ボクは逃げ出した
まわりと一つになっていく
雪が降って
彼女が消えていく
そして彼女は
白雪姫になった
ボクは
王子様にはなれなかったよ


逃げ出したから








 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなただけは覚えていて  


















 

ボクの目の前に女の子がいた。
背はボクと同じくらいだけど、束ねられた長い髪と、自然に顔に納まる眼鏡が落ち着いた印象で、少しだけ年上にも見えた。

「こんにちは」

女の子がにっこり微笑んで言った。
ボクは何だか後ろから驚かされたような気分で、慌てて「こんにちは」と返した。
周囲には何もなくて、寒いからなのかボクも彼女もコートやマフラー、手袋に帽子と、外出用の服装でここにいた。

・・・・・・ここは何処だろう。

辺りを見回しても答えは出ない。
ただ一面に黒いプラスチックのような、そうででないような、地面が広がっている。
とても現実感のないところだ。

「衛ちゃん、どうしたんですか?」

声の方を見ると、さっきの女の子が僕の腕に抱きついていた。

「な、き、君は・・・・・・?」
「何驚いてるんですか。さぁ、行きましょ」

ボクの動揺も無視して女の子は腕をグイグイと引っ張っていく。
ワケが解らない。

「ね、ねぇ、君は一体誰なの? それにボクの名前なんで・・・・・・」
「さぁ? どういうことなんでしょうね?」

女の子は笑って答えた。何だかちょっと腹が立つ。
こっちは大真面目なんだぞ!
そんな風に思いながらも、ボクは口を尖らせながら黙って引っ張られていくしかなかった。

いくらか進んでも、やっぱり周りの景色は変わらなかった。
冷たさと寂しさしか感じられないこの暗い世界に、ボクとこの子は二人きりだった。
女の子はやがて急ぎの足を緩めていった。

「衛ちゃん。今年のクリスマスはどうしますか?」
「クリスマス?」
「ええ、クリスマス。毎年のことじゃないですか」

女の子はさも当然のように言った。
まるでボクたちがずっと前から知り合いだったみたいに。それこそ家族か
―――

―――恋人みたい。

彼女はボクを誰と勘違いしてるんだろう。
この子とボクは今初めて会った。
彼女がどういう風にクリスマスを祝ってきたかは知らないけれど、少なくともボクには何の関係もない。
ボクには昔からクリスマスを一緒に祝ってきた人なんて言ったら家族だけ。
そう、それだけ。

そのことを、多少言い方は柔らかくして、伝えると、女の子は少しだけ表情を曇らせた。
そして眼鏡の奥で光る大きな瞳にボクを映して

「そうですか」

とだけ口にした。
口元に残る微笑が、ボクのまぶたに焼きついた。
何故だろう。
その後から彼女は口を閉じていた。
でも、とても楽しそうだった。

それからまた歩き出すと、しばらくして家々が見えてきた。
何処かの町なのかな。
何事もなく街に足を踏み入れた。

・・・・・・あれ? ここ・・・・・・。

「衛ちゃん」
「え?」

今まで黙り込んでいた女の子が口を開いた。
ずっとくっついていた体を離して、くるくると回りながらボクの前に立つ。

「クリスマスがダメなら、ヴァレンタインデーはどうですか? 毎年チョコレート交換してたじゃないですか」
「ヴァレンタイン・・・・・・」

クリスマスの事を聞かれたときと同じだ。
ヴァレンタインデーは、別に大したことはない。
ボクは・・・・・・その、女の子だけど女の子からチョコもらったりしてるけど・・・・・・。
だけど目の前にいるこの子とヴァレンタインデーに何かあるなんてことは勿論無く。

どんどん冷めていくだけのボクとは対照的に、女の子は本当に楽しそうだった。
彼女の見ている未来はどれだけ明るいのだろう。
まるで輝く未来が約束されているみたいに、屈託無く笑うその理由は何なの?

「いつもホワイトデーのお返しで悩むんですよね。3倍返しとは言うけれど実際そんなに返されても困ることが多いですしねぇ・・・・・・
ほら、結局二人でのんびり過ごそうって、それで終わっちゃったりして」

女の子は身振り手振りを交えて話していた。
でも、ボクからすればいい加減、ふざけたことは言わないで欲しいと、そう思うだけだった。
ボクは彼女を知らない。会ったこともない。会ったことがあるにしたって、こんな一方的にボクのことだけ知られているなんて、おかしい。
なんでボクに付きまとっているのか、結局ここは何処なのか。

「衛ちゃん」

どうしてそんな風にボクと親しげなのか。

「ねぇ、衛ちゃん」

馴れ馴れしい。

「衛ちゃんってば」

そんな笑顔でボクの名前を呼べるのは、一人だけなんだ。

「どうしたの、衛ちゃ
―――
「気安く名前呼ばないでよ!!!」

怒鳴り声が静寂の町に響き渡った。
町があまりに森閑としていて、自分の声がいつまでも聞こえた。
ハッと我に返って顔を上げると、女の子はやっぱり立っていた。
悲しそうな顔をしているかと思った。もしかして泣き出してしまうかと思った。
僕はとても悪いことをしてしまったと、そう思った。
でも、

「よかった・・・・・・」

彼女はそう言ってかすかに眼を潤ませていた。
しかし、悲しい涙には見えなかった。
とても柔らかな笑顔で目元にたまった涙を拭う。
何だか唖然としてしまった。
怒りも何処かへ飛んでいってしまった。
いつの間にか、雪が降り出していた。



「さっきは・・・・・・ごめん。急に怒鳴ったりして・・・・・・」
「いいんです。嬉しかったから」

女の子はまた屈託の無い笑顔で返してくれた。
なんだかとても心地いい。

あの後結局いろいろな質問をしたけれど、彼女は何も教えてはくれなかった。
でもそれでもいいと思えるようになっていた。

ボクたちは雪の降る町中を歩き続けた。
よくよく見れば、この町には見覚えがあった。
いや、見覚えがあるというよりは、ボクの住んでいる町そのものだった。
商店街、デパート、学園・・・・・・ボクがよくランニングに来る、この公園もそう。
ここはボクの住んでいる町なんだ。

「気付きましたか?」
「・・・・・・君は初めから気付いていたの?」
「もちろんですよ。わたくしはここに住んでいないけれど、何度も二人で歩いた道じゃないですか、このコース」

腕を組みながらボクの肩に寄りかかって、彼女は遠くを見つめているようだった。

そんな彼女の姿が、一瞬何処かで見覚えがあるような気がした。
なかなか思い出せない。そもそも会ったことなどないはずなのに、なんだろう、この既視感。
ぼやける彼女の姿に、曖昧な焦点を絞る。
と、突然彼女の足が止まった。

「どうしたの?」

ボクが尋ねても、彼女は黙って前を見つめるだけ。
ボクも彼女の視線の先に目をやった。
そこには雪だるまがあった。周りに雪は積もっていないけれど、雪だるまだけがぽつんと。
毛糸の帽子を被って、それから木の枝で眼鏡みたいなのを作ってある。

「これがどうかしたの?」
「覚えていませんか、これ」
「そう言われても・・・・・・」

再び雪だるまに目を向ける。
やっぱりわからない。何だというのだろう・・・・・・。

「衛ちゃんの被っている帽子と・・・・・・よく似てますね、あの雪だるまの帽子」
「え?」

まさかとは思いつつも思わず帽子を脱いで確認してみる。

言葉を失った。

似てるどころじゃない、同じだ。全く同じ毛糸の帽子だ。

「こ、これは・・・・・・」

わけのわからない偶然に、ただ驚くことしかできなかった。

「偶然じゃないです。思い出して・・・・・・もらえませんか?」
「どういうことなの・・・・・・?! 君は一体・・・・・・」

雪が積もり始めた。
今まで溶けるだけだった雪が、いよいよ積もり始めた。

視界が激しく明滅する。
今まで何回も体験したことのない、眩暈の感覚が襲い掛かってきた。
感覚の中で揺れる世界。見つめる女の子。積もる雪。

―――ちゃん? ――えちゃん?
どうしたの、ねぇ。ねぇってば。

倒れた少女。何も知らない少女。ただ雪は積もって、少女達を染めていく。

頭が激しく揺さぶられた。脳からいろんなものが飛び出そうな。
そしたら本当に出た。
記憶。思い出。
どうしてこんな大事なことを忘れてたのか。
違う。忘れようとしていたんだ、自分から。
自分で蓋をしたんだ。辛くないように。苦しくないように。
逃げ出したんだ。

「君・・・・・・は・・・・・・」
「思い出したんですね」

白く染まる世界で、女の子は目を細めてその雪のように白く美しい頬を持ち上げていた。
そこから小さくこぼれたありがとうの一言が、ボクには辛かった。

「でも、もう時間だから。いかなくちゃ」
「ま、待って!! ボクは・・・・・・」

彼女の姿が霞んでいく。
気付いて伸ばした指先は、届かず、つかめず、ただ虚しく宙を泳いだ。
ようやく思い出したのに。こんな時自慢のはずの足は何の役にも立たない。

「思い出してくれて、ありがとう」
「そんな・・・・・・ボクには君にそんな言葉を・・・・・・」
「あなただけには・・・・・・覚えていて欲しかったから。他の誰に忘れられても、あなただけには」

追いかける足は重く、彼女の姿は消えていく。
ボクにはただ、薄れていく輪郭を見送ることしかできなかった。
隣ではボクが泣いている。
あの子にはただ、白に埋もれる彼女を前に泣くことしかできなかった。


今も昔も、変わらない。
ボクは・・・・・・















「鞠絵ちゃん!!!」

思わず叫んだその拍子に、ボクは夢から醒めた。
夢・・・・・・そうか、ずっと夢だったんだ。
でも大切な夢。消しがたい過去。
全部思い出した。
2年前のあの日。ボクは鞠絵ちゃんを置いて逃げたんだ。鞠絵ちゃんがあんな風になってしまったのはボクの所為なのに。
それからずっと記憶に蓋をして、ずっと忘れてた。
彼女に会えない辛さ、自分の罪悪感、自己嫌悪。それら全てから逃れるために。

「鞠絵ちゃん・・・・・・」

虚ろな意識から名前が口を出た。
頬には一筋、乾いた涙があった。
一人の部屋がこんなに広く冷たいものだと思ったことはない。
込みあがってくる熱。

「鞠絵ちゃん・・・・・・!!」

言葉と共に激情が溢れた。
乾いた跡を、また涙が濡らしていった。
でも


泣いてる場合じゃない。


会わなくちゃ。


行かなくちゃ。




「今行くよ・・・・・・」






鞠絵ちゃんと知り合ったのは、小学校の2年生くらいの時だったと思う。
親戚の集まりで、初めて鞠絵ちゃんが来た時だった。
知り合った当時から鞠絵ちゃんは体が弱くて、普段は療養所にいたらしい。
以前から女の子なのにやんちゃ坊主だったボクとは、まるで正反対な女の子だった。
でもボクたち二人は不思議とすごくウマが合った。
一緒にいて楽しかったし、鞠絵ちゃんの女の子らしさがボクにとって憧れにもなっていた。
一方で鞠絵ちゃんも、ボクみたいに元気な体に憧れていると言っていた。
鞠絵ちゃんの体の調子がいい時はこの町に来て、ボクといろんな所を回った。
ボクのランニングコースや、公園。土管のある空き地。キレイな夕陽の見える秘密の丘。緑の匂いが気持ちいい森・・・・・・。
おおよそ女の子らしくないところが多かったけれど、それでも鞠絵ちゃんは初めて見るそれらに宝石みたいな表情で触れていた。
クリスマスやヴァレンタインデーには、女の子同士でプレゼントやチョコの交換をしたりもした。
そんな関係が続いた2年前の冬。
いつものようにお医者さんからも許可が出て、この町へ鞠絵ちゃんがやってきた。
その日は雪が降っていて、体に障らないようにと万全の準備で外出した。
一足早いクリスマスイルミネーションに彩られた町を二人で歩くのは、何だか周りを歩くカップル達を思わせてちょっぴり恥ずかしかったのをよく覚えている。
鞠絵ちゃんは「衛ちゃんと一緒だと、普通のカップルに見えますね」なんて笑って言ってたっけ。
公園に差し掛かかった時、広い空き地を雪が埋め尽くしているのを見て、鞠絵ちゃんが

「衛ちゃん。わたくし、雪だるまを作ってみたいです!」

とはしゃいで言った。
ボクも鞠絵ちゃんが体の弱い女の子だったなんて忘れて、軽い気持ちで頷いた。
動いている内にどんどん暖かくなってきて、鞠絵ちゃんもボクも軽く汗をかいていた。
夢中で作って、完成した雪だるまにボクの帽子をかぶせて、それから木の枝を折って眼鏡っぽく見せてみた。

「ボクと鞠絵ちゃんで作った証だね」
「ええ。とっても可愛くできました・・・・・・」
「鞠絵ちゃん?」

ふと見た鞠絵ちゃんの顔は赤く、息もあがっていた。汗の量もちょっとおかしかった。
だけどその時のボクはそれが危険のサインだったなんて少しも気付かなかった。
ただ動いたから疲れたんだろうって。

「・・・・・・どうしました? わたくしなら、全然平気ですよ。折角の雪の日なんだから・・・・・・もっと・・・・・・もっと衛ちゃんと・・・・・・」

そう言った途端に鞠絵ちゃんは倒れた。
雪の上。ぱったりと。
突然すぎて、ボクには何が何だかわからなかった。

「鞠絵ちゃん? ねぇ、鞠絵ちゃんってば・・・・・・」

それが危険な状態だと気付いた時、ボクは怖くて泣くことしかできなかった。
目の前でどうにかなってしまっている鞠絵ちゃんの前で、怖がっているだけだった。
次から、鞠絵ちゃんは起きなくなった。
ずっと眠ったままになった。
それから、2年。ボクは一度も鞠絵ちゃんに会っていない。








息を切らしながら、療養所へ続く長い坂を一気に駆け上る。
2年ぶりの坂道は随分長くなったように思えた。
療養所の戸を開く。
ロビーには数人の患者さんらしい人やその家族、看護婦さんなんかがいた。
その中に見覚えのある看護婦さんが。

「あ、あのっ」
「? あ・・・・・・!! あなた確か・・・・・・」

相手も気付いたみたいだ。
この人は鞠絵ちゃんの担当の看護婦さんだ。
ずっと長い間鞠絵ちゃんの面倒を見てくれていた人。
以前には何度もお見舞いに行っているから、ボクとも面識があった。

「あ、あの、鞠絵ちゃんに会えますかっ?」

逸る気持ちを抑えきれずに問いただす。
看護婦さんは一気に沈痛な面持ちになった。

「・・・・・・鞠絵ちゃん・・・・・・変わっていないわ。あなたの会いたい鞠絵ちゃんは、ここにはいないの・・・・・・」

看護婦さんは目を逸らした。
ボクが逃げていた間も、ずっと鞠絵ちゃんの世話をしていたらしい。
2年間眠ったままの彼女を。

「ボクは・・・・・・その鞠絵ちゃんに会いに来たんです。変わっていない鞠絵ちゃんに。
今まで逃げていたから、ちゃんと向き合いに来たんです! 会わせてください!」

看護婦さんは少し考えていたようだったが、やがて息を吐いて、

「わかったわ。こっちへ」

看護婦さんの後をついていく。
見慣れた通路。病室。知っている。何度も通ったあの病室への道。
やがてひとつの病室の前で足が止まる。

「ここよ。さぁ、どうぞ。鞠絵ちゃんに・・・・・・何か言葉をかけてあげて」

深呼吸を一つして、ドアノブを回す。
ドアの先には、昔と変わらないあの部屋があった。
たくさんの本が並んだ本棚に、簡素な窓辺。大きなベッド。
その上に寝ている、一人の少女。
いろいろな管を付けられて、まるで人体実験でもされてるみたいで痛ましかった。
これが、ボクが目を逸らし続けていた現実。
心電図の音が無機質にリズムを刻み続ける。
鞠絵ちゃんの肌は白く、生気が感じられない。
どう見ても生きていると言うよりは、生かされていた。
死んでないだけ・・・・・・。

ごめんね、鞠絵ちゃん・・・・・・。
こんな時に・・・・・・こんな時に一人にして。

まだ温かい手を握る。
この温かさが続く限りは、まだいるんだよね・・・・・・ここに・・・・・・。
もう、逃げたりしないよ。絶対一緒にいるから・・・・・・。

「鞠絵・・・・・・ちゃん?!」

看護婦さんが突然声を上げた。

「ど、どうしたんですか・・・・・・?」
「い、今鞠絵ちゃんが・・・・・・」

動いた、という。
そんなことがと思ったその時、握っていた手が僅かに握り返された。
思わず立ち上がって鞠絵ちゃんの顔を覗き込む。

「鞠絵ちゃん・・・・・・?」

名前を呼ぶ。


「ま・・・・・・も・・・・・・・・・・・・ちゃ・・・・・・衛・・・・・・ちゃん・・・・・・」

言葉が出なかった。
ただ口を手で覆って、驚くだけだった。
鞠絵ちゃんがまた、ゆっくりと口を動かす。

「・・・・・・こ・・・・・・んに・・・・・・ち・・・・・・は」
「うん・・・・・・こんにちは・・・・・・!!」

夢と同じ挨拶が交わされる。
もう、迷いはない。
ボクは鞠絵ちゃんの体に抱きつき、そのぬくもりを確かめた。
変わってない。本当に鞠絵ちゃんは変わっていなかった。
本日2回目の、大泣きが始まった。
































「まったく、2年間も寝てたなんて。すごいお寝坊さんしてしまいましたね・・・・・・」
「い、いや、寝てたわけじゃないんだよ」
「わかってますよ」

鞠絵ちゃんが2年ぶりに目覚めて、その日の療養所は大騒ぎだった。
落ち着いていられそうもないので、ボクは喜びだけかみ締めてその日は帰った。
そして一日明けて、またこうしてやって来た。
目覚めた後の鞠絵ちゃんはすこぶる元気だったらしい。
とにかく食欲はあるし、流石にリハビリは必要だが、動こうという意志で溢れているようだった。

「体がすごい重いんですよ」
「リハビリしてるんだって?」
「ええ。起きるのも一苦労です」
「無理しないでね」
「無理は2年前に一生分しました」

そんなことも笑って言える。本当に嬉しい。

「それよりも、来るのが遅いです。2年間も何やってたんですか?」
「ごめんなさい」

その点に関しては平謝りするしかない。
鞠絵ちゃんの存在まで忘れて自分を守ろうとしていたのは事実なのだから。

「謝ることならサルでもできます。次に衛ちゃんはどうするつもりなんですか?」
「ま、鞠絵ちゃん、ちょっと・・・・・・」
「? なんですか?」
「い、いや・・・・・・」

きつくなったんじゃないかな、なんて言わない方が良さそうだ・・・・・・。

「どうするか・・・・・・は、決めてあるんだ。君を守るよ。絶対。もう逃げないし、離れない。これからはずっと一緒」
「本当ですか? またわたくしが眠って、今度は4年、10年って眠ることになっても?」
「そんなことにならないために、ボクはいるよ」
「頼もしいです」
「この名前に誓って、君を守る」

そう言うと、あの頃と同じ、天使の笑顔が輝いた。
そっと手を握る。
眠っていた時とは違って、すぐに握り返す感触がある。

「夢の中でも一緒だったんですものね」
「え・・・・・・うん。そうだね」

何となく、鞠絵ちゃんもあの夢を見ていたんだろうな、と思った。
誰にも真似できない、同じ夢を見る二人。
鞠絵ちゃんは突然手を離して、指を頬に当ててちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
何を言うんだろう・・・・・・と、ちょっとびくつくボク・・・・・・。

「そうです、衛ちゃん。また連れて行ってくれますよね?」
「何処へ?」
「2年間も眠っていたんですもの。きっといろいろ変わっているでしょう? それを見たいです。あなたに連れて行ってもらって」

そうか、と納得して、ボクは頷いた。

「うん、行こう。今度はもっといろんなところへ」
「ええ。連れて行ってくださいね、王子様♪」
「お、王子様ぁ〜?」

なんだか大変そうだけど・・・・・・お姫様に振り回される王子様も、いいかもしれない。
少なくとも、ボクは彼女を守る王子様になら、幾らでもなってやると、思うのだ。

「覚えていてくださいね、約束」
「うん。覚えてるよ、約束」

君が僕を覚えていてくれるなら

ずっと覚えているよ君を。






作者のあとがき作者と鞠絵のグダグダ後書き

作者(以下作)「お、今日は鞠絵か。やっほーだな」
鞠絵(以下鞠)「何がヤッホーですか。リクエストSSも書かないで。世の中には優先順位というものがあるのを知らないのですか?」
「そんなに責めるな。話の内容はどうだった?」
「何だか不思議な始まりでしたね。何処からパクってきたんですか?」
「パクりだというのは決定なわけね・・・・・・。まァ今回は、『既存の曲の歌詞からSSを書いてみる』という目的があったんだよ」
「詩なんだからかけるに決まっているでしょう。ホラ、やっぱりパクりですよ」
「待て待て待て。その歌詞の雰囲気や流れ、そういったものを広げてストーリーをつけるという・・・・・・」
「だからストーリーをパクったんですよね」
「・・・・・・いや、アイディアだけもらった!! もらったのッ!!」
「はいはい。で、今回パクりの被害にあった歌は何ですか?」
「この性悪妹め・・・・・・。今回は跡部景吾の『・・・・・・みたいなアルケー』から頂きました。あの歌詞はかなりストーリー性が強いんだよね。
だからSSにもし易かったし、何より好き」
「ふざーけたこーとー、ほーざくなーって奴ですね。まぁ季節にも合っていますし」
作「そうだ。それにちゃんとお前と衛をくっつけただろ」
「そんなの、兄上様お気に入りのカップリングなのだから貴方はやるに決まっているじゃないですか。
これがもしわたくしと鈴凛ちゃんとかっていうのであればまた見直しますけれど」
「あぁ・・・・・・そうかい・・・・・・」
「それにしてもまたタイトルがよくわかりませんね」
「俺はタイトルつけるの苦手なんだよ。いっそのことタイトル外そうかと思ってたんだけど・・・・・・一応つけた。
全国のSS書き様方・・・・・・タイトルの付け方を教えてください・・・・・・南無」
「あと、お話の中でわたくしかなり重病っぽいですけど」
「うん」
「あんな風になったらもっと大きな病院に移るんじゃないですか?」
「あ、あのね、すごい、こう、設備が、その、整ってるの!!! 君が入ってる療養所はすごいの!!お金とかかかってるところなの!!!」
「はいはい。それじゃあさっさと赤堂さんへのリクエストSSを書いてくださいね。静岡2やらないで」
「・・・・・・いえっさー」


なりゅーの感想

ヤバさんからの衛×鞠絵SSでした。
不思議系の幻想的なシリアス話で、読み始めた時に一気に引き込まれたほど面白い作品だと思いました!!
というか、なりゅーの作品を越えて、面白いと感じましたよ(複雑な表情

なりゅーの場合、公式に依存する傾向が大きいから、
こういう公式から外れた作品を作れるのは羨ましかったりします。
また、その上で、"二次創作"を上手に書き上げられているのは、もう尊敬ものです!

読み終わったあと、自分でもこういう幻想的な話も書いてみたいなと、ちょこっと思わせられちゃいました(笑


内容も、「弱い心」、「負の感情」、「無知からの過ち」など、
普通なら避けがちな展開を恐れることなく書き綴られていて、
その甲斐あってか、シリアス作品として見事なまでの逸品に昇華されたものだったかと!

キャラクターも繊細なほど上手く描写されていて、素晴らしいの一言に尽きます。
衛の「弱さ」と「かっこよさ」が上手く入り混じった上での「両立」を果たしていると 感じました!
細かなところでも衛らしい描写も欠かされていないのもまた良いです。
「この名前に誓って、君を守る」なんて、ちょっとギャグっぽいですけど、その上で心打たれちゃいました(笑

また、最後に回復を果たすものの、鞠絵をヘンに擁護した扱いにしていないところも、
現実の容赦なさを描写できていて、ただひたすらに「上手い」作品でした!
あとがき(?)にちょっとありますが、なりゅー的には変にまりりんにされるよりは、
きちんとしたカプで作ってくれた方が数段嬉しいです。

こういう「作品」として完成を目指された作品を贈ってもらえて、本当に嬉しいと思います……。
ヤバさん、どうもありがとうございました!


ちなみにタイトル付けはなりゅーも苦手です(苦笑


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