もうすぐ衛ちゃんの誕生日・・・。
可憐はその日のために一生懸命ピアノの練習をしたの。

可憐の好きな、あるクラシックの曲を。

それは衛ちゃんに可憐の弾くピアノの音色を聞かせてあげるため。
それが可憐の用意したプレゼント。

素敵な・・・形のないプレゼント・・・。



    『クラシック・・・?』


・・・そうなると・・・思ってた・・・。


    『ゴメンね、ボク、ちょっとそう言うのは・・・』











 

the Present for My “Brother?”













「可憐が好きだから・・・だからみんなが好きだって・・・・・・そんな事あるはずない、って・・・そんな当たり前の事、何で気づかなかったの・・・?」

自分の部屋に閉じこもって、枕に顔を埋めながらポツリと呟やく。

「可憐は、本当におばかさんだよ・・・」

枕に乗せていた手に力を入れてぎゅっと握る。
まるで、自分への腹立たしさを枕に八つ当たりするみたいに。

「可憐の・・・バカ・・・」


今日は10月18日。
衛ちゃんの誕生日。

今日は亞里亞ちゃんのお家で衛ちゃんのお誕生会をしようって話になったの。
衛ちゃんをみんなでお祝いする・・・・・・はずだった・・・。

“みんなで”のお祝いはできなくなっちゃったの・・・。
少なくとも可憐は衛ちゃんのお誕生会には参加しないから・・・参加なんかできないから・・・。












昨日、可憐は衛ちゃんにちょっとした用事があって電話をしたの。
その時、可憐はなんとなく衛ちゃんに聞いたの。


    「衛ちゃん、クラシックは好き?」


衛ちゃんはきっとそうだって言ってくれると思ってた。
可憐はそれをプレゼントするんだって・・・胸を張ってお誕生会に行きたかったから・・・だからそう聞いたのかな?
でも、返ってきた答えは・・・、


    『ゴメンね。 ボク、ちょっとそう言うのは・・・』


可憐の思っていたものとは、まったく反対のものだった・・・。



聞かなきゃ良かった・・・・
・・・ううん、お誕生会本番で恥をかかなくて済んだから聞いておいて良かった、なのかな・・・?



どっちにしろ、衛ちゃんの事を何にも考えないでピアノ演奏をプレゼントしようって思ったこと自体、間違いだったんだから。

「可憐は・・・衛ちゃんに何も贈れなくなっちゃった・・・」

ピアノを弾く、それ以外のプレゼントなんて用意してない。
みんなきっと素敵なプレゼントを贈るのに・・・ただひとり、可憐だけはなんにもない。

だから、そんな状態でお誕生会なんて行けないよ・・・・・・行ける訳・・・ないよ・・・。






もしもこんな時、“お兄ちゃん”って言うのがいてくれたら・・・可憐の事を励ましてくれるんだろうな・・・。

でも、可憐にはお兄ちゃんなんて居ない・・・。
可憐の他に11人も居るのに・・・みんな女の子・・・。

そりゃあ、咲耶ちゃんや千影ちゃんみたいな素敵なお姉ちゃんは居るけど・・・でも“お兄ちゃん”とはなにか違うの。

・・・ワガママだよね・・・あんなに素敵なお姉ちゃん達が居るのに・・・こんな風に思うなんて。

「こんな時・・・お兄ちゃんが・・・」

お兄ちゃんが・・・居てくれたらな・・・・・・



・・・・・・・・・・・・



・・・・・・
























「ふぁ・・・」

ちょっとだけ体が重い様な気がした。
頭もちょっとぼやけてる感じ・・・。

可憐はいつの間にか寝ちゃってたみたい・・・。

「あ・・・起きた」

可憐の足の方で突然そんな声が聞こえたの。

「・・・え?」

ここには可憐以外居ないはずなのに。
いったい誰が―――

「・・・!?」

可憐は声の主を誰か確認すると、一瞬言葉を失いました。

「おはよ・・・」
「・・・衛・・・ちゃん・・・」

だって、衛ちゃんが可憐のベッドの上に座っていたんだから。

「なん、で・・・?」

そこに居るのが衛ちゃんって分かった瞬間、可憐は凄くびっくりしたの。
もう、寝ぼけてるせいで頭にかかっていたもやもやが一気に晴れるくらい・・・。

「おばさんに家に入れてもらったんだ・・・おばさんはどこかに出掛けちゃったけど・・・」

そう言えば、ママは今日は用があるって言ってたっけ・・・。

「でも、部屋に勝手に入った事は謝るよ。 ゴメンね・・・」
「お、お誕生会は!?」

衛ちゃんは今日みんなに祝ってもらってるはずなのに・・・

「もう、終わったよ・・・」
「・・・終わった?」

窓から外を見てみると、もう真っ赤な夕日が外を赤く染めてたの。
可憐、そんなに寝ちゃってたんだ・・・。

「だけど、可憐ちゃん・・・来なかったから心配で・・・だから・・・」


―――なんで来たの!?


心の中でそう言った。
どうしてかは分からないけど言葉にできなかったから。

可憐は、今衛ちゃんには会いたくなかったのに・・・。

何にもプレゼントできないから。
衛ちゃんの事なんて考えなかったから。
だから顔なんて合わせられない・・・そう思ってるのに・・・。

「ゴメンね・・・、ボク、可憐ちゃんがボクのためにピアノを練習してたなんて、知らなかったから・・・」
「・・・え!? なんで、知ってるの!?」

衛ちゃんにこの事は知らせていない。
びっくりさせようと思ってたから。
でも、それが逆になっちゃったけど。

「咲耶ちゃんから聞いた。 って言うかそう言ってたのを聞いたんだ。 可憐ちゃん、ボクのために一生懸命ピアノ練習してたって・・・」

そう言えば、咲耶ちゃんには可憐がピアノを練習してるって話してたっけ・・・。

「それ聞いた時、あの電話の事思い出して・・・ゴメンね・・・」

衛ちゃんは、本当に申し訳なさそうに謝った。

「衛ちゃんが謝る事なんてないよ・・・」
「でも・・・」
「全部、可憐が悪いんだから・・・」

そう、衛ちゃんが謝るなんて筋違い・・・。

「衛ちゃんのため、って頑張って・・・でも、結局それは無駄に終わっちゃって・・・」
「可憐ちゃん・・・ボク・・・」
「全部・・・可憐が・・・。 衛ちゃんの事なんて考えないで・・・ひとりで勝手に・・・・・・ほんとばかみたい・・・!」
「そんなこと・・・」
「もういいのっ! 可憐が、可憐が頑張ってたことは全部無駄だったんだからぁっ!!」

声を張り上げて思いっきり衛ちゃんに言った。
悔しかった・・・自分が情けなかった・・・・・・何より自分が惨めだって思った・・・。
もう、ひとりにして欲しかった・・・。

・・・その時だったの。

「努力した事は無駄になんてならないよッ!!」
「・・・っ!?」

可憐の上げた声よりも、もっと、ずっと大きい声で衛ちゃんに言い返されちゃった・・・。

「・・・そりゃあ、頑張ったからって全部成功するって・・・訳じゃないけど・・・。
 ・・・でも、頑張った事自体は無駄じゃない! その時にはダメでも・・・いつか、ずっとずっと後になって役に立つはずだよ!」

可憐の目を真剣な眼差しでジッと見つめて、張り上げた声とは反対の優しい声でこう囁いてくれた。

「少なくとも・・・ボクはそう思ってる」

それは可憐を勇気づけるために言ってるの?

「可憐ちゃんは一生懸命頑張ったんでしょ・・・?」

それとも可憐を励ますために・・・?

「その・・・クラシックとか・・・そう言うのは・・・よく分からないけど・・・でも聞かせて欲しい!」

違う・・・単純に思ってることを・・・本心から思ってることを・・・。

「可憐ちゃんが頑張った、ボクはそれを知りたいんだ!」

衛ちゃんは、真っ直ぐ可憐に気持ちをぶつけてきてるんだ。

「・・・あ」

理屈なんてなく、本当に思ってることをぶつけてきてくれる、衛ちゃん。
しかも、それは全部可憐が言って欲しかった言葉・・・。

そんな衛ちゃんが・・・、

「・・・? どうしたの?」
「な、なんでもない・・・」

一瞬・・・ほんの一瞬だけど・・・

「・・・ピアノ、弾いてくれないかな・・・?」
「面白くもなんともないよ・・・」

そんな衛ちゃんが、“お兄ちゃん”に見えたの・・・。

「それでも・・・聞きたいんだ・・・」

ずっと憧れていた・・・可憐のお兄ちゃんに・・・。



「・・・・・・・・・分かった・・・」
























「い、いくよ・・・」
「うん」

可憐はピアノに向かって座りました。

鍵盤に指を乗せて、指の一本に力を入れる。
ひとつの音がピアノから出てから別の指に力を入れて、また別の音が出る。

そうやって次々と音を紡いでいく、ただの音が音楽へと変わっていく・・・。

心を込めてピアノを弾いたの。
可憐の精一杯で・・・。


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・












「・・・・・・どう、だった・・・?」

演奏を終えて、衛ちゃんの居る方向を見たの。
ううん、もう既に“居た”方向になってた。

だって、衛ちゃんはいつの間にか可憐の後ろに回り込んでいたんだから。

「素敵な演奏だったよ」

そう気づいたのは、衛ちゃんが可憐に腕を回して、ぎゅっと抱き締めたから。

「ま、衛ちゃん!?」

可憐、突然の事ですっごくびっくりしたの。
お胸がドキドキ、ドキドキってものすごい速さで鳴っている・・・。
でも・・・このドキドキは・・・びっくりしたせいじゃ、ない・・・?

「素敵だった・・・って、ほんと?」
「うん、素敵だった・・・」

だって、お顔が・・・絶対、真っ赤になってるって・・・分かっちゃうくらい熱くなってるもん。

「ちょっとだけ・・・間違えちゃったんだよ・・・」
「え!? そうなの・・・!?」
「うん、そうなの・・・」
「・・・でも大丈夫だよ。 ボク、クラシックよく分からないし・・・」
「・・・フォローになってないよぉ・・・」
「あ、いや・・・え、と・・・で、でもね・・・素敵だ、って事は・・・すっごく伝わったから・・・」
「・・・衛ちゃん」
「ありがとう、可憐ちゃん・・・」

違うよ・・・。

お礼を言うのは可憐の方だよ・・・。

衛ちゃんが勇気づけてくれた・・・
衛ちゃんが励ましてくれた・・・


まるで可憐が憧れてた“お兄ちゃん”みたいに・・・


・・・・・・。

「ねぇ、衛ちゃん・・・」
「何?」
「可憐のわがまま・・・聞いてくれるかな?」
「・・・? 別にいいけど・・・何?」
「一回だけ・・・一回だけでいいから・・・お兄ちゃん、って・・・呼んでも、いいかな・・・」
「ぅええぇっ!?」

今度は衛ちゃんがビックリして、ちょっとだけ変な声を上げちゃってました。
当然だよね・・・。
だって衛ちゃんは男の子みたいだけど女の子なんだから。
そんな事言われたら普通驚くよね。

「可憐・・・ずっとお兄ちゃんに憧れていたの・・・。
 こんな時お兄ちゃんがいたら、何度もそう思ったことがあるの・・・」

衛ちゃんの可憐に回している腕にそっと手を添えて続きを言う。

「可憐ね、さっき衛ちゃんの事、一瞬お兄ちゃんに見えたの・・・」
「・・・え?」
「だから・・・、ダメ・・・かな?」

可憐がそう聞くと、少しの間ここには何の音も聞こえなくなったの。

今、可憐の後ろに居る衛ちゃんは、どんな顔をしてるのかな・・・?

そんな事を考えていた可憐の耳に、ポツリと呟くような衛ちゃんの声が聞こえてきたの。

「・・・い、一回だけなら・・・」

衛ちゃんは、今度は可憐の欲しかった答えを返してくれた。

「ありがとう、衛ちゃん」
「で、でも一回だけだよ・・・」

照れくさそうな声で念を押すようにそうつけ加えてた。
顔は見えなかったけど、すごく照れてるってことは声で分かった。



可憐は一回だけ深呼吸をしてから言葉を紡ぎはじめました。

「可憐が悲しい時・・・落ち込んでる時・・・、可憐に優しくしてくれて・・・・・・可憐を励ましてくれて・・・、」

そこで一拍置く。

だって一回だけだから。
大切な一回だけだから・・・だから可憐の心をたっぷり込めて言いたかったの。


もう一度深呼吸をして、心を落ち着かせて、しっかりと衛ちゃんの心に届くように・・・



「・・・ありがとう、お兄ちゃん・・・」
























「どういたしまして・・・可憐」












「・・・!!?!?」

い、今のは衛ちゃんなりの演出だったのかな?

呼び捨てにされて、可憐の心臓は物凄い速さでドキドキしはじめたの。
さっきと同じドキドキが・・・



このドキドキは・・・・・・もしかして・・・恋・・・とか?

・・・・・・。

・・・まさか・・・ね。


あとがき

毎度お馴染み(?)誕生日の当人より相手の方が幸せになる、なりゅーのひねくれBDSS衛編です。
なんだか上手く書けたように見えない・・・(汗)
と言うか失敗したようにしか見えない・・・(凹)
なんて言うか書いてる途中訳分かんなくなったし・・・(鬱)
この話は、「プレゼントが必ずしも成功するとは限らない、寧ろ相手が望んでないものを用意してしまうかもしれない」と思って作ってみたものです。
衛は音楽・・・と言うよりクラシックに興味なさそうに見えたので、そこに可憐の特徴であるピアノを持ってきてみました。
試しにちょっと衛の“男らしさ”(ぇ)を活用して『兄役』にしてみたり(笑)
しかし、可憐と衛ってイメージ年齢が微妙で、どっちが年上でもいい感じがしますね。(なりゅーだけか?)
まもかほを考えると可憐のほうが年上にも思えるけど・・・。
ちなみに、“あるクラシックの曲”にしたのは、細かく考えるのが嫌だったし思いつきそうもなかったから。(←ダメな人)
それにしてもエ○サイト翻訳(←翻訳機)は便利だなぁ。(←タイトル考えるのに使用した)


更新履歴

H15・10/17:完成
H15・10/26:誤字修正


 

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