「衛ちゃ〜ん、ちょっといいかなぁ?」
花穂は衛ちゃんに用があったので部屋のドアをノックしながら尋ねました。
でもお返事は返ってきませんでした。
「? ……衛ちゃん?」
かっこいい事はいけない事
今日は午前中、衛ちゃんと一緒にお買い物に行きました。
花穂のお買い物に衛ちゃんは付き合ってくれたの。
それから花穂達は、お昼には家に帰ってきました。
お昼ごはんを食べてから衛ちゃんは自分の部屋に向かいました。
その後他のみんなはそれぞれの用事があるみたいでみんな出掛けました。
その時に衛ちゃんは一緒に家を出たりしていないし、
それに部屋のドアの開く音もしなかったから、
衛ちゃんが部屋にいるのは間違いないと思うんだけど……
…………
まさか窓から!?
「衛ちゃん、入るよ!」
花穂は心配になって衛ちゃんの部屋に急いで入りました。
「……って、衛ちゃん?」
ドアを開けるとやっぱり衛ちゃんは部屋の中にいました。
衛ちゃんはベッドの上でお布団の上に横になって、手に雑誌を握りながら横になっていました。
「衛ちゃん…………寝てるの……?」
お布団の上で横になってる衛ちゃんはすーすーと寝息を立てていました。
なんだぁ……寝てたから返事がなかったんだぁ。
そうだよね、よく考えたら衛ちゃんがこっそり家から抜け出す理由なんてないもんね。
四葉ちゃんじゃあるま いし。(←「どう言う意味デスか!?」By四葉)
衛ちゃんは、なんだか雑誌を読んでいたらそのまま寝ちゃったって感じでした。
そう言えば衛ちゃん昨日はいっぱいはしゃいでたっけ。
じゃあきっと昨日の疲れがまだ残ってたのに、今日花穂のお買い物付き合ってくれたから、
その疲れが溜まっちゃってそれでそのまま寝ちゃったんだね。
「…う、ん……」
「衛ちゃん?」
衛ちゃんの体が少しだけ動きました。
「起きたの?」
そう思って花穂、衛ちゃんに話しかけたの。
でも返事はありません。
どうやらただの寝返りみたいです。
「…………花穂、ちゃ……」
衛ちゃんが花穂の名前を口にしました。
花穂の夢……見てるのかな?
だったらなんか…恥ずかしいな……。
どんな夢だろう……?
花穂と一緒に遊んでる夢かな?
衛ちゃん男の子みたいだから男の子みたいな夢見てたりして。
……いくらなんでもそんなはずないよね。
でも花穂が出て来て、男の子みたいな夢って一体……
……花穂と衛ちゃんが……
…………。
「……って花穂はなに考えてるのっ!?」
「……うう…ん…」
あ! いけない!
花穂ったらつい大声出しちゃたぁ!
「衛ちゃん……起きちゃった?」
静かに尋ねました。
「……う…………ん……」
……どうやらまだ寝てるみたいです。
あ〜、よかった。
でも衛ちゃんってほんと男の子みたい……。
衛ちゃんの寝顔を見てたらそんな事考えちゃった。
だって自分の事を「ボク」って呼んでるし、名前も「衛」ってそんな感じだし、とにかく動く事が大好きだし……。
運動している時の衛ちゃんはすごく生き生きして、楽しそうで、……とってもかっこいいの。
だから花穂、そんな衛ちゃんをつい応援しちゃうんだよね。
花穂がチア部に入ってるからそうなっちゃうのかな?
でも花穂……そんな衛ちゃんを応援するのがとても好きなんだ……
花穂の応援で衛ちゃんを元気にしてあげられる、
そう思うと花穂、とってもとっても嬉しい気持ちになるの。
花穂ね、衛ちゃんの事……
花穂の知っているどんな男の子よりもかっこいいって……そう思ってるんだよ。
ほんと……衛ちゃんはかっこいいなぁ……。
……って、え? なんだろう……?
そんな事考えながら衛ちゃんの寝顔見たら……きゅ、急に…胸が……
「か、ほ…ちゃん……」
あ、衛ちゃんがまた花穂の名前を……!
えっ!? あ、あれ!? な、なんで……っ!?
胸が……ドキドキして…………どうしよう……止まらないよぉ……。
か、花穂は一体……
……え? えっ? なに?
今度は衛ちゃんがどんどん近づいてくる。
な、なので?
衛ちゃんは今お昼寝してるのに……
あ、違う……、近づいてるのは花穂の方だ。
花穂が衛ちゃんに顔を近づけてるんだ……。
衛ちゃんが……どんどん近くに……
このまま近づいたら……どうなるのかな……?
花穂の口と衛ちゃんの口がくっついて……
それって……
…………
…………
…………
「かかか、花穂は何を考えてるのっ!?」
そう言って花穂は急いで顔を引いたの。
そそ、そうだよ!
い…いくら男の子みたいでも衛ちゃんは女の子なんだよ!
なのに! なのに花穂……今…………
どうしよう……胸が……
思いっきり走った時みたいにドキドキする……
全然止まらないよぉ〜……。
なんで!? なんで花穂は衛ちゃんにあんな……あんな……
…………
「もう! 衛ちゃんがいけないんだからね!」
そうだよ、全部衛ちゃんがいけないんだよ!
「衛ちゃんが! 衛ちゃんが……!」
花穂はそこで一回言葉を止めると静かにこう続けました。
「……衛ちゃんが…………かっこいいから……」
「ねえ、衛ちゃん…………どうして衛ちゃんは、男の子じゃないの……?」
眠っている衛ちゃんにそう聞きました。
でも、眠っている衛ちゃんはそれに答えてはくれません。
ほんと、こんなに男の子みたいなのに……こんなにかっこいいのに……どうして男の子じゃないんだろう……?
生まれてくる時に間違えちゃったのかな?
…… こんなこと言ったら衛ちゃんに怒られちゃうかな?
それとも「ボクもそう思うよ」って笑って言うのかな……?
でも衛ちゃんは女の子なんだよね……。
なのに……
…………。
「…………全部、衛ちゃんがかっこいいのがいけないんだから……」
「だから……今、花穂が衛ちゃんのファーストキス奪っちゃった事……文句言わないでよ……」
「ふわぁ〜〜〜あぁ〜ぁ〜……」
しばらくして、花穂が居間でおやつを食べていたら衛ちゃんが起きてきました。
「あ、衛ちゃんおはよ」
「ん〜〜〜……ああ、おはよ……かほちゃん……」
衛ちゃんはまだちょっと寝ぼけているようで、そんな声を出していました。
花穂は…………さっきの事があるからなるべく普通にしていようと気をつけています。
顔……赤くなってないよね……?
「昨日、いっぱい動いたからその疲れが残ってたの?」
頑張ってなるべく普通に衛ちゃんに話しかけました。
「ん〜……そうみたい……」
頭を掻きながらそう言う衛ちゃんはまだ眠たそうです。
花穂は……うん、普通に話せている。
どうやらなんとかなりそうです。
「……あれ、みんなは……?」
みんなが家にいない事に気づいた衛ちゃんは、寝ぼけてだるそうな声のまま花穂に聞きました。
「なんかお出かけしちゃった、今家にいるのは花穂と衛ちゃんだけだよ」
花穂がオレンジジュースの入ったコップを手に取りながらそう答えました。
衛ちゃんは「ふ〜ん」って答えたら、そのまま手を組んで腕を上に上げて背伸びをしました。
「それよりも…………あ、あのさ……その……花穂ちゃん言っておきたいことがあるんだ……」
「なに?」
花穂はそう聞いてそのままコップを口まで運びました。
「その……お願いだから……―――」
ブブゥゥゥゥゥッッ
ガシャーーーン
「あっ! 花穂ちゃん大丈夫!?」
衛ちゃんのお願いの言葉に、花穂はそのまま口に含んでたオレンジジュースを全部噴き出して、
持っていたコップを床に落として割ってしまいました。
衛ちゃん……花穂は大丈夫じゃありません……。
だって……
『……ああいう事はキチンと起きてる時にやってね……』
……衛ちゃん……さっきの事気づいてたんだもん……。
もう衛ちゃんの顔、恥ずかしくてまともに見れないよぉ……。
あとがき
やっと公認カップル(笑)の“まもかほ”が書けました。
なりゅーは、大体この位の長さの話を大量生産したいと考えています。
ですがいつもついつい長くなりがちになってしまうのですが、
そう言う意味ではこの作品は久しぶりに成功と言えると思っています。
でも衛がかっこいいって言うのは書いてて「なんか違うんじゃ?」って思いましたけど、
これは花穂視点なので納得して下さい(笑
H15・8/12:完成
H15・8/13:脱字修正
H15・8/16:微修正
H15・8/25:脱字修正
H19・2/11:書式、脱字修正
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