誰よりも貴女を愛している……。

 だからもっと貴女を知りたい……


 現在の貴女。

 未来の貴女。


 そして、



 過去の貴女も……。











 

狂った残光













「ありがとう、楽しかったわ」


とある昼下がり、私はちょっとしたお茶会に招待され、楽しいひと時を過ごしていた。
開いたのは私の妹の千影、そしてその場所は彼女の家。
妹といっても、ちょっとした事情があって私たちは一緒に暮らしてはいない。

私はなんてことはない普通の家に暮らしているけど、千影に至っては妹のくせに大きな館に一人暮らし。
もっとも、この館は不気味な感じがして、あんまり羨ましいと思えないけど……。
本当は保護者がいるかもしれないけど、私は会った事はないし千影から話を聞いたこともない。
なので“多分”一人暮らし。


「お互い様さ…………。 楽しい一時をありがとう…………咲耶くん」


千影も私に向かってそんな言葉を投げかけてくる。
姉妹同士の楽しい午後の一時も、もうお開きの時間を向かえようとしていた。


「じゃあ私、そろそろ帰るわね」
「ああ…………気をつけて帰ってくれ…………」
「ええ、それじゃあね。 …………あ、と……忘れるとこだったわ……」


席を立ち上がり、玄関に向かって歩こうとしたところで、あることを思い出し、足を止めた。
そして、玄関とは逆方向の、千影の立っている場所に足を向けた。
そんな私を千影は頭にクエッションマークを浮かべたように見つめる。
私はイタズラっぽく笑いながら、ほんの少しだけきょとんとした千影の顔に、ゆっくりと自分の顔を近づけた。
そして、そんな千影の唇を掠め取るように、素早く私自身のそれを一瞬だけ触れ合わせた。


「……ッ!!?」


突然のことに驚きが隠せず、大きく目を見開き、ただ赤面するだけの千影。


「さよならのキス、忘れるとこだったわ……」


真っ赤に染まった顔にウィンクを送りながら、最後に「じゃあね」と付け足して、私はその場を後にした。





姉から妹への口付け。

にわかには信じられないような行為なのは十分承知しているつもり。
でも、好きでもない相手にキスするほど、私は軽い女ではない。
ましてや唇、挨拶程度で軽々しくしたりはしない。

ならば今の行為は一体どういうことか?

答えは至って単純明快、その相手を愛しているから、それも真剣に。


そう、私は妹を愛している。

妹相手に本気の恋愛感情で愛しているなんて、それこそ「異質」とも言えるような感情。
だけど、この想いは嘘なんかじゃない。
思い込みでも、性への好奇心を手軽に埋めるようなふざけた想いでもない、本気の恋。

彼女と時を過ごしていくうちに、彼女のかもし出すミステリアスな空気に不思議な魅力を感じ、
彼女の妖艶な美しさに心もろとも引き込まれ、そして…………いえ、そんな理屈なんてどうでもいいわ。

私は千影を愛した、ただそれだけ。

気づいた時、その想いは自分では止められないほど大きく膨れ上がり、そして私は彼女にその想いを告げていた。

後先なんか考えていなかった。
「姉」と「妹」だなんてこと、完全に頭から抜け落ちていた。
いえ、頭にはあったかもしれない……でも、どっちにしろ私が同じ行動をするだろう事は何故か理解していた。
なぜなら、彼女も私を愛しているだろう事に、確信めいたものを抱いていたからだ。
だからこそ、告白したのかもしれない。
想いを受け入れて貰えた時、至高の幸福感と同時に、こうなって当然だという不思議な「確信」は、確かに私の中に存在していたのだから……。






どうして強く彼女との繋がりを感じられるのか?
ずっと不思議だった。

ある日、彼女の方からその疑問の答えを聞かされた。
私と彼女の間には、もうひとつ強い、大きな絆が存在していたことを……。



 『私と君は…………前世では兄妹で…………そして、その時から…………私達は愛しあっていたんだ…………』



唐突に聞かされた彼女の言葉。
彼女の、そのなんら現実味のない話を聞いたとき、もちろん最初は驚いた。

でも、それだけだった……。
それ以上は何も感じず、寧ろ納得すらしている自分がそこに居た。

現実離れした、人によっては奇異の目でも見られそうな言葉に、「なんて素晴らしいのかしら!」なんて思ったほどだ。



前世からの絆。


遠い昔から、既に禁忌の壁をも超越していた絆。


私達に相応しい、強い強い絆。



それでも……



私は千影との絆に、大きな不安を抱かずにはいられなかった……。
























「ねぇ、千影……」


オープンカフェのテーブルの、私の正面のイスに座り、注文したコーヒーの味を味わっている最中の千影に話しかける。
今私達は俗に言う「デート」をしているところ。
もっとも、人目には友達同士のショッピングの途中や仲良し姉妹のお出かけくらいにしか見えていないと思うけど。


「…………なんだい?」


カップを口から離すと同時に短く一言、それだけの反応を返してくる。
そんな千影に、私は今までずっと聞きたがっていた質問をぶつける。


「昔の……前世での私は、一体どうやって貴女を愛したの?」


前世でも愛し合う関係だった私達。
しかし、私にはその前世の記憶とやらはない。
つまり話で聞いているだけで実感はないのだ。

私は、前世の千影のことを知らない自分を非常に悔しく感じている。
なぜなら、千影にはその「前世の記憶」とやらが残っているからだ。

私が千影の全てを知っているのはいいが、千影が私の知らない私を知っているのはなんとなく許せないのだ。
というより姉として悔しい。
つまらない意地かもしれないけど、大して歳が変わらないとはいえ「姉」が「妹」に負けるわけにもいかないもの!


「いつも言っているだろう…………?」


私の問いに、ため息混じりにそう言うと、続けてこう口を動かし始めた。


「「大切なのは今…………そしてこれからだ」」


しかし、その千影の言葉は、寸分のズレもなく私の声と同時に紡がれたのだった。
愛し合う私達は常に気持ちが通じ合っている……というほど、これはロマンチックなものではない。


「その台詞は聞き飽きたのよ……」


このやりとりは、既に何度も交わされた、機械的でワンパターンな行為と成り下がっているだけなのだ。
何度同じ質問をしても返ってくるのはその返事だけ。
だから私は、思考を先読みされ少しだけきょとんとしたような顔をする千影に対して、分かりやすいくらい呆れた態度をとって見せた。


「私だって言い飽きたさ…………」


千影も千影で、ため息混じりに呆れたように言い返す。


「貴女が教えてくれないからでしょ!?」
「別に…………知ったところで面白いことなんてないさ…………」


生まれ変わる時、それまでの人生での記憶を全て捨ててしまわなければならないことが、
例え摂理や定めだとしても、忘れてしまった事は私にとって屈辱にも等しいのだ。
普通なら元々そんな気にもならなかっただろうけど、目の前の少女は「例外」としてそこに存在している。

だからこそ悔しい!


「それに…………前世といっても、結局は別人。
 私は“今の君”を愛しているんだから…………無理に昔の自分を演じて…………君という存在を歪めて欲しくないんだ」


う……な、なかなか胸を打つ台詞じゃない……。
……って、いけないいけない!
嬉しくてちょっと説得させそうになったじゃない……。


「じゃあなんで私なのよ?」
「…………というと?」
「所詮は別人、なんでしょ?」


つまりは、彼女が昔愛した人は今は存在しないことになる。
まあ、既に亡くなっているのだから、居ないのは事実だけど……。
その辺は細かく考えるとこんがらがりそうなので、簡単に「千影の言い分では私は千影の想い人とは別の人間」という解釈で落ち着かせることにする。
そうなると、千影が私を愛する理由はないことになるのだ。
それが姉妹という間柄なら尚更。


「そうだな…………」


顎に手を当ててしばらく考えた後、小さく頷いてから話を切り出した。


「君の魂に魅かれた…………かな?」
「魂?」
「私の魂が、君の魂を求めている…………これじゃあ不十分かい?」
「…………」


「魂」なんて、私自身が自覚できない答えを出され、一瞬言葉を失った。
とにかく前世と現世の私の共通の魅力なんだろうけど……思い当たる節はあっても、それを自覚できない私にとっては、それは十分過ぎるほど不十分な答えだった。



「……いえ、そんなことないわ」


けど、どうも千影の方はこの話を話すつもりはないらしい。
だからとりあえずそう答えて、またこの話を切り上げることにした。
よっぽど面倒くさいのか、何度聞いても同じ回答を返して誤魔化してくる。
これ以上聞いても無駄だと、彼女の性格を熟知している私には嫌でも分かっていた。






で・も……






「だったら自分でやればいいだけの話よ、ね……


ボソリと千影の耳に届かないくらい小さな声で呟く。


「なにか言ったかい…………?」
「別に♪」


内に秘めた企みを誤魔化すかのように、ワザと目を逸らし、軽い口調で返す。
千影は、再びカップを口に運び、中の液体を一口飲んでから口を動かし始めた。


「まぁ、君が納得してないのは分かってるからね…………」
「あら、分かる?」
「でも安心してくれ…………今の君の美しさに魅かれていることも…………事実なのだからね」


最後にそんな嬉しいことを言って、不満でいっぱいだった私の心を打ち消してくれる。
私が千影の性格を理解しているように、千影もまた、私の性格を十分理解しているということなのだ。

ああっ、場所が場所じゃなかったら今すぐ抱きしめてキスしてあげたいわ……なんてね
























それから数日後、私は千影の家の前に来ていた。

館の門についているスイッチの指を伸ばし、家のチャイムを鳴らす。
すると電子的なチャイムの音の代わりにベルの音が鳴り響いた。
このちょっと不気味な館には丁度合っているかもしれない、なんて考えながらベルの音が響いているのを聞いていた。
しかし、チャイムを鳴らしてからしばらく待っても、中からの反応は一向にない。
といっても、この家の主が居ないのは既に知っていたりする。


「千影の行動は、既にチェック済みよ……」


今日、千影は家を空けている。
何かは知らないけど、とにかく夜まで家には帰らないそうだ。
つまり、この家には夜まで誰もいないということだ。
もっとも、保護者がいれば話は別だけど……今チャイムを鳴らしても何の反応もないってことは、やっぱり誰もいないってことよね……。


「……おじゃましま〜す」


誰もいないことを確認してから、こっそりと主の居ない家に進入。
一体なんのために主の居ない館にやってきたのか?
答えは簡単、彼女ではなく彼女の家の方に用が在るのだ。
そして、それは彼女に気づかれないよう、内緒で行なう必要があることでもあのだ。


「ちょ〜っとだけ泥棒まがいだけど……まぁ、私達は愛し合って居るんだから、問題ないわよね


将来一緒に暮らすつもり―――少なくとも私はそう考えている―――なんだから、今家の留守を預かっても問題ないわよね。
何より、家の鍵は千影から無理を言って作らせて貰った合鍵を使って開けたんだから。
寧ろ将来の練習に……なーんてね


「いやだわ も〜♥♥


あ、でも……だったら将来は千影の方が働くのかしら?
妹に頼るのはちょっとしゃくだわ……。
じゃあ、やっぱり私が働いて、千影には家庭を預かってもらうのがいいわね……。


「……でも働く千影もなかなか…………って、いけないいけない……!」


余計な雑念が入って、危うく目的を見失う所だったわ。












「やっぱり……泥棒まがいね……」


千影の家に入り、主に儀式やら実験とやらを行う部屋を物色しながら呟いた。

いくら恋人でも、これはちょっとだけ越権行為な気もするけど……これは私の目的を果たすためにはどうしても必要なことだから、
多少の罪悪感には目を瞑り、目的の物を探す手を再び動かし始めた。

私の目的、それは「過去の私」を知ること。
でもそれは5年や10年じゃない、私が生まれる前の……そう、私が知りたがっていた「前世の私」について。
といっても、前世の千影の日記を探してるわけじゃない。
なにより、前世のことが書かれた日記なんて、存在自体あんまり期待していない。


「あ、あった……。 ええっと、他には……」


探しているものは薬の材料。
あらかじめとってきたメモを頼りに、順当に必要な材料を揃い集めていった。
薬とは……もちろん私の記憶を呼び起こすための薬のことである。
そう、私の目的とは「前世の記憶を呼び起こす薬」の制作なのだ。






知ったきっかけは偶然だった。

千影がこんなにも入れ込んでいるオカルトの類が一体どういうものか少しだけ興味を抱いて、私も少しだけ知ろう思ったことがあったのだ。
そこで、千影の持っている本を見せて貰うことにしたのだけど……
大半が一体どこの世界の文字なのか分からないもので、しかも日本語のものが無いと来たもんだから一瞬諦めようかとも思ったけど……。

とりあえずその場は「彼女への想いはその程度だったのか?」と自分に言い聞かし、最もポピュラーな言語である英語で書かれたものを読むことにした。
英語なら学校の授業でもやっているし、特に苦手ではないから、手間はかかるけど軽くならなんとか読むことはできた。
でも、内容は私の理解を超えたものばかりで、やっぱり何がいいのか理解できず2、3ページざっと読んだところで読むのをやめようかと思った。

そこでふと、私の前世の記憶を呼び起こせはしないかと思い、最後にダメ元で目次や索引を調べてみた。
すると、英語ではあったものの、その本には確かに「前世の記憶を呼び起こす薬」の存在が記されていたのだった。

今までずっと知りたかったことを、とうとう知ることができる、その感激のあまり、思わずガッツポーズをとるところだった。
とりあず、近くにいた千影にそのことがバレてしまってはマズいだろうと思い、それは心の中だけに留めておいたけど……。
意外に思われるかも知れないけど、私は千影の魔術の類や特別な力などを信じている。
なんせ何度も目の前で実際に見せられて居るんだから、信じない方が無理って話……。

とにかく、その瞬間から、私の「前世の記憶を呼び起こす薬」の製作は始まったのだった。

まずは薬の製作に関する部分の完璧な和訳。
当たり前の話だけど、作り方が分からなければ話にならない。
それに、薬とは下手をすれば命にも関わりかねない危険なもの、その副作用で一体どんな弊害が生まれるか分かったものではない。
だからそこら辺をきちんと調べ、安全に事を運べるようなら薬を作り、そして前世の記憶を呼び起こすことにしたのだ。
自分の家でじっくりとその部分の和訳を行うため、まずは千影からその本を借り、家に持ち帰った。
ちなみに、確か借りる時は「貴女のことをもっと知りたいから、まずは貴女の興味を持っていることを知りたいの」なんて千影に言ってたと思う。

まぁ、満更嘘でもないし……。

その日から、少しずつ少しずつ、英語の辞書を片手に時間をかけて和訳していき、そしてついこの間、
とうとう薬を製作する部分の和訳をやっと終えることができたのだ。
その結果、薬には特に目立った副作用もなくそれ自体が毒であることもないため、
安全に事を運べることを確認した私は、薬の製作に取り掛かることを決意したのだ。

本当は、早速その場で作ってしまいたかったのだけど……あいにく製作に必要な材料はそこら辺で手に入れられないようなものばかり……。
だから材料が揃っていると思われる千影の家で薬を作ることにしたのだ。






「よし、全部揃ってるわ!」


思ったとおり、千影の家にあるもので、必要な材料は全て揃った。
私は意気揚々と薬の製作に取り掛かったのだった。
























「へぇ……意外と簡単に作れたわね……」


透明な小瓶の口を指で摘み、右に左に傾けて、中に入った妙に色鮮やかな液体が揺れるのを眺める。
材料を考えると、どうしてこんな色になるのか少し不思議に思えるほど鮮やかだった。


「もうっ、こんなに簡単に作れるならパッと作ってくれれば良いのに……!」


一応恋人同士なんだから、少しは私に尽くしてくれたっていいのに……!
主導権でも握りたかったのかしら……?
前世の記憶をネタに、千影が私を言いなりにさせる……。

…………。

私も私で知ることができるなら言いなりになっても構わないなんて考えているから、ちょっとヤバい……。
それとも、あの千影を言いなりにさせられるほど、前世では恥ずかしい目にあわせていたりするのかしら……?


「とにかく、これを飲めば知ることができる……過去の私を……―――」


そう口にしたところで、不意に千影の言葉を思い出した。



 『私は“今の君”を愛しているんだから…………無理に昔の自分を演じて…………君という存在を歪めて欲しくないんだ』



「…………」


“今の私”を愛しているという千影の言い分も分からないわけではない。


「……でも…………でも……っ!」


貴女を愛すれば愛するほど、もっと貴女を知りたくなる。
いいえ、愛するからこそ、その心を知りたいと望んでしまう……。


 私は彼女に愛されているか?


 愛しているのは私だけではないのか?


それが不安になる……。

私は、独りよがりの恋なんていらない。
一方通行の想いなんて望まない。
相手も想ってこその恋愛。
私ひとりが愛していても、それは恋愛ではないのだから……。

千影との想いに、確信はあるはずなのに、その不安はいつも消えない……。


だって、私達は「同性」で……そして「姉妹」なのだから……。


本来、恋愛感情など抱くはずもない関係。
恋愛感情など在り得ない関係とも言い切れるだろう。
その繋がりはとても脆く、儚く、今にも消えてしまいそうなほどに思えてならない……。


「信じてるってのに……矛盾してるわね……」


自嘲気味にポツリ呟く。


「弱いわね……私って……」


姉として、彼女よりも上の人間としての、つまらない意地かもしれないけど……
そんな「弱い私」は、見せたくないから……。





「あーっ、なに弱気になっているのよ! もっとポジティブに考えましょっ!」


言葉にして自分に言い聞かせた。
そうよ、もっと前向きに考えなくちゃ!


「これはただ、過去の出来事を知るだけなのよ。 私は私……変わらないわ……」


過去の出来事を知るだけ、過去を「知識」として得るだけ。
私がその人間になるわけじゃない。


「そ・れ・に……普段ポーカーフェイスなあの子がビックリして目を丸くする様子なんて、そうそう見れるもんでもないしね


こっそり、前世での口説き方を聞かせて驚かせるのもいいかもしれない。
千影の「なんでそれを!?」なんて、驚く顔が目に見えるよう。
前世のことなんて知らないフリして、偶然を装いながら何度も何度も千影をビックリさせる。
そしてある程度驚かせたら、本当のことを話せばいい。

それでも、変わらぬ“今の私”が、ちゃんと居ることを示せばいい。


「さあ……弱気な時間は終わりよ!」


そう自分に呟いて、口のところを指で摘むだけだった小瓶を、手のひら全体で胴体部分をしっかり掴むように持ち替える。
顔の正面に小瓶を持ってきて、そして中の鮮やかな色の液体を見据えた。

本には少しずつ飲むように書かれていた。
なんでも薬の量に比例して効果も多少強まるからだそうだ。
一気に飲むと昔の記憶がいっぺんに頭の中から沸き出て来るため、記憶の混乱を引き起こしかねないから……らしい。

確かに人生1回分の情報量が頭の中に情報が一気に流れ込みでもしたら、
それこそ頭の中身がパンクしてしまいそう……。

でも……


「そんなじれったいコト、してられないわよね……」


ちょっと頭が混乱するかもしれないけど、別に大量に飲むと毒に変わるわけでもないし、
たったそれだけで今すぐに全てを知ることができるんだから。
そして、私達の絆はより強固なものへと変わるはず。
だって私には、2度の人生に渡り愛し合った絆と、その記憶が手に入るんだから。






私は、躊躇なく小瓶の液体を全て飲み干した。
























効果が現れたのは、それからすぐの事だった。
薬を口に含んでからしばらく経つと、頭の中にイメージがどんどん沸いてくるようになった。


「この景色……初めて見るはずなのに、私、知ってる……」


どうやら薬は成功したみたい。
記憶は断片的に、しかもランダムに蘇ってくる。
私は目を瞑って、そのイメージが頭の中に流れる様子をじっくりと楽しんでいた。


「へぇ……これが、昔の千影……」


蘇った記憶から、ある少女の姿が浮かび上がった。
私に微笑みかかけてくる少女、その姿は確かに千影とは別人だった。
でも、姿形は違っていても、それが千影であると私には理解できた。

うまく説明できないけど……なんていうか、外見は今とは違っていても、とても似たような魅力、雰囲気をかもし出している……。

その姿はとても美しく、思わず見惚れてしまうほどだった……。


「い、いけないわ……! 私には“今の千影”がいるのよ! いくら綺麗だからって、今の千影以外の人間に見惚れちゃうなんてっ!」


……これって、浮気になるのかしら?


なんてちょっとした疑問を抱えながらも、記憶の映像は流れ続けていた。
次はどんな記憶が蘇るのかしら?
そうわくわくしていた私。






だけど……






「……っ!?」


次の記憶が蘇った瞬間、私は目を疑った。
目で見ているわけじゃないから、この表現は間違ってるかもしれない。
とにかく、信じられない映像が頭の中に浮かび上がってきたのだ。


「なん…………っ!?」


言葉が詰まった。

瞑っていた目を見開いて、驚きのあまり、動けなくなってしまった。
それでも記憶はそんな私の気持ちもお構いなしに、留まることなく流れ続ける。

そこに浮かび上がった映像は、


昔の千影の……傷だらけの姿……。






訳が分からなかった。
なんでこんなことになっているのか、きちんとした順序も踏まず現れた記憶を見せ付けられ、
理解することもままならないまま、私は言葉を失った。


石造りのレンガの部屋で、少女の体は傷だらけで、台の上に横たわっていた。
そこは地下なのか、数本のロウソクに灯された明かりだけが、その部屋の光の全てだった……。

千影の胸がゆっくりと上下していることから、まだ息をしているということは確認できた。



……でも、次の瞬間―――



「ッ!?!!」


千影の体に……前世の千影の体に……無慈悲にナイフのような刃が突き立てられた……。

ナイフにより切り刻まれる少女の肉体。
痛みで激しい叫び声をあげる千影。
思わず顔を背け、目を瞑るけれども、これは記憶の映像。
そんな行為は当たり前のように無意味に終わり、私はその映像を鮮明に脳裏に焼き付けられた。



……そしてその記憶は、そこで一旦途切れた。






「なんでっ……!?」


一旦詰まった言葉を、そこでようやく口にすることができた。

今も頭の中に記憶の映像は流れ続けている。
何の当たり障りもない食事風景から、どこかにふたりで遊びに行く姿。
そんな何気ない日常が繰り広げられていた。

しかし、私の脳裏には、何者かに切り刻まれた前世の千影の姿だけが、こびりついて離れずにいた。



そして……


「……っ!!!」


再び、あの傷だらけの千影の姿が、私の頭に流れ始めた。
今一度、狂気の込められた刃が少女の体を切り刻み始める。


「い……いや……」


しばらく経つとその映像は消え、また当たり障りの無い日常が繰り広げられた……。
そして、三度、四度、五度と……休憩を挟むように日常の絵を織り交ぜながら、その映像は何度も何度も繰り返しやってきた。


「見たく……ない…………見たくないっ……!」


とめどなく湧き上がる過去の記憶を止めようと、手で頭を強く押さえつけた。
けど、そんなことは無駄にしかならない。
全開にした蛇口から流れ出る水のように、前世の記憶は留まることなく溢れ出てくる。



その奥に潜んでいた、汚物とともに……。


「見たくない! 見たくないッ!! やめてぇッ!」


繰り返しやって来る惨劇を見るに耐えられなくなり、届かぬ訴えを口にしていた。

姿形は違っても、あれは千影なのよ!
私には分かる……だからこそ余計に苦しい……!


「誰だか知らないけど、もうこれ以上千影を傷つけないでぇッ!!!」



前世の千影が……



いえ、愛する人が……



腕から、



足から、



少しずつ、



少しずつ……




ああ……―――



「やめてぇーーーーッッ!!!!」



 ―――愛シタ人ガ壊サレテイク……。












「やめ、て…………お願い……だから……」


その場に崩れ落ち、ボロボロと涙を零しながら、絞り出すように制止の声を上げ続けた……。
それでも、湧き出る惨劇の記憶は止まらない。


「お願い……だからっ……!」



もうなんでもいい……この傷だらけの少女を助けてあげたかった……。

だけど私のそんな願いは通じはしない……これは過去の記憶、既に起こった事実なんだ。
既に起こってしまった出来事は変えられない……。
でも、そんな叫び声が無駄だと分かっても、止まるように願わずにはいられなかった……。


「もうっ…………もうっ……見たく―――」






 ―――……え?






「過去に起こった出来事の…………“記憶”?」



不意によぎった謎。
頭の中で繰り広げられる惨劇にばかり目が行って、単純なことに気がつかなかった。



「なんで……知っているの……?」



 ならばどうして、“私にこの記憶がある”?



「どうして……止めないの……?」



 どうして私は、愛する人が傷つくのを“黙って見ている”?




私にこの記憶があるということは、その情景を前世で見ていたということだ。
目を背けず、傷ついていく千影の姿を、何度も、何度も……


「愛し合っていたんじゃないのっ!?」






でも、そんな疑問はすぐに明かされた。



それは最も残酷で、最悪としかいえない答えが……。






「ひっ……!!」


手に、肉の切り裂かれる感触が伝わって……その恐怖に声を漏らした……。


「なん……で?」


私が……切り裂いているの?

黙って見ているんじゃあない……私が切り裂いている?!


「なんで……なんでなの!?」


どうして私は愛する人を傷つけているの!?


どうして……どうしてそんなこと……




どうして私は……


千影が傷ついて、苦しんでいる姿に……






「いやぁぁぁぁあああっ!!」






 …………悦びを感じているの?
























薬自体は毒ではない……
過去の記憶自体が……猛毒だったんだ……。












 流れ出る記憶は、私に全てを物語り始めた。






 前世の私は、医学の道を歩んでいた。
 だから、どうすれば死ぬか、どうすれば生かせるのか知っていた。


 どうすれば、殺さずに傷つけられるかも……。



「やめて…………やめてぇっ!!」



 前世の私は異常者だった。


 何かを傷つけ、
 壊し、
 苦しみもがく姿から快楽を得る……

 狂った思考の持ち主だった……。



「やめて、やめて! やめてやめてやめてぇっ!!」



 最初はカエルの解剖から、
 そのうち猫や犬などの小動物、
 だんだんもっと大きく、
 もっと痛みに喘ぐ姿を渇望していくようになり、


 最終的には……人。



「やめてっ! 止まってっ! 見せないでッ! 思い出させないでぇッ!!」



 肉の切り裂かれる感触が、堪らなく気持ち良い……。

 だから医学の道に進んだ……合法的に人を切り刻める……。



「嫌……嫌ぁ……」



 その狂った快楽の終着点は……



 最愛の人の肉だった。



「嫌ぁっ! 見たくないッ!! 知りたくないッ!! 思い出したくないッ!!」



 愛する人が傷ついて、

 悲鳴を上げ、

 苦しみ、

 もがく様が、


 何ものにも変えがたい、愉悦だった……。



「やめてやめてやめてやめてやめてヤメテやめてヤメテヤメテヤメテやめて!!!」



 それでも私に向かって微笑む前世の千影。

 とても暑い日と言うのに、彼女はいつも長袖の服を着て過ごしていた。
 その衣服の下には、無数の傷跡が隠されている事を知っている。

 そうでないと、腕にまで切り刻まれた傷痕を隠せないから。



「お願いだからもうやめてぇぇぇぇぇえぇえええっ!!」



壊れたように静止の言葉を、繰り返し、繰り返し叫び続ける。
頭を押さえつけていた手は、いつの間にか足掻くように頭を掻き毟っていた。

そしてそれら全てが無駄に終わり、


記憶の中の惨劇は、私に狂った快楽を味あわせ続けた……。






 その日、千影の左手は自由を失った。


―――私が奪ったんだ……



「い……や……」



 その日、千影の片方の目は、光を失った。


―――私が奪ったんだ……



「もう…………もう……」



 その日、千影の足は―――



「もう見たくなんかないッッ!!」



 その日―――



「―――!!!!」



       ―――私が愛用していた、ナイフが―――



   ―――深々と―――




          ―――胸を貫いた……。






 「                  」






足掻くように頭を掻き毟った弾みで、結んでいた髪の片方が解けて、舞った。






 それは、悲鳴なんて綺麗なものじゃない。


 「叫び」なんて言葉で収められるほど、穏やかなものじゃない。


 言葉に形作れないほど、醜く、歪んだ、崩れた奇声を叫んで、




「咲耶くんっ…………!」




 愛する人の腕の中に、私は倒れた……。
























チクタク、チクタクと、目が覚めるとそんな時計の音が耳に入ってきた。


「目が…………覚めたかい?」


この家の主、聞き違えるはずのない、最愛の人の声。
でも、彼女は今ここにいないはず……だけど、気を失う前感じたあの声と温もりは……確かに千影のものだった……。
疑問を抱きながらも、声のした方向に目を向けると、やはりそこにあったのは私を抱き留めてくれたその人の姿だった。


「なん……で……?」


今、ここにいるはずのない人間を目の当りにして、驚きを隠せない私。
思わず零れ出た私の短い疑問に、千影は静かに「何でだろうね…………?」と呟き返した。


「……ただ、君になにかあった…………そう感じて…………
 そしたら思わず、何もかも放っぽり出して…………ここに戻ってきてしまったんだ。
 そうしたら案の定…………」


千影は、私に何かあったということを感じ取って、そして来てくれた……?
私の……ために……?

私なんかの……ために……?


「大丈夫…………なのかい?」


心配した顔のまま、私をなだめるように撫でようと、私の頬に手を差し伸べる。
私は、その差し伸べられた手を、


「触らないでっ!!」


思いっきり振り解いた……。


「……ッ!!?」


手を弾かれ、驚きを隠せない彼女を他所に、少しでも彼女から距離をとろうとベッドの上で後退る。
壁に背が当たり、その拍子に解けた片方の髪が顔半分に覆い被さった。
それ以上後ろに下がれなくなって尚も距離をとろうともがく。


「咲耶く……」
「私に近寄らないでっ!!」


私の名前を呼ぼうとする声を、まるで押しのけるように大声で叫んだ。

身体の震えが止まらない……。



「知って……いたから……なんでしょ……?」



怖い……。



「だから……教えようとしなかったんでしょ?」



何よりも、



「昔の私がどんな人間か! 分かっていたから! だからっ!!」



愛した貴女を、傷つけてしまいそうな自分が……。



「…………ああ」


私の悲鳴のような問いに、千影は短くそう答えた。


「笑ってた! 私、貴女がボロボロになっていく姿を、笑って……喜んで……」


愛する人が徐々に徐々に弱っていく姿、
最愛の人の、肉の切り裂かれる感触、
痛みに泣き叫ぶ姿、
苦痛に顔を歪める様、

それら全てが、異常なほど甘美な美酒のようだった……。


「今この手には、貴女を切り刻んだ感触が……今も残ってる…………蘇ってるの……。 その時、私が感じてた感情も!!」


言葉にしたくなかった……それが「歓喜」であったことを。
言葉にして、認めたくなかった、受け入れたくなかった……。






こんなこと、知りたくなんてなかった。

違う……知りたいと望んだのは私だ……。

知っていれば、知ろうとなんてしなかった……
でも、知らないからこそ、知ろうとしてしまった……

何を勘違いしていたんだろう?
「前世からの恋」、そんな甘い言葉に騙されてこんなこと……。
何のために千影が私に話さなかったのか、そんなこと微塵も考えもしないで……
最高のラブロマンスが隠されているとでも思い上がっていたのかしら?

実際にそこにあったものは、残酷で、異常で、えげつない、狂った残光だった……。


「……っ?!」


不意に、顔半分を覆っていた髪が横に掻き分けられ、そのまま、暖かい温もりが私の体を包み込んだ。
それが、最愛の人の腕のだということに気づいたのは、すぐ後のことだった。


「い、いやぁっ!!」


私は彼女の腕を振り解こうと、必死で暴れた。
しかし、私の体を抱きしめるその腕に込められた力は、とても強く、私の体を捉えて離そうとはしなかった。


「は、離して! 離してぇっ!!」
「嫌だ…………!」


私の要求を拒否した。
短くて、声も静かだった……けど、はっきりと力強く、私を決して離しはしないという意志が込められた言葉だった。
……それでも、私は一刻も早く千影を私から遠ざけたかった。


「私は貴女を傷つけた! 覚えているのよ! 思い出したのよ!」


私に貴女に愛される資格なんてない……。
あれほど残忍に、自らのエゴのために、貴女を踏み躙ったというのに……

どうして離してくれないの?

どうして私を愛し続けられるの?


「怖いの……自分がどうしようもなく怖いのッ!!」


嫌われた方がどれほどましだったのだろう。
そうすれば、これ以上貴女を傷つけることはないから……。


「“今の君”はそうじゃないんだろう!!」
「……っ!!!」


普段、物静かな彼女からは想像もできないくらい、強く大きい声で言い放つ。
そして続けて私に問い返してきた。


「どうして自分が怖いんだ…………?」
「そ、れは……―――」


なにがこんなに私を怯えさせるのか……

その答えは……


「貴女を…………傷つけたく、ないから……」


私の中にある正直な気持ちを言葉にしたのと同時に、一筋の涙が私の頬を伝った。

傷つけることで喜びを得ていた私が、
傷つけることを何よりも恐れている……。

その矛盾に、私はハッと気がついた。


「過去の自分と、今の自分は…………全くの別人なんだ…………その感性すら違う…………」


私は……貴女が傷つくことが、何よりも怖い……。
最愛の人が傷つく姿を……私は、見たくはない……!

私は…………“今の私”は……傷つけることなんて、これっぽっちも望んでいなかった……。

変わらぬ私が、そこに存在していた……。


そのことに気がついた時、頬を流れていた一筋の涙は、滝のような涙へと変わっていた……。


「私自身だってそうなんだ…………君だって…………そうに、決まってる……!」


そして、千影は更に語り続けた……。


「前世の君は…………確かに狂っていたさ…………。 でも、私も狂っていたんだ…………」


過去の自分を……私に切り刻まれていた、傷だらけの少女の記憶を……。


「愛する人の喜ぶ姿を見れれば…………それだけで満足だなんて…………そんな感情じゃない……!」


私を抱きしめている腕が、震えていた……。


「確かに始まりはそうだったかもしれない…………でも、私も……君に切り刻まれて…………確かに喜んでいたんだ…………!」


私に語り続ける声も、同じように震えていた……。


「それでも、私は怖いんだ………!」


すぐ真横にある彼女の顔に、一筋の水滴が流れていた。


「どうしようもなく怖い…………最愛の人に、傷つけられるのが…………。
 前世ではあんなにも望んでいたと言うのに…………」


私と同じく……いえ、それ以上の、悲痛な叫びを訴えていた。


「もう一度君に切り刻まれるのは、どうしようもなく怖いんだっ!!」


私だけではなかった……。
彼女もまた、私と同じ、狂った過去を背負っていたんだ……。

そして……それを忘れることなく覚え続けて、今まで生きてきた……。
忘れてしまった私と違い、今までずっと、誰にも頼ることもできず、ひとりで背負って……。


「貴女も……辛かったのね……」


自分の体重を支えていた腕を伸ばし、千影の体に回して、私も抱き返した。
腕だけではなくその体全体が震えていることを、私の腕からも伝わってくる。

気がつくと、励まされているはずの私が、逆に千影を励ましていた。






狂った過去を背負ったまま、正常な感覚で生きていた。
それはどんな感じなのだろう……?

それは誰にも知ることは出来ない……。

……いえ、私には分かる……これから嫌でも知れる……。
もう、パンドラの箱は開けられてしまったのだから。






「でも…………最後の記憶も残っているから…………最後に…………君が目覚めてくれた記憶が……」



それは、パンドラの箱に残された……小さな希望……。


最後の最後に、私は手に持ったナイフを……いつも最愛の人を傷つけていた刃を振りかぶると……


それを、自らの胸に突き立てていた……。




それが前世での私の……最期の記憶……。




「君は…………あれ以上私を傷つけたくなかったんだろう?」
「ええ……」


 切り刻んで、 喜んで、

 そんな自分が、どうしようもなく悲しくて……


 その手を止めたいのに、それでもやめられなくて……

 止められない、

 止めたくない、


 傷つけたい、

 傷つけたくない、


「見たくなかったの……これ以上あなたが傷つくのも、そのことに喜んでいる自分も……」



 正反対の欲求を持ちながら、いつも崩壊への選択を取り続けていた……。



「何もかもが、消し去りたかった……だから……―――」



 だから、私は……全てを終わらせた……。



「そうか…………やっぱりそうだったんだ…………。 私の思い込みなんかじゃなかったんだ…………。
 前世の君は…………確かに私を愛してくれたことは…………」



 その苦悩も、その決断も、今は記憶として蘇っている……。



「信じていた…………けど、君の口から聞けて…………心から嬉しい」
「千影ぇ……!」


名前を呼んで、抱きしめている腕に力を込めて、より強く抱きしめた。






「私、もう二度とあなたを傷つけないから……」
「君が私を傷つけたことなんて一度もないさ…………あれは、今の君じゃないんだ…………」



 私も、貴女と同じになった……


 貴女の辛さを知る事ができる……。



「でも、私の罪だから……償わせて……」
「だったら…………これからも愛してくれ…………君なりの愛情で…………」



 想像していたのとは違っていたけど、

 でも、私が欲しかったものはしっかりと手に入れられたんだ……。



「ええ……」



 もう、貴女を傷つけない……。


 前世とは正反対の愛情で、貴女を包み込みたい……。


 それが、今の私の愛し方だから……。






 


あとがき

この話が、まさか元々は鞠絵×千影のネタだったなんて、誰が予想できるでしょうか(苦笑
まぁその元ネタとは大きく違うものに仕上がっていますが……。

話の性質上千影は外せないとして、その相手を咲耶にしたのは、
元ネタにあった「狂った前世」を使って、
「忘れた前世を自ら思い出して後悔する」という展開を繰り広げるにあたり、
相手との絆を強めようと望む咲耶が最も適任と感じたからです。

相手に近づけば近づくほど不安になり、だからより近づこうとする。
咲耶はそんなキャラクターだと思っています。
この作品を仕上げるにあたって、特にその部分を重点的に仕上げたつもりです。

しかし、いざ出来上がってみると所々イメージ通りに上手くいかなかった感が強いです(汗

咲耶がひとりで行動することが多いことが原因でしょうが、
台詞が少なくて説明的なものばかりごちゃごちゃ詰め込んで、
分かりにくくなってしまった気がするのが、ちょっと残念です……。

また、咲耶が千影のどういうところに魅かれたのか、
その点が上手く想像できなかったので、上手く誤魔化しました(苦笑
個人的にその部分が特に心残りです……。

他にも、あげようと思えばまだまだ出せますが、
とりあえず、咲耶の内面的な弱さを描けていれば良しとしましょう。
……描けていなかったら結局ダメダメだけど(大汗

最後に、お兄様、兄くんの方々、前世で酷い目に遭わせて申し訳ありませんでした……。


更新履歴

H16・6/28:完成
H16・11/2:修正


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