「今度、アタシと一緒に美術館に行かない?」

鈴凛ちゃんが、そう言ってくれたのは、確か3日前の木曜日でした・・・・。

 

「構いませんけど・・・・・わたくしで本当にいいんですか?」

「もちろん♪アタシは、鞠絵ちゃんと行きたいんだから。」

 

本当に嬉しかったです。わたくしが、絵が好きだという事を覚えていてくださったのですから・・・・・

 

「ええ、ではお言葉に甘えさせて頂きます。」

そう返事を返しました。

女の子なのに少し雑で、どちらかと言うと男の子みたいな・・・・わたくしの大切な姉妹。

そんな鈴凛ちゃんと、久しぶりのデートです

くししししし〜・・・・・・・くし?

 

 

 

あなたは素敵な王子様

 

 

 

そして現在。今日は日曜日で、鈴凛ちゃんとのデートの日。

もっとも、鈴凛ちゃんはデートって言うと、顔を赤くして力いっぱいに否定してましたけど・・・。

・・・・・・・まあ、悲しいことを考えるのは止めておきましょう。

 

そして今いる所は、たくさんの人たちが行き交う街の中のとある駅。

もちろん、そこには、友達同士や一人でいる人、カップルもたくさんいます。

当然のように日曜日の駅前には、わたくしと同じく、誰かと待ち合わせをしてるって一目でわかる人も、たくさんいらっしゃいます。

時計を気にしていたり、携帯とずっと睨めっこしていたり。

まあ、わたくしも人のこと言えませんけど。

なんといっても、今、待ち合わせ時間の30分も前ですし。

ちなみに、わたくしたちは、駅前で待ち合わせています。

なんだか本当に、恋人同士って感じがしませんか?

あっ!!鈴凛ちゃんを待っているのも、全然苦じゃありませんよ♪

そんな時間も含めて幸せなんですから。

 

ぽわっと周りの人たちを眺めていると、ふと自分の格好変じゃないですよね?って駅前のショーウィンドウに映る自分を、急いでチェキしてみたり・・・・・・チェキ?

それはともかく、今回はメガネを外してコンタクトに変えて、格好も勝負服と呼べる感じにおしゃれな服を着てきました。この服で鈴凛ちゃんも悩殺です

 

周りの誰かが、誰かを待ってるのを見て、あの人も自分の大好きなヒト待ってるのかなって想像してみたり、例えば、あそこで歩いてる姉妹だって、なんか姉妹って言うより恋人に見え・・・・・・・ああ、あれ可憐ちゃんと咲耶ちゃんでした・・・・。

そんな風に穏やかに。そのふわふわと、そして、ほのぼのとした時間を、わたくしは過ごしてたんですの・・・・・・・・・ですの?。

 

腕に着けている時計(去年のわたくしの誕生日に鈴凛ちゃんがくれました)を見ると、待ち合わせの時間まであと10分ちょい。

「さすがにちょっと早く来すぎたかもしれません。まあ、なんとかなるでしょう・・・」

わたくしの目線が、腕時計から前に顔を上げた時に、ふと、誰かの気配を後ろに感じました。

あれ、鈴凛ちゃんが、もう来たのかなと思い、後ろを振り向きました。

すると、わたくしが何か言うより早くその方(なんだ、鈴凛ちゃんじゃないんですか・・・)は喋りだしてきました。

「やあ!今君ひとり?」

今時、そんな死語を使っている人は、なんていうか、シルバーアクセサリーとか身に付けて、若者な格好しており、そして髪の毛の色を上手く抜いた感じの、なんて申しましょうか・・・・・簡単に言えば・・・そう、軽そーな男性でした。

わたくしが、多少シラけて、パソコンで言えば・・・フリーズした状態になっているにも関わらず、その男性は、さぞや早口言葉が得意なんだなあと、感心できるくらいに喋り続けてました。

 

「さっきからキミええな〜って思ってて声かけたんやけど。っていうか誰かと待ち合わせしてんの?せやけどキミさっきからずっと1人やんな?

ウチさ、今1人やねんけどよかったらどっか遊び行けへん?

あ、ってゆうてもナンパやキャッチとかちゃうよ?」

本当によく喋る方ですね・・・。しかも、エセ関西弁・・・。

それに、キャッチセールスの方で無いにしても、「ナンパじゃない」というのは明らかに嘘ですね。

 

もっとも、この場はテキトーにやり過ごすのが一番ですが・・。

「申し訳有りませんが、わたくし、待ち合わせなので。」

あなたに興味はありませんって、伝わるぐらいそっけなく。

でも、この人もしつこ〜く、まだ話しかけてきます。

 

「そうなん?でもホンマさっきからずっと1人やん?

ウチも待ち合わせやったんやけども、ドタキャンされてな〜、めっちゃ暇してんねんやんか。

ええやんか、ちょっとくらい付き合ってえな?」

半疑問系に上げられた語尾がなんだか、ちょっとムカッときます。

それに、「俺も」ってそんな言い方、まるで鈴凛ちゃんまでドタキャンするって決め付けてるみたいに聞こえるじゃないですか!!

あなたと違って、鈴凛ちゃんは、そんなこと絶対にしません!

 

わたくしは、ちょっと、ムカついたのでギロッと睨みながら言いました。

「あの、本当にわたくし待ち合わせているんです!ちょっと早く来すぎただけですから。」

わたくしが睨んだって、まったく怖くないってのは分かってますけど。

案の定、その方は、全然一切気にしてない・・というか、気付かずにまだ言い寄って来ました。

「えぇ〜?マジで〜?健気やな。ええな、ウチそういう子めっちゃ好みやねんけど〜。」

そう言って、いきなりそのヒトは、わたくしの腕を掴んできました。

「ちょっ・・・」

このヒト強引過ぎです!

ふつうこういうナンパする人って言うのはちょっとそっけなくすれば、諦めるはずなんですが・・・。

「な〜、ええやん。ウチと遊ぼ?」

カエルみたいで、しかも張り付いた感じの笑顔が気持ち悪いです。

 

それに相手は男性です。ただでさえ、男女の力の差があるのにも係わらず、わたくしの場合、病弱というリスクを持っているんです。腕を掴んだ手の力に勝てるはずもありません。

おまけに、このヒトは離す気が一切ないみたいです。

「やめてくださいってば!」

周りの人達がわたくしの声にこっちを見る。

でも本当に見るだけで、助けてあげようって人がいるわけもなく・・・。

わたくしは、こんな人の言う事も聞かないようなバカは、大っきらいなんですが・・・。

こんなバカに、いくら文句を言って聞いてもらえませんし・・。

うぅ〜〜っ・・・鈴凛ちゃん。

まだ、来ないんですか・・・?

お願いですから早く来て助けてください・・・。

 

そんなわたくしの心の叫びが、神様に届いたんでしょうか。

ザッと、わたくしの後ろに人影が立ちはだかりました。

次の瞬間、わたくしがそれに気付くと同時ぐらいに、ナンパ男に掴まれた腕と反対の腕を掴んでくださいました。

 

「鈴凛ちゃん!」

 

わたくしが、ず〜っと待ち焦がれた人がそこにいました。

鈴凛ちゃんは、わたくしの顔を心配そうにチラッと見て、

その後に、ナンパ男の顔を睨むように(わたくしと違って迫力ありました)見て、言いました。

「やめてもらえませんか。」

静かな口調に、どこか怒りを含んだような声。

鈴凛ちゃんの突然の登場で、ナンパ男は瞬間、呆けたような顔になってましたけど、直後に態勢を立て直しました。

 

「え?なんなん、もしかして、彼氏ってアンタなん?」

彼氏って・・・まあ、今の鈴凛ちゃんを見ればそう見えなくもないですが・・・

なんていうか・・・、ジーンズに、サングラスを・・・・・あれ?、なんでいつものゴーグルを着けてないんですか?

それからえ〜と・・・コートですね。性質とかは・・・まあ、作者が服の名称を全然知らないみたいですから、この話題は置いといて。

とにかく、今の鈴凛ちゃんは、可愛い顔の男性って感じに見えました・・。サングラスのせいで、顔がよく分かりませんし、コートで体系も分かりにくい状態ですし・・・。

 

話しを戻しますけど・・・、勘違いでも彼氏が来たって、そう思うならこのヒトもあきらめればくださればいいのに・・・。

そのナンパ男の手は、今だ、わたくしの腕を掴んだままでした。

「っていうか、こんな可愛い彼女待たせるなんて、絶対アンタ、ロクなヤツちゃうやろ?

こんなんより絶対ウチの方がええに決まってるやん。なあ、一緒に遊ぼーや?」

 

むかっ。

おそらく、このヒトのセリフを聞いたとき、わたくしと鈴凛ちゃんの気持ちを表すなら、この言葉が、一番ぴったりでしょう。

「彼女が嫌がってます。」

わたくしが何か言うより先に、鈴凛ちゃんが言い返しました。

「人が嫌がってるのも分からないんですか。その手を離してください。」

そう言うと、ほぼ同時に、鈴凛ちゃんは、わたくしの体を腕ごと引っ張ってくれました。

そして、腕の中へ・・・・。

 

バカナンパ男が鈴凛ちゃんの言葉にひるんでいるみたいです。ていうか、今見せつけている状態なんですよね・・・・。

鈴凛ちゃんに・・・・・抱かれている状態を・・・・・(照

 

とにかくやっと、わたくしは、ナンパ男の手から解放されました。

さっきまでのナンパ男にからまれてて、自分でも嫌になるぐらいの、やな気持ちが不思議なくらい治まってきて・・・・。

分かりやすく言葉にすれば・・・・・・・安心する・・・・・。

「・・・はっ!遅れてやってきたくせに、王子様気取りってわけですか?!」

そうイヤミたらしく言っても、腕を離した手をさまよわせる、ナンパ男にさっきまでの勢いはもうどこにもありませんでした。

「もう、アタシたち行きますから。こういうことを、2度と、アタシの彼女に、こんなことしないでください。」

多少怒気を含んだ・・・でもどちらかと言うと、自慢している感じに聞こえる声でナンパ男に言いました。

・・・って、えっ!

か・・・かの、かの・・彼女!?

わ、わたくしがですか!?

 

ハッと気付くと、鈴凛ちゃんは、わたくしの腕をとったまま、ちょっと足早に歩き出しました。

わたくしも、某チアの姉妹みたいにコケないように、後をついて行きます。

最後に、ナンパ男が、すっごく情けない顔をしてたのが、チラッと見えました。

それにしても鈴凛ちゃん。すっごくカッコよかったですよ♪

もう鈴凛ちゃんラヴです・・・・・・・ラヴ?

 

 

「鞠絵ちゃん、ホントに大丈夫?」

そこからしばらく歩いて駅が見えなくなったところで、わたくしの手をずっと引いていてくださった鈴凛ちゃんが、立ち止まりました。

「ええ、ありがとうございます。鈴凛ちゃん。」

わたくしは、ナンパ男に掴まれてた腕の方の服の袖を、叩くように、はたきながら答えました。

「アタシが来たら・・・鞠絵ちゃんがなんか知らない人にからまれてて・・・ホントびっくりしたよ。」

鈴凛ちゃんも、わたくしがはたいてる袖を、優しく、はたきながら言ってくださいました。

 

「ところで鈴凛ちゃん、どうしてゴーグルじゃなくてサングラスを、着けているんですか?」

わたくしは、さっきから気になっていた事を、鈴凛ちゃんにぶつけてみました。

「ああ、これ? 単にさっきまでラボで、ちょっとした実験してたんだけど。

その時に、メカ鈴凛にゴーグルを壊されちゃってね・・・お陰で、彼氏扱いされちゃったよ・・。」

さっきのナンパ男のセリフを思い出したのか、苦笑する鈴凛ちゃん・・・。

「じっけん・・・ですか?」

「うん、でも大したことじゃ無いから気にしないでね。アタシとしては、鞠絵ちゃんがメガネを外してる事の方が、よっぽど気になってるんだけど・・・。」

「え・・・・・・・・・。」

 

そっ・・・それって・・・・。

 

「あの・・・似合ってますか?」

「うん!すっごいかわいいよ♪」

 

ふ、普通に殺し文句ですよ(慌

あ・・・・そういえば・・・・・・。

 

「鈴凛ちゃんもサングラス似合ってますよ。それから・・・・さっきはとてもかっこよかったですよ。ホントに王子様みたいでした!」

わたくしは、鈴凛ちゃんが来てくれた事と、わたくしを庇ってくださった時の事とかを、思い出しながら笑って言いました。

 

本当に心臓の音聞こえてませんよね?・・・・・

自分でも驚くぐらいドキドキいってるんですが・・・。

だって本当に、まるで・・・・わたくしの心の声が聞こえたみたいなタイミングで来てくださいましたから・・・。

本当に今、ポポポッてぐらいの、嬉し恥ずかし気分です・・・・・・・・・・ポポポ?

 

「王子様って・・・・・・」

アタシ、女なんだけどって言って、鈴凛ちゃんはものすごく照れたみたいで、赤面してうつむいてしまいました。

「ホントですよ?鈴凛ちゃんは、わたくしの王子様ですよ

ギュッと、鈴凛ちゃんの腕に抱きつく。

街行く人たちが見てるかもしれませんけど、今は気になりませんでした・・・。

 

「じゃあ・・・・・・・・・・・」

 

鈴凛ちゃんが、うつむいたまま口を開きました。

恥ずかしそうに、そして注意しなければ聞こえないぐらいに、小さな声で・・・・・。

 

「はい・・・・・」

わたくしは今日、ちょっと嫌なことがありました。

 

でも・・・

鈴凛ちゃんがいてくれた事を、神様に一番感謝した日でもありました・・・・

 

鈴凛ちゃん・・・・・これからも一緒にいてくださいね・・・・。

だって・・・・・・

 

 

 

・・・・・鞠絵ちゃんがお姫様だね・・・・・・。

 

 

 

かっこいい王子様には、お姫様が付きものなんですから・・・・

ね?

 

 

おわり

 

 

 

 

絶対いらないと思われるおまけ。

 

 

「ところで、鞠絵ちゃん・・・」

「はい。なんですか?」

「なに?その格好・・・」

「勝負服ですよ♪」

「・・・・・うん、勝負服だね・・・・」

 

・・・なにかおかしかったですか?

ピンクと水色のワンピース。

その上に、「夜路死苦」って書いてあるガウンを着ているだけ・・・・・・・・

って、あれ?

羽織ってくるガウン、間違えちゃいました・・・・。

 

こんなドジなお姫様だけど見捨てないでね♪・・・・・・・あれ?

 

 

今度こそおわりです





作者のあとがき

前回は、非常に変則的なSSを書いてみましたが、今回は逆で、笑い少なめラヴ多めの、俗に言う王道話を、書かせて頂いた所望でございます・・・。
一応、前のような話を期待された方には、申し訳ありません・・・・・。
とにかくもし、最後まで読んでくださった方のは、本当にお礼を、申し上げたいと思います。
本当に、有難うございました。
そして、なりゅーさん、誕生日おめでとうございます。


なりゅーの感想

なりゅーなんかの誕生日にわざわざ贈ってくださった冬太郎さんからの投稿まりりんSSでした。
いや、読み終わってビックリしました。
興奮しきるわけじゃなく、かといって感激も尋常でない、なんだか不思議な感想をもった素敵なSSでした。

なんていうか、うす味嗜好のなりゅーとしては「こういう百合を待っていた!!」と、
思わず豪語してしまうようなくらい、良い具合にほんわかした内容です。
こんなほんわかしたSS、恐らく数えるほども無いくらい最高な読み心地でした。

この恋愛とも似つかない微妙な雰囲気。
すぐにくっつけたがっちゃうなりゅーとしては、何よりも見てみたかった絶妙なさじ加減です。
だからこそ、こんな雰囲気のまりりんが来てくれたことが何よりも嬉しいです。

他妹のモノマネをする鞠絵は、壊れキャラな印象をかもし出していましたが、
でも結果的にヘンに怪力や超科学じゃなく、普通のままでいたお陰で、
物語全体のほんわかさをより引き立てられたかと思います。

鞠絵をお姫様と例えるのは原作(リピュア)にもある描写ですし、
相手となるオトコノコみたいな鈴凛を王子様当てはめるのも、
王道的なものとしては十分過ぎるまりりんと太鼓判を押したいほどです!
普段なりゅーが書いているような"ひねたまりりん"とは逆のパターンで、
だからこそ新鮮なまりりんが見れてダイダイダイ満足でしたっ!

鞠絵がメガネを外し、コンタクトで待ち合わせるなんて、
デートに対するちょっとした意気込みが感じられる良い演出でした。
つい「彼女」って言っちゃった鈴凛もなかなか"オトコらしい"です(爆
イヤ〜なナンパ男の存在も、見事ふたりの引き立て役として役を果たしてくれましたし、
逆に彼の存在は大きいですよ!(笑

絶妙。まさに絶妙のセンスが冴え渡る逸品のまりりんだったかと!
誕生日プレゼントとしては素敵過ぎるSS、本当にありがとうございました!!

しかし、やっぱりギャグだったんですね……「勝負服」という伏線が最後で生きるとは……(笑


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