女"はまだ来ていない。
 自分が今日、新たなせいへきに目覚めるとも知らず。
 運命の歯車は、もう動きだしている。
 黒幕の手によって、回り始めているのだ……


「それでレティ殿、一体どのようにして、あの博麗の巫女を、禁断の恋に落とすおつもりですか?」

「ふふ、準備はもう終わったから。だからまずは待ってもらえればだけど……あ、丁度来たみたい」


 言って、レティさんはその白い指先で境内の方を指し示した。
 私が、そこに向けて視線を移すのと、それが聞こえたのは、ほとんど同時のことだった。








    ◇    ◇    ◇








「おい! 博麗の巫女!!」


 神社でだるそうにお茶をたしなんでいる霊夢さんに向けて、空より吐き捨てるように言う、ひとつの小さな影が現れる。
 彼女は、手になにか赤い布のようなもの持ったまま空に停滞し、怒りに染まった真っ赤な顔で巫女の姿を見下した。
 歪んだ表情に比べ、背の6枚の氷の羽が、春の日差しを受けて綺麗に煌めいていた。


「……なんだ、Hバカ妖精じゃないの」


 一方、招からざれる来客に呼ばれた博麗の巫女は……とても面倒くさそうに、辛辣な一言で言葉を返す。


「ば!? ばかだと」

「バカにバカって言ってなにが悪いのよ」


 いや悪いだろ。








    ◇    ◇    ◇








「チルノちゃん、来たね」

「ええ」


 巫女と夫婦漫才を始める氷精の名を、一番に口にするルーミアさん。そしてレティさんがそれに待ってましたとばかりに答える。
 私たち4人は、境内のふたりに気づかれないよう、神社の境界線を担っている茂みに身を潜め、様子を伺い始めた。

 これで、役者は揃った。
 そう、これが―――




 ―――これが……これから恋をする、ふたりの始まりの瞬間……―――




「―――なのであった。メモメモ……」


 文さんは既に取材モードで、そんな風に私の横で必死にメモ帳にペンを走らせているのだった。

 にしても……なんの因果か、まさかあのふたりが主役になるとは……。
 いつも私をばかにする霊夢さんに、いつもルーミアさんをいじめてたチルノ。
 このふたりが犠牲になるなら、私は全〜然心が痛まない訳で。
 おお、なんというベストカップリングか!
 加害者同士、まさに文字通り"仲良く"犠牲になっていただけるなんて、なんて私びいきなカップリングか。

 ……なのだけれども。


「レティさんは……良かったんですか?」


 ふと気になって、レティさんに聞いた。
 チルノは、レティさんにとって少なからず愛着のある相手だと思う。
 まるで母親と娘のような関係で……。……まあお母さんなんて言ったら花の乙女レティさんは軽くお怒りになるんだけど。
 私でさえ、あんまり好ましく思ってない霊夢さんを犠牲にするだけでもこんなに胸が締め付けられるのに、
 そんな娘みたいに……もとい、妹みたい大切な相手を生贄に捧げるだなんて、本当に良かったのだろうかと……。


「良いのよ。最近あの子、ルーミアちゃんに勝てないとかで不貞腐れていたから。
 だから愛を知って、その落ち込んだ心を癒させてあげようと!!」


 ……あ、そういう考え方でしたか。








    ◇    ◇    ◇








「ったく……魔理沙のヤツがパッタリ来なくなったと思ったら、代わりに珍客の連打とは……。
 ブン屋に半レズ、そしてHバカ……この間も天人のお嬢様が来るし……ほんと、千客万来ね」


 一方、境内の方では霊夢さんが、突然の来客に面倒くさそうに愚痴ってみせていた。
 ……ってか半レズって私のことですね。折角お菓子持って行ったのにそこまで迷惑がらなくてもいいんじゃないでしょうか。
 さっきはあんなにフレンドリーだったのに、こんちきしょう。


「話があるなら賽銭のひとつでも持って来なさいっての。もしくはお菓子、ノンカロリーで」


 あ、さっきのお礼参りに関してはちゃっかりOK出してるよ、本当ゲンキンな巫女さんだ。
 いずれにしろ、横暴と思わされる態度で氷精をあしらってみせる博麗の脇巫女だった。


「うっさい!! そんなの知ったことか!!」


 だが、氷精もその程度では怯みはせず、むしろより一層強い気迫で、己が怒気を霊夢さんにぶつけた!


「お前……よくも……よくもあたいの大切なもん盗りやがったなぁッ……!」

「……は?」


 怒れる目つきのまま見下ろす氷精に……霊夢さんは短く、とぼけた声を漏らすしかなかったよう。
 なんのことか分からない、という心情を、そのぽかんとした表情は雄弁に語っていた。

 ……っていうか、








    ◇    ◇    ◇








「あややや……? 仲を取り持つどころか、既に険悪なムードになってるようですけど……」


 そう。その通りですよ文さん。それは私も思いました。
 草葉の陰で、期待とは真逆の展開を眺めて、私も文さんと同じ感想を抱く。

 多分、チルノになにかしたのはレティさんで、それが作戦(レティさん曰く「黒幕腕ブラックスキル」)なんだろうけど……。
 あれじゃあ、運命のラブラブデスティニーとは程遠いような……すっごくギスギスした雰囲気が充満している。
 雲行きを不安に思う私たちと比べて、首謀者であるレティさんは余裕しゃくしゃくなまま。


「良いのよ、今はあれで。今は、馴れ初めを演出する方が重要なんだからっ」


 ウィンクひとつ私たちに向けてるくらい、おちゃめな様子を浮かべる程だった。
 レティさんの考えは推し量れないままではあったけど……まあ、プロデューサーが直々にOKを出すのだから、私たちが慌てたところでしようがない。
 ひとまず神社の境内へと視線を向け、経過を見守ることにする。








    ◇    ◇    ◇








「あー……よく分からないけど、勘違いね。よそを当たりなさい」


 霊夢さんがチルノに向け、温度差の激しい態度で受け答えをしてる。
 私たち同様、その怒りの原因が掴めないままであろうが、自分ではないということだけはきっぱりと告げた。
 それで収まるなら話は早いのだが、誤解だろうと、一度頭に血が上った相手にそんなこと言って通じるはずもなく、
 また、まともに取り合わないような対応が、より一層火に油を注いでいた。


「うっさいッ! これを見てもまだしらばっくれるのか!」


 妖精は手を振り上げ、来た時からずっと持っていた赤い布のようななにかを、自身の怒りを叩きつけるよう霊夢さんに投げつけた。
 しかし布というものは軽いもので、叩きつけようとしても、空気の抵抗に翻弄されるだけ。
 はらりひらり不規則に空を舞ってから、チルノの怒りを伝えきれないままゆったりと地面に着地した。


「えー、なによこれ……」


 巫女は、とりあえず自分から1〜2mほど離れた位置に落ちたその布の所まで足を運び、拾い上げてそれがなにか確認しに行く。


「あたいの大切なもんがなぁ……それに入れ替わってたんだよっ!」


 霊夢さんは、その布の正体を見極めるべく、いつも通りめんどくさそうにしながら、そのまま赤い布を広げた。


「………………………………………………」


 瞬間、博麗神社の周辺から音が全て消えた。そんな錯覚にとらわれた。
 拾ったそれを確認するなり、霊夢さんは黙りこくってしまって。
 そして茂みの私と文さんも、それを目の当たりにし、思わず絶句した。


 その赤い布には、白い糸で刺繍されて文字が刻まれていた。
 その「布」が、何なのか、広げた形状を見て、一発で理解する。
 その「赤い布」には文字が白い刻まれて、……

 …………。

 …………あー。

 ……率直に言います。



 赤いふんどしに白い文字で『わき』と刺繍されていた。



「赤、白と来て脇なら、もうお前のことじゃ―――」






    霊符「夢想封印」






    アーッ!






 氷精の身体は、巫女放ったカラフルな大玉の霊力を複数浴びせられ、ボロキレのように飛んでいった……。


「私が赤フンなんか履く訳ないでしょッ?! バカだバカだとは思っていたけど、ここまで馬鹿とは思わなかったわよッッ!!」


 真っ赤な顔で必殺の夢想封印炸裂させた脇巫女。
 あれは恥ずかしいの赤じゃないな……ムカついて血が上っている時の赤さだな……。


「え、いっつもはいてんじゃないのかよ?」






    夢符「封魔陣」






    ぬわーーっっ!!






 氷精の身体は絶大な霊力の前にもう一度無残に空高くぶっ飛んだ。


「なんと! 博麗の巫女はふんどしを愛用していたとは!? これはスクー――」






    夢符「二重結界」






    あやーっ!?






 ついでに飛びだした鴉天狗の体も虚空にぶっ飛んだ。


「どっから湧いて出たこのパパラッ天狗……」








    ◇    ◇    ◇








 こっからです。
 偽りのスクープにつられ思わず茂みから湧いて出た文さんは、さすが幻想郷最速。
 隣にいた私でさえ、茂みから境内に現れるまで過程の軌道を、一切を目で捉えられられなかった……。
 だからその実力をなんでもっと上手に使えないんだと……。


「ああもう、邪魔しないでってお願いしたのに」


 飛び出した文さんを見て、レティさんは困ったように小さく呟いた。
 といっても、まるで幽々子さまのようにのほほんと穏やかに笑みを浮かべたままでだったけど。
 文さんのせいで、私たちの存在を霊夢さんたちに気づかれないかは不安を感じたけど……とりあえず私たちの存在には気づいてないよう。
 そりゃそうか。向こうはふんどし疑惑でそれどころじゃないんだろうし。
 私だっておんなじ立場だったらそれどころじゃなくなる自信がある。
 ……というか、


「あの……レティさん、あれは一体……? …っていうかあれ、レティさんの仕業ですよね?」

「え? なにが?」

「ふんどし」

「そうよ」


 しれっと恥じらいもなく認める。ふんどし、と。
 男性用の下着についてサラッと答えてしまう辺り、レティさんのお母さん度(というかおふくろさんポイント)が増加されたのは内緒である。


「あんなものどっから用意したんですか?」

「あんなもの扱いなんて、殿方に失礼だと思うわ」

「失礼しました……。それで、どうやって? しかもご丁寧に刺繍までついてるヤツなんか……」

「ふんどしだけ買って、昨日の夜チクチク刺繍してたわ」


 ……想像してみる。
 貧乏納屋で夜なべしてチクチクと内職しているレティさん映像として浮かんだ。
 レティさんのお母さんっぽさも相まって、その夜なべをして刺繍する姿が妙に似合っていた。
 しかし刺繍しているのは赤フンだ。それはそれはとてもシュールな絵だった。


「あら、どうかしたの? 難しい顔しちゃって」

「いえ、脳内補完を蹂躙する難解なイメージを頭に思い浮かべてしまったので……」


 そもそもなんでふんどしなんですかと小一時間問いたい。
 大体ふんどしと入れ替えられた大切なものって一体なに?
 ああもう、頭が疲れてきた。今日は帰ったら早く寝よう、体もまだ痛いし。


「っていうか、やっぱりフォーリンラブどころかフォールオブフォールしてますよね……? 本当に大丈夫なんですか……?」


 さすがに、私もこれ以上見過ごすことができずに、思わず文さんと同じ質問をもう一度レティさんにしてしまった。
 さっきは大丈夫と返されたけれど、現状は更にヒドくなっている。
 ラヴィンユー(Lovein you.)どころかこのままじゃあキリンギュー(Killing you.)だ。
 それでもなお……レティさんは大丈夫と、のほほんと笑みを崩さないまま。
 ここまで受け取り方に相違があるとは……一体なにを企んでいるのか分からないレティさんの姿は、さながら幽々子さまを彷彿させる。


「さて……じゃあそろそろ、私も行こうかしら?」

「ん?」


 ここで、おもむろにレティさんが立ち上がった。


「行くって……どこへ?」

「あ・そ・こ」


 疑問に思う私に、弾む口調で答えながら指さした先は……博麗神社の境内。
 ただ今幻想郷で最も険悪かつカオスな瘴気が充満した危険地帯である……。


「準備は整ったわ。あとは私という調味料を加えることで、極上のスイーツができあがるのよ


 ここまでの騒ぎは、全て前座。黒幕・レティ・ホワイトロックが手のひらの上でのことに過ぎない。
 レティさんはそう言うのだ。
 なるほどここで黒幕の手腕というものを見せてくれる訳か。
 しかし、あんな乱雑な食材から、どうやって甘々なスイーツを作ろうというのか……?
 私にはスイーツを作ろうとしているのにお肉やらたまねぎやら無関係な材料に並べられているように見えるのですが。

 不安に思っていると、レティさんはふところからあるものを取り出し、て…………、………………へ?


「じゃ、行ってくるわね

「………………」


 不安が、倍増した。

 弾む口調と共に、"それ"を通して聞こえてくる彼女の呼吸音が、コーホーと響く。
 その異様な姿のまま、尚も陽気に告げるレティさんの姿は、私の不安と場のカオスさを、さらに倍増させてくれた。
 さながら、お肉とたまねぎが並んだキッチンに、更にじゃがいもやニンジンが加わり、それでも尚スイーツを作り上げると自信満々なような……。
 一体どうやってスイーツを完成させるのか……もはや誰にも予想ができない。
 それはまさに黒い幕に覆われた、惨劇スイートクッキングの始まりを私に予感させるのだった……。








    ◇    ◇    ◇








 あの後、レティさんは一度神社とは反対の方向へ、森の奥に向かって行ってしまいった。
 恐らく、私たちがここ見学していることを悟られないようにと気をつかい、別の所から回り込んで登場する算段なんだろう。
 ……あの格好で。


「ちっくしょ〜……なんであたいばっかこんな目に〜」


 そして神社の境内では、巫女にメタクソにのされ、地面に突っ伏す氷精が悔しそうに愚痴っていた。


「スクープのためなら本望じゃないですか。ね、氷精さん」

「あたいは"すぷーく"とやらなんて欲しくな〜い」


 あと、文さんも神社の境内にちゃっかり居ついていた。
 天狗という相当強靭な種族なので、体中コゲてたりはするものの平然としている。


「うっさい、だまれ妖怪風情が」

あや゛ッ!?

あべしっ!?


 鴉天狗の後頭部に水平チョップ、氷精の背中にかかとをそれぞれめり込ませ、博麗霊夢は不機嫌そうに言った。


「あのねぇ、見る側は面白いかもしれないけど、ネタにされる方は堪ったもんじゃないのよ?」


 同じセリフを返してぇ……。


「くっそぉ〜……赤リボンのヤツには連敗するし……あたいの大切なもんも、巫女のヤロー愛用のふんどしに―――ぎゃっ!?」

「だーかーらっ! 私のじゃないって言ってるでしょ?!」


 イラついている霊夢さんが、地面に下した氷精を更に踏みつける。
 よっぽど神経を逆なでられているんだろう、容赦がないというか……かかとで後頭部とか、えげつないなぁ……。


「ったく……一体どう考えたらそういう発想になるのよ!?」

「えー、レティが多分そうじゃないかって言ってた」

「なぜ!?」


 それはそう仕向けたからですね。真意は分からないですけど。


「あと一緒にいた、赤青半々のねーちゃんも言ってた」

「だからなぜ!?」


 赤青半々……? 永琳さんのことかな?
 さっきまでレティさんのケガの具合を診てたみたいだし。
 それにレティさん、チルノが「先に向かった」ともこぼしていたし……じゃあ診て貰ってるタイミングで一度会っていたのかも。


「あのねぇ、ふんどしなんて男の着けるモノよ? なにをどう間違えたら女の私が履くっていうのよ?」

「けど半々ねーちゃん、『あんなにかわいい子が女の子のはずないじゃない!』とか豪語してた」

「Why!?(なぜ!?)」


 えーりんさんは天才なのでたまになにをいっているのかわからなくなります。


「ンなこと言われたって……これは私のじゃないし、取り替えるなんてマネもしていない。濡れ衣もいい所よ!」


 霊夢さんは、自分と同じトレードカラーのふんどしを怪訝な目線で眺め、憎々しく吐き捨てた。
 まるで思春期の娘さんが異性の下着を汚い物として扱うように(というかそのまんまなんだけど)端っこを指で摘まんで持ちながら。


「っていうか、いい名誉棄損よ……。こんな、ふんどし履いてるなんて決めつけられるなんて……」

「いえいえ、立派なネタじゃないですか。是非ここで履いて見せてくだ」






    背落「バックドロップ」






 天狗も鳴かずば討たれまい。
 ズドーンと大地を揺るがせて、博麗の巫女が必殺、背面からの組み技が炸裂。鴉天狗の頭が綺麗に地面に突き刺さる。
 普段使う夢想封印や二重結界などと比べると地味だが、決まった瞬間に描かれた曲線が美しいと思った。


「じゃあ一体誰だってんだよ……?」

「知らないわよ」


 文さんの上半身を地面に埋めた手をパンパンと払いながら、地面に突っ伏す妖精にぶっきらぼうに答える博麗の脇巫女。
 一体誰がこんなことを?
 一体なんのために?
 なんの得があって?
 様々な疑問胸中に湧かせ、不思議そうに暴力を振るう巫女……。

 その時だった……!


「ハーッハッハッハッハ……!」


 突如、空を切り裂く高らかな笑い声が響く!

 一体何者か?!
 博麗の巫女は声のした方向へ顔を向ける。
 地面に突っ伏していたチルノも同じように空へと首を向けて、私とルーミアさんも、その方へ目を向けた。
 そこには……!!


「くろまく〜」

「「…………」」


 ……ウォー○マンがおる。
 前に、幽々子さまがご友人から借りたまんが本に出てきた、ウォーズ○ンというキャラクターそっくりの仮面をつけたレティさんが。
 厳密には、その○ォーズマンマスクにそっくりな仮面をつけたレティさんが。
 これまた真っ黒なマントをはためかせて、そこに浮いて出てきた。

 レティさんのスイーツに、さやえんどうとしらたきが加わりました。








    ◇    ◇    ◇








「……いや、ばれるだろ?」


 空に堂々たる姿で浮いているレティさんを見て、届かぬ小声と知りつつ、私の口が自然にツッコミ入れた。
 浮いている……ああ確かに浮いているとも。
 それは物理的な意味だけではなく、シュールな登場の仕方とエキセントリックな格好で、ふたつの意味で浮いていた……。

 マントと仮面、それ以外は白い帽子と青い服の、まったくそのままの服装のレティさん。
 黒マントは森の中で付けたんだろうけど、仮面は、私たちと別れる前に身、胸元から取り出し、装着したそれだった。

 ……え? っていうかなに? 仮面ってアレ……シュールな一発ネタじゃなくて、この為の伏線だったの?

 境内の3人は、そのあまりのシュールさに絶句。
 当然、私とルーミアさんのふたりも、コメントに困っていた。
 いくらなんでもそのまんま過ぎるあの格好。
 レティさんは霊夢さんと面識あるんだしこれはなんでも……。








    ◇    ◇    ◇








「あんた……一体何者なの……?」


 あれーッ?! バレてないーッ?!

 黒き仮面の来訪者に向かい合う紅白の巫女は、その無感情な表情に真面目な表情で睨みつけて言った。どう考えてもコントなのに。
 どういうことなの?
 勘の良いことだけが取り柄の脇巫女が、あんなバレバレの変装に気づかないだなんて……。


「フッ……我が名は、黒幕仮面……!」


 そしてレティさんはレティさんで、なんかノリノリでカッコつけて偽名を名乗る。
 仮面越しのくぐもった声が、重厚な威圧感を醸し出していた。……にしても黒幕仮面ってアンタ……。

 この頃になると、私の顔もさすがに引きつってきた。
 引きつるに引きつって、もうツッコミの言葉もなにも出なくなっている……。
 レティさんが極上のスイーツのために用意した調味料は、しょうゆとみりんでした。うん、さっきも真摯なみりんが登場したしタイムリー!
 ……あかん、私も壊れてきた……。


「黒幕仮面……聞いたこと知らないわね。外の世界からの新人?」


 霊夢さんが、レティさんの茶番に付き合い続ける。
 っていうか、気づいててですよね?
 分かっててあえてそんな言い回ししてるんですよね?
 あなた、人格は決して褒められたものじゃないけれど、勘だけは良いって、自分でも自慢してたじゃないのさ。


「なにモンか知らないけど、あたいは今忙しいんだよっ! どっかいけよーっ!!」


 ……そして娘さんも母親の豹変には一切気づいておられないという事態が勃発。
 え、ええ……アレって、そんなにバレない変装なの?
 私がおかしいの?
 私の勘がすごく発達したせいで、博麗の巫女でも気づけないような真相を見抜くことができるとでもいうの? そんなばかな。
 うーん……試しにルーミアさんにも聞いてみよう。








    ◇    ◇    ◇








「……わたしも、レティさんだと思う……」


 ほらやっぱり!
 ちょっと天然入ってぽややんとしていてああ可愛い可愛いなルーミアさんでも気づくくらいなのに、なのになんで気づかんのだ?!


「ちょっと自信ないけど……」

「いや、そこは自信持って下さいよ!? つける瞬間見てたでしょ!?」


 やっぱり天然入ってぽややんとしていてああ可愛い可愛いだったルーミアさん。
 だけど、それでもレティさんと判別しているのだ。
 なのに、なぜあの巫女らは気づかんのかと?!








    ◇    ◇    ◇








「何者かは知らないけれど、今こっちは取り込んでるの。めんどうくさいからどっか行って」


 依然、なぜだか気づかないまま話を進める博麗の巫女。
 まるで、博麗神社と森の境目になんらか結界ができて、さも別世界が広がっているかのように、向こうとこっちの温度差は凄まじかった。
 邪険に扱う霊夢さんを前に、だがレティさんは……もとい黒幕仮面は、不敵に笑いを浮かべた。


「フフフ……これを見ても、まだ同じ事を言えるかな?」


 あんなのレティさんのキャラじゃない……。
 思いっきり声を低くして、キャラクターをガラッと一新して登場したレティさんに、私はもうなにも言えなくなりました。
 どこの悪役ですか。どこの悪役が取り憑いているのですか?
 なんか月に封印された悪い人のテレパシーでも受けて悪の心に操られてるとか、そんなんじゃないんですか?

 疑問に思いつつ、なんともできない私はその様子をただ黙って……訂正、言葉を失って見守っていると、
 レティさんは……じゃなくて黒幕仮面は、ポケットより一枚の布切れのようなものを取り出した。
 それは白い、くしゃっと丸くなったその布切れのようなもの。
 ポケットから取り出したそれを、場の全員に見えるように広げて、見せつける。
 すると、それに地面に突っ伏している氷精が、大きく反応を示す……!


「あ、あれは!? あたいの大切にしてる、ぶなしめじ柄のぱんつ!!」


 なぜぶなしめじーっ!?


 声に出して猛烈にツッコミ入れたい今日この頃。とりあえず見つかったらまずいから必死こいてツッコミ台詞を飲み込んだ。
 ぱんつってだけでももうツッコミどころ満載なのに、更にプリントされている柄が菌類とか……
 ……あ、本当だ、ぶなしめじの柄ついてる。しかもホワイトぶなしめじ。
 その白の菌類がプリントされたチルノの大切なぱんつを、
 レティさ……もとい黒幕仮面は、無駄に得意気に見せびらかすのだった。すっげぇシュールな図。
 この場合、果たしてぱんつをかざされた妖精の方が辱しめられているのか、
 それともかざしている黒幕仮面さんの方が辱しめられているのか……まあ両方だろう。

 もうだめです……カオス過ぎてツッコミが追いつかないです……。
 ただ、このカオス過ぎるフィールドにおいて、たったひとつだけ解けた謎があった。
 それは、なんでふんどしだったかと思えば、下半身に身に着けるもの繋がりでふんどしに入れ替わってたということ。
 整合性はあるけど、最悪の整合性だな。そもそも発端から間違ってるっちゅーねん。


「くっ、そ……! 返せ、あたいのぱんつーっ!」


 チルノは、とても真剣な眼差しで、新たに現れた謎の敵に立ち向かった。
 己の大切なものを取り返すためっ……!
 それがぱんつのためじゃなかった絶対カッコ良かったのにッ……!


「フッ、猛々しい良い顔だ。ならば我を打ち倒し、腕づくで取り戻すのだな……」


 黒幕仮面は、「良〜い」と妙な深みを込めて無駄に渋くキメながら、カードを一枚取り出した。
 スペルカード。
 それは、これから大技を繰り出さんとする、黒幕仮面はカード宣言を行わんとして、スペルカードを取り出したのだ。


「これが私の挨拶だ」






    黒幕「ブラックカーテン -Lunatic-」






    ウボァー!






 ルナティックとか容赦ねぇーッ!?


 ぶっ飛ぶチルノを見送りながら、心の中でツッコンだ。
 ウォーズマ○やぱんつやぶなしめじに比べると格段にツッコミ易かったので、心の中で全力でツッコンだ!

 っていうか、あれ? 娘じゃなかったっけ?!お母さんじゃなかったけ?! とんだスパルタ教育ママだよ!!
 外面は家族仲良く、けれど家では家庭内暴力が頻繁に行われていて、
 事件後のご近所インタビュー「そんなことする人には見えなかったのに……」お決まりのセリフが飛び出す、そんな家庭だったのですかー?!
 そんで地味に弾幕が黒幕ってことを象徴しまくってた……よっぽど黒幕にこだわりがあるんだなぁ。

 ちなみに、黒幕「ブラックカーテン」について。
 画面の両端から、中央に迫る形で横一直線に並んだ弾幕がやって来て、それが舞台の幕が閉じる姿を表すように閉じていく弾幕だった。
 閉じた後、その幕の弾幕はレティさんから見て外側に向かって飛んで行き、しかも一発放ったあと黒幕仮面さんは画面内をランダムに移動。
 もしゲームで出てきたら、幕が閉じる前に黒幕仮面さんの側に入らないと、あっという間にアウトなのに、
 知らずに外側でして気づいたらぴちゅーんっしてた、初見殺しな移動型ストレスタイプの弾幕だ。

 しかも今はLunaticレベルだったから、幕を摸した弾幕は黒幕仮面さんのえらい近くに発生するわ、閉じる速度は速いわ、
 黒幕仮面さんの移動距離も半端なく長いわ、幕の弾以外に黒幕仮面さんばら撒く弾幕も多いやら速いやらで、相当鬼である。


「フッ……己を知るべきだったな。チルノとやら……」


 満身創痍に地面に墜落した氷精を、仮面越しの視線と共に心ない言葉を吐くお母さんがそこに居た。


「な、なぜあたいの名前を!?」


 お母さんだからです。


「え?! あ、いや、その……し、調べたからよっ!」


 素でうっかりミスだったらしく、黒幕仮面はちょっとレティさんに戻っていた……。
 しかも微妙に取り繕えてないし……。








    ◇    ◇    ◇








「よーむちゃん……わたし、ゆゆちゃんになんて報告すればいいの……?」

「私に聞かないでください……」








    ◇    ◇    ◇








「黒幕仮面とやら!」


 最早誰も理解できないほどカオスに支配されてしまった場の空気。それを律せんと、凛とした声が辺りに響き渡る。
 この幻想郷を、異変より守護することを使命とする博麗神社の巫女……博麗霊夢の声だった。


「あんたか……」


 いつもの気だるそうな瞳が、鋭い眼光を放ち、妖怪退治専門家の気高いそれに変わっている。


「あんたのせいで……」


 かつて一度、私もその目と対峙したことがある。
 幽々子さまが異変を起こしたあの時、彼女の敵として立ちはだかった時に……。
 だからすぐに気づく。
 博麗霊夢は本気だ、と……。


「あんたのせいで、私は普段ふんどし履いてるなんてあらぬ誤解を受けたのよッ!!」


 動機は純然たる私怨だったけど。


「例えバカ相手ったって、そんな屈辱、許せる訳がない!!」

「許せない……? 許せないから、なんだというのだね?」

「もちろん、懲らしめるまでよっ!」


 博麗の巫女は両手にホーミングアミュレットとパスウェイジョンニードルを、手から溢れるほど取り出し、臨戦態勢を取る!
 余程怒りの満ち満ちているのだろう、戦意十分に黒幕仮面と向かい合う。


「憎しみで、私に勝とうと言うのか?」

「言ってろ」

「フ……良かろう……」


 黒幕仮面も、答えるように再びスペルカードを取り出す。
 互いに対峙する強敵に、猛る戦意は、剥き出しの刃での鍔迫り合いに匹敵した。


「真の黒幕が手繰るは、最早のただの策にあらず! 逃れ得ぬ絶対の定め!」


 黒幕仮面がその一言を、威圧感を滾らせながら口にする。盛り上がりはまさに最高潮クライマックス
 ステージ6の戦闘前会話でBGMまで切り替わりラスボスのテーマ曲の前奏が流れる感じに似て……
 あ、ほら、今画面右下にBGM:「幽雅に咲かせ、感情の千年凍幻郷信仰 〜 Deepest Black Curtain」って表示が……パクりまくりだーーーッッ?!


「さあ、因果に抱かれ、我が導きに応えてみせよ!」






 黒幕「ブラックカーテン -very esey-」






 そして手加減丸出しだーーーーーッッッ!!?



「うぉぉぉぉっ!」


 当然、ベリーイージーな弾幕は、妖怪退治の専門家には通用せず、霊夢さんの圧勝であっという間に決着をみせた。
 ってかなんだよその叫び声。
 ちなみに、黒幕「ブラックカーテン」の幕が閉じるスピードはめっちゃくちゃ遅かったし、出現位置も黒幕仮面から断然遠い。
 勝つ気ないのが見え見えの弾幕だった……。


「フ……私の負けのようだな。ここは潔く退くとしよう……」


 黒幕仮面さんは苦しそうに(演技)胸を抑えながら、自らの敗北(わざと)を受け入れた。
 だが、ドえらい名誉棄損を受けた霊夢さんの気はそれで済むなんてことはないらしく、みすみす見そうなんて毛頭考えていない。
 苦しむ(演技)黒幕仮面に、すかさず飛びかかる。


「待ちなさい! そう簡単に逃がす訳ないでしょっ!!」

「これは約束の品だ……」

「―――わっぷ……?!」

「さらばだ!」


 黒幕仮面はマントを大きくはためかせると、チルノのぱんつを霊夢さんの方に投げつけた。
 ぱんつは霊夢さんの顔に被さり、それで一瞬霊夢さんが視界を塞がれてしまう。
 その一瞬の隙で、黒幕仮面は何処かへ飛び立ち、高笑いを残してその姿を消してしまった……。

 というか、顔にぱんつって、冷静に考えるとすごくやばい映像ではないか?








    ◇    ◇    ◇








「ただいま〜」


 数分後、レティさんが私たちの所に戻って来た。
 仮面は外しているけど、黒いマントはつけっぱなしだった。


「どうだった? 私の黒幕っぷりは?」

「よくわかりませんでした」


 感想を伺うレティさんに、率直な感想を述べた。


「よくわかんないけどかっこよかったっ!」


 ルゥゥぅぅミアさんんんんんんんんッッッッ!!?!?


「ふふふ、ありがとう」

「えへー

「えーっと……なんですか、さっきの……くろまくかめん?」


 ルーミアさんと微笑み合うレティさん。
 その脇で頭を抱えながら、私はさっきのよく分からないやり取りの説明を求めた。

 なんであんな格好して、あんなよく分からない演技までして、あんなよくわからない弾幕ごっこをやって……ああもうわけわかんない。
 いくら「黒幕」に並々ならぬ執念を抱いてるからって、「黒幕仮面」は正直どうかと思います。
 っていうか、黒幕が表立って動いちゃアカンだろうと。


「え、だってキャラクター変えておかないとばれちゃうし。ちゃんとスペルカードも新しく考えたのよ?」

「や、聞きたいのそんな程度のことじゃないです」


 大体、それ以上に外観をもっと変えておかないとバレるでしょうに……。








    ◇    ◇    ◇








「黒幕仮面……一体何者だったの?」


 だからなんで分からないんですか霊夢さん……。








    ◇    ◇    ◇








「どうもお三方、ただいまですー。いやー、面白い記事が書けそうです。黒幕仮面なる謎のイレギュラーも現れましたしねぇ」


 射命丸、お前もか。


「しかしあの者、なぜ私がレティ氏に提供した『幽雅に咲かせ、感情の千年凍幻郷信仰 〜 Deepest Black Curtain』を知っていたのでしょう……?」


 それで気づけよ。って編曲かお前かよ。
 道理で私の知らない「感情の」とか「信仰」とか入ってた訳だ。


「で、一体なにがどうなってるんですか? わざと負けてまで」

「あら? バレちゃったのね」

「そりゃベリーイージーでしたし……」


 文さんを加え、改めてレティさんに今の事態の説明を求める。
 今までのやり取りになんの意味があったのだろうか、と。
 手加減したのは分かったけど、さすがにその意図が掴めなかった……。

 そう、レティさんのこしらえたスイーツは、
 皮を剥いたじゃがいも、にんじん、玉ねぎと一緒にお肉を炒めて、
 食べ易い長さに切ったしらたきとだし汁を加え、鍋が煮立つまで煮込み、
 じゃがいもが柔らかくなるまで煮た後、予め塩ゆでしたさやえんどうを散らせて。
 はい、出来たてホクホク肉じゃが完成。
 うーん、おふくろの味。
 スイーツ作れよ。


「ふふっ、そうね、説明くらいしてあげなくちゃね。黒幕仮面の狙いは……ズバリ、ふたりの仲を取り持つための、悪役よ。
 ほら、『泣いた赤鬼』って話、知らない?」

「なんと! あの黒幕仮面もレティ氏の手の者だったのですか?!」


 驚く文さん……もうなにも言うまい……。マントつけっぱなしでも気づかないあなたが悪いんだから……。


「泣いた赤鬼って……まあ知ってますけど……。簡単にいえば、親友の株を上げるために、自分が悪人のフリする話でしたよね?」

「その通り! つまり……あ、これ以上は説明するより、見てもらった方が早いかもね」


 レティさんはなにかに気づいたように言葉切ってから、神社の境内を指さした。
 その指先を辿ってみると、霊夢さんとチルノは、神社の境内で……いつの間にか、ふたりきりになっていて……。








    ◇    ◇    ◇








 地面に突っ伏すチルノに、霊夢さんが歩み寄る。
 そして、取り返したチルノのぱんつを彼女に差し出した。
 とても、ぶっきらぼうに……。


「ほら、これでしょ。あんたの大切なモンって」

「え……?」

「まったく……こんなセンスのない下着の、一体なにが良いっていうんだか」

「う、うっさい!」


 チルノも負けずにぶっきらぼうに、自分のぱんつを奪い取る。
 憎まれ口を叩きながら、チルノの大切なものにケチをつける霊夢さんだったが……
 けれど……なんだかんだ言いながら、霊夢さんはそれを見事取り返した。取り返して、持ち主へと返してあげている……。
 ……ツンデレというヤツだろうか?


「わるかったな……」



 チルノが呟いた。
 突然のことに聞き逃しただろう霊夢さんが、「え?」と首を傾げた。
 だからチルノはもう一度、ぽそりと、呟く。


「誤解して……わるかった、って……」


 その声色は、憎まれ口に、不快な感情を返すそれではなかった。
 ツンツンした態度でありながらも、それが照れ隠しにそうなってしまったんだと、見ていて分かるほど、チルノの表情は真っ赤に照れていた。


「別に……。私は私で勝手にやっただけ。退治したらついでに取り戻っていただけのこと。
 それに、他人が履き古したセンスのない下着なんて、貰っても迷惑なだけよ。だからあんたん返すの」

「それでも……あんがと……」








    ◇    ◇    ◇








「どう? 良い雰囲気じゃない?」

「お、おおー……」


 本当だ。なんか良い感じの雰囲気になってる。


「一度は敵視し、憎んだ相手……けれどそれは実は誤解だった。
 そしてその相手が、自分のことを助けてくれたばかりでなく、大切なものまで取り返してくれた……。
 誤解してた分、相手への申し訳なさや感謝の幅がそのまま加算されて、ドキドキも大きくなる、って寸法よ」

「ははぁ……けどそんなに上手く行きますかねぇ?」


 レティさんが、改めて今回の肉じゃが作りの解説を行ってくれた。
 しかし、文さんはその信憑性を疑うよう尋ねる。
 確かに……今は良い感じに見えるけど、本当にそんなので効果が出るかは怪しいところ。
 だけど、レティさんは自信満々な素振りを崩さず。


「さぁ。他の人なら分からないわ……け・ど、チルノちゃんなら―――」








    ◇    ◇    ◇








「おい!」


 チルノが、霊夢さんに向かって言った。
 ちょっと生意気な態度に、霊夢さんの眉が若干潜んだが……チルノの次の言葉で、その表情はガラッと一変する。


「お礼……させろよ」

「お礼!?」


 立ち上がりながら、チルノが言う。やはり、大切なものを取り戻してくれた恩に、感謝の念はあるのだろう。
 レティさんが隣で「ツンデレねぇ〜」なんて娘さんのことを評価していた。
 霊夢さんも、ぶっきらぼうだった表情が「お礼」の一言に一気に緩み始めた。あの人本当にゲンキンだなぁ


「お礼……お礼か〜 うふっ、うふふふっ


 ゲンキンな巫女は、お礼が貰えると分かるなりご機嫌にあれこれ思案を始めた。
 そして、その内容が決まったのだろう、チルノに向けて要求を口にしようとした。


「そうね〜……なら、お賽銭でも頂―――」


 その時……。


「―――っ!?」


 霊夢さんの緩んだ頬に……チルノの小さな唇が……ちょん、と重なった……。


「「おおおおおっ!?」」


 なんという超展開ッ!?
 目の当たりにした私と文さんは、隠れてるのも忘れて、大きく声をあげてしまた。
 その声はきっと境内にまで届いてしまったかもしれない……が、そんなこと気にしている場合じゃない程のものを、私たちは目撃してしまった!
 ルーミアさんは私たちと比べておっとりと「おー」なんて呟くだけに留まっていたけど、
 レティさんは良しっ! なんて軽くガッツポーズを取っている。
 文さんは、シャッターチャンスを逃してなるものかと、すぐさまカメラのファインダーを覗き、シャッターを連続で切り始めていたた。


「チルノ……あんた……」

「レティが……こうしろって……。相手に、お礼したい気持ちを伝えたい時は……こうすれって……。あ、あんがとよ!」


 ……あれ? なんか本当に……良い、雰囲気?

 茂みの方では、興奮のあまり今にもバレそうな程騒がしくしているんじゃないかと思うのに、向こうはそれに気づく様子はない。
 もう、ふたりの世界が繰り広げられて、他のことなんか目に入らない……。

 目を見開き、驚きの表情のまま、柔らかなそれが触れた頬を手で押さえる、博麗霊夢……。
 そして、目をそむけ、もじもじと恥ずかしそうな仕草のチルノ……。
 霊夢さんは、ふっ、と柔らかく微笑んで……

 そして……








「キモいんじゃボケェェぇぇぇええええーーーーッッッ!!」

くぁwせdrftgyふじこlp!?


 チルノをぶん殴った。








    ◇    ◇    ◇








「「「……………………」」」

アーーーーッ……


 さようならチルノ。ありがとうチルノ。君の雄姿は忘れない。
 白岩礼茶先生の次回作にご期待ください!


「おかしいわね……ほっぺにちゅーされてからチルノちゃんのこと、意識し出すようになるはずなのに……」


 真昼のお星様になった我が子(違)を眺めながら、不思議そうに首をかしげるレティさん。
 って、そりゃそうだ。確かにここまでの流れ、チルノの方は霊夢さんに胸キュンするところはあったかもしれないけれど、
 あの霊夢さんが……そのテの話に相当嫌悪感を抱いているあ・の・霊夢さんが! それできゅんきゅんするかどうかはまた別の話じゃないの。

 一体どうしてそんなシナリオ組み立てちゃったんですか、黒幕さん。
 そもそも、そんなほっぺにちゅーくらいで体よく恋に落ちるようなお手軽な関係居たら、見てみたいよ。


「半人半霊の真面目な庭師と、無邪気な宵闇の妖怪との馴れ初めのシナリオを参考にしたのになぁ……」


 家帰ったら鏡見てくるよこんちくしょーーーーーーっっ!!!


「とりあえず、今回はこれで終了ですかね……?」

「そうね……」


 文さんが、レティさんに確認するように尋ねる。
 それに……レティさんは、残念そうではあったものの、小さく頷くのだった。


「ってことは……」


 これにて試合終了……。

 霊夢さんは、チルノをぶっ飛ばした後、ドスドスとガニマタ歩きで神社の中へと消えて行ってしまったし、
 チルノも、あの調子じゃあ戻って来れそうもない……。
 試合続行は不可。レティさんも十分認識していたらしい。
 チルノの最期の断末魔が、皮肉にも試合終了のホイッスルとなったようだ。


 そして……勝負は、幽々子さまの勝利。
 自分で言うのもなんだけど、今の霊夢さんとチルノと比べたら、私たちの方が断然仲が良いに決まっている。
 比べるまでもなく、勝敗は決した。

 そう思った瞬間……私の口から、自然と安堵のため息がこぼれた。

 だって、いくらいけ好かないとはいえ、私が選んだ犠牲者……罪悪感というものがどうしても拭えなかったから。
 一時の感情に流されたとはいえ、いくら憎くても、誰かを犠牲するものじゃない。
 やった分と同じだけ、罪悪感が自分を押し潰してくるんだから……。

 ま、今回はいい勉強になったと思って―――


「なに、まだ時間はあるからね! 出だしにしてはなかなかの成果よ!」

「そうですね、今後の展開に期待してますよ、黒幕さん」

「―――へ?」


 時間は、まだ……なんだって……?


「あの調子なら、チルノちゃんの方はちょっとは霊夢に胸キュンしただろうし……あとは霊夢の方をなんとか攻略すれば……」

「え? ちょっ……すみませんっ! これで終わりなんじゃないんですか……!?」


 やっと全てが終わったと安堵したところに、期待を裏切るような絶望の言葉が耳に突き刺さった。
 ちょっと待って……これで終わりなんじゃあ……?

 話の掴めないまま、盛り上がるレティさんらに割り込んで、慌てて問い掛けた。
 最初はその様子を不思議そうに眺めていたレティさんだけれども、その内なにかに気づいたように「ああ」なんて口にして、


「そっか。妖夢ちゃん、話し合いの時は居なかったんだものね」

「え、ええ……」

「この勝負はですね、期間内に、どこまで巫女と氷精をラブラブにできるか、で勝敗を決するのですよ」

「え? え? え!?」

「つ・ま・り、本番はまだまだこれからってことよ

「ええ〜〜っ!? じゃ、じゃあまだ続くってこと〜〜〜っっ!?」

「ええ」

「ですよ」


 レティさんと文さん、揃って肯定するふたりに、言いようのない絶望感がじわりじわりと這いあがってくる。
 じょッ、冗談じゃない! 今回みたいなことが、まだ続くだって!?
 押しつぶされそうな罪悪感も、黒幕仮面なんてカオスな展開も……!?
 幽々子さまが関係している以上、私は見過ごすわけにもいかないけれど……だからってこれ以上付き合ってたら、体がもたないですって!


「しかし、期間については亡霊の姫の方も承諾してましたし……今更ルール変更って訳にもいかないでしょう。
 レティ氏だって、その日程で予定組んでるでしょうし」

「そ、それは……」


 確かに、一日で恋に落とせ、だなんて無茶を言うにも程がある。
 ある程度の日程が必要なのも、言われてみればそうだ。
 私が勝手に、一日で終わって欲しいと期待して、その通りだと思い込んでただけ……。
 だけど……だけど……


「す、すみません……! その期間って……どのくらいでしょう……? 3日……とか?」


 恐る恐る、尋ねてみた。
 お願いします神様、願わくば1週間以内で事をお収めください。でないと私……おかしくなっちゃう……。
 内心必死に祈る私に、レティさんはまずにこりと微笑む。
 そして、私とルーミアさんを一度見まわしてから、まるで当然のことのように、言った。


「あなたたちがフォーリンラブした、3週間よ」


    プッン……


「本日から数えて3週間、ですよね? はてさて、黒幕さんがどんな手腕を魅せてくれるのか、今から楽しみです」

「そう、目指すは3週間で初えっちよ!!」

「おお、頼もしい!」

「この黒幕に任せなさい! なんてね


 き、切れた……。
 私の体の中で何かが切れた……決定的な何かが……。

 今日みたいなこと、3週間も付き合わされるだなんて……そんなの考えただけでも、もう……。
 色んな疲労感に押しつぶされ、私はとうとう地面に突っ伏してしまっていた。


「よーむちゃん、どうしたのー? 筋肉痛ー?」

「おねがい……わたしをかいほうしてください……。しくしく……」


 私を心配して、優しい言葉を掛けてくれるルーミアさん。

 レティさんと文さんは、ふたり盛り上がって今後の展開を話し合っていたけど……私の耳におふたりの言葉はもう届いて居なかった。

 ただひとつ分かることは……このカオスなやりとりも、私の罪悪感も……まだまだ続いていくということ。
 体がどっと重くなって……私はもう、自分の体を支えることができなくなってしまうのだった……。


 ああ……長い3週間になりそうだ……。みょん……。
























「新刊で〜す」


 そう言って、白玉楼の庭を掃除する私に声を掛けてきたのは、鴉天狗の文さんだった。


「あ、文さん。こんにちは」

「はいこんにちは。新刊ができましたので届けに参りました〜」


 数日ぶりに顔を合わせた彼女に挨拶を交わしながら、最新の文々。新聞を受け取る。
 多い時でも月5回しか出ないという新聞にしては、早いペースの次回号だと思った。
 やっぱり、例の独占取材が、発刊ペースを早める刺激になっているんだろう。
 まあ、前号は、私とルーミアさんとの関係の誤解を解くため、幽々子さまが発刊急がせたというのもあるんだろうけど……。


「わざわざ、ありがとうございます」

「いえいえ、私としても、購読者が増えて下さることは喜びにも繋がりますので。こちらこそ、新規購読ありがとうございますっ!」


 私に、文さんはとてもご機嫌なニコニコスマイルで、感謝の言葉を返してくれた。

 普段、嘘偽りの多いこの新聞を私は読まないのだけど……
 いかんせん現在は幽々子さまの関わる「黒幕対決」にまつわる記事が載る可能性非常に高い。
 なら、決着がつくまでは目を通さない訳にもいかないと、しばらくの間文さんの新聞を取ることにしたのだった。
 ま、結局見出しだけ見て、黒幕対決関連の記事があればそこだけ読んで、
 ないならないでそのまま倉の中に積んで、秋の焼きいも用に溜めておけばいいし。
 それでも結局、余計な仕事がひとつ増えたことには変わりないけれど……。


「では、私は次の場所に記事を届けに参りますので」

「はい、おつかれさまです」


 申し訳程度に労いの言葉を掛けると、文さんは最速の翼を広げて、あっという間に飛び立ってしまった。
 そして、その背中は10秒も経たないうちに豆粒程度に小さくなるのだった。


「はぁ……。まったく……なんでこんな展開に……」


 軽くげんなりしながらも、受け取った新聞に目を向ける。
 まあ、3週間だ……。
 いつも通り幽々子さまに振り回されてると諦めて、この黒幕対決を見届けようではないか……。
 私は、庭掃除の手を一旦止めて、簡単な休憩も兼ねて、一面記事からササッと見出しだけを読み始めることにした。


「ええっとなになに……『衝撃! 紅白の巫女は、紅白のふんどしを履いていた?!』」

「手前ぇ見つけたぞこのパパ鴉!? よくも私がふんどし履いてるって誤報載せやがったなぁッ! 今すぐ退治してやらぁ!!!」

「あややぁぎゃあああああっっっっ?!」


 ……一面の見出しを眺めた直後、巫女の憤怒と天狗の悲鳴が遠くの空から聞こえてくる……。
 その断末魔に、私は一瞬ビクリと身をすくめて、声の聞こえた空と、新聞の見出しを見比べた……。
 見比べて……


「あ……そういえば今日はルーミアさんがお泊まりに来る日だったっけ。そろそろいのしし獲って来よ……」


 ……そして聞かなかったことにした。
 今日も幻想郷は、のんびりと平和な一日だった。


「ちょッ……やめ……、ぅぎゃあやややぁあああぁぁああッッッッ?!」



















あとがき

「みょんミア!」シリーズ第7弾! そして、今回から第2部の開始です。

まあ、第2部と言っても別になにか変わる訳でもないですが……とりあえず新キャラを大量投入を考えてます!
そして手始めに冬の黒幕妖怪と鴉天狗のおふたりが参戦してくれました!

……って、今回のメインはレティさんのはずだったのに、割合的には射命丸の方が出番を獲得してしまった気が!
うーん、こんなに出張る予定はなかったのに……さすがは射命丸文、花映塚から地霊殿までの出番をゲットしただけはあります(笑

そしてレティさんについては……うん、レティさん好きですよ。なんかヘンなキャラにしてごめんなさい。
なんか奇抜なことをしようとしたら、どうしてか霊夢ふんどし説になってしまった。どうしてこうなったの?
とりあえず、黒幕モードじゃないとヘンにならないようにしますから(苦笑

そんな感じで、ほんのりらぶらぶな百合ストーリーから一転、とんだばか話に走ってしまった「みょんミア!」シリーズ!
そしてそんなばか話を、3ヵ月に渉って掲載するという長丁場になってしまった!
果たしてこれで良いのだろうか?! なぜなら、今後もこんな展開が続く予定だからです!!(ぇー
不安を拭えないままではありますが、この妙な世界観にお付き合いくだされば幸いです……。


ちなみに、今回の「みょんミア!」は、みょんミアの看板に偽りがあるくらいいちゃつきがなくなると思ってたのですが、
存外そんなことなくなったので、ちょっとびっくりしました。
ただ、今後はそういう展開もあるので……まあ、「みょんミア!」はあくまでシリーズタイトルであって、
決して毎回妖夢とルーミアがいちゃつくことを示していた訳ではないんだ! 「な、なんだってー!!」とお受け取りください(苦笑


更新履歴

H21・12/20:完成


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