トリーズン・ホワイトデー
四葉は今、非っ常〜〜〜にデンジャーな局面を迎えていたのデス。
この探偵界の若きホープが、遠くない未来に立ち向かうであろう難事件、怪事件、大事件。
それらに先駆けて、一大試練が四葉の身に降りかかったのデス……!
古今東西に散らばる、あらゆる未解決事件のトップレヴェルに匹敵する超難問……!
一歩間違えれば……四葉自身、この事件の犠牲者となって幕を閉じる…… それ程の陰謀が渦巻く大事件なのデス。
この……「ホワイトデー」という厄日は!!
「アー……ウー……。なんでコンナなんでもない日に、コンナにも悩まなきゃならないんデスか〜」
体育倉庫裏の木の下で黙って待つコトに飽きて、ついつい愚痴が声になってこぼれちゃいマス。
言ったって状況が解決する訳でもないデスけど、言わなきゃやってられない。
「アーッ! もーッ!! 全部ゼンブッ、鈴凛ちゃんがイケナイんデスーッッ!!」
さかのぼるコト1ヶ月前のバレンタインデー。
その日四葉は、花穂ちゃんにチョコをあげてしまったのデス!!
当然お優しい花穂ちゃんのコト、お礼は律儀に行われるようで、そのために四葉はココにお呼ばれました。
……チェキ? それのドコが問題かって?
オオアリデス! ナニが問題かって、女のコ同士でラブラブになってしまうコトがデスよ!!
まー確かに、「友 チョコ」の横行するこの世の中、
バレンタインに女のコ同士でやり取りするのも別に普通なコトではありマス。
特に、それがファミリーの間でなら尚更フツーなコト。
……フツーのファミリーなら。
四葉のファミリーはフツーじゃなかったのデス。
12人姉妹という大所帯だし、キョウダイなのに別居だったり、それぞれに家庭があったり、そんなもんで血縁はアイマイだし、
そしてそして、なによりも問題は…………キョウダイ同士で、フォーリンラブしちゃってるカップルも居るのデス!!
ああ、考えただけで頭が痛くなってきました……。
キョウダイなのは良いとして、女のコ同士というのはいただけまセン! や、なんかキョウダイってのは無視して良い気がする!
そしてその余波で、本日ホワイトデーは、四葉たちキョウダイにとって、血で血を洗う惨劇のXデーとなってしまったのデス!!
「一体ドコのドイツデスか、ホワイトデーでチューする習慣作ったのは……」
皆まで言うな。四葉が今まさに文句をつけてる鈴凛ちゃんデス。
厳密には鈴凛ちゃんと鞠絵ちゃんのおふたり。
おふたりが……まあ色々やって、「バレンタインのお返しにチュー」という習慣を作りやがったのデス。
それだけならまだしも、四葉のキョウダイ(ヘンタイさん側)たちも便乗してしまったからさぁタイヘン。
むしろ「さぁヘンタイ」。誰が上手いコトを言えと。
まあ、鈴凛ちゃんと鞠絵ちゃんのヘンタイさん的関係はそうそう口外できませんカラね。
ごく一部のカテゴリーでしか知られてないのは良いんデスケド……。
それが、知る人ぞ知る人の中で蔓延しちゃったというのが大問題なのデス!!
つーか便乗した人もドーかと思いマスケドね。
鈴凛ちゃん曰く、四葉たちキョウダイの女好き は浮気性のファーザーの遺伝だから諦めろとかなんとか。
そんなミもフタもナイ……。
ちなみに、そのせいで春歌ちゃんが千影ちゃんの餌食になったと伺いました。聞いた時は腹を抱えて笑いました。
みんなに言い触らしたのがバレた時の、憎しみの塊となった春歌ちゃんはとってもとってもコワかったデス……。
アレはまさに悪魔 。ダイモンズ・ハルカ。
きっと憎しみの力で手に入れた念動力で、貞操と尊厳を奪った姉妹たちに復讐の旅に出マス。
まあ、そんな推理はこの際ドーでもよくて、今は目の前のコトを片付けるのが先決。
四葉が今、春歌ちゃんと同じ危機に直面しているという現実を、なんとかしなければならないのデス!
そう……四葉は発動条件の、「バレンタインデーにチョコを渡す」を満たしてしまったのデスから……!!
あー、しまったデス。ベリーしまったデス……。
感謝のキモチはともかくとして、あげたあとのコトなんか考えてなかったデス……。
イギリスにはホワイトデーという習慣はナイので、四葉も「女のコばっかあげてばかりで不公平デスー」なんて思ってましたケド、
「チューしなきゃいけない」ってローカルルールを強いられるくらいなら、いっそ無い方が良かったデス。
「……本当はそんなルール、ないのデスよ」
そんなの至極当たり前の話。
しかし、花穂ちゃんは並ならぬドジっ娘で、そう思い込んでしまってる可能性は十分に有り得る!?
いや……恐らくは……。
バレンタインの日、チョコレートを渡した時の花穂ちゃんの、真っ赤になった様子が思い起こされマス……。
一ヵ月で心の準備をする……小さく、だけど確かに、そう告げていた。
チョコを渡した後から呼び出しのお電話が入るまでの間、お互いなんだかムダに照れくさくなって、ずっと話せずジマイでした。
だからきっと、花穂ちゃんはずっと誤解したままで、四葉にチューするつもりでほぼ間違いないとそう推理しマス……。
だって呼び出したコノ場所!
ホワイトデーのお返しをしたいからと言って呼び出した場所は、花穂ちゃんの学校の体育倉庫裏の木の下。
実はコレ、「イワクツキ」の木なのデス!!
ココで告白してしまうと……恐ろしいコトに、ふたりは一生離れるコトができなくなってしまうと言いマス!!
この学校に住む人は誰でも知っている、恐怖の「呪 いスポット」!!
四葉は、この学校の卒業生の文集をチェキして初めて知ったのデス……。おー、コワっ。
(※ 「呪 い」と読みます。四葉ちゃんはまだ日本語に慣れてないんだね。)
余談デスが、バレンタインの時は大盛況で、みんながその「呪い」を逆利用しようと、こぞって待ち合わせ場所にしたトカ。
たくさんの告白希望者がシンクロニシティしちゃって、同席した複数人と気まずそ〜に呼び出した相手が来るのを待ってたそうデス。
せっかくチョコと一緒に告白しようと思ってたのに、他の人が居るから「告白できねー!?」って人がわんさか。ムムゥ、チェキしたかったデス。
まー、ホワイトデーの今日は打って変わって人気がないらしく、放課後の絶好の時間帯になっても、居るのは四葉ひとりダケだったりしマス。
大方バレンタインで成就したから必要ないトカ、オトコノコ側はあんまり崇拝してないトカ、そんなトコでしょう。
まあ、それはそれで都合がいいデス……。コンナ場所で、女のコ同士でやり取りするの、誰かに見られでもしたら……。
ゾワ〜ッ……!
考えただけでも恐ろしい、誤解のスパイラル。
四葉も花穂ちゃんも、ヘンタイさんの烙印を押されて……なんやかんやあって苦労するのデス。
つまりは、四葉が思ってる以上に、四葉のピンチは深刻に進行しているというコト。
花穂ちゃんが、「決まりだからしなくちゃダメ!」って思い込んで、そんなキモチでムダづかいさせちゃダメなのデス!
そんな花穂ちゃんの望む、望まざるに関係ない、適当なキモチのまま……。
……望む、望まざるに…………関係なく……?
……花穂ちゃんが、四葉とのキッス……望んでる……?
「……ハッ!?」
よよよよ四葉はナニを考えてるんデスかッッ!?
花穂ちゃんがそんなコトしたいって思うワケ……そんな……ナイナイ! ないデース!!
花穂ちゃんまで、そっちの道に堕ちちゃってるワケないデス!!
そしてそれを四葉が喜んでるワケもないデス! ないのデスー!!
だから……だから今、お胸がドキドキしてるのも……きっと恐怖でドキドキしてるに、決まってる……デス……。
「だぁーーッ!? と、とにかく! 花穂ちゃんを、鈴凛ちゃんと同じヘンタイ道に招き入れてはイケマセン!!
花穂ちゃんを、春歌ちゃんと同じくヘンタイさんにしてはイケマセン!!」
既に手遅れの、ドヘンタイの春歌ちゃんと同じには……アレレ? なんでコンナところに矢が飛んでくるんデスか?
ご丁寧に手紙もついてマス。手紙には、まあなんと達筆な字で、
『大声で人の事ヘンタイヘンタイ呼ぶなや、ワタクシの貞操奪われたことがそんなに楽しいんか? 次は当てっぞ?』
と、ヤマトナデシコらしからぬ乱暴な文章が書かれておりマス。
一体誰がコンナ手紙を? 四葉、ゼ〜ンゼン心当たりがアリマセン。
そんな事より、花穂ちゃんを同じ道に引き入れない策を考えねば、ヘンタイの春歌ちゃんの二の舞を―――ぎゃふっ!?
「花穂ちゃんを、魔のホワイトデーから断固救済するのデスッ!!」
二本目の矢が直撃った頭をさすりながら、空いている方の手で握り拳を作って、決意を新たにしマス!
ココまでデンジャーな状態になりながらも、お断りせずに律儀にイワクツキの場所までやって来た理由は、花穂ちゃんの救済にあったのデス!!
『虎穴にイラズン場、コージー追えず』デス! アレ? なんか間違てる? まぁ、いいやデス。
花穂ちゃんはドジっ娘で頼りないから……だから四葉が守ってあげなきゃなのデス!
それに……花穂ちゃんのキモチ、無駄にしたくないし……チューじゃないお返しなら、欲しいし……。
……って!? べ、別に花穂ちゃんにフォーリンラブしてるワケじゃないんだからねっ!?
うむ、ツンデ四葉再来デス。相変わらずゴロ悪っ。
「クッフッフッ……しかし鈴凛ちゃんもまだまだデスね。この名探偵に掛かれば、その程度の策略など簡単に……」
モチロン、コノ名探偵が無策で来るハズもなかろうが、なのデス。
四葉には秘策がアリマス!
まず花穂ちゃんが来マス。
来たら第一声で、「女のコ同士はチューしないんデスよ」とお伝えしマス。
すると花穂ちゃんは、女のコ同士でチューするのはオカシイと気づきマス。
それだけデス。
「クッフフフ〜♥ カ・ン・ペ・キ、なのデス!」
アッハッハッ〜! 鈴凛ちゃんの野望もコレまでなのデス!
コレで春歌ちゃんの二の舞は踏みまセン!
そして春歌ちゃんに自慢するのデス。そのあとブッ飛ばされそうな気はするケド―――
「―――ぅひゃァっ!?」
……と、突然、四葉の後から、ナニモノかの手が伸びて、四葉の肩に触れたのデス!?
完全に油断していた四葉。突然のコトに、意表を突かれたコトもアリ、大ゲサに驚いてしまいました……。
ただ、結局はそれも最初のだけ。
冷静に頭を働かせてみると、ココに来る心当たりがある人物、そして、四葉にゴ用がある人物は、たったひとりしか思い浮かびまセン。
だから四葉、スグに平静を取り戻して、後に振り向きながらその名前を呼んであげたのデス。
「チェキ? いらっしゃいデス、花穂ちゃ―――」
―――ちゅっ♥
………………………………………………………………………………………………………………はい?
「えっへへ……♥ お、お待たせっ! 四葉ちゃんっ!」
あ、ほら、ヤッパリ花穂ちゃんデス。
花穂ちゃんいらっしゃい。大丈夫、四葉も今来たトコロ。ほっぺたになんか当たった?
あらあら花穂ちゃん真っ赤っかっか。今のちゅってなんデスか? イッタイゼンタイどーしたんでででしょ? しょ?
四葉のほっぺたにもとってもとぉってもやぁらかい感触ががががが、ちゅってしたね。ちゅって。て。って、って
そ、そ、ソれって一体なぁニにニニ? いった、いったイなんのオトなのナノなノなのナナナナ
ちちちちゅーっっててテ、ほっぺぺぺぺぺ、ガガガガガ、チェチェチェキキキギぎギギギあぎギギ―――
「――――――――――ッッッッッッ!?!?!?!?!???????」
―――状況把握完了。
四葉、花穂ちゃんにチューされちゃったデス。
「え、えへへ……♥ は、恥ずかしいから……意識しあう前に、済ませちゃおうって……♥」
四葉が声にならない絶叫をあげている真ん前で、とても照れくさそうにはにかむ花穂ちゃん。
見れば、そのお顔は真っ赤っか。今にも火が出そうとはまさにこのコト。
……きっと、四葉も同じくらい真っ赤っかなんでしょう……。
ドキドキが、さっきから全然止まってくれまセン……。
「なななななナンテコトをーーーッッ!??!!」
やっと出せた一言。けれどそれだけ言って、頭の中真っ白で、言葉が次に続かない……。
問答無用でキッスされて……説得する隙もなくて……
ほ、ほっぺとはいえ四葉、か、花穂ちゃんにっ……!? アワアウアウワワワ……!??!?!
なんて……なんてコト……なんてコトッ!!? なんてコトッッッ!!!?!
「……え? あ、うん。えっとね……鞠絵ちゃんがね、そうすると良いよ、って、アドバイスくれて……」
…………。
「あンの黒幕メガネかぁぁぁぁぁぁああああッッッ!?!??!」
クッ……シマッタなのデス……! 真の黒幕が、あンのシックネス姉チャマだと、なぜ気づかなんだ!?
冷静に考えれば簡単に推理できるではないデスか!?
四葉が鈴凛ちゃんの大親友で仲良しだからって、四葉にう花穂ちゃんを仕向け、鈴凛ちゃんのお相手できなくさせる作戦とは!?
コレで全てのパズルが1本の糸で明るみに出マス!!
イヤ、ジッチャンの名がウチのカミサンとピースで繋がっていつもひとつ。
アレレ? とんだ名探偵が身近に"脅威の部屋 "にご案内して証明終了?
ワきャー!?! 今のショックとドキドキで、頭ン中グッチャグチャで、ゼンゼン考えがまとまんないデスー!?
「ど、どうしたの……?」
「あゥ……。……いや、……その……」
そうデス、今は「誰が黒幕か」なんてどうだっていいコト。
四葉が、花穂ちゃんに……キス、されちゃった。コノ事態を解決させなきゃ……。
なのに頭はいつまで経ってもまとまらない……。言葉も上手く話せない……。
せめて用意しておいた「女のコ同士はチューしない」という説得を、今更ながらに口にしようと思うも、
口から出てくるのは、「あ、う、お、え」なんて言葉にもならない呻き声だけ。
四葉はもう、反論も説得もままならないまま、固まってしまいました……。
アアあああア……純真無垢な花穂ちゃんが、純粋な心を利用され、騙されて、四葉に……四葉なんかにッッ……!?!
ヤバいのデス……。コレは非っっっ常〜〜〜にヤバいのデス。
なにが一番ヤバいかって……
花穂ちゃんにキッスされちゃったコト、嬉しいって思ってるコトに決まってるじゃないデスか!?
あとがき
表あるところ裏があり、光あるところ影がある。そんな訳でバレンタインあるところホワイトデーがありました。
むしろこのシリーズ、こっちの方が本番です(爆
だけどホワイトデーって日本ので始まった行事だから、適応されない国も多いですけどねー。
さて、今回も「マシュマロみたいなもの」が暗躍しております。
以後全てのホワイトデーに対応させると言った通り、今回も主題になっていただきました。
ただ、どうしてもおんなじこと書くしかないんで、説明は大幅に省略することにしました。
本当はほっぺではなく口と口にしてもらう予定でしたが、
書いてる内に、一足飛びでそこまで発展してしまう関係に違和感を覚え、直前に変更することに。
行為の重さより心の重さに重点を置きたかったので、この方が自然さが残ったのではないかと考えております。
今回、全体的に状況解説が多くなって、肝心の花穂との絡みが少なくなってしまったのが反省点かな?(汗
その分、四葉の心情をより濃く表現できていれば良いのですが……。
けれど「ダイモンズ・ハルカ」は、バレンタインの時書こうと思ってたのですが、こっちでリサイクルできてよかったです(爆
それにしてもこの作品、パロディ色が少し強いかも……。
だけれども「まあ、四葉だし」で押し通すことに決めました(笑
更新履歴
H20・3/14:完成&一言雑記にて掲載
H20・3/15:SSのページに掲載
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