「くすん・・・くすん・・・」
「亞里亞ちゃん・・・もう泣かないで・・・」

 約束・・・。

「亞里亞・・・ここに残りたい・・・。 ここに残って・・・雛子ちゃんと・・・ずっと・・・」

 それは小さい頃の約束・・・。

「でも、そんなのダメなんでしょ?」
「くすん・・・」

 幼かったあの日の約束・・・。

「亞里亞・・・フランスに戻りたくない・・・」
「・・・亞里亞ちゃん」

 彼女が遠くに行ってしまう前に交わした・・・

「・・・・・・ねえ、亞里亞ちゃん、ずっとフランスに居る訳じゃないんでしょ? だったら・・・」

 もう何年も前の・・・

「だったら帰って来たらヒナがお嫁さんにしてあげる!」
「え・・・」

 小さな、小さな・・・約束・・・。

「そうしたらずっとずっと一緒に居てあげられる! ずっとずっとヒナが守ってあげる!」

 でも、それはヒナにとって大切な・・・

「だから約束して・・・亞里亞ちゃんはもっと強くなるって・・・。 いつまでも弱いままじゃいけないよ! だから・・・」

 大切な約束・・・。

「約束だよ・・・」


 これはヒナと亞里亞ちゃんの小さい頃の思い出・・・。











 

ヒナのひみつのハイスクールらぶ

−小さな約束−













「ほら! 朝だぞー!」

まどろみの中、聞こえてきた声。

「起きろー! この寝坊助!!」

夢の中の思い出の世界に居たヒナはその声で現実に引き戻された。

「いい加減にしないとこっちだって遅刻するんだってば!」
「・・・う〜・・・あと五分・・・」

声の主にまだ眠気の覚めない頭でそう答える。

「はぁ・・・・」

聞こえてきたため息。
そしてその後にやって来た・・・―――

「い・い・加・減・起きろ!! この寝坊助雛子ォッ!!」
「うわぁッ!?」

―――・・・『奥義・布団引っ繰り返し攻撃』・・・。


    ドテンッ


「・・・痛い・・・」

ヒナの体はそのまま布団を飛び出し、床に激突しました。

「おはよ、雛子ちゃん♪」

床に布団ごと引っ繰り返されたヒナを上から見下ろしながらそう話し掛けて来る声がした。

「おはよう・・・」

声の主は分かっている。
だからヒナはそのまま声の主に挨拶を返した。

「目は覚めたかしら?」
「覚めた・・・」

主に痛みで・・・。

「そう、それは良かったわ。
 じゃあさっさと着替えて朝ご飯食べて歯磨いて顔洗って私と学校に行ってくれないかしら?」

いつも通りの早口言葉で少し怒ってる感じにそう言ってきた彼女・・・

「ほら! とっとと行動する!!」
「は、はい!」

このやり取りももう習慣になったかもしれない・・・。



大きくなったヒナと亞里亞ちゃんの、この朝の風景は・・・。












「行ってきます」
「いってきま〜す・・・」

二人揃ってヒナの家を出た。
向かう先はヒナ達の通っている高校。
そう、ヒナ達は高校生になったのだ。
ヒナは高校一年生、亞里亞ちゃんは二年生、
それで二人で同じ大学の付属高校に通っている。



亞里亞ちゃんはヒナにとってはお姉ちゃんに当たる人だ。
ヒナには十一人もお姉ちゃんが居る。
だけどみんなとは一緒に暮らしていない。
それぞれがそれぞれの家で暮らしている。
事情は・・・大きくなった今でもよく分かってない。
亞里亞ちゃんはそのお姉ちゃんの一人。
ヒナより一つ年上で、みんなの中で一番ヒナと歳が近い。
最初は九人姉妹だと思っていた。
ヒナはそれでも多いと思っていたけど・・・ある日、まだ三人居る事を聞かされた・・・。
で、その三人のお姉ちゃん、当時は“おねえたま”って呼んでたけど、その中に亞里亞ちゃんが居た訳。



「どうしたの雛子ちゃんそんな顔して?」

ヒナは今、亞里亞ちゃんを見て複雑な表情をしていると思う。

「亞里亞ちゃんってさ・・・小さい時から性格変わり過ぎ・・・」
「よくじいやに言われるわ」

そりゃそうだろう・・・。
なんせ彼女は小さい頃から180°性格が変わっているのだから。

「なんでそんなになっちゃったの?」
「あんたが強くなれって言ったでしょ!」

そりゃ言った。
言ったけど・・・

「強くなり過ぎ・・・」
「そう? だったら良かったじゃない♪」
「亞里亞ちゃん・・・『過ぎたるは及ばざるが如し』って言葉、知ってる?」
「亞里亞ちょっと前までフランスに居たから分かんな〜い♪」
「ウソだ・・・」

亞里亞ちゃんの言う通り、亞里亞ちゃんは最近までフランスに居た。
小さい時、折角ヒナ達に会えたと言うのに、亞里亞ちゃんは何かの事情でフランスに戻らなくちゃいけなくなった。
そしてそれは亞里亞ちゃんと初めて会ってから一年と少しが経った時の事だった。
亞里亞ちゃんは当時その事を凄く嫌がっていた。
折角みんなと会えたのに、また会えなくなる事が寂しかったから。
だからヒナは亞里亞ちゃんを説得した。
まあ、説得って程の事じゃなかったとは思うけど・・・。
その時の事がさっきの夢。
その時、ヒナは亞里亞ちゃんに「強くなれ」って言ったの。
当時の亞里亞ちゃんは、寂しがり屋で泣き虫だった。
亞里亞ちゃんの方がお姉ちゃんだったって言うのに、ヒナの方が守ってあげる立場だった。
だから亞里亞ちゃんがフランスに戻ってまた会えなくなったら
もうヒナが守ってあげる事が出来なくなる。
だから言ったの、「強くなれ」って。
そう言った・・・。
言ったけど・・・



去年フランスからこっちに戻って来た亞里亞ちゃんはこのように別人になってしまっていました。



「ねえ・・・実は亞里亞ちゃんは別の人と体が入れ替わってて、亞里亞ちゃんの体に居るのは亞里亞ちゃんじゃないって事・・・」
「本の見すぎドラマの見すぎ漫画の見すぎ映画の見すぎ!」
「・・・・・・」

はぁ・・・。
つまりヒナがあの可愛い亞里亞ちゃんをこんな風に変えてしまった元凶と言う訳。





「昔はもっとほんわかしてて、落ち着いた感じで、のんびり屋さんで・・・」
「つまりトロかったと言いたいのね」
「何より口は悪くなかった・・・」
「あのね、『時は金なり』って言うでしょ? 『Time Is Money』よ、『Time Is Money』!」

口が悪いって所は無視ですか?

「亞里亞ちゃんの家、お金持ちじゃない・・・」
「そう言う事言いたいんじゃないの! 時間は大切なの!
 人生は短いんだからノロノロ動いているとアッと言う間にヨボヨボのおばあちゃんになっちゃうわよ!
 そう言う意味ではあの時のあたしは馬鹿だったわ! あー、もうなんであんなにトロくさかったのかしら!
 自分で自分に腹が立つ!」
「・・・・・・」

今の亞里亞ちゃんは、なんでも小さい頃無駄に過ごしていた時間を取り戻したいらしい・・・。

「どうしたの突然黙って?」
「ヒナはとんでもない事をしてしまったのかもしれない、って思ってた・・・」
「・・・・・・」

突然、亞里亞ちゃんが黙った。

「亞里亞ちゃん?」

あんなに喋り捲っていた亞里亞ちゃんが突然黙るとなんか怖い。

「“ヒナ”ねぇ・・・」
「あッ!!」

ここでヒナは亞里亞ちゃんが突然黙った理由を理解した。
そしてその直後、亞里亞ちゃんにスイッチが入ってしまった事も理解した。

「それは止めなさいって言ったでしょ! 全くいつまで経っても子供なんだから!
 雛子ちゃん! 雛子ちゃんは今いくつ!? 15よ! 15!! 分かってるの!?
 って言うか高一にもなってまだ“ヒナ”!? あのね、人には『強くなれ』って言っておいて自分はどうなのよ!?
 まだまだ子供っぽさが抜けないと言うかなんと言うか・・・」

ヒナは亞里亞ちゃんに“ヒナ”と言うのを止められていたのだ・・・。
理由は・・・まあ、今の亞里亞ちゃんのマシンガントークで分かると思う。

「・・・って聞いてるの!?」
「はいはい、“私”が悪うございました!」
「・・・よろしい」






「そう言えば、ヒ・・・」
「あん!?」
「“私”さっき夢でその時の事見てたよ」
「よろしい」

亞里亞ちゃん・・・あなたは不良かヤクザですか?

「・・・で、その時の事って?」
「ヒ・・じゃない、“私”が亞里亞ちゃんに強くなれって言った時の事」
「ああ、雛子ちゃんの“禁断のプロポーズ”ね」
「・・・・・・」
「はいはい、悪かったわよ」

あの時はお互い“女の子同士じゃ結婚できない”なんて知らなかった。
あの時のヒナにとっては結婚って言うのは『好きな人といつまでもずっと一緒に暮らす事』だった。
だから、ヒナはただ亞里亞ちゃんとずっと一緒に暮らしたいって思ってそう言ってしまった。
姉妹なのに一緒に暮らせなかったからなおさら・・・。
亞里亞ちゃんも、同じ風に考えていたんだろう。
大体、あの時ヒナは亞里亞ちゃんに「守ってあげるから強くなれ」って言ってたんだ。
その時点で矛盾してる・・・。
まだなんにも分かんなかったって証拠だ。

「で、それがどうしたの?」
「・・・・・・あの時『強くなれ』って言った事を後悔してる・・・」

あの亞里亞ちゃんがこんな亞里亞ちゃんになるなんて・・・。

「なに?」
「なんでもない・・・」
「そんな事言ってると、もう起こしに行ってやらないわよ、寝坊助!」

・・・聞かれてたみたいだ・・・。

「あたしが居なくて寝坊助雛子ちゃんは一人で起きれるの?」
「起きれるよ! それに亞里亞ちゃんが居なくてもお母さんが起こしてくれるよ!」
「おばさまの余計な手間を省いてあげてるんでしょ?」

姉妹なのに親が違うのはどう言う事だ、って思った人。
ヒナもよく分かんないんだから突っ込まないで・・・。

「でも、お母さんは布団を引っ繰り返す様な事は・・・・・・・・・」
「どうしたの?」

された・・・。

「別に良いじゃない。 あたしの通学路上に雛子ちゃんの家があるんだから。 ついでよ、ついで。
 それに一緒にこうして学校に行けるんだし」
「それはそうだけど・・・」
「・・・っと、もう着いちゃった」
「え・・・?」

そんな話をしながら歩いていたらもう学校に着いていた。












「あ、亞里亞先輩、おはようございます!」
「お、おはようございます・・・」

学校の玄関に入るとヒナと同じ一年生の生徒達が亞里亞ちゃんに挨拶をしていた。

「おはよう」

亞里亞ちゃんもその子達に笑顔で挨拶を返してた。
そうすると、その子達はそのまま自分達の教室向かうのだろう、学校の中に走り去って行ってしまった。
ただヒナにはその子達が、

「きゃー、憧れの亞里亞先輩に話しかけちゃったー!」
「見た!? あの神々しい笑顔!」
「ああ、今日の星占いで良い事があるって、この事だったのね・・・」

とか話してるのが聞こえてきた。
そしてそれを聞いてヒナは「また今日も始まったんだ」と思った。






「あ、亞里亞先輩、お、おはようございます・・・」
「おはようございます!」
「やあ、おはよう」
「あら、亞里亞さん、おはよう」

今度は別の方向から色んな人が亞里亞ちゃんに挨拶の嵐を送っていた。
今みたいな子、亞里亞ちゃんと同級生の人、三年の先輩・・・ついでに教頭先生・・・。
亞里亞ちゃんはそんな人達にキチンと挨拶と笑顔を返していた。

「あら、貴女・・・リボンが曲がってるわ」
「え・・・」

亞里亞ちゃんはそう言って下級生の子、ヒナとは同級生の子だけど、その子の制服のリボンを直していた。

「あ、ありがとうございます・・・!!」
「今度から気をつけてね」

亞里亞ちゃんは落ち着いたいかにもお嬢様な感じの雰囲気で、優しく微笑みながらその子に語りかけた。

「は、はい!」

その子はそう言った後、物凄く照れてる様な感じで走って行ってしまった。

「亞里亞さん、気が利くのね?」

三年の先輩が亞里亞ちゃんに話しかける。

「いえ、上級生として当然の事をしただけですから。 大した事じゃありませんよ、先輩」

亞里亞ちゃんは落ち着いた感じでそう答える。

「流石は上流家庭のお嬢様ですね」

と、教頭先生。

「そんな風に言わないで下さい、先生」

と、亞里亞ちゃん。

「ああ、亞里亞さんって本当凄い人よね・・・」

二年の先輩。

「そんな事無いですよ」

亞里亞ちゃん。

「貴女も幸せ者ね、自分でもそう思うでしょ? 自分の姉がこんなに素敵な人で良かったって。
 えっと・・雛子・・ちゃん、だったかしら?」

と、三年の・・・ってヒナに話し掛けてきたよ!

「あ、はい、そうです」
「やっぱりね。 こんなに素敵なお姉さんだもんね」
「・・・・・・」

・・・ちなみに今のヒナの「そうです」は名前の事についてで“素敵な人”の返事ではない。
だけどこの三年の先輩はどうやらそう受け取ってしまったらしい。

「じゃあ私達はもう行きますね」

この場に居たみんなにそう言ってヒナ達は学校の中に入って行った。
・・・ちなみに今の台詞は亞里亞ちゃんのものである。












「どうしたの、そんな顔して?」

亞里亞ちゃんがヒナにそう話しかけてきた。
そんな顔って言うのは多分ヒナの呆れた顔の事だろう。

「いや・・・あの人達は真実を知らずに暮らしていくんだろうな〜、って思って・・・」
「真実?」

多分、今のやり取りで分かっただろうけど・・・亞里亞ちゃんは学校ではこの様に見事にお嬢様の皮を被るのだ!
いや、お嬢様なのはホントだけど・・・。

「さっきの事を言いたいなら、こっちも言わせて貰うけど、雛子ちゃんだって猫被りくらいするでしょ?」
「そりゃ少しはするけど・・・亞里亞ちゃん程じゃないよ・・・」
「引っ掛かる言い方ね・・・。 それと学校の中では一応『亞里亞先輩』って呼びなさい」
「分かりました、亞里亞先輩」
「よろしい」
「ところでさ、いつもそんな感じで疲れない?」
「別に、寧ろあっち状態で居る事の方が長いから慣れたわ」

ちなみにあっち状態との区別の仕方は、亞里亞ちゃんの一人称が「私」か「あたし」かで分かる事が出来る。

「そう言うもんなの?」
「そう言うもんよ。 じゃ、あたしはこっちだから」
「うん・・・」
「あ、そうそう。 今日はあたし用事があるから、先帰ってて良いわよ」
「え、そうなの?」
「そうなの。 じゃ」
「あ、うん、じゃあね、亞里亞ちゃん」
























「はぁ・・・」

一人自分の教室に入り、自分の席に鞄を置いてため息を吐いた。

「お、ヒナ公のヤツがやって来たか」

教室の隅の方から女生徒のそう言う声が聞こえてきた。
『ヒナ公』・・・これはヒナのあだ名だったりする・・・。
雛子だからヒナ公・・・単純明快だ。

「どうしたヒナ公、そんな顔して」

さっきまで教室の隅に居た女生徒はヒナの所まで駆け寄るとそう話しかけてきた。

「すずちゃん・・・」
「名前で呼ぶなって言ってるでしょ!」

この子の名前は『大木すず』、ヒナのクラスメート兼友達。
自分の名前が古臭いって気にしているらしい。

「で、どうした?」
「・・・自分の姉について考えてる・・・」
「自分の姉? ああ、あんなに素晴らしいお姉さま方に囲まれているのに自分は何の才能も無い、って悩んでるの?」
「違う・・・。 でもそれはそれで悩んでる事だったりするけど・・・」
「じゃあなにで悩んでるの?」
「・・・亞里亞ちゃん・・・じゃなくて、先輩ってどんな人だと思う?」
「そりゃあ、上流家庭のお嬢様で、成績優秀、運動神経抜群、尚且つ美形、その上礼儀正しく、我が校始まって以来の究極の歌姫。
 何をやらせても何でも出来てしまう才能の塊、至高のダイヤモンドの逸材でありながらそれを全く鼻に掛けず、
 さらに天使の様な優しさと、我が校の人気女子生徒高校生部門ナンバーワンの称号を持つ、文武両道、才色兼備の史上最高の完璧人間」
「・・・・・・」

まあ、確かに今の亞里亞ちゃんは、頭も良いし、運動神経抜群だし(これについては一番驚いた)、綺麗だし、歌だって上手くて何でも出来るけど・・・。

「で、その人の妹のヒナ公はどうしたって言うの?」
「その人が毎朝ヒナを布団ごと引っ繰り返してるって言ったら信じる?」

・・・こういう事する人は果たして優しいんだろうか?

「アンタが嫉妬して亞里亞先輩の評判を落とそうとしてると思う」
「・・・・・・」

真実は闇に葬られ、偽りの人間像だけが一人歩きしてる・・・。
ちなみにすずちゃんは亞里亞ちゃんの本性を知らない。

「大体、アンタだってみんなから羨ましがられてるじゃない」
「そうなの?」
「『妹』ってだけで亞里亞先輩と一緒に学校に通えたり、無条件で親しくなれるとこ」
「亞里亞ちゃん絡みだけじゃん・・・」
「“亞里亞先輩”じゃなかったの?」
「大体それだって無条件じゃないよ・・・」
「じゃあ条件ってなによ?」
「もれなく亞里亞ちゃんの本性が見れます・・・」
「アンタ、やっぱり嫉妬してるでしょ?」

いえ、ヒナの言葉の方が真実です。

「自分に才能が無いって、そんな事で悩んでたの? あのね、アンタだって立派に才能・・・」


    ガラガラガラ・・・


「はい、皆さん席に着いて下さい」

ヒナ達がそんな話をしている最中、教室の扉が開き、そこから入ってきた人はそう言ってきた。

「・・・もう先生来ちゃった・・・。 じゃ、後でね」
「うん・・・」

そう言ってすずちゃんはそのまま自分の席に戻っていった。






「じゃあ出席を取りますね、まずは青山君」
「はい!」

先生が出席を取っている間、ヒナは考え事をしていた。
亞里亞ちゃんについて・・・。
亞里亞ちゃんは変わった。
昔と比べて180°正反対に。
昔はヒナが亞里亞ちゃんの事を守ってあげてた。
実際はどうだったか良く分かんないけど、少なくともヒナはそうして来たつもりだった。
でも、今の亞里亞ちゃんにはそれは必要の無い事だ。
亞里亞ちゃんは成績も良い、なんせ学年トップだ。
おまけに運動神経抜群・・・奇跡でも起こったのか?
それに・・・とても綺麗になった・・・。
昔も可愛かったけど今はそれに更に磨きを掛けたって感じだ。
去年久しぶりに会った時・・・ドキッ、ってしたもん・・・。
・・・でもその後の見事なほどの変貌を見せられてガクッ、としたけど・・・。
亞里亞ちゃんはホントに変わった・・・。
凄く変わった・・・まるで別人の様に・・・。

・・・・・・。

・・・って言うか別人じゃないの?
いや、分かってるって!
アレは亞里亞ちゃんだよ、間違いない!
はぁ・・・それに引き換えヒナはなんにも変わってない・・・。
一人称だって、亞里亞ちゃんは“あたし”(人前では“私”)になってるのに、ヒナは未だに“ヒナ”だ。
それに気持ちだって・・・

「雛子ちゃん・・・」
「え!?」

突然、後ろの席の子がヒナの事をシャープかなんかでつつきながら名前を呼んできた。

「雛子ちゃん、出席・・・」

出席・・・?

「雛子ちゃん・・・あなた、今日は欠席になってよろしいんですか?」

前を見ると先生がヒナにそう話しかけてきてた。
絶対少し怒ってる。

「あ・・い、居ます! ヒナ出席しています!!」
「はい、雛子ちゃんは出席・・っと」

そう言って先生は出席簿にペンを走らせる。

「全く・・・あなたはいつもいつも出席を取る時にボーっとして・・・雛子ちゃん、あなた、ワタクシが担任だからって気を抜いてませんか?」
「そ、そんな事無いよ!」
「・・・雛子ちゃん・・・」
「なに?」
「学校では生徒と教師なんですから、言葉使いには気をつけなさいっていつも言っているでしょう!」
「あ、はい! すみませんでした!」

・・・言い忘れていたけどヒナの担任の先生は春歌ちゃんだったりする。






1時間目が始まる前の休み時間、すずちゃんがヒナの所にやって来てこう言った。

「そうそうヒナ公、さっきは聞き損ねたんだけど。 私、アンタに聞きたい事があるんだけど!」
「なに?」
「亞里亞先輩に婚約者が居るって本当?」
「・・・・・・」
「どうしたの? 呆れて声が出ないとか?」
「・・・・・・」

ちなみにヒナは呆れて声が出ないんじゃなくて、驚き過ぎて声が出ないのだった・・・。

「・・・そ、その話何処から!?」

大声出すタイミングを逃した・・・。
でも、今更出す必要も無い。
だから絞り出すくらいの声で十分だった。

「三葉の情報」

それに対してすずちゃんはあっさりとそう言った。
ちなみに『三葉』と言うのはヒナのクラスの子で、様々な情報を速攻で手に入れてくる子。
いつもカメラを手に持ってて・・・なんか四葉ちゃん高校生バージョンって感じの子だ。
って言うか『三葉』と『四葉』って言うのもただの偶然とは思えない・・・。
ついでに言うとその子は“チェキ”が口癖って事は無い。

「じゃあヒナ公は知らないの?」
「うん、そんな話亞里亞ちゃんから聞いた事無い・・・。 ・・・でも、まさか亞里亞ちゃんに婚約者なんて居る訳・・・」
「何言ってるの! 亞里亞先輩だから居そうなんでしょ!!」
「どうして?」
「鈍いわねヒナ公は! あのね、亞里亞先輩はアンタと違って上流家庭のお嬢様なのよ!」
「まあ、そうだけど・・・」
「・・・・・・」

ヒナの言葉に突然黙って何かを考え始めるすずちゃん。

「どうしたの?」
「いや、それでなんでアンタと亞里亞先輩が姉妹なのか疑問に思って・・・」
「大丈夫、ヒナもよく分かってないから」
「それは“大丈夫”なの?」

多分“大丈夫”ではない。

「いいから続けて」
「あ、うん・・・。 で、そう言うのは大抵婚約者、もしくは親同士が決めた許婚って言うのが居るの」
「なんで!?」
「“政略結婚”って言えば早いかしら?」
「・・・・・・早かった・・・」

亞里亞ちゃんに婚約者。
そんな事考えた事も無かった・・・。
でも、すずちゃんの言う通りだ。
亞里亞ちゃんはヒナと違ってそう言う家庭で育ったんだ。
無いなんて言い切れない・・・。



亞里亞ちゃんに婚約者・・・。
そんなの・・・ヤダよ・・・。

だってヒナは・・・



「でもやっぱりデマだったみたいね」
「えッ!?」

亞里亞ちゃんに婚約者が居るかも・・・
そう不安になっていたヒナの考えを遮るようにすずちゃんが自信たっぷりにそう言った。

「な、なんで?」

すずちゃんが自信たっぷりにそう言う理由が分からない。
だからヒナはすずちゃんに聞き返した。
するとすずちゃんの答えはこうだった。

「亞里亞先輩と一番仲良さそうなアンタが知らないから」

すずちゃんがそう言い終わるのと同時に一時間目のチャイムが鳴り響いた。






授業中ヒナはさっきの話の事を考えていた・・・。
亞里亞ちゃんからそう言う話を聞いた事は無い。
それにそうなったら亞里亞ちゃんだってヒナに話してくれる。
・・・多分。
すずちゃんの言う通り、ヒナが知らないんだ・・・・・・デマに違いない・・・デマに・・・決まってる・・・。
じゃないと・・・ヤダ・・・嫌だよぉ・・・。
だってヒナは・・・亞里亞ちゃんの事・・・



・・・好き・・・なんだから・・・。





ヒナは小さい頃からなんにも変わってない・・・。


    『だったら帰って来たらヒナがお嫁さんにしてあげる!』


そしてこの気持ちも・・・。
女の子同士で結婚できないって分かった今でも・・・そう思ってる・・・。

亞里亞ちゃんがフランスに行った時もそう思ってた。
結婚できないって分かった時は、ちょっと残念だった・・・。
でも一緒に居るくらいならいいかなって思ってた。
それくらいならできると思ってた。
その時はただ一緒に居たいって気持ちだと思ってた。
それに女の子同士でそんな感情、普通は無いんだから、この気持ちは違うんだろうって思ってた。

・・・けど、亞里亞ちゃんが帰って来た時・・・綺麗になった亞里亞ちゃんを見た時・・・、ヒナの中で何かが爆発した・・・。
ヒナは確信した・・・これは“恋”だったって・・・。



何回も何回も考えた。
女の子にこんな気持ち・・・普通は無いのにって・・・。
だから違うはずなんだろうって・・・。
でも、何度考えても・・・

やっぱりこれは“恋”だった・・・。



自分でも普通じゃないって思ってる。
でも、不思議な事に亞里亞ちゃんを好きだって事が分かった時は、なんか嬉しかった。
それに、何回も考えた時も「ああ、やっぱりそうだったんだ」って思ったし。
それに・・・

・・・・・・

・・・あの豹変した亞里亞ちゃんを目の当たりにしておいて、それでも好きで居る自分が不思議で不思議でたまらない・・・。

・・・・・・。

・・・なんでじゃ?


でも、まあ・・・



やっぱりヒナは亞里亞ちゃんが好き・・・。



残念なのはこの恋が叶わないって事。
だって女の子同士だもん。
だからいつかは男の子に取られちゃうんだろうな・・・。
その時は、キチンと受け入れて亞里亞ちゃんを応援してあげたい。
応援してあげたいんだけど・・・・・・耐えられるかなぁ・・・?
自信無い・・・。
大体、今は婚約者がどうとかで悩み始めてるんだ・・・。

・・・・・・。

このままだと再起不能になるかも・・・。

「はぁ・・・」

ヒナは一つため息を吐いた。
気がつくと黒板は文字で埋め尽くされ、ヒナのノートは真っ白のままだった。
だからヒナは焦って黒板の文字をノートに写し始めた。
























「雛子ちゃん」

4時間目が終わって昼休みに入った時、春歌ちゃんが話し掛けてきた。

「なに、春歌ちゃん?」

ヒナは机の中に教科書やノート等を入れ、鞄からお弁当を出しながら答えた。

「・・・雛子ちゃん・・・」

しかし、春歌ちゃんは低い声でヒナの名前を呼んだ。

「あ! な、なんですか、春歌先生!?」

その低い声の理由を理解したヒナはそう言い直した。

「率直に聞きますね」
「うん」

一体何を聞くんだろう・・・?

「今のワタクシの授業・・・キチンと聞いていましたか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ゴメンなさい・・・」

聞いてませんでした。
春歌ちゃんは「やっぱり」って表情をして、ため息を吐いてた。
理由は・・・1時間目と同じ。
ついでに言うと2時間目と3時間目も。

「・・・なにか悩み事でもあるんですか?」
「悩み事・・・ねぇ・・・」

ヒナは少し考えてからこう答えた。

「亞里亞ちゃんの事で、ね」

ここは話しておく事にしよう。

「亞里亞ちゃんの事・・・ですか?」

話すだけでも意外と楽になるし、それに全部話す必要も無いんだから。

「ああ、亞里亞ちゃんが恋文を頂いたという事ですか」

ヒナが亞里亞ちゃんの事好きって所はちょっとオブラートに包んで・・・

・・・・・・。

・・・“コイブミ”?

「確かにお二人は中がよろしいですから。 亞里亞ちゃんを取られてしまうとかそう言う事で・・・」

コイブミ?
コイブミ・・・

故意踏み?



  故意踏み(こいぶみ)

  意味 事故等ではなく、故意に相手を踏む事。



いや、そんな言葉は無い!
じゃあ・・・“鯉踏み”か?
今のと大して変わらん!!
え〜っと、つまり・・・恋文?

・・・・・・。

  恋文=ラブレター



「はあッッ!!?」

ヒナは思いっきり驚いた。
だからこんな声を上げてしまった。
春歌ちゃんに、先生に。

「あら、違うんですか?」
「春歌ちゃん今なんて!!?」

ヒナは春歌ちゃんの胸倉を掴んで聞き返した。

「え!? 雛子ちゃん!? 一体どうしたんですか!? あと、学校では先生と・・・」
「そんな事どうでも良いの!! あ、亞里亞ちゃんが、ら、ら、ラブレター貰ったぁッ!!?」
「ひ、雛子ちゃん!? ちょ・・落ち着いて・・・」
「ちょっと春歌ちゃんどう言う事!?」

ヒナは興奮して春歌ちゃんの胸倉を掴んだまま春歌ちゃんを前後に揺さぶった。

「ちょっと春歌ちゃん、ちゃんと答えて!」
「雛子ちゃ・・・ちょ・・苦し・・・」






「げほッ・・・げほッ・・・」
「ゴメンなさい・・・」

春歌ちゃんの胸倉を掴んで揺さぶる行為はヒナが落ち着くまで続いた。
落ち着いたヒナは春歌ちゃんを解放すると素直に謝った。
ちなみにヒナが落ち着いたのは春歌ちゃんが泡をすこし吹いた時だった。

「全く・・・教師に暴行を働いたと言って停学処分にでもしましょうか?」
「勘弁してください・・・」

亞里亞ちゃんの事で興奮してて、ついやってしまった事です。

「で、亞里亞ちゃんにラブレターってどういう事!?」

春歌ちゃんには悪い事をしてしまったが今はそれどころじゃない!!
ヒナはすぐさまその事について聞いた。

「今日、ワタクシが二時間目に亞里亞ちゃんの教室で授業がありまして・・・」
「知ってる」
「授業が終わった後、亞里亞ちゃんが何か手紙を読んでましたんです」
「で!?」
「その時、チラリと見えてしまったんですよね・・・内容が・・・」
「どんな内容だったの!?」
「それは教えられません」
「なんで!!?」
「まず、これは雛子ちゃんには関係の無い事です。 それに無闇に人の恋路に口を出す事は良くないと思います」

でもこれはヒナの恋路に関係あります。

「第一、手紙と言うのは他人が勝手に内容を知ってはいけない事だと・・・」
「春歌ちゃん覗いてたじゃん!」

ヒナがそう言うと春歌ちゃんは少し慌てた感じにこう言い返した。

「ワタクシも見るつもりは無かったんです! それに・・・見たと言ってもほんの少しだけです・・・」

ほんの少しでも見たことに変わりはないと思うのだが・・・

「それでなんでラブレターって分かったのさ!?」

ほんの少し見ただけではラブレターかどうかなんて分から無いと思うけど・・・。

「その文が放課後体育倉庫裏で大切な話があると言う文でしたから・・・」
「放課後体育倉庫裏?」
「あ!」

春歌ちゃんはうっかり口を滑らせてしまった為、「しまった!」と言う顔をしてそう言った。
そう言う文があるのなら・・・ラブレターの可能性は高い・・・。

「亞里亞ちゃんに・・・ラブレター・・・」

それに亞里亞ちゃんは人気が高い・・・。
だから尚更その可能性も高い。

・・・・・・。

「・・・確かめよう!」
「え? あ! 雛子ちゃん何処へ・・・!」

でもあくまで可能性だ!
違うかもしれない!
そう思ってヒナは亞里亞ちゃんの居る教室まで走った。











「ラブレター貰ったってホント!?」

ヒナは亞里亞ちゃんの教室で亞里亞ちゃんを見つけると早速その事について聞いた。

「この子、亞里亞さんの妹?」

亞里亞ちゃんは教室でクラスメートと数人で一緒にお弁当を食べていた。

「ええ、そうです」

亞里亞ちゃんはあっち状態で答えてた。

「そんな事どうでも良いの! ホントなの!?」

ヒナがそう言うと亞里亞ちゃんと一緒にお弁当を食べていた先輩達が、

「え? そうなの亞里亞さん?」
「羨ましいわ、私なんてまだ一度もそんなの貰った事無いわよ」
「でも、亞里亞さんなら貰って当然よね」

とか言っていた。

亞里亞ちゃんはため息を吐いてから一緒にお弁当を食べていた人達に、

「皆さん、私ちょっと雛子ちゃんに話がありますから席を外しますね」

と言ってからヒナを連れて教室を出た。












「亞里亞ちゃんどう言う事なの!?」

亞里亞ちゃんはヒナをトイレに連れて来た。
ヒナは亞里亞ちゃんがここで話をするつもりだと分かっていたので、トイレに入るなり早速そう言った。

「・・・雛子ちゃん」

亞里亞ちゃんはトイレの中を一通り見回した後・・・

「どう言う事なのかはこっちの台詞よ!!
 なに? そんな事ぐらいでいちいちあたしのトコまで来た訳!?」

・・・本性を現した。

「そんな事なんかじゃないよ!」
「黙れこの寝坊助ッ!!」

亞里亞ちゃんは物凄い気迫でヒナの言葉を遮ってそう言った。
でも、今“寝坊助”は関係ないと思う・・・。

「それでホントなの・・・?」
「はぁ・・・」

亞里亞ちゃんはまたため息を吐いてこう続けた。

「ホントよ、今朝ロッカーに入ってた・・・」
「!!」

亞里亞ちゃんがラブレターを貰っていた事は本当だったんだ・・・。

「で、それが如何したって言うの?」
「え?」
「確かにあたしはラブレター貰ったわよ! ええ、貰ったわ! 貰いましたとも!!
 で、それと雛子ちゃんがどう関係ある訳!? それが雛子ちゃんがあたしの教室に来る理由になる訳!?」
「それは・・・」
「ならないわよね! なる訳ないものね!! なり得ないわよね!!
 あのね、あたしにはあたしの事情ってモンがあるの! 大体なんでそう言う事皆の前で言うかな!?
 あたしがどんくらい恥ずかしかったか分かる!? どんくらい嫌な気分だったか分かる!?
 分かってないでしょ!? 分かってないからそういう事したんでしょ!?」
「え・・・いや・・・」
「『え・・・いや・・・』じゃない! 自分の都合ばっか考えて! 人の事は考えないの!?
 そう言う人間ってあたしはどうかと思うけど!!
 大体ね・・・・・・雛子ちゃんは、もう少し落ち着かなきゃ。
 もう少し周りに目を向けなきゃ駄目よ。 やっぱりもう高校生なんだから、もう少し大人にならなきゃ駄目じゃない。
 私達、いつまでも子供って訳じゃないんだから・・・」

亞里亞ちゃんのマシンガントークが始まった・・・。
ちなみに途中から口調が変わったのはトイレに入って来た人が居たので、亞里亞ちゃんがあっち状態になってるからだ。

「・・・って雛子ちゃん聞いてるの!!?」

あ、もう出て行ったようだ・・・。

「ねえ、亞里亞ちゃん・・・」
「なによ!!?」

亞里亞ちゃんは物凄く怒りながらそう言った。

「今日一緒に帰れないのって・・・」
「そうよ、これの返事しに行くの。
 朝サラッと見て放課後に来て欲しいって書いてたからね・・・。
 行かない訳にも行かないでしょ」

どうやら一通り怒りを発散したのか、亞里亞ちゃんは少し落ち着いて答えてくれた。
朝、下駄箱の配置の所為で一回亞里亞ちゃんと離れる事になる。
多分、その時にサラッと見たんだろう。

「・・・亞里亞ちゃん・・・その人と付き合ったりとか・・・」
「あのね、これはあたしの問題! 雛子ちゃんには関係ないの!
 いいからあんたは一人で先に帰ってなさい!!」

落ち着いたのはあくまで“少しだけ”の様だ・・・。

「聞きたい事はこれだけなんでしょ!?
 じゃああたし教室に戻るから!!
 あんたもさっさと自分の教室に戻りなさい!!」

そう言って亞里亞ちゃんはトイレから出ようとした。

「あ、亞里亞ちゃ・・・」
「ついて来ないでよ! いいからさっさと自分の教室向かう!!
 あんたお弁当食べて無いんでしょ!? 早くしないと食べる時間無くなるわよ!!」

そう言って亞里亞ちゃんは自分の教室に向かって行ってしまった。












「亞里亞ちゃん・・・怒らせちゃった・・・」

ヒナは一人でトボトボ歩きながら自分の教室に向かっていた。

・・・・・・。


    『確かにあたしはラブレター貰ったわよ!』



    『で、それと雛子ちゃんがどう関係ある訳!?』


・・・・・・。

「・・・関係・・・大ありだよ・・・」

一人そう呟く。
関係無い訳ない。
だって、好きな人が他の誰かに取られちゃうかもしれないのに・・・。

「・・・ダメだな・・・ヒナは・・・」

分かってた事じゃない。
いつかは男の子に取られちゃうって・・・。
その時はキチンと受け入れて、亞里亞ちゃんを応援してあげたいって思ってたのに・・・。
それに、今回亞里亞ちゃんが断ったとしても、結局は男の子に取られちゃうんだもん・・・。
それが早いか遅いかだけなのに・・・。

「もう少し時間が経ったら・・・、ヒナも受け入れられるようになるのかな・・・?」

・・・・・・自信無い・・・。

「あ、雛子ちゃん!」
「え・・・?」

考え事をしながら歩いていたヒナの名前を呼ぶ声が聞こえた。
声のした方向を見るとそこには春歌ちゃんが立っていた。

「春歌ちゃん・・・」

ヒナはそう呟いた。

「雛子ちゃん、何度言えば・・・・・・どうかしたんですか?」
「え・・・?」
「元気、無いみたいですけど・・・。 何かあったんですか?」

春歌ちゃんが心配そうに話し掛けてきてくれた。

「そんな事・・・」

・・・・・・。

・・・あるか・・・。






「つまり、亞里亞ちゃんを怒らせてしまったと・・・」
「うん・・・」

ヒナはやっぱり話す事にした。
話すだけで楽になる事もあるから。
でも、それが期待出来る程、今回の事は浅いとも思えない・・・。

「ヒナ・・・嫌われちゃったかな?」
「それは大丈夫でしょう」
「なんで?」
「あなたと亞里亞ちゃんの仲でしょ?」
「なんで?」
「だから心配する必要なんてありません」
「なんで?」
「亞里亞ちゃんもあなたの事好きだからですよ」
「でも、今回はやり過ぎちゃったかもしれないじゃない」
「あら、もう『なんで?』はやめたんですか?」

いや、そんなつもりで言ってた訳じゃ・・・。

「大丈夫ですよ。 亞里亞ちゃん、あなたと居る時が一番安心しているんですから」
「そうとは限らないじゃない・・・」
「いえ、そうに決まってますよ」

春歌ちゃんは自信たっぷりにそう答える。

「どうしてそんなこと言えるのさ?」

だからヒナは聞き返した。
そしたら春歌ちゃんの答えはこうだった。

「だって亞里亞ちゃん、あなたと居る時が一番本当の自分をさらけ出しているじゃないですか」
「え!」
「あなたの事を本当に信頼している証拠でしょう?
 さっき怒ったのも、自分の本当の気持ちをさらけ出しているからこそじゃないんですか?
 亞里亞ちゃん、他の人の前ですと決して怒ったりしませんし・・・」

亞里亞ちゃんは確かに他の人の前で怒ったりしない。
あっち状態でいるからだ。
ちなみにあっち状態でない亞里亞ちゃんを知っているのは、
ヒナや春歌ちゃんみたいな亞里亞ちゃんの姉妹と、じいやさんなどの亞里亞ちゃんのお家の人。
ただし新人のメイドさんとかは別。

「だから、そんなに気にする事ありませんよ。 元気を出して下さい」
「・・・うん、そうだね」


    キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン・・・


「あ、ちょうどチャイムが鳴りましたね。 では、ワタクシは授業がありますから。 雛子ちゃんも早く教室に」
「うん」

春歌ちゃんはそのままヒナの教室とは逆の方向に歩き始めた。

「あ、春歌ちゃん!」

ヒナは春歌ちゃんの名前を呼んでそれを止めた。

「『春歌先生』でしょう!」

春歌ちゃんが少し怒った様にそう言って振り返った。
そんな春歌ちゃんにヒナは一言・・・

「・・・ありがとう」

すると春歌ちゃんはニコッと笑ってこう言った。

「どういたしまして」












春歌ちゃんに話した事は思ったよりも効果があった。
お陰でかなり元気を取り戻せた。

「そうだよね、亞里亞ちゃんはヒナの事信頼してくれてるから、だから・・・」

教室に向かいながらヒナはそう考えてた。
亞里亞ちゃんはヒナの事を信頼してくれてる。
だから、さっきの事もきっと許してくれる。
でも、後でキチンと謝ろう。
みんなの前でラブレターの事言っちゃった事は・・・

・・・・・・。

「あ゛!」

・・・ヒナは途中で問題が摩り替わってる事に気づいた。
確かに怒らせたことで悩んではいたけど・・・・・・本当に悩んでたのは『ラブレター』の事だった。
亞里亞ちゃんが男の子と付き合う様な事になったら、って・・・。

「・・・・・・」

ついでに言うともう一つ問題が増えた・・・。


    ぐきゅるるるる・・・


ヒナはお昼を食べ損ねた・・・。












5時間目
亞里亞ちゃんが男の子に取られると言う不安とお昼ごはんを抜いた空腹がヒナを襲った。
ついでに言うと睡魔まで襲ってきてる・・・。
この先生の授業は必ずと言っていい程眠くなる。

(今の内にお昼食べようかな・・・)

そう思った。
けど、亞里亞ちゃんの事を考えたら・・・そっちの方が気になった。
だからまた授業中に考える。

(・・・亞里亞ちゃん・・・付き合っちゃうのかな?)

(もしそうなったら・・・ヒナは・・・)

(一体どんなヤツなんだろう・・・?)

(亞里亞ちゃんに告白する人って・・・)
























「来ちゃったよ・・・」

放課後、ヒナは今体育倉庫右に居る。
理由はこれから体育倉庫裏で起こる出来事を見届けるためだ。
ちなみに体育倉庫の右側に居るのにはキチンと理由がある。
体育倉庫裏に来るには普通は左側から来るしかない。
右側から体育倉庫裏来るには、一旦校舎から出て金網を登らなければならないからだ。
そんな面倒くさい事してまで来る人間は滅多にいない。

「まだ、亞里亞ちゃんも相手も来ていない・・・」


    ぐきゅるるるる・・・


「・・・今の内にお弁当食べようかな?」

5時間目だけじゃなく、6時間目とその間の休み時間まで亞里亞ちゃんの事を考えていたから、結局食べ損ねたまんまだったりする。

「やっぱ食べよ・・・って来たよ!」

そこにはまず亞里亞ちゃんが最初にやって来た。
ヒナは急いで自分の体をなるべく壁に隠しながら様子をうかがった。
相手は・・・まだみたいだ。
なんてヤツだ!
自分から呼び出しておいて亞里亞ちゃんを待たせるとは!
けしからん!

「やあ、待たせてしまったかい?」

・・・と思ったら来たよ!

「いえ、そんなに待っていませんから」

亞里亞ちゃんがそう言ってた。
あっち状態で・・・

「突然呼び出してしまって悪かったね」

男はそう言った。
あいつは・・・見た事ある気がするんだけど思い出せない・・・。

「それで、私に一体何の用ですか? 先輩」

ラブレターなんだから告白に決まってるでしょ、亞里亞ちゃん!
しかし、あいつが亞里亞ちゃんの先輩って事は・・・ヤツは三年か!

「亞里亞くん・・・僕がどんな人間か分かるかい?」

うわッ! キザったらしい!!

「我が校の生徒会長・・・ですよね?」

そうか、ヤツは生徒会長か!

「その通り」
「その様な方が私に一体・・・?」
「それだけじゃない、僕は君と同じ、我が校の人気生徒高校生部門ナンバーワンの称号まで持っている」

マジ?

「更に成績は常にトップ、運動神経抜群・・・」

なんだアイツは?
いきなり自分の事自慢し始めたぞ・・・(汗)

「・・・・・・」

あらら・・・亞里亞ちゃん呆れちゃったよ・・・。

「・・・と言う訳だ」

・・・どう言う訳だ?

「それで、その人が私に一体何の用でしょうか?」

う〜ん、亞里亞ちゃん無理してあっち状態保ってるよ・・・。

「つまり、僕と君は“似たもの同士”なんだ!」

・・・断じて違う・・・ヒナが保証する・・・。

「あの・・・それが何か・・・」
「君は僕と同じ選ばれた人間・・・才能のあるエリートなんだ!」
「!!」

!!

「だから・・・僕達は合うと思わないかい?」
「つまり・・・何を言いたいんでしょうか?」
「僕と付き合う気はないかい?」

あんにゃろう遂に言いやがった!!

「お断りします」
「へ・・・?」

よっしゃぁ! 
亞里亞ちゃんったらあっさり断ったよ。
ザマー見ろ、キザ生徒会長!

「な、何故だい!?」

おうおう、焦ってやがる!
いい気味だ!

「まず、私は貴方と言う人間が良く分かりません」

そうだ、亞里亞ちゃん! アイツを叩きのめしてやれ!!

「だからそれはこれから付き合って・・・」

アハハハハハ・・・! 惨めだな、生徒会長!!

「次に私には断る権利がありますから」
「そ、それはそうだが・・・」

ホンットいい気味!!

「それは断る理由にならないだろう!?」

アンタは何を聞いてたんだ!?
今言っている事が断る理由だろ!!

「はぁ・・・断る理由、ですか・・・」

よし! 亞里亞ちゃんヤツにトドメを・・・

「私には婚約者がいるんです」
「な!?」

―――え?

「これでは理由として不十分でしょうか?」

あ、亞里亞ちゃん・・・今なんて?

「こ、婚約者!?」

ウソ・・・

「はい、婚約者」

こ・・・

「婚約者ぁッ!!?!?」
「「え?」」
「あ・・・」

・・・婚約者。
亞里亞ちゃんのその発言に驚いたヒナは、思わず大声を上げてしまった・・・。
隠れて見ていたのも忘れて・・・。

「雛子ちゃん・・・そんな所で何してるの?」
「あ・・・いや・・・」

覗き見てました・・・。

「君は・・・」

生徒会長がヒナにそう尋ねてきた。

「すみません生徒会長、私の妹です・・・」

亞里亞ちゃんが生徒会長にそう答えてた。

「あ、あはははは・・・どうもこんにちは・・・」

ヒナはそう言ってた・・・焦りながら・・・。

「亞里亞くんの妹? ああ、君が・・・。 で、なんでここに?」

ヤバイヤバイヤバイ・・・

「あの・・・その・・・」

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ・・・

「はぁ・・・、すみません生徒会長。 ではそう言う事なので・・・」
「え?」
「じゃあ、雛子ちゃん帰りましょうか?」
「え?」

硬直し始めた場の流れを亞里亞ちゃんが無理矢理終わらせた。
ちなみに上の「え?」は生徒会長のモノで、下の「え?」はヒナのモノ。
亞里亞ちゃんはヒナに近づきそのままヒナの手を取ると、ヒナを引っ張ってここから離れようとした。

「ま、待ってくれ!」

生徒会長は、まだしつこく亞里亞ちゃんに話をしようとしてた。

「あ、生徒会長」

亞里亞ちゃんがそれに答えるかの様に足を止めそう言った。

「なんだい?」

生徒会長は何かを期待する様に元の調子に戻ったようだが・・・

「仮に私に婚約者が居なくても私は貴方と付き合う気もありませんし、貴方では私の恋愛対象になり得ません。
 何より私は貴方のようなタイプの人間は好みではありません。 ですから、もう二度と私にこの様な話を持ち掛けないで下さいね」

亞里亞ちゃんの笑顔と、トゲいっぱいの言葉の暴力の前に無惨にもトドメを刺された。
























ヒナは今、亞里亞ちゃんと一緒に帰っている。
今日は一緒に帰れないって言われてたからこれは良かった。

「どうしたの、雛子ちゃん?」
「・・・・・・」
「元気ないなぁ」
「亞里亞ちゃん、ゴメンね・・・」
「え?」
「昼休みの事、それとさっきの事・・・」

そう言えば、ヒナはさっき亞里亞ちゃんを怒らせてしまったんだ。
それにさっきだって決してほめられる事をした訳じゃない・・・。
だからヒナは謝った。

「ああ、その事ね。 こっちこそゴメン」
「え?」
「昼休み、言い過ぎたわ」
「・・・そんな事無いよ・・・。 ヒナはそのくらい悪い事を・・・」
「それでもあたしも言いすぎたわよ。 ゴメン、あたし四時間目ちょっとムカつく事があって・・・」
「ムカつく事?」
「雛子ちゃん知ってるでしょ? あたしの嫌いな言葉!」
「うん」

亞里亞ちゃんの嫌いな言葉、それは・・・

「「才能」」

二人揃ってそう言った。

「4時間目、先生があたしに『やっぱり私の見込んだとおり貴女には才能があるわね』とか、『貴女の才能が羨ましいわ』とか連発して言うのよ!!
 こっちはたまったもんじゃないわよ!!」

亞里亞ちゃんは“才能”って言葉が嫌いだ。
理由は・・・

「大体、みんなしてあたしのこと才能ある才能あるって・・・あたしの努力をなんだと思ってるのかしら!!
 何にもしないで何でも出来たら人間苦労しないわよ!! あー、もう腹立つ!!」

・・・つまり、今の亞里亞ちゃんはみんなの言う様に“才能の塊”などではなく、“努力の塊”で今の完璧人間へと上り詰めた訳だ。
小さい頃、じいやさんやお手伝いさんたちになんでもやって貰ってた亞里亞ちゃん。
そんな亞里亞ちゃんが、ここまでの完璧人間になる為のその努力は並大抵のモノではなかった。
ヒナは小さい頃の亞里亞ちゃんを知っている為、その事自体は想像に容易い。
しかし実際はその想像をもはるかに超えた努力を亞里亞ちゃんはしてきたはずだ。
だけど亞里亞ちゃんはその様子を他の人には見せない。
そのため、他の人にしてみれば、“何にもしないで何でもできる人”に見えてしまう訳で、それが“才能の塊”という誤解を生むのだった。

「大体あのクソ生徒会長まで!」
「亞里亞ちゃん・・・“クソ”はちょっと・・・」

すずちゃん・・・あなたはこの亞里亞ちゃんを見たらどう思うのでしょうか?

「だからあの時雛子ちゃんが居て良かったわ」
「なんで?」
「自分の事を完璧だと思ってる人間が失敗した所を見られたのよ。
 最悪、そのシーンを見るのはあたしだけのハズだったところを第三者が見ていた。
 そう思ったらあのクソ生徒会長の事どう思う?」
「いい気味」
「そう! 分かってるじゃない!! だからあの時居た事は逆に感謝してるのよ」
「そうなの?」
「そうなの」

そう言われると少し複雑な気持ちになった・・・。
でも亞里亞ちゃん感謝されたんだからこれは良かったって事にしよう。






「で、どうしたの?」

しばらく歩きながら話していたら亞里亞ちゃんがそう聞いてきた。

「・・・なにが?」
「今の雛子ちゃんはどう見たって元気がない。 で、昼の事はさっき解決したからそれは原因じゃない。
 だったら何があったの?」
「・・・なんでもないよ」

・・・分かってる。
自分が元気ない事くらい・・・。
亞里亞ちゃんと一緒に帰れる様になった事は良かった。
そして、亞里亞ちゃんがラブレターの主、つまり生徒会長と付き合う事にならなかったのも良かった。
亞里亞ちゃんを怒らせた事も、解決したからそれも良かった。
体育倉庫裏の様子を覗いてた事も怒られなくて良かった。
良かったづくしだけど・・・でも、それ以上に亞里亞ちゃんのあの言葉・・・


    『私には婚約者が居るんです』


その言葉がヒナの心をどん底に突き落とした。
すずちゃんの言っていたあの話は本当だったんだ・・・。
ラブレターの事ですっかり忘れてたけど・・・。

「雛子ちゃん、あんたは元気が取り柄なんだから元気でいなさい!」

亞里亞ちゃんがヒナに向かってそう言う。
そう言われて元気が出たら世話ないよ。

「全く・・・そんなんじゃあたしがお嫁さんになった時に守りきれないわよ」
「ホント、その通・・・・・・・・・」

・・・・・・。

「亞里亞さん、今なんて?」
「だからあたしが雛子ちゃんのお嫁さんになった時に守りきれないって・・・」

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

「はいいいぃぃぃッッ!!??!?」
「なに驚いてるのよ・・・」
「なに驚いてないのよ!!」

亞里亞ちゃんがヒナのお嫁さん!?

「ちょ・・・それって!」
「言葉通りじゃない。 約束したでしょ? 小さい頃に。
 今朝だってその時の夢見てたって言ってたから、忘れてる訳じゃないんでしょ?」
「そ、そりゃあ・・・そうだけど・・・。 でも、亞里亞ちゃんあれは“禁断のプロポーズ”だって言ってたじゃない!」
「言ったわよ」
「だったら・・・」
「だからってあたしそれ受けないとは一言も言ってないでしょ?」
「いや、言ってないけど・・・。 でもヒナたち女の子同士でしょ?」
「そうね」
「女の子同士じゃ結婚出来ないじゃない・・・」
「法律上はね、でもそんな事関係ないわよ。
 それでもあたしは雛子ちゃんのお嫁さんになるつもりだし、それに雛子ちゃんだってあたしの事好きなんでしょ?
 問題ないわよ」
「ええッッ!!? な、なんでその事!? なんでヒナが亞里亞ちゃんの事好きだって・・・」

バレてた!?
一体どうして・・・?

「雛子ちゃんの事ならなんとなく分かるのよ」
「なんで?」
「あたしが雛子ちゃんの事好きだから」

えっ!?
亞里亞ちゃんがヒナの事を好き!?

「それと、さっきから“ヒナ”“ヒナ”“ヒナ”って・・・。 いい加減さぁ・・・」
「今はそんな事どうでもいいよ!!」

こんな重要な話をしている時にそんな些細な事・・・

「よくないの!」
「!!」
「あたしの事守るんでしょ!? だったら雛子ちゃんにはあたしの事守れるくらい強くなってもらわなきゃ困るの!
 禁断の愛なんだから尚更ね! だからもっと大人になって欲しいの!」
「え! それでヒナの一人称を・・・!?」
「そうよ! 全く・・・あたしが何のために強くなったと思ってるのよ!」
「え・・・な、なに?」

亞里亞ちゃんは力一杯こう言った。

「雛子ちゃんのお嫁さんになる為によ!!」

・・・って。

「ヒナの・・・お嫁さんになる為・・・?」

その為に・・・その為に亞里亞ちゃんこんなに凄い人間になったの?
今まで亞里亞ちゃんは物凄く頑張ったはず・・・。
それは全部ヒナのお嫁さんになる為・・・あの約束を果たす為だったの・・・?

「で、でも婚約者はどうするの!?」

そう、亞里亞ちゃんには婚約者が居る!

「なにが?」
「婚約者! 居るんでしょ!?」

亞里亞ちゃんはさっき確かにそう言ってた。

「居るわよ、小さい時フランスに行く前に出来た」
「・・・へ?」

それってつまり・・・。

「・・・ヒナって事ですか?」
「・・・ヒナって事ですよ」

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

「あは・・はは・・・」

そうだ、婚約者って言うのは結婚を約束した関係の事だ。

「な、なによ、突然笑い出して気持ち悪いわね」

ヒナと亞里亞ちゃんはあの時婚約したんだ。

「あはははは・・・はははは・・・」

だから亞里亞ちゃんの婚約者って言うのはヒナの事だったんだ・・・。

「あははははははは・・・」

なんだ・・・じゃあヒナは心配する必要なかったんだ。
亞里亞ちゃんもあの約束を守る気でいたんだ。
なんか笑いが止まらなくなってきた・・・。
それに・・・


    ぐきゅるるるる・・・・


・・・安心したらお腹も減ってきた・・・

「なによ、結局お昼食べて無かったの?」
「亞里亞ちゃんの所為だよ・・・。 亞里亞ちゃんの事ばっか考えてたから・・・」
「あらら・・・それは照れるわね」

そう言う亞里亞ちゃんはあんまり照れてるようには見えない。

「なんだ、ヒナはてっきり・・・亞里亞ちゃんは普通の人間だと思ってたから・・・」
「あんただって立派な異常な人間でしょ!」

やっぱり亞里亞ちゃんは口が悪くなった・・・。

「そうだね、ヒナ達普通じゃないもんね・・・」

でも、それでもヒナは・・・


    ぎゅっ・・・


「・・・えっ!?」



亞里亞ちゃんが好き・・・。



「ちょ・・なにイキナリ抱き付いて来てるのよ!!」

だから、ヒナは思いっきり亞里亞ちゃんを抱きしめた。

「ヒナ、ずっとずっと不安に思ってたんだよ・・・。 ・・・いつか亞里亞ちゃんが男の人に取られちゃうって」
「全く・・・そんな事無いわよ。 しっかりしなさい。 私の事、守ってくれるんでしょ?」
「うん、そうだったね・・・約束したもんね」
「そうよ、約束したんだから・・・」



 約束・・・。

「でも、こんなに強くなった亞里亞ちゃんをヒナが守れるかなぁ・・・」

 それは小さい頃の約束・・・。

「『守れるかなぁ』じゃないの! 守らなきゃダメなの!
 あたしはあんたの言った通り強くなったんだから・・・だから今度はあんたが約束を守る番よ・・・」

 幼かったあの日の約束・・・。

「いいの? ヒナなんかで・・・」

 彼女が遠くに行ってしまう前に交わした・・・

「ヒナなんかで、じゃない! ・・・あんたじゃなきゃ・・・ダメなのよ・・・」

 もう何年も前の・・・

「約束だもんね・・・。 帰って来たらヒナのお嫁さんにするって・・・。 ずっとずっとヒナが守ってあげるって・・・。 約束・・・したもんね・・・」

 小さな、小さな・・・約束・・・。

「その通りよ・・・」

 でも、それはヒナにとって大切な・・・

「でも、自信無いなぁ・・・」

 ううん、亞里亞ちゃんにとっても大切な・・・

「頑張りなさい・・・・・・あたしの素敵なナイト様・・・」



 大切な約束・・・。



あとがき

まず始めに兄やの方々ごめんなさい!
亞里亞を壊しすぎました!
この話は、某所でなりゅーがリクエストした内容を自分で書いたらどうなるか、と思って作ったものです。
そうしたら亞里亞が別人になってしまいました。
でも、なりゅー的には亞里亞は成長したら性格が逆転すると思っています。
それでもこれはやり過ぎたかな?
って言うかこの話はシスプリの名前を借りた一次創作な気がしないでもないのですが・・・
『性格反転高校生版亞里亞』を気に入ってくれる兄やは果たして存在するのでしょうか?
つまり亞里亞の特徴は全て消えてると言えなくもない訳ですから・・・
居たら是非教えて欲しいものです・・・。
オリキャラが数人出てきていますね。
あまりオリキャラは出したくなかったんだけど・・・。
ちなみに『大木すず』と言う名前は・・・
どっかで見た事のある人は黙認して下さい。
気の所為と言う事にしておいて下さい。
別人なんだから良いでしょう?
同姓同名なんてたくさん居るから良いでしょう?
分からない人は分からないままで居て下さい。
それとこの話、・・・続けようと思えば続けれます。
じゃないと『大学の付属高校』に通わせる理由がありません。
でも、亞里亞が亞里亞だからやらない方が良いと思っています。
こんな物で楽しめた人間が居るのなら嬉しい限りです。
最後に、こんな長くて滅茶苦茶な話を読んでくださった人に心から感謝します。


更新履歴

H15・6/29:完成
H15・7/3:微修正
H15・8/8:また修正
H15・11/27:誤字、文の形、行間隔、一部改変・・・とにかく色々大幅修正


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