「えっと……衛ちゃんには朝会って……それから、鞠絵ちゃんと咲耶ちゃんにも……」
歩きながら、今日会ってきた人を、記憶を辿って指折り数えます。
さすがに11人も居ると誰に会って誰に会っていないかがよく分からなくなります……。
「それに、雛子ちゃん、千影ちゃん、花穂ちゃんにも会って……」
鈴凛ちゃんは……鞠絵ちゃんが渡してくれるっていうから、別に会わなくても大丈夫で……
「亞里亞ちゃんには今会ってきたし、四葉ちゃんは……――」
「チェキチェキチェキ……」
「――……今も後ろからついてきてるし……。なんだ、思ったよりも会っていたんだ……」
改めて数えてみると実は結構会っていて、あとは春歌ちゃんと白雪ちゃんに会うだけだったの。
「でも……確か春歌ちゃん、今日は弓のお稽古があるって言ってたっけ……」
亞里亞ちゃんのお家で、ちょっとのんびりしすぎちゃったから、今からだと春歌ちゃんと行き違いになっちゃいます。
春歌ちゃんのお稽古は夕方には終わるはずだから、時間を合わせて夕方に春歌ちゃんお家に行くか、道場に向かって帰り道に直接渡すか……。
「それは時間を見て調整するとして……とりあえず白雪ちゃんからだね」
白雪ちゃんに渡すにしても、ここからじゃ大して時間かからないから
どっちにしろ、結構時間は余っちゃうってることになります。
こんなことならもうちょっと亞里亞ちゃんの家にいて、じいやさんに満足のいく生活を送れる援助してあげればよかったかな?
「あれ? 可憐ちゃんじゃない」
「え?」
この後のことを考えながら公園の前を横切ろうとした時、不意に公園の方からそんな声をかけられてきました。
目を向けてみると、公園の入り口近くに、鈴凛ちゃんの姿を発見しました。
そういえば……確かこの公園が、鞠絵ちゃんと鈴凛ちゃんが待ち合わせをしていた公園だったっけ……。
すきすき☆可憐ちゃん
−後編−
「偶然だね、こんなところで会うなんて」
鈴凛ちゃんは、ジュースを片手に可憐のところに近づいてきて、軽く挨拶を交わしました。
「あれ? 鈴凛ちゃん、ひとり?」
ところが近くには待ち合わせをしていたはずの鞠絵ちゃんの姿もなく、鈴凛ちゃんひとりだけでした。
もしかしたらもう帰ったのかなって思って、可憐、鞠絵ちゃんのことについてちょっと聞いてみたの。
すると、鈴凛ちゃんは公園の奥の方を指差して、
「向こうでミカエルと一緒。今もアタシの作ったメカを動かしてるんじゃないかな」
「そっか……鞠絵ちゃん、まだこっちに居るんだ……」
鈴凛ちゃんの口から、改めて鞠絵ちゃんの名前を聞いて……
―――『これが、その証です……』
「あ、ぅ……」
……可憐、思わずさっきのことを思い出しちゃいました……。
「ん? どうかしたの? 顔真っ赤にしちゃって」
鈴凛ちゃんは、そう質問してから手に持っていた缶ジュースを口に運びました。
「え……、あ…う……え、と……」
それはきっと、花穂ちゃんのことまで思い出しちゃったからです。
お陰で可憐のお顔がすごく熱くなって来ちゃって……きっとトマトに真っ赤っかになっていると思います……。
「あの、」
だから思わず、こんなことを聞いちゃいました。
「鈴凛ちゃんって……キスしたことありますか?」
ブブゥゥゥッッ
鈴凛ちゃんは、飲んでる途中だったジュースを豪快に噴出してしまいました。
拍子でジュースが少し気管に入っちゃったのか、ゲホゲホと咽る鈴凛ちゃん。
「…………」
そして、その全てをこの身に一身に受け止めた可憐……。
「あぁっ!? か、可憐ちゃんゴメーンッ!!」
「ゴメン! ホンっトにゴメンね……!」
「いえ、悪いのはヘンなこと聞いちゃった可憐の方ですから……」
可憐は、公園の入り口付近にあった背もたれのないベンチにかけて、
ジュースまみれ――といっても霧吹きでかけられた程度にですが――になった体を、鈴凛ちゃんにハンカチでぬぐって貰っていました。
鈴凛ちゃんは、水で濡らしたハンカチで丁寧に可憐の体をふきながら、何度も謝罪の言葉を繰り返してきます。
さすが毎日細かい作業を行っているだけあってなのか、そんなに乱暴な拭き方じゃなかったです。
丁寧なふき方って……なんだか鈴凛ちゃんのイメージとちょっと違うから、意外かな……。
一通りふき終わってから、最後にもう一回ごめんねって謝って、鈴凛ちゃんも可憐の隣に腰をかけました。
「それで、どうなんですか?」
「どう、って……もしかしてさっきの話の続き……?」
鈴凛ちゃんは苦笑いしながら、可憐にジュースをぶっかける吹きかける前の話題かどうかを聞き返してきます。
それに対して、可憐はただ黙って首を縦に振りました。
だ、だって……なんだか直接もう一度口にしたくなかったんだもん……。
「いや…あの……、それは、そのー……一応あるというか……さっきされたばっかりというか……」
「はい?」
「な、なんでもない!」
鈴凛ちゃんの声は、よっぽど恥ずかしい話題だからなのか、どんどん小さくなっていくような喋り方でした。
だから鈴凛ちゃんが言おうとしたことはほとんど聞き取れなかったの。
「な、なんでそんなこと聞くの?」
「えっと…………その……さっき、ちょっとされそうになったり……実際にされちゃったり……ほっぺにだけど……」
可憐は亞里亞ちゃんのお家に着くまでの出来事……というよりは、主に鞠絵ちゃんと咲耶ちゃん、
それから花穂ちゃんとのことについてお話ししたの。
でも……思い出しただけで、なんだかとっても胸がドキドキくるので、直接「キス」って言葉は使いませんでした。
ああダメです……その言葉を頭に思い浮かべただけでもドキドキしてきました……。
「へー、そんなことが……まあ可憐ちゃん可愛いからねー……」
「それで……女の子同士なのに、そんなことしてもいいのかな、って思って……」
でも男の子とだったら、別に兄妹でも関係ないなって思うのは可憐だけでしょうか?(ぇ)
鈴凛ちゃんは、そんな風に思い悩む可憐の問いに、驚くくらいあっさりとこう返してきました。
「別に、いいんじゃないの? 女の子同士だって、好きならさ」
「え?」
「だってさ、要するに自分の『好き』って気持ちを伝えるための行為でしょ? だったらさ、好きだったら男の子も女の子もないんじゃないかな?」
要は自分の気持ちよ、なんて付け足してから、そこで一旦言葉を区切って、さっき可憐にぶっかけたジュースを一口飲んで一服。
それから、「ふー」なんて一息ついて、鈴凛ちゃんは更に続けます。
「それに、キスって一言で言ってもさ、全部が全部色恋沙汰ってわけでもないじゃない。
ほっぺとかまでなら……なんていうか、"友愛"って感じなんじゃないの?
まあ、アタシそういうの詳しい訳じゃないからよく分からないけど……」
そういえば……確か四葉ちゃんから、向こうに居た時はたまにほっぺたにするって、話だけなら聞いたことがあります。
そっか……そうだよね……。
キスするからって、全部が全部恋愛って訳じゃないのに……もうっ、可憐ったら一体なにを考えていたんだろう。
「まあ、やっぱり口は特別だと思うよ。口は……うん、口は……」
ふと鈴凛ちゃんの方に目を向けてみると、鈴凛ちゃんは何かを思い出したように、
口に手を当てながらちょっとだけ顔を赤らめて、何かに照れてるように俯いてぶつぶつ呟いていました……。
なにかあったんでしょうか……?
「でも、鈴凛ちゃんにそういうこと教えてもらうなんて……なんだか意外です……」
お礼より何より、まず先にそう思っちゃいました。
まあ、そんな質問を鈴凛ちゃんにした可憐も可憐なんだけど……。
「あ、やっぱり?」
あははは、って笑いながら「アタシもそう思うよ」なんて、鈴凛ちゃんも納得のご様子です。
「実はこれね、半分受け売りなんだ」
「そうなんですか?」
「うん、そう。アタシはそういう話を聞かされてから、それを自分なりにまとめただけ」
でも、それでもすごいことです。
確かに最初は人の受け売りからだったかもしれないけど、そういう考え方に行き着いたのは、結局は鈴凛ちゃんなんですから。
「でもまぁ……可憐ちゃんは女のアタシから見ても可愛いと思うから、気持ち分からないでも思うけどね」
「え?」
「なんならここでしてあげよっか? キス」
「え? え!? ええぇっ!?!」
「なんてね、冗談よ、冗談」
もうっ! 鈴凛ちゃんまで、鞠絵ちゃんみたく可憐がどきまぎするのを面白がってからうなんて、ひどいですよ……。
「……でも、先に可憐ちゃんから手を出されてたら、アタシもどうなってたか分からないしね……」
「………え?」
「なんでもない」
鈴凛ちゃんは科学者さんのタマゴなだけあって、誰にも考え付かないようなことまで考えているから、
たまに可憐には良く分からないことを口にします。
「あぁ〜ん、あそこに見えるのは姫のだ〜い好きな可憐ちゃんの姿ですの〜♥」
と、突然、公園の外の方から、そんな甲高い声が響いてきました。
……なんだか今日は突然がいっぱいです。
「あれ? この声って……」
その喋り方や声で誰かはもうなんとなく分かっていたけど、確認する意味も含めて、可憐はその方向に目を向けました。
「やっと見つけられましたの♥ 姫、一生懸命探してた甲斐がありましたの〜♥」
「白雪ちゃん!」
思ったとおり、公園に入ってきた人影は白雪ちゃんのものでした。
「……とまあ、とても自信作なお菓子ができましたので、これは是非可憐ちゃんにと、一度可憐ちゃんの家に向かったんですの。
でも、途中何者か(エセ探偵)の不意打ちをくらい、姫、そのまま意識を失ってしまいました……。
目が覚めた時、可憐ちゃんは既にどこかに出かけててお留守でしたの……」
ベンチに、可憐をはさんで3人並んで座る形になると、白雪ちゃんはひざの上に小箱を置いて、災難とも苦労話ともつかない話を始めました。
可憐は、鈴凛ちゃんと一緒にその話に耳を傾けていました。
「姫、その時はもう諦めようかと思ったんですけど、
折角の姫の自信作、美味しい内に食べてもらいたいからって、今まで諦めずに街中を歩き回ってたんですの……」
「へー、それは大変でしたね……」
「はいですの。でも会えましたから、結果オーライですの♥」
白雪ちゃんは、胸を張って「ムフン♥♥」といつもの掛け声を口にします。
「可憐も白雪ちゃんに会えて良かったです。丁度白雪ちゃんの家に行こうと思っていたところなんですよ」
「姫の家に?」
「うん。これを、渡そうと思って」
可憐はチケットを取り出して、もう今日何度もくり返した発表会の話を説明したの。
「あぁ〜〜ん♥ 可憐ちゃんのピアノ演奏ですの〜♥ なんだかとっても楽しみですの〜〜♥♥♥」
白雪ちゃんは可憐からチケット受け取るなり、持ってきた小箱をベンチにおいてから立ち上がって、
ほっぺに両手を添えておしりをふりふりして、いつもの自分の世界に浸ってしまいました。
鈴凛ちゃんが横から、「アタシはもう鞠絵ちゃんから貰ってるよ」なんて、確認の意味を込めて言ってくれました。
「お礼……と言うには順序が逆ですけど、姫特製のシュークリーム召し上がってくださいの♥」
そう言って一旦ベンチに置いた小箱を手に可憐の目の前にくると、白雪ちゃんは箱のふたを開けて、可憐たちに中身を見せてくれました。
中には、パウダーシュガーが薄っすらかかっているシュークリームが3つ。
「うわぁ……」
「美味しそう……」
白雪ちゃんのシュークリームは相変わらずの美味しそうな出来で、
一緒に覗き込んだ鈴凛ちゃんと一緒に、思わずそんな感嘆の声をあげちゃうほどでした。
「ちょっとあたたまっちゃいましたけど、味はまだまだ大丈夫だと思いますの。ムフン♥」
本当は最高の状態で召し上がって欲しかったですの、なんて付け加えて、
白雪ちゃんは可憐にそのシュークリームを食べるようすすめてきました。
「じゃあ遠慮なく」
鈴凛ちゃんが箱の中に手を伸ばして、シュークリームをひとつ取って、そのまま一口。
「チェストーッ!!」
「――ぅぎゃっ!?」
正拳一閃。
「――……って、鈴凛ちゃんっ!?!」
「これは可憐ちゃんに作ったシュークリームですの!
普段からインスタント食品ばっか食ってる舌の貧しい輩が、メインの可憐ちゃんよりも先に手を出すだなんて、なんという傍若無人さ!
そんな無礼者に、可憐ちゃんのためにこしらえたスペシャルなお菓子を食べさせる権利なんてないですの!!」
背もたれがないから、そのまま後ろに転倒した鈴凛ちゃん。
そんな鈴凛ちゃんに、白雪ちゃんはびしっと指さして言い放ちました。
「あ、あの……それだった可憐は別に構いませんから。
それにほら、3つあるからひとつくらい鈴凛ちゃんにあげても……
数も丁度いいですし……なによりみんなで食べた方が楽しいじゃないですか」
「まあ可憐ちゃんがそういうのなら♥」
可憐がフォローを入れると、白雪ちゃんはすぐに納得してくれたみたいです。
良かった、なんとか丸く収まってくれたみたいで……。
「ったく……ゲンキンねぇ……」
「鈴凛ちゃんにだけは言われたくないですの」
ひっくり返った鈴凛ちゃんは、白雪ちゃんと一言二言交わしながら起き上がって、ベンチに座りなおしました。
それを確認してから、可憐も白雪ちゃん特製のシュークリームを一口食べたの。
「わぁっ、おいしい♥」
すると、クリームの甘さやパイ皮との食感が、可憐の口の中いっぱいに広がってきて、思わずそんな言葉がこぼれちゃうほどでした。
大げさな話じゃなくて、これならお店で売っても大繁盛しちゃうくらいおいしさです。
「どうですの、可憐ちゃん? 姫、今回はクリームの口当たりにものすご〜〜く気を使いましたのよ♥」
確かに白雪ちゃんの言うように、このシュークリームは、可憐が普段食べるような市販のシュークリームなんかとは口当たりがまるで違いました。
「口当たり? そんなに変わらないよ」
「とおりゃーっ!!」
「―――ぅごぁっ!」
白雪ちゃんのパンデ・トルリョ・チャギ〔後ろ廻し蹴り〕強襲。
「――って、鈴凛ちゃーんっ!?!」
背もたれがないから、鈴凛ちゃんはそのまま後ろの茂みまで飛ばされて、草の壁に体が引っかかってしまいました。
「ええぃ! 舌の貧しい輩はこれだから!」
「ちょっと! 足蹴にするなんて酷いじゃない!? っていうか、今のテコンドー!? いつの間にそんなもの?!」
「韓国料理を極めているついでに覚えましたの、ムフンッ♥」
「いや、普通に考えてそれはないでしょ!?」
またも吹っ飛ばされてしまった鈴凛ちゃんは、白雪ちゃんへの不平をぶつぶつ呟きながらベンチのところまで戻ってきました。
可憐は空笑いするしかなくて、仕方ないからシュークリームをもう一口かじったの。
そこで、可憐はふとあることに気がつきました。
「ねぇ、白雪ちゃん。このシュークリームだけど……もしかして、クリームだけじゃなくて皮にも何か工夫した?」
「あぁ〜〜ん♥ さっすが可憐ちゃん、分かってらっしゃいますの〜〜♥」
「あ、そうだったの? アタシもう食べちゃったからもう分かんないや……ってなんでしょうか白雪さん?」
白雪ちゃんは、いつの間にか鈴凛ちゃんの前に来て、おもむろに鈴凛ちゃんのお腹の辺りに握り拳を当てていました。
「ていやーッ!!」
ドゥンッ
「――ぐぅえっ!?」
掛け声と共に白雪ちゃんの寸剄炸裂。
相手に触れた状態での直突き、古代中国が生み出した超ベリーショートパンチ。
「って、鈴凛ちゃーーーんッッ!!?!」
鈴凛ちゃんはそのまま「あー」なんて声を上げながら、遥か後方の茂みを飛び越えて、茂みの裏に落ちていきました。
「ぎゃうっ!?」
「チェキ!?」
ふたつの短い悲鳴が茂み越しに可憐の耳に届きました。
……ああ、また知ってる誰かが不幸に巻き込まれたみたいです。
「ちょ、今のはあんまりだよ、白雪ちゃ……って、あれ?」
可憐が顔を向けた時、白雪ちゃんはもう既に可憐の前からは消えて、いつの間にかどこかに行ってしまっていました。
「食うの早いんじゃぁボケぇ! しっかりと味わって食ぅときぃや、作る方の身にもなってみさらせぇ!!」
「なんで心なしかヤクザ口調なの?! っていうか今度は中国武術!?」
「中華料理をお勉強するついでに……」
「そんなことしていたら白雪ちゃんは地上最強のグラップラーになってしまいます」
茂みの向こう側からそんなやりとりが聞こえてきます。
ふたりの姿は見えず、声だけが可憐の耳の届いてきます。
「抜き足……差し足……チェキ足……」
「で、どこいこう思ぉとるんや、名探偵さんや?」
「ちぇ、チェキっ!?」
「さっきは世話になったのぅ……礼を返しとかな割に合わんっちゅー話やさかい覚悟しぃや」
「チェキー!? なんだか白雪ちゃんのキャラヘンになってマスー!?」
悲鳴のような声の後に、ポキポキなんて間接を鳴らしているような音が。
よく分からないけど、知ってる誰かもこれから不幸にあうようです。
見えない分、何が起こってるか分からなくてちょっと恐ろしいです……。
「問答無用ですの! ふたりまとめて姫がおしおきしちゃいますの!!」
「ちぇきーー!?」
「助けてぇーー!!」
嘆きにも似た、四葉ちゃんの鈴凛ちゃんの悲鳴が、茂みの向こう側から発せられます。
ズザザザザザッッ
まるでそれに呼応するかのように、茂みの奥側から何かが駆け抜け、近づいてくる音が。
「え、鞠絵ちゃ―――」
ズゴァンッッ
「で、ですのー!? なんでそんなもん振り回し―――」
バガァンッッ
「チェキー!? なんで四葉までーー!?」
ボグォンッッ
「ま、待ってですの! 悪いのは鈴凛ちゃ―――」
「ストップデス! ストップしてクダ――」
ズバァァンッッ
「…………」
茂みの向こう側からは、なんだか鬼の様なオーラと、何かを叩きつけるような異様な轟音と、
白雪ちゃん+αの悲鳴にも似た叫び声が、途切れ途切れに聞こえてきます。
……触らぬ神に祟りなし、という言葉が頭を過ぎりました。
可憐は、直感的な何かに従うように、そのままその公園をあとにすることにしました……。
後日、この公園を訪れて茂みの裏側を確認した時、
そこにはまるで常識外の大きな刃物を振り回したような、そんな異様な痕跡が残されていました……。
「時間は……今からだったら丁度良いくらいかな……?」
春歌ちゃんの家も習い事の教室も同じ方向なので、とりあえず春歌ちゃんのところに向かって歩くことにしました。
歩きながら時計で時間を確認してみると、今からだと春歌ちゃんのお稽古が終わるのよりちょっと早く着くくらいの時間です。
鈴凛ちゃんにジュースぶっかけられた会ってお話していたお陰で、丁度良く時間を潰すことができたみたい。
それに、偶然にだけど白雪ちゃんに会うこともできたし……あとは春歌ちゃんと四葉ちゃんに会うだけです。
「チェキぃ……なんとか生きて逃げられたデスぅ……」
四葉ちゃんは四葉ちゃんで、朝から様々なトラブルに巻き込まれながらも、忍耐強く、ずっと可憐のあとについてきます。
どうやらさっきの、可憐には想像もできないような災難からも、何とか無事に生還を果たすことができているようです。
春歌ちゃんのところに着くまでまだ結構あるから……それまでに四葉ちゃんに声をかけてあげれば、丁度良いんだけど……
……でも、これが簡単なように見えて結構難しいんです。
「チェキチェキチェキ……」
四葉ちゃんは、あんなんでもバレてないと自信たっぷりです。
可憐がついてきているのを知っていたなんて分かっちゃったら、きっと四葉ちゃんショックを受けるに決まっています……。
だから、ついてきてるって知らなかったかのように装いながら、四葉ちゃんに話しかけなきゃいけないんだけど……
可憐が振り向いたらすぐ隠れちゃうし……一体どうしたらいいのかなぁ……?
……なんて、可憐が困っていたら、
「チェキ!」
「え!?」
ここに来て、なんと四葉ちゃんの方から、可憐に近づいてくれました。
「やあ、可憐く……ではなくて、可憐ちゃん。運命デスね!」
「え……あ、はい、四葉ちゃん。ほんと偶然ですね」
ついてきてるのは知ってるから偶然じゃないのはバレてるけど、とりあえず話をあわせるよう、そうお返事を返しました。
……あれ? でも、今の語り文句って……
「その通りなのデス。可憐ちゃんと四葉はゼッタイテキなうんめーの……えーっと……うんめーの導きでぇ……」
そうだ、これって……さっきの千影ちゃんのやりとりをマネしているんだよ。
あ、そうか……四葉ちゃん、今日はずっと可憐のことチェキしていたから、今日のやりとりほとんど知っているんだ。
まだ暗記しきれてないみたいで、チラチラと手帳を見ながら(一応手帳は隠しているつもりみたいだけど)千影ちゃんのマネを続けます。
「イクセン、イクマン、クワマンにも広がるウメボシの巡り合わせの中、同じウメボシ、同じ子のトキに射ることは……」
ところどころ間違えてます。
大体、四葉ちゃんは梅干しがそんなに大好きなんですか?
今度梅干しドーナッツなんてものを白雪ちゃんに頼んで作ってもらいましょうか?(ヤメナサイ)
「もはやあまりにもお粗末なのデス」
まったくです。(ぇ)
その後も、一生懸命カンニングしながら、千影ちゃんの長い台詞を音読する四葉ちゃん。
でもね、四葉ちゃん、着眼点は最悪ですよ。
残念だけど可憐、千影ちゃんの話はいつも半分聞き流しているの。
だから一通り終わるまで四葉ちゃんの方も流させてもらいますね。(鬼)
「――……っと……。それで、デスね……」
どうやら千影ちゃんのモノマネは終わったみたいです。
四葉ちゃん、ご苦労様です、半分聞いてませんでしたけど。
「クッフフぅ……♥」
「………?」
四葉ちゃんは、まるで何かを期待するような、ねだるような視線を可憐に送ってきていました。
「なにか四葉に渡すものとか……ありませんか?」
「渡すもの?」
「例えばぁ……頭に"ち"がつくモノ……とかぁ……」
「頭に……"ち"?」
頭に"ち"がつくものって言ったら……
「えーっと……チュパカブラ?」
「あ〜ん、そんな未確認の吸血生物なんかではなくて」
「チブル星人?」
「そんな『アンドロイド0指令』なんて発令したりおもちゃを操ったりしそうな宇宙人なんかじゃなくてぇ」
「塵地螺鈿飾剣〔ちりじらでんかざりつるぎ〕?」
「そんな一部に受けそうな平安太刀なんかでもなくてぇ〜っていうかワザとデスか?」
ひどいよ四葉ちゃん……可憐、ワザとじゃないのに……。(←それはそれでどうかと)
え、っと……じゃあ他に"ち"がつくものっていえば……………………あっ!!
「チケット……」
「ビンゴぉ!」
そうです……チケット。
可憐はうっかりしていました。
ただ単に会うことが目的じゃなくて、チケットを渡すことが目的でみんなを探していたっていうのに……。
四葉ちゃんと話せたことに安心して、ついつい頭から抜けちゃってて……もうっ、ほんと可憐ったらうっかりさんです。
「ごめんね、四葉ちゃん。……はい」
「チェキぃ♥」
可憐はカバンからチケットを取り出して、四葉ちゃんに差し出しました。
なんか話の流れとしてはちょっとおかしかったけど、
四葉ちゃん自身は納得しているみたいだし、この際その点には触れないで話を進めておいた方がいいよね。
「クッフフッフフぅ……♥」
チケットを受け取るために近づいてくる四葉ちゃんは、なんだかとってもご機嫌ににこにこしながら歩み寄ってきます。
……怪しいです。
とても怪しいです。
逆に名探偵に捕まっちゃいそうなくらい怪しい探偵さんです。
怪しい四葉ちゃんは、ポケットをごそごそあさりながら可憐に近づいて……
「エヘヘ……四葉ドジだから」
ポケットをごぞごぞあさりながら……
「ドジだから………あれ…?」
あさりながら……
「…………」
黙る。
「あ〜ん。四葉ドジだから、フルーツの皮用意するの忘れちゃいましたぁ〜」
「何のためにフルーツの皮がいるのか説明してくれると可憐すっごく嬉しいんだけど」
四葉ちゃん……もしかして、花穂ちゃんのマネをしようとしていたんですか?
だ、だったら、正直失敗してくれて、可憐、大助かりです。
だってあれ……すっごく恥ずかしいんだもん……。
フルーツの皮を用意し忘れた四葉ちゃんは、そのまましぶしぶと、何事もなくチケットを受け取っていきました。
「ええっと……」
チケットを受け取ってから、愛用している手帳を取り出し、ぱらぱらとめくりながら真剣に中を眺める四葉ちゃん。
多分、今までのチェキの結果から、次にどう動くかを探してるんだと思います。
しばらくしてから、なにか目についたものがあったらしく、「チェキ!」なんて一言口にして、可憐にこう言ってきました。
「ご夕食にはワニさんとライオンさん、どっちが良いデスか?」
「それじゃあ可憐の方がご夕食になっちゃうよぉ……」
即答返信、四葉撃沈。
ガックリと肩を落としてうなだれる四葉ちゃん。
ちなみに、この時のうめき声も「チェキー……」でした。
しかし、これで終わってなるものかと奮起し、再び手帳をぱらぱらめくって、真剣にその中身と対峙します。
そして、パタンと手帳を閉じると、
「らーららーらーらー♪」
「こんなところで急に歌われても困ります」
「四葉特製のシュークリームを」
「それデパートで市販されてるものじゃないですか……」
「四葉を殺した責任、取ってクダサイ」
「四葉ちゃんそれなんか違うし、そんなこと誰もやってないし」
「犯人はあなたデス!」
「うわぁ、四葉ちゃんらしさ爆発。だけどそれって決していい印象なんて与えないよね?」
全弾不発、効果皆無、四葉再沈。
「ウウウ……」
四葉ちゃんは、そんな唸るような声を上げて、さっきよりも激しく肩を落としてしまいました。
でもそれは可憐のせいじゃないのでどうにもできません。恨むなら無力な自分を恨んでください。(厳)
「えぇい! こーなったら、もうとっておきの手段デス!!」
「……え? きゃっ!?」
突然、四葉ちゃんは可憐の腰に手を回して、そのまま可憐を抱き寄せてきたの。
「こ、この間……四葉が読んだミステリー小説でデスね……」
「え? え? え?」
こ、これって……これってまさか……まさか……さっきの鞠絵ちゃんのマネ〜〜〜!?
「犯人さんは言うんデス『罪深いお前の心臓に、この裁きの刃を……』」
「うん、それじゃあ可憐殺されちゃうね」
四葉ちゃんはまたも失敗。
しどろもどろに、あー、とかうー、とか言葉にならないうめき声を上げています。
可憐は、四葉ちゃんのドジのお陰で、全然ドキドキさせられませんでした。
だから可憐、四葉ちゃんが失敗してくれて良かった、って安心していたんだけど……
「あー! もう、どーでもいーデスー!!」
四葉ちゃんったら開き直って、もう話の流れなんか構わないで、そのまま"続き"を始めちゃったの。
「え? えぇっ!? ままま待ってください!? ななななにをするつもりですか!?」
「なにって……決まってマス! キッスデス! ちゅーデス! 接吻デス!」
「えええっ!?」
開き直ってるせいか、キッパリと、多種多様な言い方で、これからしようとすることをハッキリ言ってくれちゃいます。
しかも、目の色も変わっていて……可憐、大ピンチです!
「ちょ……ま、待って! 止めてよ四葉ちゃん!!」
「可憐ちゃんは四葉のコト、キライデスか?」
「き、嫌いじゃないけど……で、でも可憐たち女の子同士だしっ……!」
「ダイジョーブデス! キッスなんて全部が色恋じゃないデス!」
「鈴凛ちゃんの台詞そこで使うの!?」
「それに四葉はイギリス育ち! キッスなんて挨拶デス!」
「いや、それはそうかもしれないけど……」
「さぁ、そのキュートなお口にキッスしちゃいましょう! チェキ!」
「って、明らかにくちびる狙ってるー!?」
大変です、可憐のくちびるの危機です。
このままじゃ可憐、四葉ちゃんに……。
鈴凛ちゃんだって……口は特別だよって言ってたのに……言っていたのに……―――
「千影ファイアー」
ゴオォォぉぉッ
「チェキーーーッ!?!?」
突然、可憐に迫っていた四葉ちゃんを、炎が包みました。
四葉ちゃんは炎に包まれた拍子に可憐から離れ、地面にごろごろのた打ち回っています。
しばらくして、四葉ちゃんはぶすぶすと白い煙を上げながら、ぐったりと地面に横たわって動かなくなってしまいました。
そんな四葉ちゃんからは、心なしか焼肉の香ばしいにおいが。
「大丈夫だったかい…………?」
「千影ちゃん!」
炎の飛んできた方向に目を向けると、そこには千影ちゃんが立っていたの。
……でも、そこはかとなくボロボロな気がするのは気のせいでしょうか?
「あ、ありがとう千影ちゃん……」
火ダルマなんてやり過ぎだとは思うけど、今回のは四葉ちゃんが悪いので千影ちゃんを咎めたりはしません。
本当にありがとう、千影ちゃ―――
「なに…………お礼なら体で……――」
「さようなら千影ちゃん、楽しかった日々をありがとう」(←棒読み)
くるっとその場で回れ右。
ぜんたーい進め。
「待ってくれ…………」
ガシッ
……とはいかず、振り向いたところで千影ちゃんに肩を掴まれ、その場に引き止められてしまいました。
「そんな大層なもじゃなくても…………軽いもので十分さ…………。
そう…………今の四葉くんみたいに…………四葉くんみたいにっ!!」
「千影ちゃん、目の色変わってますよ、怖いですよ」
「それに…………君には大切な話もあるからね…………」
「結婚を前提としたお付き合いなら遠慮させてもらいます」
「フフッ…………つれないなあ…………。まあ君のそんなところもラブよ♥」
「咲耶パンチ」
「へぶはっ!?」
千影ちゃんの顔面を何者かのグーにした拳が捕らえ、そのまま千影ちゃんの体を大きく宙に舞わせました。
その手の主は……今の技名で分かっちゃいました……。
「マネすんな! この暴漢!!」
地面に落下し、そのまま横たえた千影ちゃんを見下しながら、強く言い放つ咲耶ちゃん。
「まったく……目を覚ましてからラブの力で可憐ちゃんを探してみれば案の定……。大丈夫だった、可憐ちゃん!?」
「いえ、今まさに咲耶ちゃんの手によって危機に陥ってます」
突然現れて可憐の危機を救ってくれた咲耶ちゃんは、千影ちゃんを殴り飛ばしたあと、
流れるように可憐の肩と腰に手を回し、再び可憐を危機に陥れていました。
「咲耶ちゃん……可憐、離してくれると嬉しいんだけど……」
「ええ、もちろん離してあげるわ。事が終わった後にね♥♥」
「それじゃあ助けてもらった意味がないんですけど」
「もうっ! だから言ってるじゃないの……―――」
―――"可憐ちゃんの唇は私のものだ"、って……ね
「かっこよく演出決められても迷惑なものは迷惑です」
「ぎゃふん」
……ぎゃふんとは、これまた古いリアクションが返ってきました……。
「流行に敏感な咲耶ちゃんらしからぬ反応ですね……」
「そんな私の弱いところを見せられるのも……可憐ちゃん、貴女だからよ……」
「"ぎゃふん"は弱いところなんですか!?」
なんかもう、可憐、呆れてきました……。
だって、全然人の話効いてくれないんだもん。
「フフフ…………"ぎゃふん"とは…………またナイスなリアクションだね…………」
と、咲耶ちゃんに殴り飛ばされた千影ちゃんが、なんと未だ息絶えずに、しぶとくゆらりと起き上がってきました。
その姿は、例えるなら……そう、例えるなら、まるで何度銃で撃たれても蘇るゾンビのようです。
っていうか千影ちゃんもセンス古いです。
「あいにく…………可憐くんの唇は、私が先約済みなんだが…………」
「なに言ってるのよ。それは私のものだって相場は決まっているのよ!」
「勝手に決めないでください!!」
人の話を全然聞いてくれないこのふたりに、一体どうすれば分かってくれるんだろうと可憐が思案していると、
そのうち、咲耶ちゃんの方から可憐の体に回していた手をほどいてくれました。
そしてそのまま、咲耶ちゃんは千影ちゃんと向き合ったの。
「可憐ちゃん、ほんの少しの間だけ待っていてね……。
あの、思い上がった我が愚妹に、体に叩き込んででも、本当のことを教えなくちゃならないみたいだから」
「そのまま返していいですか、咲耶ちゃん?」
「だめ」
……いや、ダメって返されても……。
「邪魔するなら、容赦はしないわよ」
「構わないさ…………。勝者は常にひとり…………可憐くんもただひとり、絶対無二の存在…………。
ただそれだけのことだからね…………」
「そうね、むにむにして気持ち良さそうな「そういう"むに"じゃねーよ」
それっきり、ふたりとも黙ってしまいました。
辺りに緊張が走ります。
最後のやりとりがやや緊張を欠きますが、それでもやっぱり辺りに緊張が走ります。
まさに一触即発の状態。お互い、相手の様子をうかがいあって、どちらも動こうとしません。
「そっちからこないなら…………私から行かせて貰おうかな」
このままでは埒が明かないとその場の誰もが思った頃、千影ちゃんから、そんな攻撃宣言が告げられました。
咲耶ちゃんは千影ちゃんの一挙一動に神経を集中し、繰り出されるその第一撃目に備え、激しく警戒を強めます。
そして、千影ちゃんはゆっくりと一息、大きく息を吸って……
「千影ファイアー」
お口から火を……って、火ぃ吹いたー!?
「なんの、四葉ちゃんガード!!」
「へ? ちぇきーー!?」
「四葉ちゃんーー!?」
既に戦闘不能状態の四葉ちゃんを拾い上げると、そのまま四葉ちゃんを盾に千影ちゃんの炎を防ぐ咲耶ちゃん。
哀れ四葉ちゃんは2度も炎の餌食に……。
「つくづく人間じゃないとは思っていたけど、まさか口から火まで吐くなんて……そんなことやるのは大怪獣くらいなもんよ!」
「フフッ…………そんなのは古い人間の考え方さ…………。昨今ではヒロインが火を吐くことが定石となりつつあるッ!!」
「嘘つけ!!」
……可憐もそんな話は聞いたことはありません、絶対千影ちゃんの思い込みです。
というか、思い込むにしてももうちょっとマシなこと思い込むと思うんですけど……。
「大体、火を吐くヒロインなんて……そんなのヒロインのイメージとしてはマイナスよ、マイナス!」
「ならば可憐くんが火を吐いたらどうだッ!?」
「ラブよッ!!」
「ええぇっ!?」
「火を吐く可憐ちゃん、最高じゃない!!」
「もうっ! なに考えてるんですか!?」
「なにって……今度是非!」
「無理です!!」
「アルコールとライターで!」
「未成年です!!」
可憐、口から火なんて吐きたくありません!
だって、可愛くないんだもん……。いや、可愛ければいいってものでもないけど……。
「隙ありっ! 千影サンダー!」
「わー! 今度は口から雷がー」
「なんの! 四葉ちゃんガード・リピュア」
「チェキーーー!?」
咲耶ちゃんは、まだ手に持っていた四葉ちゃんを盾に、千影ちゃんの口から吐かれた雷を上手く防ぎました。
っていうか、リピュアって何!?
「ちっ……これじゃあもう使えそうもないわね……」
四葉ちゃんは、またも香ばしい匂いを発して真っ黒に。
「だったらっ……!!」
さすがに2度も千影ちゃんの人間離れした攻撃を受けてしまっては、もう四葉ちゃんガードは使いものにならないと判断したのか、
咲耶ちゃんは使えなくなった四葉ちゃんを千影ちゃんに向けて投げ捨て、千影ちゃんへの牽制へと利用。
……っていうか咲耶ちゃん酷いです……。
「なに…………!? くッ……!」
咲耶ちゃんの思惑通り、黒四葉ちゃんは千影ちゃんに覆い被さるような形になり、千影ちゃんはその動きを妨げられました。
そして身動きの取れなくなった千影ちゃん目掛けて、
「咲耶レンガ!!」
咲耶ちゃん、どこからレンガなんか!?
「焼肉ガード」
ガンッ
「ヂェギぃッ!?」
「四葉ちゃんーーーっっ!?!?」
千影ちゃんは動けないならと、覆い被さった四葉ちゃんをどけたり弾いたりせず、そのまま盾として利用。
……っていうか、焼肉って……。
「くっ……なんてマネを……」
「フフッ…………君の戦法をマネさせてもらっただけさ…………」
攻撃を防がれたことに動揺して、一瞬だけ……本当に一瞬だけ、咲耶ちゃんの動きが止まりました。
しかし、千影ちゃんはその隙を逃がしませんでした……っていうより四葉ちゃんを道具として使っている時点で動揺あげてしてください!
「千影昆布!!」
「「昆布ッスか!?」」
しゅるしゅるしゅるッ
「しまったっ……!!」
一瞬の隙をついて、千影ちゃんは咲耶ちゃんを自分の昆布に捕えることに成功していました。
とりあえず、昆布はさすがに口からじゃありませんでした。
服の袖や、羽織っているケープの内側から幾十幾百と……もうそこまで来ると気持ち悪いです。
「フフフッ…………千影昆布はミネラルたっぷりさ……」
……意味が分かりません。
……っていうか、可憐にはもうどうしていいかもサッパリ分かりません。
よくよく考えてみたら、このままここにとどまっていたら、どっちが勝つにしろ可憐のくちびるの危機です。
「何で昆布なんかが出てくるのよ!? っていうか、昆布が炎や雷よりも厄介ってどういうことよ!?!」
「それがミネラルの力さっ…………!」
「意味分かんないわよっ!!」
だから可憐は、咲耶ちゃんと千影ちゃんがコントに夢中になっている間に、すべからくその場を退散することにしました……。
「例え手足が使えなくったってッ! まだ私には、ラブの力があるッッ!!」
「ならばやってみろッ! このミネラルの力…………そう甘くはないッ……!!」
遠くでそんな言い合いが聞こえてくるけど、可憐は振り向きません、振り向きたくなんかありません!
もう全速力で、その場を離れました。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
久しぶりにこんなに走ったから……体中だるくて……すごく疲れて……
こんなことなら、やっぱり衛ちゃんとのランニングに毎日お付き合いした方が必要ないや。(切り返し早っ!)
「あら? 可憐ちゃんじゃありませんか」
「え? あ……は、」
膝に手をついて、肩で息をする可憐に、唐突に声がかけられました。
何かと思って顔を上げると、そこには、今日のお稽古事で使った弓の入った袋を肩にかけて、
心配そうに可憐を見ている、可憐が今まさに会いに行こうとしていた人の姿が。
「どうなさったのですか? そんなに息を切らして……」
「は……は…ハム歌ちゃん……」
「新手の嫌がらせですか?」
ち、違います……疲れて噛んじゃっただけです……。
「ふー」
さっきの公園とはまた別の公園に入って、木でできたベンチの上に腰をかけて、乱れた息を整えます。
さっき座ったベンチとは違って背もたれのあるベンチだから、しっかりと背中を預けて体を休められました。
お陰で、あんなに乱れていた呼吸も、だいぶ整ってきたみたいです。
「大分落ち着きましたか?」
「うん……」
「はい、これ」
「あ、ありがとうございます」
差し出された缶ジュースを受け取ると、お礼の言葉を返します。
……でもこんな時に梅昆布茶(しそ葉入り)だなんて、春歌ちゃんらしいというかセンス疑っちゃうというか……。
「それで、どうしてあんな道の真ん中で息を切らしていたんですか?」
「あ、はい……実は…――」
別に隠すことでもないから、可憐は、そのまま春歌ちゃんに今日あったことをお話しました。
すると可憐の話を聞くなり、春歌ちゃんはまるで可憐の代わりにみんなの事を叱るみたいに、こう口にし始めたの。
「まったく、どうしてみんなそうなんでしょうか……。もう少し可憐ちゃんの気持ちを考えてもいいじゃないですか、ねぇ」
確かにみんなはちょっとやり過ぎてちゃっている感じです。
今日だけじゃなくて、いつも……そう、いつも……みんなは可憐に優しく(?)してくれます。
「……ねぇ、春歌ちゃん。どうしてみんな、可憐のことを好きでいてくれるのかな?」
不意に、そんな言葉が可憐の口をついて出ました……。
「……迷惑ですか?」
「うん、逆にうっとおしい」
「そ、そうですか……」
「まあ、それは冗談として」
「……本当に冗談ですか?」
確かにみんな行き過ぎていて、けど迷惑だなんて考えたことは余裕であるけど。
でも、それも可憐のことを想ってくれるからだっていうのは分かってる……。
だからそう思うと……――
「半分は、嬉しいの……」
「……半分? では、もう半分は?」
「疑問……かな?」
「疑問、ですか……?」
「うん、疑問……。……可憐は、みんなと違って特に何かできるってわけじゃないから……」
可憐には、誰にも負けない"特別な何か"なんてありません……。
みんなには、思わず好きになっちゃうような、そんな魅力があるのに……可憐だけはなんにもない普通の子……。
「雛子ちゃんはまだ小さいから別にいいとして……咲耶ちゃんみたいに綺麗で、なんでも上手にできるわけじゃない。
衛ちゃんみたいに運動ができるわけじゃないし、鈴凛ちゃんみたいに機械に強いわけじゃない。
白雪ちゃんみたいに、本物の料理人さんみたいに美味しいお料理を作れるわけでもない……。
亞里亞ちゃんだって……雛子ちゃんとあんまり歳違わないのに、毎日お稽古を一生懸命がんばっている」
まだ小さい雛子ちゃんだって……そのうち何かを見つけて、いつか可憐を追い抜いちゃうかもしれない……。
「それに……千影ちゃんみたいに次元が違わないし、鞠絵ちゃんみたいにメガネじゃないし、
花穂ちゃんみたいにドジじゃないし、四葉ちゃんみたいにストー「それって後半褒めてますか?」
黙秘権を行使させて頂きます。(マテ)
「それに……春歌ちゃんみたいに、何でもこなせるわけじゃない」
「…………」
「可憐には、せいぜいピアノくらい……。それも、結局はプロになるためじゃなくて趣味の範囲でのことだから……」
だから分からないの……。
どうしてそんな、なんでもない自分のことを、あんなに好きでいてくれるかが……。
「きっと、このまま普通の高校や大学に入学して、普通に卒業して、普通にお仕事に勤めて、普通に結婚して……
可憐はずっと、そんな普通な一生を送っていくんだろうなぁ……」
そんなため息混じに紡いだ言葉を、春歌ちゃんはただ黙って聞いてくれていました。
「いいじゃないですか、普通で」
「え?」
しばらくして、最初に返ってきた言葉はそんな意外な答えでした。
「ワタクシは……逆に普通であることの方が羨ましいと思いますわ」
「羨ま…しい?」
何でもできる春歌ちゃんが、何にもない、普通ってことを羨ましいって……?
そんな……そんなことは……。
春歌ちゃんの方が、なんにもできない可憐よりもすごいんだって、そんなの誰でも分かること。
だから聞き違いかなって思って、春歌ちゃんに聞き直してみようとしたけど……
「ええ、羨ましいです」
その前に、春歌ちゃんはハッキリとそう返してきたの。
それが、あんまりにも予想外過ぎる答えだったから、頭の中がこんがらがっちゃって……
だから可憐、そのままなんにも言えなくなっちゃったの。
そんな可憐の様子を察してか、春歌ちゃんはそのまま、その理由について話しを始めてくれました。
「大量のお稽古事、それ自体を行うことはワタクシも楽しいと感じていますし、後悔はしていません。
でも、それでも……ふと、普通の子が羨ましく思うことがあるんです……。
たまにはお稽古事なんか気にしないで、普通に、のびのびとショッピングを楽しんだり、
友達や可憐ちゃんたち姉妹と遊び歩いたり……そういうのに、ちょっとだけ憧れるんです……」
「あ……」
そういえば、春歌ちゃんはいつも忙しそうで、会うにしてもいつもお稽古の予定を気にしちゃいます。
現に今日だって、弓のお稽古の時間を気にして予定を立てていました。
「ワタクシだって……自分で言うのもなんですが、それこそ可憐ちゃんの言うように何でもこなせるかもしれません。
でも、そのために代わりのものを失っています。そう、例えば遊ぶ時間とかを……。
その大半を、その技術を身につけるために費やさなければ……相応のものは決して得られるものではありませんから……。
だから……ワタクシはみんなほど、みんなのために時間に費やせないんです」
春歌ちゃんの言う通りです……。
鞠絵ちゃんを除いた他のみんなと比べると、春歌ちゃんとは遊びに行った記憶はあんまりありません。
あんなにたくさんお稽古を習っていれば当然か……。
……当然なのに……気がつかなかったな……。
「まあ、日々のお稽古事をこなすことで、
ワタクシの目指す大和撫子に一歩一歩近づいていくのを実感することも、楽しくて止められないんですけどね」
ふふふって笑いながら付け足して、自分はそれに満足しているってことをアピールする春歌ちゃん。
知らなかった。
春歌ちゃんにも……なんでもこなせちゃう春歌ちゃんにも、そういう悩みがあったなんて……。
「亞里亞ちゃんだって、確かにすごいかもしれません。
だけど……その代わりに、ワタクシと同じように自らの時間を失っているのだと思います……。
鈴凛ちゃんも白雪ちゃんも、自分の研究や料理に、お金や時間をつぎ込んでいるからこそ、あそこまでこなせるのです。
千影ちゃんだって……」
「…………」
「千影ちゃんだって…………」
「………千影ちゃんだって……?」
「……………………」
「…………春歌ちゃん?」
「……千影ちゃんは………………まあ良く分かりませんけど、なんかのためにその分なんかつぎ込んでるんでしょう」
うわっ、適当。
「そのために得られるものもある。失うものもある……。だからこそ……」
春歌ちゃんは、そこで一旦口を止めると、しっかりと可憐のことを見据えて、
「普通であるからこそ、みんな可憐ちゃんのことが好きなんだと思いますよ」
最後に「もちろんワタクシも」と付け足して、「ふふふ……」なんて軽い笑いを向けてきました。
「少なくともワタクシは、可憐ちゃんのそんなところも好きですよ」
「………っ」
春歌ちゃんに面と向かって好きって言われて、可憐はなんだかとても恥ずかしい気持ちになっちゃったの。
どうして春歌ちゃん、そんな恥ずかしくなっちゃうようなことハッキリ言えるんだろう……
「それに……普通でいることは何よりも難しいことだとワタクシは思いますわ。
普通の仕事に勤めたり、普通の結婚をすることだって、今の世の中じゃそう簡単にいくことでもありませんよ」
春歌ちゃんは、ちょっと苦笑気味にそんなことを口にします。
「だから可憐ちゃんは可憐ちゃんのままで良いんです。
普通であることは、確かに何も持ってないことかもしれませんが、
それを保つということは、逆に何も失ってはいないということですから……」
「…………」
春歌ちゃんにそう言われて、可憐はただ黙って、言われたことを思い返してみたの。
なんだかいっぱい話をされて、分かったような分からないような、そんな感じだったけど……
それでも、春歌ちゃんが可憐は可憐のままで良いって……そう言ってくれてるってことは分かったの。
すごいなぁ……春歌ちゃんは……。そんなことまで考えてたなんて……。
「でも春歌ちゃん……それ、全然褒めてないよぉ……」
「そうですか? なら、ちょっとだけ褒めてみましょうか?」
そう言って、春歌ちゃんは可憐の頬にそっと手を添えて、じっと可憐の顔を見据えてくると、
「可憐ちゃん。可憐ちゃんは自分のことを普通だ普通だと仰っていますが、ワタクシはそうは感じませんね……。
……だって……こんなに可愛いお顔をしているんですから」
「ええ!?」
そんな恥ずかしくなるような台詞を、真っすぐに可憐に向けて言ってきたの。
あんまりにも恥ずかしかったから、可憐、とうとう春歌ちゃんから目を背けて下を向いてしまいました。
だけど、春歌ちゃんはそんな可憐に構うことなく、そのまま口を動かし続けます。
「それに、可憐ちゃんの特別は、もしかしたら外側ではなく内側にあるんじゃないんですか?」
「……内側?」
「特別な何かに一途になれる、そんな素敵な心の持ち主。それが可憐ちゃん、貴女です」
「そ、そんなこと……」
「ないことはないと思いますよ。だって、今まで可憐ちゃん見てきて、ワタクシはそう感じましたから」
「でも……、その…あの……、」
「もし、大切な何か、特別な誰かに出会えたのなら……可憐ちゃんはきっと、誰よりも輝くものを発揮する。
ワタクシは、なぜかそんな気がして……」
外側だってこんなに可愛らしいんですから、なんて付け足して、にっこりと微笑を向けてきます。
春歌ちゃんは、そんな恥ずかしくなっちゃうことばっかり言ってきました。
だから可憐、もう真っ赤になって、ドキドキしちゃって、頭が全然働かなくなっちゃったの……。
「も、もうっ! 春歌ちゃんまで可憐をドキドキさせるんですからっ……!」
まるでそれが精一杯の抵抗のように、春歌ちゃんに言い放ちました。
でも、春歌ちゃんはそんな可憐の抵抗を見ても、その様子を楽しむようにうふふ、なんて微笑みを返すだけ……。
これじゃあ、春歌ちゃんもみんなと一緒ですよぉ……。
「………でも、ありがとう……」
一番言って欲しかったかもしれない言葉を、可憐にくれたから……。
春歌ちゃんに、心の底からありがとうって……本当に、そう思ったの……。
「……ちょっとだけ、特別になってみてもいいかな?」
「え―――」
可憐の言葉の意味を計り兼ねて、一瞬固まった春歌ちゃんの隙を突くように、可憐はちょっとだけ大胆になってみました……。
可憐を励ましてくれた春歌ちゃんに、勇気づけてくれた春歌ちゃんに、お礼の意味も込めて……
可憐は素早く、春歌ちゃんのほっぺたに軽くキスをしたの。
さすがに、口は特別だからあげられないけど……それでも、可憐の精一杯の感謝の気持ちを込めて……
「…………可憐…ちゃん……」
「お礼です……♥」
春歌ちゃんは、可憐の口が触れたほほに手を当てて、呆気に取られたような顔をして止まってしまっていました。
最初は、一体なにが起きたか分からないって感じだった春歌ちゃんの顔も、
時間が経つにつれてなにが起きたのか分かってきたのか、少しずつ赤みを帯びてきました。
そしてそれにつられるように、可憐自身の顔もだんだん熱くなってきます……。
自分でも恥ずかしくなっちゃうって分かってたから、考える前に行動したけど……や、やっぱり恥ずかしいです……♥
……それでも何か、気持ちを形にしてプレゼントしたかった。
春歌ちゃんは、それくらい大きなものを可憐にくれたから……。
これは、春歌ちゃんがくれたものへの、ほんの些細なお返しです。
ありがとう、勇気をくれて……。
「可憐ちゃんが、可憐ちゃんがワタクシにっ……ポポ♥」
…………。
「あぁン……いけません、いけませんわ〜〜♥」
「あ、あの、春歌ちゃん……」
「あ〜〜れ〜〜♥ そんなご無体なぁ〜〜〜♥」
春歌ちゃんは、くねくねしながら妄想の世界へと旅立ってしまいました。
「そんな、ああっ♥ はしたない……ワタクシたちふたり、めくるめく禁断の園へ〜〜……ポ、ポ、ポ、ポポポッ♥♥♥」
……この癖さえなければ、春歌ちゃんは完璧だと思うんだけどなぁ……。
なんて、自分のことじゃないけれども、ちょっとだけもったいなく感じました。
ふと辺りを眺めてみると、一面に赤い景色が広がっていました。
時刻はもう夕暮れ時、日はもうすぐ沈もうとしています。
今日は朝からなんだかとっても大変でした。
それでもなんとかみんなに会うことができて良かったです。
可憐は、まるで一仕事終えた時みたいに、うんっと伸びをしました。
……ううん、違うよね……一仕事はこれから。
発表会を成功させるためにも、帰ってこれから練習しなくちゃ……。
赤い夕日が可憐たちを照らす、そんな赤い景色の中で、遠くから「可憐ちゃんの一番バンザーーイっ!!」の声が響いてきます。
……って、12時間近くも走りながら叫んでたんですかっ?!
そして、とうとう発表会の日がやってきました。
「き、緊張するなぁ……」
可憐は、舞台袖で自分の出番を待っていました。
舞台の方では、丁度可憐の前の人の演奏が終わったところです。
可憐の番は本当にもうすぐそこまで迫ってきていました。
そんな中、可憐はというと……
「ううう……ドキドキするよぉ……」
やっぱりというか当然というか、不安と緊張でドキドキしっぱなしです。
『次の演奏は―――』
あ、可憐の番の説明が始まってしまいました。
もう後戻りはできません。
「ど、どうしよう……」
もうこれ以上はドキドキしないと思っていた胸は、更にドキドキを早めていきます。
「だ、大丈夫……大丈夫だから……」
はやる心を落ち着かせるように、自分自身に言い聞かせます。
だけど、こればっかりはどうしようもできません。
音を外しちゃったらどうしよう。
失敗なんかしたらどうしよう。
そんな考えが頭に過ぎって、可憐の中の不安を更に駆り立てようとします。
観客席には、みんなが可憐の演奏を聞きにきてくれているっていうのに……
「…………」
……みんなが、……そう、可憐の大好きなみんなが……。
春歌ちゃんは言いました……可憐は、大切な何かのために輝くものを発揮できるって……。
ちょっと信じられないけど……でも、もしそうなら……――
「今この時は……可憐にとって、間違いなく"大切な何か"です……」
そう思うと……不思議なことに、あんなにドキドキしていた胸が、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻してくれました。
完全には消えないけれど、これだけ落ち着いてくれれば何とかできるってそんな気がしてきました。
「よし……!」
頷くようにそう意気込んで、可憐は舞台の上へと足を進めました。
みんな、聞いてください。
可憐の、みんなへの想いを込めて……一生懸命弾きます……
この曲が……
可憐の想いが……
みんなの心に
どうか届きますように……。
……余談ですが、
「ふーんだ、ふーんだ」
「ご、ごめんなさい……可憐、てっきり渡したつもりで……」
「別にいいよーだ…………くすん」
「ああ、亞里亞ちゃんになってる」
花穂ちゃんとのどたばたで、千影ちゃんにチケットが渡っていなかったことが、後で判明しました。
四葉ちゃんから助けてくれた時に言っていた"大切な話"っていうのは、どうもそのことだったみたいです……。
「いじいじ……いじいじ……」
「ああ、いじいじしちゃった……」
可憐の想いは千影ちゃんには届いてませんでした…………ごめんなさい。
あとがき
セリッツさんからの18000番のキリ番リクエスト、暴走可憐ハーレムルートでした!
リクエスト内容としては、「可憐の総攻めか総受けで、できればハイテンションで暴走系」との要望を頂いたのですが、
ぶっちゃけなりゅーは総攻め・総受け等が非常に苦手です(苦笑
いや、構想する方でですが……多分(ぇ
総受けが苦手な理由としては、攻め側の想いが真剣なものであればあるほど「報われない恋」が多いから。
しかもシス百合でやろうものなら軽く10人は報われません(苦笑
……あれ? そうなると総攻めはできるのかな?(ぇ
いやいや、浮気はいかんよ(爆
それを回避するために、「かなり好きだけど恋じゃない」、「可愛いから可愛がる」的な攻め、
要は「恋愛未満の好き」を演出してみたつもりですが……果たして上手くいったのやら(苦笑
で、結果的にひとつだけカップリング成立しているようなカップルができてしまいました、ありゃ自己満足だね(爆
……いえ、すみません。それでも精一杯組み立てた結果なんです……(汗
できればそういう自己満足を入れることは避けたかったんですけど、
あいにく入れなかった場合のストーリー展開が思いつきませんでした。
実際、他にもカップリング成立させて「報われない想い」を軽減しようとも思ってたんですけど、
どうも上手いのが思いつかず、そのひとつしかできませんでした(苦笑
また、「総受け」の形成にそのキャパシティーをつぎ込み過ぎたために、あまりハジけの足りない作品になってしまった気がします……。
11、12人壊すとバランス取れなくなってしまうんで、数人は真面目なままのこの状態が精一杯でした。
そもそも現状でもバランスが保てているかも疑問です(苦笑
しかも12人全員にそれなりに見せ場を作ったら、長くなると予想していたにも関わらず、
その予想を更に上回って長くなってしまいました(苦笑
あまりにも膨れ上がってしまったために、前後編に分けて掲載。
……っていうか前後編に分けても両方長いよ……。_| ̄|○
こんなに長いのは、正直書く方だけじゃなくて読む方も辛いでしょう(苦笑
ええ、もう自粛します……したいです(自信なさ気
本当はメカ鈴凛も出そうとしてたんですがカットしました、長くなるので(爆
他にもやろうとしたネタもいくつかカット……そうでもしないと、作品として破綻しそうだったので……。
とりあえず、春歌と亞里亞の優遇はリクエスト者からの要望でしたので、頑張ってそう作ってみましたが、
優遇させたお陰であんまり見せ場がなかったかも……(汗
とにかく、ハイテンションで過度に壊すのも、総受けにするのも、12人全員に見せ場を作るのも全部大変でした……。
今後リクエストでもリクエスト以外でもこんなに長くは書かないつもりですので、
長編が苦手な方はご安心を、というか勘弁して(泣
ああ、『小さな約束』で長いとか言っていたころが懐かしいです……(遠い目
前編後編片方だけでそれくらいの長さだし。
っていうかあとがきも長いです……(苦笑
こんなに長い作品でも読んでくださった方、更にここ(あとがき)まで読んでくださった方、
本当にありがとうございました!
更新履歴
H16・9/27:前後編あわせて完成
H16・9/28:誤字、他少々修正
H17・4/24:書式等大幅修正
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