「これで良し……」

 とある平日の夕暮れ、私は咲耶くんの家の裏である作業をしていた。

「フフフ…………あとは……」

 赤いポリタンクに入った臭いのある液体を、咲耶くんの家にまき終えた私は、マッチ箱からマッチを一本取り出し、それに火を点けた。

「もうすぐ会えるよ…………ひな―――へぶァッ!!

 その瞬間、私の顔面をツインテールの12人姉妹の長女がドロップキックをかました様な激しい衝撃が襲った。

「何やってるこの居候っ!!」

 その衝撃を与えた者は、この家の娘であり、私にとって姉でもある咲耶と言う名の少女だった。
 彼女は、長いツインテールを風で微かに揺らしながら、両手を腰に当て、蹴られた衝撃で倒れた私を見下していた。

「何って…………この家が私の家のように火事になったら…………私の住むところがなくなるから…………、今度こそ雛子くんの家に―――」
「打ち貫くわよ」

 今やろうとしたことをちゃんと説明していると言うのに、咲耶くんは私の言葉を途中で遮るようにそう言い放った。
 ちなみに、どこから持ってきたのか、咲耶くんはゴツイ杭打ち機を右手に持って構えていた。

「冗談は…………よしてくれ…………。それと…………その右手に持ってるモノも…………引っ込めてくれ」
「ったく……そんな事よりアンタに手紙よ」

 ゴツイ杭打ち機を引っ込めて、代わりに手紙を差し出す。

「手紙…………? …………一体どうして?」

 実は、私は今、咲耶くん家に居候させてもらっている身なのだ。(←なのに放火しようとした身)
 だから私宛に手紙が来るなんて事はまずないはずなんだが……。

「まったく、この手紙をアンタに渡そうとして探してて正解だったわ……」

 額に手を当てひどく疲れた様子で、ため息を吐きながらそう言った。

「どうせ…………間違いか何かだろう? 棄ててしまえば……」
「雛子ちゃんから―――」


    バッ


「―――よ」
「どれどれ……」
「……み、見えなかった……」

 私は素早く咲耶くんの手から手紙を受け取ると(注・正確には"奪い取ると"です)
 早速マイスィートラヴァーの雛子くんからの手紙を読み始めた。

「まったく、アンタは雛子ちゃんの事になると性格変わるんだから……」
「フッ…………私と雛子くんは…………前世からの恋人同士だからね…………」

 "雛子"とは、私にとって妹であり、そして……私にとって最愛の人間である。
 妹に対しそう言う感情を抱いている、そう、私の想いは禁じられたものだ……。
 ……でも、私はこの想いを抑えるつもりなどない。

 彼女のあの純粋無垢の笑顔、
 柔らかく弾力のある肌、
 まだ発達すらしていない平らな胸と、
 その幼さゆえの艶かしい肢体……、
 ハァハァ…………ひ、ヒナたんっ!(←人格に問題あり)

「…………」

 などと私が愛しい愛しい雛子くんについて純粋な(?)考えをはべらせている横で、咲耶くんは私に疑いの眼差しを向けていた。

「なんだい…………その目は…………?」
「またいつもの妄想ね……って思ってたのよ」
「信じる信じないは…………君の自由さ…………」
「じゃあ信じない」
「何で信じねェンだよぉっ!!」(←千影)
「信じる信じないは自由じゃなかったの?」












 

千影おねえたまの狂った日常

−そのに 遊園地のらぷそでぃ−














 私は愛しい愛しい雛子くんからの手紙を広げ、その内容を読んでみる事にした。

「『こんにさは、私の愛する世界でただひとりの千影さゃん』」
「声に出して読まない! あと自分勝手な妄想つけ加えない! それと"こんにさわ"とか"千影さゃん"って何!?」
「いや…………そう書いているんだ……」

 そう言って私は咲耶くんに雛子くんからの手紙を見せた。

「あらほんと、雛子ちゃん、字間違えてるわ」
「…………だろ?」
「それとアンタも読み方間違えてるわ」



  正しい文:こんにさは千かげさゃん



「あー、この手紙の"ち"と"さ"全部入れ替わってるわね。しかも句読点もないし」

 フフッ……雛子くんの子供らしい可愛い間違いだな…………ポ←注・千影(って言うか何故?)

「仕方ないな…………脳内で正しく変換して読むか……」
「アンタははじめから自分勝手な内容に変換して読むつもりでしょ!」
「『こんにちは、私の愛する世界でただひとりの運命の人、千影ちゃん』」
「声に出して読むな! あと何気に妄想を強化しない!」
「『実は、ヒナは遊園地のチケットをもらいました……くししし』」
「キモいから雛子ちゃんの笑い方の真似しないで」
「『二人分なんです。今度の日曜日までなの。
  でもね、今度の土曜日も日曜日も、ママは都合が悪くてヒナと遊園地にいけません』なんて最低の親だッ!!」
「いや、人それぞれ事情ってもんがあるでしょ……」
「『それでママがね、だったらおねえたまの誰かを誘って一緒に行ってもらいなさいって言うの。
  だからね、ヒナ、千影ちゃんを誘う事にしたの』」

 …………。

 …………え?
 つまりこの手紙は、私を遊園地に誘ってくれるも・・の……で……・

「「なにィーーーーーッッ!!」」

 咲耶くんと同時に驚いた。

「ヒナたんママ、あんたは最高だッ!!」
「アンタ、さっきと言ってる事が違うでしょ!!」

 涙を滝の如く流し、拳を握り締めて、夕日に向かいこの感動を叫ぶ。

「うっわぁ〜〜い! 雛子くんからのデートのお誘いだぁっ
「明らかにキャラが違うわよっ!!」

 喜びのあまり、キャラが変わる。

「雛子ちゃん、何も知らないから…………なんでよりによってこいつなのよ……」
「こいつ、とは…………酷いじゃないか」
「あ、戻った」
「これは…………雛子くんからのお誘いだ…………。だから…………断る訳にはいかないだろう?」

 フフフ……、と微かに笑いながら優越感に浸りつつ、咲耶くんを見下ろす。

 咲耶くんは、私と雛子くんが愛しあっていると言うのにその絆を引き裂こうと何度も何度も邪魔をしてくる。
 私と雛子くんは前世からの恋人同士だというのに!!

「はぁ……仕方ないわね」

 フッ……しかし、今回はどうやら私の勝利―――

「私もその遊園地に付き合うわ」
なに言ってんだこのド畜生!!」(←千影)
「このまま雛子ちゃんがアンタの毒牙に掛かるの黙って見過ごす訳には行かないでしょ!!」

 い、いけない……このままではツインテール総帥(咲耶の事)に、私達の愛のランデブーを邪魔されてしまう……!
 くっ……仕方あるまい……。

「咲耶くん…………」
「なによ!」
「ここに…………映画のチケットが…………2枚あるんだが…………」
「それがどうしたって言うのよ!」
「これを君にあげよう」

 本当は、雛子くんとふたりっきりで見に行こうと思って持っていたんだ。
 くそっ……できればこれを使って2週連続デートに、いや2日連続デートにしたかったんだが……、
 雛子くんからのお誘いを断るくらいなら、背に腹は変えられない。

「だから…………私達のデートを邪魔しないでくれ!」
「断わ―――」
「『可憐、咲耶ちゃんとふたりっきりで映画館にデートに行きたいなぁ』」(←千影)
「了承っ!!」







「あ〜、私のバカバカバカ……」

 地面に突っ伏してそう何度も自分を責めていた。
 フッ……愛のために素直になることは、別に恥ずかしい事じゃないさ……。(←アンタは少し羞恥心を持った方がいい)

「でもね雛子ちゃん、私と可憐のためなの。だから心置きなく犠牲になってね」

 …………。

 ……咲耶くんも意外と自分勝手なんだな……。

























 土曜日、私は雛子くんの家に向かって歩いていた。
 普段の3倍の速度で。(←つまり走っている)

 あの後、雛子くんに連絡をして、今日遊園地に行こうと改めて約束をしたんだ。
 何故土曜日かと言うと、日曜日まで待てなかったからだ。

「着いた…………」

 歩いている途中から既に高鳴りはじめていた私の胸は、雛子くんの家に着く頃には信じられないほど速く波打ち、
 顔は熱を帯びているのが分かるほど火照り、そして息は乱れ、全身から汗はだらだら……。(←走って疲れただけ)

 とにかく、私は呼吸を整え、雛子くんの家のチャイムを鳴らした。

「は〜〜〜い」

 可愛らしく、愛らしい、絶世の美声と共にドアが開く。(←妄想)

「あ、千影ちゃんだ

 あ、雛子くんだ(←千影)










 雛子くんの母上は玄関で私に軽く挨拶を交わすと、今日は雛子くんを宜しく頼むと雛子くんを私に任せてくれた。

 ンもう、今日だけと言わずに一生任せてくれても良いのにぃ♥♥(←千影)

「おなか〜♪ おなか〜♪ O・N・A・K・A・おなか♪」
「千影ちゃんの歌い方……なんかヘンだよぉ……」

 今は雛子くんと手を繋いで、『おなかの歌 −PARAPARA REMIX−』を(ひとりで)歌いながら遊園地へと足を向けて歩いていた。
 (備考=『おなかの歌 −PARAPARA Remix−』 作詞・作曲:雛子 編曲・歌:千影 脳内アルバム『HINAKO』のトラック14
  オリジナルはシスプリ2で雛子が歌っていたもの)

 雛子くんのママン(←"母上"じゃないのか?)は、私のことをとても頼りにしてくれているみたいで、
 まるで白い目で見るかのような視線で私に雛子くんを任せてくれた。
 (↑疲れ果てて息を乱しまくってる千影に雛子を任せて良いのか?と言う心配の視線です)
 フフ……いつの世も、優れた者とは差別されるべき存在だから仕方ないか。(←何でも都合良く考える)

「あのねあのね……千影ちゃん、実はね……」
「なんだい?」

 もじもじするような仕草で、私をその宝石のような瞳で見上げる雛子くん。

 ああン、もうっ、可愛い 雛子くん、ラブよ♥♥(←千影)

「……やっぱり内緒
「気になるじゃないか……」
「くししし……、それはね、着いてからのお楽しみだよ

 雛子くんは、"何か"で私をビックリさせて喜ばせてくれるようだ。
 これは、一体何が来るのか……楽しみだね……。
























「や」

 遊園地の入り口前でショートボブの髪型にゴーグルを装着した女が、手を挙げて私達に向かって短く声を出していた。

…………何故貴様がここに居る?
「……千影ちゃんその顔怖い」

 そこあるのは、間違いなく金喰妖怪マシンナリー・ショタ(鈴凛の事)の姿だった。

「くししし…… 千影ちゃん驚いた?」
「ああ…………」

 もう、ガッカリするくらい。

「今日は鈴凛ちゃんも来てくれたんだよ」
「そう…………みたいだね。…………一体何故…………!?」
「うんとね……、千影ちゃんからお電話もらった後にね、鈴凛ちゃんから連絡もらって……一緒に遊園地に行こうって。凄い偶然だよね
「ほう……」

 鈴凛くんを睨む。

「千影ちゃん、目ェ光ってるっ!!」

 このまま目からビームを出して真っ二つにしてやろうかとも思った。(えー)

 目からビームというのはこのメカ○タクにとっては最大の手向けになるだろうからな。
 しかし、そんな人体構造がどうなってるかよく分かる断面図は、
 私は見慣れているが(ぇ)、私の愛する純心無垢の幼い雛子くんにとっては衝撃映像。
 見せるわけにも行かないだろう……。
 私は仕方無しにその方法を断念するのだった。

「わああっ! 熱ッ! 熱いからっ!! 結構それ熱いから、だからビーム当てないでッ!!」
「うっわぁ〜、千影ちゃんすっご〜い」

 ……"真っ二つ"は。






「それで…………貴様は何で来たんだ…………!!?」
「"貴様"って……(汗)」

 私はとにかく、私を幸福の絶頂から突き落としたこのゲスを問い詰めることにした。

「決まってるでしょ、雛子ちゃんを千影ちゃんの毒牙から守る為よ」
「な……っ!?」

 こいつもツインテール総帥と同じことを……ッ!!

「いや、咲耶ちゃんから千影ちゃんと雛子ちゃんがふたりきりで遊園地に行くから見張れって頼まれて……」
「ツインテール総帥から!?」
「……って、誰?(汗)」

 あのヤロウ……私が雛子くんに連絡した後、隠れるようにどこかに電話したと思っていたらこう言う事か……。

『私は遊園地に付き合ってないわよー♪』

 なんて言ってるあのメス豚の声が今にも聞こえてきそうだ……。

 ああ……神は私達に幾多の試練を与えれば気が済むんだ……。
 だが、障害が多い程私達の愛は燃える!!

 ちか、負けないもんっ♥♥(←幼児退行)

「大体…………遊園地代は…………自腹だろ?」

 しかし解せないな、この金の亡者がわざわざ自腹を切ってまで……

「うんにゃ、咲耶ちゃんが出してくれるって」

 …………。

 こんにゃろう自腹切らないからって来たな!

「この遊園地のジェットコースター、どう言う設計か参考に見てみたかったのよねー」

 まぁ、なんて研究熱心だこと!(怒)

「フッ……まあいい…………。貴様一人くらい…………私の力を持ってすれば…………」
「なにする気…………って、熱ッ! 熱いってッ!!」
「千影ちゃん、かぁっこいいぃ〜
「やめて! ビーム止めて!!」






「それにアタシ一人じゃないみたいだよ」

 ビーム(威力85%OFF)を止めると、鈴凛くんは自分の体の熱を帯びた場所をさすりながらそう言った。

「なんだって…………?」
「あのね、もうひとり呼んだの

 驚く私の横から、私の可愛い雛子くんがそう言った。

「ヒナはね、みんなで楽しんだ方がいいって思ったの。だからね、もうひとりご招待したの

 ああ、君のその純粋な想いは素敵だよ……。
 でも今は邪魔にしかならないからポイしよーね(←さり気に酷い)

「で、一体誰なんだ!?」
「いや、アタシも聞いてないんだけど……」
「くししし……

 もうひとりの誰とも分からない来訪者を待つことになった私達の横で、それを知っている雛子くんただひとりだけが可愛らしく笑っていた……。












「今回はお招きいただき、ありがとうございます」

 しばらく待って、新たに現れた妖怪軍団の怪人は肩にかけたストールを手で押さえ三つ編みを風で揺らしながらそう言った。

「…………」

 ちなみにこの沈黙は私のものでも私の愛する雛子くんのものでもなく鈴凛くんのものだ。
 なぜなら、そこに現れたのは、かつて私にとって最大最強の敵であった、病弱妖怪ミツアミメガネこと鞠絵くんの姿だった。

「なな、なんでよりによって鞠絵ちゃんなの……?」

 鈴凛くんは、私になのか雛子くんになのかよく分からなかったが、声を震えさせながらそう聞いた。

「良かったじゃないか…………フィアンセが来てくれて」

 鈴凛くんの肩に手をあて、耳元で囁くようにそう言う。

「ちょ……、なな、ナに言ってンのよ!」

 鈴凛くんは多少声が裏返りながら私にそう言い返した。
 まさか鞠絵くんを呼ぶとは……

「くししし……ヒナね、鈴凛ちゃんが来るって聞いたから鞠絵ちゃんを呼んであげたんだよ

 雛子くんは、澄み渡った夜の星空の様に輝いた満面の笑顔で、胸を張ってそう言った。
 フッ……雛子くんもダブルデートにするなんて、気を利かせれるようなったんだね……。

「「らっぶらぶ〜♪」」

 ふたり揃って鈴凛くんに言った。


 そう、鈴凛くんと鞠絵くんは私たちと同じく恋人同士と言う間柄だ。(←勘違い)
 それに、ふたりは既に口づけまで交わしている仲。(←これは千影のせい)

 ここは、このダブルデートで一気に進展すれば万事めでたしと言うことになるな……。

「鈴凛くん……」
「何よ?」

 やや不機嫌気味に答える鈴凛くん。
 そんなに照れなくてもいいのに。

「知っているかい…………? 昔、ヨーロッパのある国では…………キスした相手とは必ず結婚しなくてはならなかったんだよ…………」

 私はとりあえず、そんな鈴凛くんにちょっとした豆知識を与えることにした。

「あ、アレは千影ちゃんが無理矢理……」

 顔を紅潮させ、鞠絵くんに聞こえないように、小さな声で反論する。
 なんだ、まだキスした事を隠しているのか?

「でも…………した事には変わりないだろう?」
「うぅ……」

 そう、君たちふたりが"口づけを交わした"と言うことは、もう消しようのない事実。
 鈴凛くん自身、それを理解しているからだろう、無意味に足掻くような、声にならない唸り声のようなものを上げていた。

「で、でも、できるわけないじゃない! アタシ達、女同士ってだけじゃなくて姉妹なんだから!」

 そして、鈴凛くんの口からやっと出た反論はそれだった。

「…………」
「……な、なによ、突然黙って……」
「いや…………、その言い方だと…………『できるのならしてもいい』…………そう聞こえたものでね」
「うぇぇえええっっ!! ちちちちちち違う!! そそそそそそそそう言う意味じゃ……」

 鈴凛くんは今も赤かった顔を更に紅潮させ、焦りながら大声で自分の言ったことを撤回しようとしていた。
 フフフ……やっぱり、口では否定していても満更でもないようだな……。

「鈴凛ちゃん、千影ちゃん、ふたりとも早く中に入りましょう」

 いつの間にか、私の可愛い雛子くんと共に、入り口で先にチケットを渡していた鞠絵くんからのそんな声が聞こえてきた。

「ほ、ほら、そんな事どうでもいいから! 鞠絵ちゃんだって呼んでるじゃない!」

 誤魔化すように入り口に向かう鈴凛くん。

「心配しなくていいさ…………私は…………協力してあげるからね…………」
「しなくていい!」
























「鞠絵ちゃん……」
「なんですか? 鈴凛ちゃん」
「結構人多いね」
「ですね」
「…………」
「はぐれたら、もう会えなくなりそうですね」
「だね」
「…………」
「…………」
「それで、千影ちゃんと雛子ちゃんは……?」
「……さぁ」






 と言う、ふたりの会話が聞こえてきた気がした。

「ねぇねぇ、千影ちゃん……。ホントに鈴凛ちゃんたち置いてきちゃって良かったの?」

 まぁ、早速撒いてきたからだろう。

「ああ…………折角のデートなんだから…………ふたりきりの方がいいと思ってね」
「う〜ん……ヒナはみんなで遊んだ方が楽しいとおもうんだけなぁ……」

 やはり君は、優しさと純粋さ、そのふたつを同時に持つ……素敵な魂の持ち主なんだね……。
 でも今は邪魔くさいからゴミ箱へポイしようね♥♥(←さり気に酷い)

「きっと…………向こうは向こうで…………楽しんでるさ。なんせ…………あのふたりは…………恋人同士だからね」(←勘違い)
「そうだけどぉ……」(←誤解)
「寧ろ、私達も私達で楽しめなきゃ…………ふたりがかえって悲しい思いをすると…………私は思うんだ…………」

 その言葉に、雛子くんは少し俯いて考えた後、

「そうだね

 私に笑顔を向けてそう答えた。
 フフフ……雛子くんは物分りが良いね。

「じゃあ、ヒナ、あれに乗りた〜い」

 そう言って雛子くんが指差した先にあったもの、それはコーヒーカップの形をした大きな乗り物……つまりコーヒーカップだな。(まんま)












「うわ〜〜い カップぐるぐる〜
「ぐるぐる〜
「千影ちゃんもぐるぐる〜♪」
「雛子くんもぐるぐ……げふんっげふんっ…………楽しんでくれて…………何よりだよ…………」

 私とした事が……ついつい一緒になって楽しんでしまった……。

「えーいっ、もっとも〜っと速くしちゃえ〜!」

 そう言って雛子くんはコーヒーカップの真ん中の円盤を持ち、それを使ってカップの速度を上げる。

「ぐ〜るぐる〜♪」

 しかし屈託のない笑顔で笑う君はなんて可愛らしい……。

「周りの景色もぐ〜るぐる〜♪」

 ……なんて可憐な笑顔なんだ。

「ピ〜ヨちゃんもぐ〜るぐる〜♪」

 って言うかなんで可憐でもなんでもないやつが"可憐"だなんて名前名乗ってやがるんだ!?

「ワトソン君もぐ〜るぐる〜♪」

 今度、粛清しとくか? ← Σ( ̄△ ̄;)!!

「ネジの外れた千影ちゃんをチェキチェキ〜♪」

 …………。

「新手の妖怪軍団だとぉッ!!」












「何故君が……」

 コーヒーカップを降り、邪魔者C(邪魔者A:鈴凛 邪魔者B:鞠絵)を問い詰めた。

「クフフゥ……じ・つ・は・デスね…………なぁ〜んと、四葉は極秘調査を任されたのデース!!」
「極秘調査…………?」
「おお〜っと! これ以上は言えマセン! なんせ極秘デスからね、ご・く・ひ」

 得意げにそう言う四葉くん。
 って言うかウゼェからどっか消えろ!(←ちかよつ派の人にとってはとても信じられない千影の台詞)

「咲耶ちゃんも、やっと四葉を名探偵として認める気になったんデスね……」
「ほう、ツインテール総帥の命令か……」
「……誰の事デスか?」
「咲耶くんに…………入場料は自分が出すから私を見張れ…………、そう言われたんだろう?」
「チェキぃっ!?」
「図星…………のようだね…………」
「……で、でも半分は違いマス! 入場料を払うとは言いませんデシタ」

 …………。

 払わなきゃ働かないヤツと、払わなくても利用できるヤツをきちんと見極めているようだ……。

『利用価値を与えてやったのよ〜♪』

 と言うあの女の声が高笑いと共に今にも聞こえてきそうだ。
 しかし、私がこのまま黙って邪魔されると思ったら……大間違いだっ!

「雛子くん…………ちょっと待っててくれないかい…………?」
「ふぇ?」
「面白いものを…………見せてあげるよ…………フフッ」











「お待たせ…………」

 私は、すぐ側のお土産屋から現在放送中の戦隊モノの番組(フフッ……雛子くんのお気に入りさ……)の中で使われている、
 オモチャのバズーカ砲を買って来て元の場所に戻ってきた。

「千影ちゃん、それ……」
「ああ、確か今やっている戦隊モノの武器デシタね。確か雛子ちゃんのお気に入りの」

 さすがは四葉くん、情報収集はバッチリと言うわけか……。

「四葉くん…………ちょっと…………そこを動かないでくれるかい?」
「チェキ? ……なんだかよく分かりマセンが……分かりマシタ」

 私は四葉くんを今立っている場所に留めると、四葉くんから数メートル離れた位置に移動し、バズーカを構え照準を四葉くんに合わせると、


     精神コマンド:気合(気力+10)

     精神コマンド:気合
(気力+10)

     精神コマンド:気合
(気力+10)

     精神コマンド:ひらめき
(次の攻撃を100%回避)

     精神コマンド:必中
(1ターンの間命中率100%)

     精神コマンド:魂
(次の攻撃のダメージを3倍)



必殺ッ!! ナイトメア・ブラスターッッ!!


    ドシュウウウゥゥゥゥゥゥゥッッッ


「って、ええぇっ!?」

 掛け声と共にバズーカを放った。
 ちなみに、これは商品の性能ではなく私の魔力を放ったものだ。
 市販のものでこんな事をできるわけないだろう?(←普通の人間にそんなことできるわけないだろう)



「チェキーーーーーーッッ!!」
























「また…………来世…………」(←撃墜時台詞)






    ちゅどーーーーーーーーーん






「うわぁっ! 四葉ちゃんが爆発したぁ!」

 私の魔力を浴びた四葉くんは、時間差で爆発を起こした。

 爆発した四葉くんに向かい走り出そうとする雛子くん。

「待つんだ雛子くん」
「なんで!?」

 私はその雛子くんの肩を掴んで雛子くんを静止させた。

「四葉くんは…………いや…………、あれは四葉くんじゃないんだ…………」
「……え?」
「あれは四葉くんの体を乗っ取った…………悪の妖怪軍団の一員…………ザ・チェキラッチョ!」(←ネーミングセンスなし)
「ええぇっ!!」
「私は…………彼女に取り付いた妖怪を…………退治してあげただけなんだ……」
「そうなんだ……やっぱり千影ちゃんは凄いなぁ」

 もう、そんなに褒めないでですの……ムフン(←千影)

 まぁ、四葉くんは大丈夫さ。
 あの爆発はただの演出、実際は傷ひとつなくただ眠ってもらっただけだからね。

 ……ただし、悪夢を見る眠りにね……。
 そう言う風にしたからね……その時見る悪夢で心に深い傷を負わない保証はないさ……。(←鬼)

「ねぇ……でも、四葉ちゃん、こんな所で寝かせておいたら風邪引いちゃうよ……」

 聖母マリアのような優しさで私達に牙を剥いた(←被害妄想)ザ・チェキラッチョの心配をする雛子くん。
 ああ、君の魂は美しすぎる……。

「そうだね…………。じゃあ…………草のベッドに寝かせてあげよう…………」
「草のベッド?」

 そう言って私は四葉くんの死体(違)を一旦担ぐと、近くのヤブに投げ棄てた。


    ドチャッ


 …………。

 なんだか嫌な音がしたのは気の所為だろう。(←酷)

「うわぁ……草のベッドだぁ☆」
「これで…………草達が彼女を寒風から守ってくれるさ…………」
「そうだね☆」

 私は守りきれると思ってないけどね☆(←悪魔)

「さぁ…………次に行こうか」
「うんっ

 これでやっとふたりだけのデートに……












「あ、雛子ちゃん、千影ちゃんだ」
「ほんとだ」
「…………」

 ……なんなかった!(怒)

「あ〜、今度は花穂ちゃんに衛ちゃんだぁ

 ふたりきりなり、今度は雛子くんに色々買ってあげようとお土産屋に向かった私達。
 しかし、そこで運悪く無性別妖怪スポーティー・ショタ(衛の事)と転倒妖怪チアー・ド・G(花穂の事)に遭遇してしまった。

 神よ……私はとことんあなたに嫌われているみたいだな……。
 私もアンタが嫌いだ……(怒)

「君達も…………ツインテ……いや、咲耶くんからの刺客か…………?」
「「"刺客"って何!?」」

 ああ、一体どうして……みんなで私の純粋な愛(?)の邪魔をしようとするんだ?(←被害妄想)

「違うよ、咲耶ちゃんに頼まれたからじゃないよ。ボクたちは今日遊びに来ようって前々から約束してたんだよ」
「そう…………なのか?」

 ほう、つまりデートか。(←すぐそう言う方向に考える人)
 じゃあ彼女たちは偶然ここに来たと言うことで、つまりは…………これは私達の愛を引き裂こうとする神の所業かッ!?(←被害妄想)

「あ、でも」
「でも…………?」
「この間、咲耶ちゃんから電話で遊園地に行ってくれって頼まれたり、千影ちゃんを監視しろって言われたりはしたよ」

 あのクソアマ……このふたりの愛の時間(←勘違い)を割いてまで私の邪魔をするのか……!

「じゃあ…………ふたりで(愛の時間を)楽しんでいた訳か……」
「ううん、花穂たちはふたりじゃないの、四葉ちゃんも一緒だったの」
「四葉くんも…………?」
「でもなんか途中でどこか行っちゃって……」

 私のところに来たぞ。(←でも言わない)

「四葉ちゃん大丈夫かなぁ……。花穂、心配なんだよね……」
「ボクは花穂ちゃんの方が心配だけど。ドジだから……」

 花穂くんの一言に、花穂くんに聞こえないように、小さな声でそれに続くように衛くんが呟いた。

「…………」

 花穂くんは四葉くんが心配……
 衛くんは花穂くんが心配……

「はっ……!」

 こ、これはつまり……三・角・関・係、と言うヤツですか!!

「修羅場…………か」
「「はい?」」

 いや、四葉くんの気持ちはまだ分かっていない。
 しかしこれで衛くんを選んでしまったら……

「間違いなく修羅場だーーーッッ!!」
「千影ちゃんなんか変ー!」

 私に続いて花穂くんも大声を上げた。
 まったく……私は君たちの事を心配していると言うのに……。

「花穂ちゃん、千影ちゃんが変なのはいつもの事でしょ……」

 衛くんがなんか呟いていたがよく聞こえなかった……事にした。






「ねぇねぇ、四葉ちゃんなら、ヒナね、さっき会ったよ」
「え、ほんと?」

 私の雛子くんが四葉くんのことをふたりに教えた。
 雛子くんは人のために何かすることが好きだからね……。

 フッ……私が黙っていたのはそのためさ。(←嘘)

「うん。今ね、草のベッドで、すやすやお休みしてるの」
「「草のベッド?」」
「ヒナが案内してあげる

 疑問に思うふたりを余所に、店の中には、可愛らしく元気のいい雛子くんの声が響いた。






 結局、ふたりを四葉くんの所まで案内する羽目となってしまったため、ふたりを連れてさっきの場所まで戻ってきた。

「あ、四葉ちゃん居たよ」
「ホントだ」

 四葉くんを見つけるなり、ふたりは彼女の元に駆け寄る。

「四葉ちゃん、四葉ちゃん」

 ゆさゆさと四葉くんの体を揺らし、一生懸命起こそうとする花穂くん。

「こんな所で寝たら風邪引くよぉ……」

 だろうね。(←悪魔)

「チェキーーーーーーーーーーッッ!!」

 突然、四葉くんが大声で叫び飛び起きた。

「……チェキぃ…………チェキぃ……」(←息を切らしている)

 目を覚ました四葉くんは自分の体を見回していた。

「ゆ、夢……デスか?」

 何を確認したかはよく分からないが、安心した表情でホッと一息つきながら、

「よかったデス、ドコもなんともないデス……」
「四葉ちゃん……どうしたの?」
「あ、花穂ちゃん……衛ちゃん……」

 四葉くんは、心配そうな花穂くんの声で、私達のことにやっと気づいたみたいだった。

「怖い夢を見たのデス……」
「夢?」
「ハイデス。メカ鈴凛ちゃんが……メカ鈴凛ちゃんが四葉を……」
「メカ鈴凛がどうしたって?」

 そこに鈴凛くんが割り込んできた。
 ちなみに、その恋人(違)の鞠絵くんも姿もその後ろに確認できた。

 ちぃッ……もう見つかってしま―――

「ぎゃああああああああああああああッッ!!」

 鈴凛くんの姿を確認するなり、突然四葉くんが叫びはじめた。
 当然、その場にいた全員が驚いた。

「え? な、なに? ……どうし―――」
「四葉はもう鈴凛ちゃんに近づきマセン! 近づきマセンから!! だから来ないでーーーー!!」

 そう言って、鈴凛くんから離れるように必死に後ずさる。

「もう痛いのは嫌だ! もう痛いのは嫌だ! もう痛いのは嫌だ! もう痛いのは嫌だ! もう痛いのは…………」

 うずくまり、ガクガクと震えながら、うわ言のように何度も何度も呟く。

「よ、四葉ちゃん。しっかりして」

 フ……どうやら効き過ぎたみたいだね。
 一体どんな悪夢(ユメ)を見たんだか。












「スミマセン……鈴凛ちゃん」
「いや、いいって」

 鈴凛くんに謝る四葉くん。

「ったく、千影ちゃんにも困ったもんだね……」

 何で私を責める?(←事実加害者)

「一体どんな夢を見てたの」
「…………思い出したくもアリマセン」

 四葉くんはよっぽど怖い目に遭ったのか最後にこう呟いていた。

「四葉は……四葉は、あんなになっても生きていたくなんかないデス……」






「ねぇねぇ、みんな」

 私の愛する雛子くんが、突然みんなの注目を自分に集めはじめた。
 一体何のために……

「折角みんなそろったんだからさ、みんなで回ろうよ」
「何ィィーーーーーーーッッ!!?!?」

 ひっひひひひっひひいひひひひひなっこくんはなにを言っとんのやぁぁああッ!?(←動揺し過ぎ)

「いいいいいいいいや…………そそそそそれぞれ回った方が…………絶対良いと思うのだが…………」

 私は、動揺する心を静めつつ、落ち着いて話をした。(←落ち着ききれてないことに気づいていない)

「「「絶対そんなことない」」デス」

 3人揃って私の意見を反対する。
 ちなみに鞠絵くんと花穂くんは良く分からない表情をしていた。(←千影の異常さに気づいていない)

「千影ちゃんと雛子ちゃんをふたりにしたら危ないよ」
「四葉はジゴクを見マシタ……」
「って言うか、アタシは今日雛子ちゃんと遊園地に来たわけだし」

 などと屁理屈をこねる3人。(←どう見てもこっちの方が屁理屈)

「い、いや…………そんなことはないっ! 特に鈴凛くんと鞠絵くんは…………ふたりきりの方が…………」
「……? 何でデスか?」
「な、なんでもないわよ……。それより千影ちゃん。まさか雛子ちゃんの意見に反対だなんて言わないよね?」

 鈴凛くんが自信あり気にそう言う。

「そんなの……」

 ここは例え厳しくても雛子くんの意見に反対しなければ……

「千影ちゃん……ヒナのアイディア……よくないの?」
「……!?」

 悲しそうな瞳で私の事を見上げる。
 な、泣かないでくれ雛子くん。
 私は君が悲しむことが何よりも耐えられないんだ……。

 ああ、しかし……

「みんなで楽しんだ方……絶対、絶対……楽しいのにぃ……」

 う、うう……

「ヒナのアイディアはぁ……ぜったいに……ぜったいにぃ……」

 うぅ…………

「…………わ、分かったよ」
「ほんと!? うっわーーーい♥♥

 ……結局、愛する雛子くんを悲しませる訳にもいかず、その後は全てみんな出回ることとなった。
 ああ、折角のふたりきりのデートが……。

「ヒナね、そんな千影ちゃんの事、ダイダイダーイスキだよ!」

 …………。

 ……まぁ、いいか
























「あ、もうこんな時間に……」

 しばらくみんなに雛子くんとの時間を邪魔されながらも(←被害妄想)遊んでいると、鞠絵くんが一言そう言った。
 空に目をやると、日は既に傾き始めていた。

「あ、そうか、もうそろそろ療養所に戻らないといけないんだ」
「はい……」
「じゃあ、今日はこれで解散デスね」

 もう終わりか……。
 まったく……貴様らのせいで雛子くんとの折角のスィートタイムが台無しだったじゃないか!
 今度この場にいる全員に呪いを送っとくか。

「そうだね、雛子ちゃんも眠そうだし」
「え〜……ヒナはぁ……そんなこと…………ぜんぜん……ない……もん……」

 うつらうつら否定するが、言葉とは裏腹に雛子くんはとても眠そうだった。
 そんな君が、どうしようもなく可愛らしくて、
 私の憎しみに染まっていた心は、まるで女神の不思議な力で傷を癒されていくかのように和んでいった。※1

「千影ちゃん、目の色変えて鼻息荒くするのやめた方がいいよ」※2

  ※1、2:理想と現実






「じゃあ……花穂達はこれから別のトコにいく予定だから。バイバイ」

 チャンスっ!
 これで邪魔者が減るぅ(←千影)

「でも、大丈夫かなぁ……雛子ちゃん」
「大丈夫デスよ、まだ鈴凛ちゃんがいるんデスから」
「でもさぁ……」
「それより四葉は千影ちゃんに近づきたくないデス……」

 なんだか四葉くんと衛くんがそんな会話を繰り広げていた。
 失礼な!
 それではまるで、私が雛子くんを無理矢理襲うみたいじゃないかっ!(←異議あり)

 ああ、優れた者とは、どうしてこう、あらぬ言い掛かりを受け批難されるものなのだろうか……。(←都合のいい被害妄想)

「さてと…………。じゃあ鈴凛くん…………鞠絵くんを送ってあげるんだ」

 三角関係の3人(←勘違い)を見送り、豆粒ほど小さくなったところで、鈴凛くんにそう話し始めた。

「なんでよ」
「鞠絵くんが倒れでもしたら…………大変だからさ」

 私と雛子くんが二人きりになるためにさ!

「『私と雛子くんが二人きりになるためにさ!』じゃないの?」
「……ッ!? 貴様、心が読めるのかっ!?」
「やっぱりか……」

 鈴凛くんは、私に呆れた顔を向けてそう一言漏らす。

「アタシとしては、千影ちゃんを雛子ちゃんと二人にする方が心配よ」
「じゃあ今ここで言ってもいいのかい? 君たちがどう言う関係なのかを!
 この場にいる全ての人間に聞こえるよう大きな声で! 君たちが唇と唇を重……」
「わ゛ーっ! 鞠絵ちゃん送ってあげるからっ! だから言わないでっ!!」






















 私の正義の力の前に、悪の妖怪軍団は全て立ち去り、私達は、見事ふたりきりの時間を手に入れることができた。

「Zzz……」

 もっとも、雛子くんは既に私の背中で眠ってしまっている……。
 折角ふたりきりになれたのに……くすん。(←千影)

「フフ…………でも、懐かしいな……」
「ふみゅ……」

 私の言葉に答えるような、雛子くんの可愛い寝ぼけた声。

 赤い夕暮れの中で、私は昔の事を思い出していた。

「昔は…………私が君に背負われていた立場だったのに…………。今は…………立場が変わってしまったね……・・」

 もっとも、それは遠い昔の……、君が……私の兄だった時の話……。
 懐かしい……遠い記憶での話だけどもね……。












「さぁ…………着いたよ…………」

 私は、雛子くんをおぶったまま、私は建物の中に入ろうと―――


    ……ぶぅん


「……っと、危ない」

 私は突然横から飛んできたコンクリートブロックを難なく避ける。
 フッ……さっきの"ひらめき"の効果をまだ使用しなくて助かったよ。(←そう言うモンか?)

 などと考えつつ、私はコンクリートブロックが飛んできた方向に目を向けた。

「……アンタは雛子ちゃん連れてドコ入ろうとしてるのよ……」

 コンクリートブロックを投げただろう人物は、夕暮れの中で、その長いツインテールを揺らしながら何かに怒りを感じているようだった。

「どこって…………見ての通りさ……」

 ツインテールの少女こと咲耶くんに向かい、親指だけ立てて握った手で、目の前のきらびやかな建物をその親指で指さして、

「ラブホ―――ぐハぁっ!!

 ……殴られた。
 "ひらめき"を使っていなかったので今度は避けれなかった……。

「アンタねぇっ! もうちょっと自分の立場ってもんを……」
「それより…………どうして君がここに……? 確か可憐くんと……」

 カリカリと怒りをあらわにしてる咲耶くんの言葉を遮るように問う。

「そうよっ! アンタはなに子供向けの特撮ヒーローモノのチケット渡してるのよ!! お陰で私がどれだけ恥ずかしい思いをしたと……」
「きちんと調べずに"可憐くんとのデート"と聞いただけで反応した君が悪い!」(←稀少価値の高い千影の正論?)

 第一、それは私が雛子くんとデートに行くつもりで買ったチケットだから、そう言うものなのは当然だ。

「で…………その可憐くんは…………?」
「咲耶ちゃん……」

 私が求めていた人物はすぐ奥で、静かに、それでいて何かを抑えてるような口調で、私の胸倉を掴んでいる人物の名前を呼んでいた。

「可憐に一緒に来て欲しい所って……ここのことなの?」

 表情はよく見えない。
 だが、何か怒りのようなものを感じさせる、そんな声だった。

「えっ! いや……その……」

 慌てる咲耶くん。
 可憐くんを連れてこんな所(ラブホほにゃらら)に……

「ほう…………、この間の…………部屋から追い出された時の雪辱戦かい…………?」
「ち、千影ちゃんにあのこと話したの!?」

 よく見えなかった可憐くんの顔が微かに見えるようになった。
 その表情は、それが照れによるものか、怒りによるものか、それとも両方なのかはよく分からないが、顔を真っ赤に変えて咲耶くんを睨んでいた。

「ち、違う! 私はあのことを話してなんか……」
「咲耶くんは大胆だねぇ〜、無理矢理唇を奪っただけでなく体まで……」
少し黙ってろロリ○ン○姦ネ○ラ女!!
「痛い痛い痛い痛い…………」

 危険な言葉を連続使用しながらガスガス殴る。

「ひ、ヒドイ……可憐にしたこと……千影ちゃんに自慢して……」
「ええぇっ!? ちち、違うっ!! そんなこと私は……」
「言い訳なんか聞きたくない!」

 なにやら可憐くんは誤解をしているようだったが、その方が面白いので私は傍観者に徹することにした。(←悪魔)

「可憐ちゃん、話を……」
「最ッ低っ!」

 その一言で咲耶くんが灰になっていた。
 気のせいか、咲耶くんの頭の上で除夜の鐘が大きく鳴り響くヴィジョンが見えた気がした。

「やーい、やーい、きっらわれた〜♪」(←千影)

 フフ…………私の邪魔をするから、神が天罰を下したんだ……。
 神様サイコー!(←アンタ神様嫌いじゃなかったか?)

「いこっ、雛子ちゃん!」
「ふみゅぅ……」

 そのまま可憐くんは寝惚けている可愛い雛子くんをおぶってそのまま歩いて行って……

「ってちょっと待てぇぇぇっっ!!」(←千影)

 ああ、何てことだ、私の天使が邪悪の使者に連れ去られていってしまう!
 私は急いで後を―――

「待て……」

 恐ろしく低い声でそう言う咲耶くんに肩をガシィっと掴まれた。

「は、離せっ! ツインテール総帥っ!!」
「アンタのせいだ……」
「小言ならあとでいくらでも聞く…………だから……っ!」
「アンタのせいで……私は可憐に……」

 聞く耳持たない、と言った感じだった……。

「ま、待ってくれ……! 雛子くんが、ヒナたんがぁ、マイエンジェルがぁ〜」

 掴まれた肩を必死に振りほどこうともがきながら、だんだんと遠くなる雛子くんの姿。

「千影ちゃん…………ダイスキ……」

 その時、雛子くんの口から漏れた言葉に、思わず顔が綻びた。
 (↑雛子のことになると、ン百m離れたところの針の落ちる音をも聞きかねない異常聴覚)

「うんっ ちかもダイ―――」



    ズガァぁん……


「零距離……とったわよ……!」

 そのことに油断した私は……雛子くんへの返事も最後まで言えぬまま、
 咲耶くんの頭突きを皮切りに、そのまま咲耶くんの『切り札』の餌食となっていった……。




あとがき

直月秋政さんの2000番のキリ番リクエスト、
やり過ぎ度100%のギャグ、ちかひなin遊園地デートでした(笑)
前回のリクエスト話のあのぶっ壊れ千影をもう一度、と言われたので、いっその事続編にしました。
ちなみに"らぷそでぃ"には何の意味もありません(笑)
ひらがななのは、雛子話でもあるのでなんとなくです。
しかし、元々リミッター全開でこれ以上ないほど壊した話を更にもう一度と言われて、
正直、"全速力で走った後に、また全速で走れと言われた心境"になりました(笑)
前回より壊せたのか、それとも失敗したのか・・・(不安)
色々なネーミングは特にセンスの感じられないものを選んだつもりですが・・・もう少し良いものを考えれば良かったかもしれません(汗)
"直月さんのリクエスト"なので、直月さんのためにスパ○ボネタを大量に使いました。
なので分からない人が結構いたかもしれません(苦笑)
そう言う人、申し訳ありませんでした。
そして兄くんの方々、こんな千影をまた書いてしまって、本当に申し訳ありませんでした。


更新履歴

H15・11/13:完成
H15・11/14:誤字など修正
H15・12/31:誤字修正
H16・8/20:誤字修正
H17・3/15:大幅修正


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