霊の逝き方











彼女の名前は春歌と言った。


政略結婚で無理矢理結婚して、子供まで出来たのに・・・
元々愛がなかったワタクシたちは、すぐに離婚の文字が見えて来ましたわ。
だけれどワタクシの伴侶は、自分の趣味の実験が失敗とかの腹いせに
ワタクシと子供を殺害し、自分も自殺したんです。
なんて人!ワタクシは恨みましたわ。
子供も事情は分かっているようで


「ヒナ、千影ちゃんは絶対許さない!!」


と言っていましたわ。当然ですわね。
さてと前置きはこのくらいにして話を始めましょうか?
これから起こる恐怖の惨劇を・・・。





「ふふ・・・・・・。君たちが他人を呪えば呪うほど・・・・・・この術は…私にとっては有効なんだよ」


私の名は千影。そう、あの2人を殺した犯人さ・・・・。今は今で霊体しか
出来ない秘術を使ってるんだが・・・・。これがまた厄介でね・・・・。
千影は夜の闇に消えていった。


一方、春歌はとある家に向かっていた。生前、結婚させられる前に好きだった人が
住んでいる家だ。行き場を失った彼女の恨みの矛先の1番目はその人らしい。
傍らには彼女の子供の雛子も憑いてきている。恨みの教育をさせるつもりなのだ。
程なくしてその家に着くとすでに先客が来ているらしく、話し声が聞こえる。


「気を付けて下さいね??ただでさえ料理なんて出来ない人なんですから」
「このくらい・・・大丈夫だと思ったんだけどな」
「油断大敵ですよ??鈴凛ちゃん」
「そうだね、鞠絵ちゃんの言う通り」


 ・・・・プツッ・・・・


「春歌ちゃん・・・??」
「雛子ちゃんはここに残ってて下さい、危ないですから」
「ええーーー!!?」


言い残すと瞬く間に家の中に侵入、標的(ターゲット)目指して
物凄い勢いで悪霊パワーを発揮・・・しようとした。
思わぬところに落とし穴があったのである。


「・・・そこに見えるのは春歌ちゃんじゃありませんか??」
「え?何言ってんの??鞠絵ちゃん・・・」
「鈴凛ちゃんには見えないんですね。そこに春歌ちゃんというお知り合いが見えるんです」
「見えるって・・・どういう意味?」
「春歌ちゃんは愛を交わした人に自分と子供を殺されたんです。その人も自殺したらしいですが・・・」
「へぇ〜・・・そうなんだ」

「お知り合いって!!ワタクシのことをただのお知り合いとしか想ってなかったのですか?」
「お友達ですよ?春歌ちゃんは。それより鈴凛ちゃんとの会話、邪魔しないで下さい」
「え?あ、あの・・・??鞠絵ちゃん」
「大丈夫です、黙らせましたから。それで何の話でしたっけ?」
「黙りませんよ!!ワタクシは〜〜〜〜!!勝手に私の知らない女とイチャイチャする鞠絵ちゃんだとは」
「う・る・さ・い・で・す・よ!・?」


結局、鞠絵の気迫に負けて帰って来ることにした春歌。
彼女の恨みはどんどん上がっていった。





その頃、雛子はあまりにも春歌の帰りが遅い為
家から家へと訪問しては人々を驚かせていた。
ある一軒の家にお邪魔した時のこと。


「ありり?この家はやけに静かだなぁ・・・?誰もいないのかな」
「・・・」
「あ!ヒナのこと見えるの??見えるんだったら遊ぼうよ!!」
「・・・っっきゃーーーーーーーーーーーー!!」
「うわ!ビックリ・・・そんなに驚かなくてもいいのに」


雛子は同じようなことが多々続いていたのか、諦めて他を当たろうとした。
でもその瞬間、声が聞こえてきた。さっきの叫び声とは別の声である。
どうやら階段の下には人がいたらしい。


「どうしたの?可憐!!」
「咲耶ちゃん!あの娘・・・あの娘、可愛い!!」
「え・・・?ヒナが可愛いの?」
「幽霊か〜・・・早く成仏しなさいよって言いたいところだけど、可愛いわね」
「だよね?ねえ、名前はなんて言うの?お姉ちゃんたちと遊んでかない?」
「・・・ヒナは雛子って言うんだよ?」
「そう!よろしく・・・てのも変か。私は咲耶、こっちは可憐」


雛子は暫く2人と遊んでいた。
ただ雛子はしつこいくらいに可愛いと言われたので
理由を聞いてみることにした。
聞いてみることにしたのはいいが
聞かない方がよかったかなと思うのは、もう後の祭りである。


「なんでってそりゃ・・・雛子ちゃんのような子供が欲しかったからよ
「咲耶ちゃん、ストレート過ぎだよ〜・・・」
「あら?私は素直に言ったまでだけどね。ウフフ」
「もうっ////
「ヒナ、そろそろ帰るね」
「もっといてもいいのよ??」
「でも春歌ちゃんも心配するし・・・」
「春歌ちゃんって誰??可憐知ってる?」
「(知らないんですか?咲耶ちゃん。この娘の母親ですよ、一緒に殺された・・・)」
「(あ・・・)」
「じゃーね!!おねえたまたち。今度また来たら遊んでね〜」


雛子は多少なりともまだ遊びたいという
後ろめたさがあったが、このまま遊び続けるわけにも
行かないので一旦春歌の元へ行くことにする。
すると春歌はすでに戻っていて、全霊力を使い果たしましたと
言っているほどに顔が疲れている。


「ハァ・・・ハァ・・・あのクソメガネ〜〜〜〜〜〜!!」


生前の愛情はどこへやら。どうやら目的がすっかり変わってしまったらしい。
そんなことは全く知らない雛子。気が立っている母親に声がかけられない。


「鞠絵くんに・・・・・・霊感を与えておいてよかったな・・・意外と私の思うようにことが進んでいる」


闇の中を千影が怪しく笑う。どうやら鞠絵が春歌のことを見えたのは
千影がなにかしたらしい。術の失敗で殺人・自殺とある彼女は
一体どんな術をお釈迦にしたんだろう・・・??


「そういえば・・・・・この近辺には霊感が強い人物が沢山いるみたいだね・・・・・・この先も楽しみだよ」





「雛子ちゃん!!こうなったらとことんワタクシたちの恨みの凄さを思い知らせてやるのです」
「う、うん。分かった」
「そうですわね・・・ここからちょっと離れて・・・あの家なんか良さそうですわ」
「ヒナが先に行こうか??」
「いいえ!ここはやっぱりワタクシが。ワタクシの後に憑いて来て下さい」


その家は一般的な普通の家で、両親はいないみたいだった。
今にして思えば、春歌と雛子が訪れた家には親がいなかった・・・。
なにかあるのだろうか??千影絡みなのだろうか??


「亞里亞ちゃん、もう少しで出来るんですの!もうちょっと待ってて下さいね」
「・・・くすん。亞里亞、我慢出来ません」
「亞里亞ちゃん!花穂と一緒にTV見てようよ??面白いよ」
「TV〜見る〜・・・」
「ありがとですの、花穂ちゃん」
「ううん。花穂もお菓子早く食べたいから!」


「あの3人を狙いますわよ?雛子ちゃん!!とり憑いてお上げなさい」
「クシシ、分かったよー!!」


どうやら今度は脅かすのではなく、とり憑いて恐怖を与えるつもりらしい。
実際その選択が間違っているとも知らずに・・・。
雛子がとり憑いたのは花穂だった。ちょうど亞里亞とTVを見ていようとしていた
花穂はすんなりと雛子にとり憑かれてしまった。


「・・・花穂ちゃん??どうしたの・・・」
「わ〜い!!とり憑き成功したよ!」
「花穂ちゃん・・・怖いの」
「どうしたんですの?お菓子出来ましたけど・・・」


雛子はよほど嬉しかったのか、家中を走り始めた。けれど身体は花穂のモノ。
そうは問屋が卸さない。唖然とする2人の目の前でこけてしまった。
ちょうど白雪が作っていたお菓子が、台無しになるくらいハチャメチャな転び方で。


「いった〜い・・・また花穂、ドジしちゃった〜」
「うぅぅ・・・あの娘の身体じゃ無理だよ〜」
「人選ミスでしたか。白雪って娘の方がよかったかも知れませんわ」
「春歌ちゃ〜ん!!」
「・・・亞里亞のお菓子・・・くすん。」
「一体なんだったんですの??」





「これデス、これこれ!!」
「ふーん、確かに黒いけどさ、幽霊とかじゃないとボクは思うな」
「間違いないデスってば!!心霊写真ってヤツデスよ」
「だったら尚更ここに置いとくのって不味くない?」
「そうなんデスか!?」
「四葉ちゃん!!」


「心霊写真・・・か。その恐怖に拍車をかけてあげるか・・・・・・」


千影が怪しい呪文を唱えると同時に、写真が変化を遂げ始める。
その間、春歌&雛子も近くに来ていた。
今回の犠牲者(?)は言うまでもない・・・。
家の中に侵入したところで四葉と衛の2人はまだ写真を見ていたが
やがて五月蝿くなり始める。絶叫と歓喜と恐怖?に満ちた声で。


「衛ちゃん、衛ちゃん!!写真を見てクダサイ!凄いデス」
「な、なにが??って・・・えええーーーーーーーー!」
「写真がさっきと違うデスよ!?やっぱり心霊写真デス!!」
「そ、そ、それ・・・早くお寺に持ってって供養・・・」
「チッチッチッ!!これだから衛ちゃんは!」


「写真に先を越されましたわね」
「ここはもうダメかなぁ・・・??」
「諦めるのは早いですわ!こちらも脅かすのです」


充分に怖がっている衛と好奇心が勝っている四葉。
それに加えて春歌&雛子のとった行動は『ポルターガイスト』
しかし、ここに来て霊力がほとんど無かったことに気付く2人。
ポルターガイストは、衛曰く「なんか揺れてるね?」四葉曰く「地震デスか?」
・・・全然ダメじゃん。





「ワタクシは鞠絵ちゃんと再戦して来ますわ。雛子ちゃんもお好きなところへ行きなさい」
「再戦って勝てるの?春歌ちゃん・・・」
「大丈夫ですわ。負けても何度でも挑戦するつもりです」
「ふーん。それじゃあね!!」


「鞠絵ちゃん!!いざ勝負です」
「・・・また来たのですか・・・」
「何度でも来ます!!あなたの考えが正されるまで」
「・・・一生変わりませんって・・・」


「おねえたまたち〜!ヒナ、ここに住んでもいい?」
「雛子ちゃん!?それって座敷童子になるってこと?」
「座敷童子ってなあに?」
「可憐は知ってるよね・・・?」
「いい妖怪って聞いたことあるけど」
「ありり?ヒナ、悪霊ってやつじゃなかったっけ??」
「まあ、いいじゃない。ここにいれば!」




「・・・・・・君たちの呪いの力が弱まっている・・・これでは私の秘術が完成しないじゃないか・・・・・・」


千影は1人、術の完成がまたも失敗し、恨みだけの存在になってるとも知らず
この世に存在し続ける・・・。狙うのはもちろん・・・。











 

Fin







 


あとがき

どうも!妄想お姉様(ある時は姉チャマ)月星です。

この作品も映画ネタです。まあ、分かると思いますが(笑)

今度は普通にマイナーカプを書いてみたいと思います。

いや、多分自分の中でのマイナー(爆)

それでは、お楽しみいただけたら幸いです。
 


なりゅーの感想

前回に続き、映画元ネタのSSらしいです。
なりゅーは元ネタは知らないのですが、それでも結構楽しめる作品でした。

ただ、いくら元ネタが存在するとはいえ、春歌が不憫すぎです……。
始まった時点から既に幽霊で……しかも政略結婚って……(苦笑
しかし、意外とキャラ的には上手い配役だったかと思います!

愛情が憎しみ変わるって話は、普通は見ていて痛々しいもののはずなのです、
これは見ていて逆に清々しい感じがしました(爆
最後が(そういう終わり方なのか)ホラーモノのそれっぽいのも、なんとなくいい感じです。

月星さんどうもありがとうございました!
マイナーカプ大好き人間としては、次回予定のマイナーカプSSも目が離せません(爆


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