それでもいいと思った・・・
それ程貴女が好きだから・・・












Scape Doll













一緒に暮らすようになってから何年経ったんだろう?
隣のベッドに寝ている可憐ちゃんに目をやりながらふとそう考えた・・・。



長年の夢だった留学を終えて日本に帰って来たアタシは
今、可憐ちゃんと二人きりで昔みんなで暮らしていた家に住んでいる。
可憐ちゃん以外の他のみんなとはバラバラに暮らしている。
みんな大人になってそれぞれの道を歩き始めたからだ。

アタシが今もみんなで暮らしていた家に住んでる理由、それはラボがあるからだ。
みんなと暮らしていた家から離れて暮らすと好きな時にアタシの好きな研究が出来なくなるから。

でもこの家にアタシ一人は広すぎる。
それでアタシは可憐ちゃんに一緒に暮らさないか、って言ってみた。
そしたら可憐ちゃんはそれに賛成してくれた。

だからアタシ達は今、二人きりでこの家に暮らしている。






一緒に暮らさないか、
・・・アタシはそれを可憐ちゃんにしか聞いていない。
理由は、二人きりで暮らしたかったから・・・






・・・彼女の事を“愛して”しまったから・・・。
























可憐ちゃんは昔よくアタシの研究を手伝ってくれた。
最初はあるものを作る時に手伝ってもらった事がきっかけだった。
それから少しずつ手伝ってもらうようになり、
可憐ちゃんもメカについて少しずつ詳しくなってきて、
そのうちアタシと一緒にメカを作ったりするようになった。

いつの間にか一緒に居る時間が長くなった。

一緒に笑って、
一緒に作って、
一緒に苦労して、
一緒に喜んだ。

そうしている内にアタシはいつの間にか・・・可憐ちゃんを好きになっていた。



初めてこの気持ちに気づいた時、自分でも驚いた。

恋愛なんて・・・今までアタシには無関係な事だったのに・・・
よりによって芽生えた相手は自分の姉妹。

正直・・・その感情に嫌悪感すら抱いた・・・。
姉妹にそんな感情持つなんて・・・、って。

でも、アタシはこの気持ちにウソを吐く事は出来なかった・・・。






一方、可憐ちゃんは本格的に機械の道に進む事を選んだ。

可憐ちゃんはアタシと一緒に色々と作ったりするようになっていた。
だから、それを聞いた時みんな特に驚いたりしてはいなかった。

だけどアタシは凄く驚いた、そして凄く嬉しかった。
だって可憐ちゃんがアタシと同じ道を歩いてくれたんだから。



だから留学する時、別れるのが凄く辛かった。

アタシは決意した、向こうから帰ってきたら“好きだ”って言おう・・・

そう決めた・・・。
























数年が経ち、留学を終えて帰ってきたアタシは可憐ちゃん言った。

好きだ、って。
恋人になって欲しい、って。
二人で一緒に暮らそう、って・・・。

何年も変わらなかった気持ちを・・・
ずっと伝えたかった本当の気持ちを・・・。



そして、可憐ちゃんはアタシが一番望んだ返事をくれた・・・。



今まで生きてきて一番嬉しい瞬間だった。

アタシは可憐ちゃんと恋人同士になれたんだ。

どんなに凄いメカを完成させても、
どんなに難しいプログラムを完成させても、
この瞬間の喜びには敵わない。

だって可憐ちゃんは“YES”と言ってくれた。

恋人になって欲しい、
一緒に暮らして欲しい、
その答えは“YES”だったんだから。



そう、“YES”だったんだ・・・。



“YES”だった・・・






だけど・・・












彼女はアタシを見ていない・・・。












分かってた・・・。
可憐ちゃんがアタシを見ていない事は・・・。
アタシを通して“アタシの代わり”を見ている。



そう、アタシが作った“アタシの代わり”・・・



メカ鈴凛を・・・


















メカ鈴凛・・・

“彼女”は、いつかは留学しようと考えていたアタシが、
その間みんながアタシの事を忘れないようにと作った“アタシの代わり”だった。

“彼女”を作る時、アタシは可憐ちゃんに手伝ってもらった・・・。
その事が・・・全てのきっかけだった・・・。

始めはアタシの代わりとして作ったメカ鈴凛は、
少しずつではあったけど成長していった。
育っていく“彼女”は、見た目こそアタシそっくりだったけど、
アタシにとっては子供みたいなものだった。

そしてそれは可憐ちゃんも一緒だと思っていた・・・



気がつくと・・・“アタシの代わり”として作った“彼女”は、
いつの間にか“アタシの代わり”ではなく“メカ鈴凛個人”と言う存在になっていた。






そして可憐ちゃんは・・・メカ鈴凛と言う存在を・・・愛してしまっていた・・・。












可憐ちゃんは“機械”を愛した。

ただ人形が好きだとかそう言う比では無い。
いつも彼女を見ていたから分かった。
可憐ちゃんは本当に“彼女”を愛してしまっていたんだ・・・。






アタシは姉妹を、同性で血の繋がった人間を愛した。
そして可憐ちゃんは見た目は女性の、言ってしまえば“人ではない同性”を愛した。

同じ同性愛でも彼女の苦悩はアタシのものに比べはるかに大きかったと思う。

それを知った時の彼女自身はどうだったんだろう?
その感情は普通では無い。

もっとも・・・アタシの感情も普通とは言えないけれど・・・。

それでも可憐ちゃんは最後には“彼女”を愛する道を選んだ。
アタシがこの気持ちにウソを吐けなかった様に・・・。



可憐ちゃんが本格的に機械の道に進んだのも“彼女”の為だった。

そうする事によって、“彼女”の為に何かしてあげられるから。
もし“彼女”に何かあったとしても、
自分の手で“彼女”を修理・・・いや、“治して”あげる事ができる様になるから。

だけど・・・そんな可憐ちゃんの望みは・・・結局、叶う事はなかった・・・。

“彼女”はもう居ない。

死んでしまった。

可憐ちゃんを守る為だった・・・
アタシが留学する少し前に・・・ある事件で・・・。

アタシにもどうにも出来なかった・・・。

“彼女”をただ直すだけなら出来た。
ただし、それまでの“彼女”とはまったく別の・・・
もう一度、全てがゼロになった、見た目だけの“彼女”になら・・・。



だから、“彼女”は・・・死んだんだ・・・。












アタシは・・・本当は留学前に気持ちを伝えようと思っていた・・・。

だけど・・・
愛した者を失ったばかりの可憐ちゃんに・・・そんな事、とてもできなかった・・・。

だからアタシは、可憐ちゃんの心の傷が癒えるのを待つ事にした。
傷が癒えてから・・・気持ちを伝えようと思った。
そう思って・・・帰ってきた時に伝えようと・・・そう考えていた・・・。



でも・・・彼女の中でその傷は何時まで経っても癒える事はなかった・・・。



帰ってきて可憐ちゃんがアタシを見た時にすぐに分かった。
すぐに感じた。
アタシを通して“彼女”を見ている事を・・・
彼女がアタシを通して“アタシの代わり”を見ている事を・・・。



なんて滑稽な話だ。



アタシが最も愛した人の中でのアタシと“彼女”の立場は・・・完全に入れ替わってしまっていた。
人である生身のアタシを通して、人ではない“鉄のアタシ”を見ていた・・・。












だけど、それを知っていて・・・、それを利用してまで・・・、
アタシは可憐ちゃんを・・・愛した人を・・・求めた・・・。






アタシは“アタシの代わり”の“代わり”として彼女に愛される。

それでもいいと思った・・・彼女に愛されるなら・・・。
だから、アタシは後悔していない。
彼女の心を捉えて離さない“彼女”を作った事も。
アタシは“彼女”のお陰で彼女に愛される事ができる。
“彼女”が居たからアタシは彼女に愛されてる。
たとえの“代わり”だとしても・・・・・・それ程貴女が好きだから・・・。


















可憐ちゃん・・・
アタシ・・・“代わり”でも・・いいから・・・
だから・・・
だからずっと・・・一緒に・・・居させて・・・。
























ねえ、誰か教えて・・・

“機械人形”の“身代わり人形”になった・・・こんなアタシは・・・惨めな存在なの・・・?


あとがき

なりゅー初の英語タイトル。
自分、英語力無いから出来ないと思ってました。
この作品、作ってる時にものすご〜〜〜〜〜〜く混乱したから またもや上手く行ってない気がしますが・・・。
でも本当は2作品目に取り掛かってたのに 27作品目(表作品で)に完成したって言う物凄く難産した子供なんですよ!
もう健康なら男の子でも女の子でもどっちでもいい!!
ああ、生きてるってそれだけで素晴らしいっ!!
・・・って、あとがきで一体何を書いてるんだ?


更新履歴

H15・8/18:完成
H15・8/21:行間隔、言い回し、多少修正
H15・11/16:脱字修正


 

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