コレハ夢ナノ?



ソレトモ現実?



解ラナイ・・・



解ラナイヨ・・・








































「夢?」
「うん、そうなの・・・」

可憐は今、千影ちゃんのお家に来ています。

「可憐、最近、悪い夢ばかり見ちゃって・・・だから千影ちゃんなら何とかしてくれるかなって思って」
「それで相談に来た・・・・・・と言う事かい?」
「う、うん・・・」

でも、本当は違うの・・・

「だったら・・・・・・この本を貸してあげるよ」

そう言って千影ちゃんは一冊の本を出してきました。

「これは・・・何の本ですか?」
「自分の望む夢を見る方法が書いてある本さ・・・」












可憐は家に帰ると早速本を読みました。
最初はよく分からない事が多かったけど、
何度も読んでるうちに大体の事は理解しました。

「これで、可憐の見たかった夢が見れる・・・」

可憐は夜眠るのがとても待ち遠しくなりました。












可憐は今日、早めにお風呂に入って、
明日の学校の準備や宿題も既に終わらせて、
普段よりも三時間も早くお布団に入りました。
だって早く夢を見たかったから・・・。
本当は悪い夢なんて見ていない・・・。
現実で叶わない事を・・・せめて夢の中で叶えたかったから・・・。

「咲耶ちゃん・・・」

そう声を漏らすと可憐は目を瞑りました・・・。












そこはいつもの通学路にある小さな公園でした・・・
そしてそこには一人の人物が・・・
可憐の逢いたかった人が立っていました・・・

「咲耶ちゃん!」

可憐はその人の名前を呼ぶとすぐにその人の所まで走りました・・・

「咲耶ちゃん・・・逢いたかった・・・」

可憐がその人の所に着くとその人は可憐を見てニッコリと笑ってくれました・・・












「咲耶ちゃん・・・聞いて欲しい事があるの・・・」

可憐がそう言うとその人は可憐の方を見ました・・・
可憐は今まで隠していた思いを打ち明けようとしました・・・

「咲耶ちゃん・・・可憐は・・・可憐は・・・!」

でも、次の言葉が出ない・・・
大丈夫・・・これは夢の中・・・
だから可憐の欲しい答えが返ってくる・・・
可憐は思い切って言おうとしていた言葉を最後まで言い切りました・・・

「可憐は・・・可憐は咲耶ちゃんの事が好きです!」

言った・・・
言い切った・・・
そしてそれを聞いたその人は少し驚いた顔をした後こう言ってくれました・・・

「私もよ・・・可憐ちゃん・・・」












幸せな夢の世界から目が覚めた可憐は少し寂しかったの。

「本当は・・・こんな事・・・無いのにね・・・」

でも、嬉しかった・・・。
例え夢でも・・・
咲耶ちゃんに好きだと言われたから・・・
現実では決して叶わないから・・・。












「やあ、可憐くん」
「あ、千影ちゃん」

数日後、道でばったり千影ちゃんに会いました。

「いい夢は・・・・・・見れたかい?」
「はい」
「そうか・・・・・・それはよかった・・・。
・・・それで・・・・・・どんな夢を見たんだい?」
「え! そ、それは・・・その・・・」

言えない・・・
咲耶ちゃんにあんな事する夢なんて・・・

「フ・・・・・・、すまなかったね・・・。
・・・好きな夢、と言う事は・・・・・・その人の願望・・・・・・、
あまり詮索するのは・・・・・・野暮だったね」
「千影ちゃん・・・」
「ただ・・・気をつけた方がいい」
「え?」
「あまり・・・・・・夢の中の世界にのめり込んでしまっては・・・」
「・・・大変な事になる、ですよね?」

それは本を借る時、千影ちゃんに言われた言葉・・・

「ああ・・・」
「大丈夫です。 可憐、きちんと気をつけてますから」
「そうかい? ・・・なら・・・いいんだが・・・」












可憐は今、夢の中に居ます・・・

「咲耶ちゃん、こっちだよ」

夢の中で可憐は咲耶ちゃんと草原を走ってました・・・

「ほら、早く」

夢の中の可憐はとても幸せでした・・・
だって・・・
夢の中じゃ、もう可憐と咲耶ちゃんはただの姉妹じゃない・・・
恋人同士なんだから・・・












「あら、可憐ちゃんじゃない?」
「さ、咲耶ちゃん!?」

今度は咲耶ちゃんと道でばったり会いました。

「どうしたのそんなに驚いて?」
「う、ううん、なんでもないよ!」
「そう?」

可憐は少しドキドキしてました・・・
だって・・・
夢の中だったらもう可憐と咲耶ちゃんは・・・

「じゃあ、私行くから」
「え、あ、うん・・・」

でも現実は・・・

「じゃあね、また今度」
「はい・・・」

ただの姉妹・・・










可憐は今、夢の中に居ます・・・

「うわぁ・・・綺麗・・・」

今度は海に来ていました・・・

「ありがとう、咲耶ちゃん。 こんなに素敵な景色を見せてくれて」

可憐はそう言って咲耶ちゃんにちょっとだけ寄り掛かりました・・・
可憐はとても幸せでした・・・












今日は土曜日・・・
学校がない・・・
特に何かする予定もない・・・
だから一日がとても長く感じる・・・
早く夜にならないかな・・・
早く夢が見たいな・・・
そうだ・・・
お昼寝すれば夢が見られる・・・
そうだよ、それがいい・・・
だったら早くベッドに・・・
・・・・・・
ダメ!
千影ちゃんが言ってたじゃない!
夢の中の世界にのめり込んでしまったら大変な事になるって!
我慢しなくちゃ・・・
夜まで我慢しなくちゃ・・・
一日一回だけなら・・・
大丈夫なんだから・・・












可憐は今、夢の中に居ます・・・
今日はまた公園に来ています・・・

「咲耶ちゃん、今日はありがとう・・・」

でも今は夜・・・

「もう・・・今日はお別れだね・・・」

デートが終わるところ・・・
だけど可憐は寂しくなんかありません・・・
だってそうなる様に可憐がコントロールしたんだから・・・
そしてその理由は・・・

「咲耶ちゃん・・・お別れのキス・・・してください・・・」

可憐はそう言うと目を瞑って咲耶ちゃんの顔に可憐の顔を近づけました・・・
もう少しで咲耶ちゃんとキスできる・・・
もう少しで咲耶ちゃんの唇が・・・

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・












今日は日曜日・・・
昨日と同じく学校がない・・・
昨日と同じく特に何かする予定もない・・・
一日が長い・・・
一日が長い・・・
お昼寝しようかな・・・
そうしたら夢の続きが・・・
あの続きが・・
ううん、ダメだよ・・・
のめり込んだら大変なんだよ・・・
でも、我慢できないよ・・・
なんで昨日はあんなところで終わったの?
あと少しで咲耶ちゃんとキスできたのに・・・
我慢しなきゃ・・・
でも、我慢できない・・・
どうしよう・・・
このままじゃ・・・

     プルルルルルル・・・

そんな時、電話が掛かってきました・・・












「咲耶ちゃん、今日はありがとう・・・」
「いいのよ、私も暇だったから」
「もう・・・今日はお別れだね・・・」
「そうね」

昨日と同じ・・・
昨日の夢と同じだ・・・

「さ、咲耶ちゃん・・・」
「なに?」
「お、お別れの・・・」
「お別れの・・・なに?」
「・・・な、なんでもありません!」

なにを考えてるの!?
これは現実なんだよ!!
そんな事言ったら咲耶ちゃんに変に思われちゃうよ!!
咲耶ちゃんに嫌われちゃうよ!!

「じゃあね」
「え、あ、はい・・・さようなら・・・」

大丈夫・・・
その続きは夢で見ればいい・・・
夢で見ればいいんだから・・・












「咲耶ちゃん・・・キスしてください」
「いいわよ・・・目、瞑って・・・」
「はい・・・」

咲耶ちゃんとキスできる。
ずっと待っていたんだよ。
早くしてほしいよ。

・・・・・・

まだなの?
まだできないの?
可憐は我慢できなくて目を開けました。
そして解ってしまったんです。
これはやっぱり夢なんだって・・・
だって・・・
可憐は既に咲耶ちゃんとキスしていたんです。
唇の感触の無いキスを・・・












夢の中でも感覚はあった・・・
だからこれもそうだと思っていた・・・
でも夢は夢・・・
知らない感覚は・・・感じられないんだ・・・












「やあ、可憐くん」

道で千影ちゃんに会いました。

「千影ちゃん・・・」
「・・・・・・どうかしたのかい?」
「え?」
「元気が無い様だけど」
「そんな事・・・」
「・・・まさか・・・・・・夢にのめり込んでしまったのかい?」
「そんな事無いです!」
「だったらいいんだ・・・」











今日は水曜日・・・
だけど学校は無い・・・
祝日だからって・・・
みんなは喜んでたけど・・・
可憐には辛いよ・・・
学校があったほうが一日が早いのに・・・
だったら、我慢できるのに・・・
我慢できない・・・
我慢できない・・・
我慢できない・・・
我慢できない・・・
眠りたい・・・
夢を見たい・・・
ダメ!
一日一回・・・
これは夢にのめり込まない為に可憐が自分で決めた事でしょ?
それも守れないの?
・・・・・・
一日・・・一回・・・?
そうか・・・
だったら夜は寝なければいいんだ・・・
そうすれば今日の分を早く見ただけになるもの・・・
そうしよう・・・
おやすみなさい・・・











「可憐ちゃん、こんにちは」
「咲耶ちゃん・・・」

今度は道で咲耶ちゃんと会いました。

「あら? どうしたの、可憐ちゃん、疲れているの?」
「大丈夫です・・・眠れば治りますから・・・」
「そう?」
「はい・・・」
「じゃあ私、行くから・・・気をつけてね」
「はい・・・」

そう言って咲耶ちゃんを見送りました・・・
現実の咲耶ちゃんを・・・
そして・・・
現実の咲耶ちゃんは・・・
男の人と一緒でした・・・












「可憐は・・・咲耶ちゃんの事が好きです・・・」
「私もよ・・・可憐ちゃん・・・」

そう言って抱き合いました。
また、上手くいった・・・
また、恋人になれた・・・
この瞬間が一番嬉しい・・・
また明日も恋を始めよう・・・












「大丈夫かい?」

道で千影ちゃんに会いました・・・

「千影ちゃん・・・」
「本当に夢にのめり込んでないんだね?」
「大丈夫です・・・回数を決めてますから・・・」
「ならいい・・・」

一日一回だけ・・・
たったそれだけ・・・

「週一回を超える様なペースでないのなら・・・・・・大丈夫だろう」

え?

「ち、千影ちゃん今なんて!?」
「週一回を超えてないなら大丈夫だ・・・と」
「あの! それを超えてたらどうなるんですか!?」
「恐らく・・・・・・のめり込んでしまうだろう。 本にもそう書いてあっただろう?
全て自分の思い通りの世界に居るんだ・・・・・・そのペースでも私は危険だと思っているがね・・・」

どうしよう、可憐、可憐・・・

「あの・・・」
「なんだい?」

ダメ!
どうしたらいいかなんて、そんな事聞いたら千影ちゃんにばれちゃう!

「・・・・・・なんでもないです」

大丈夫・・・本はまだ借りてるんだから・・・
それに書いているはずだから・・・












可憐は浮かれていてうっかり読み忘れていました・・・
千影ちゃんの言ったとおり、
この方法は週一回を超えてはならないみたい・・・
でも大丈夫、可憐はまだ手遅れじゃない!
でも、今日から夢は見られない・・・
しばらくの間、いつもの方法を止めなきゃいけない・・・
それに、普段通りの夢でも咲耶ちゃんに逢えるかもしれない・・・












「可憐ちゃん、最近元気ないわね」
「そんな事無いです・・・」
「最近そればっかよ・・・ホントに大丈夫?」
「大丈夫です・・・」

あの日から夢を見ていない・・・
夢の中で咲耶ちゃんに会えないから、
現実の咲耶ちゃんに逢えるのは嬉しい。
でも・・・

「あ、じゃあ、もう時間だから・・・。 可憐ちゃん・・・お大事にね・・・」
「はい・・・」

現実の咲耶ちゃんはただの可憐のお姉ちゃん・・・
そして現実の咲耶ちゃんは男の人と付き合っているんだ・・・












今日は夢を見よう・・・
しばらく休んだからもう大丈夫だろう・・・
もう・・・

一週間も休んだんだもん・・・












「咲耶ちゃん・・・大好き・・・」
「可憐ちゃん・・・」

そうしてまた始まる・・・
可憐と咲耶ちゃんは恋人になる・・・

「私もよ・・・」

え!?
さ、咲耶ちゃん、待って!?
キスしないで!
そうしたら嫌でも解っちゃう!
これが夢だって!
解っているけど・・・実感したくない!

「咲耶ちゃ・・・」

え・・・?
その時、可憐は信じられませんでした・・・
だって・・・
知らないはずのキスの感触を味わってたんだから・・・












あれは・・・夢だったの・・・?
それとも現実・・・?
現実だったら起きるはずない・・・
でも、夢なら感触があるはずない・・・
解らない・・・
解らないよ・・・












「可憐ちゃん!」
「さ、咲耶ちゃん!?」
「どうしたのビックリして?」
「え、だって・・・」
「あ・・・、やっぱりこの間の事・・・」
「この間?」
「ごめんなさい・・・私、嬉しくて、つい・・・」
「あの、この間って・・・」
「なに言ってるの? ・・・・・・可憐ちゃんが私に好きって言った時の事よ・・・」
「え!?」

じゃああれは・・・

「もう、なに言わせるのよ!」

現実だったの・・・?












夢が現実になった!
もうあの方法は必要ない!
だって、もう現実の方が楽しいんだもん!












「咲耶ちゃ・・・」

その時、咲耶ちゃんは男の人とキスしてました・・・
あれ? おかしいな?
咲耶ちゃんの恋人は可憐なんだよ?
なのになんで?
・・・・・・
・・・こっちが・・現実だったの・・・?
いや!
折角、咲耶ちゃんと恋人同士になれたのに!
いやぁッ!!












「おはようございます、咲耶ちゃん!」
「おはよう」

よかった・・・、あれは夢だったんだ・・・

「咲耶ちゃん・・・おはようのキス・・・してください」
「え!?」

そう言って現実の可憐は目を瞑りました・・・

「早くしてください・・・」
「・・・もう、しょうがないわね・・・」

咲耶ちゃんが可憐の肩を掴んでそのまま可憐を引き寄せました。
現実の咲耶ちゃんの唇はとても柔らかかったの・・・












あれ?
可憐また夢を見ちゃった。
だって咲耶ちゃんが男の人と一緒に歩いているんだもん。
大丈夫。
これは夢なんだから。
すぐに目を覚ませばこんな光景見なくて済む。
現実で幸せだから、夢で少しくらい不幸になっても平気だよ。
そうじゃないと釣り合いが取れないからかな?

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

早く目が覚めないかな?












よかった、やっぱり夢だったんだ・・・
なかなか目が覚めないから可憐、不安になっちゃった。
だったら目が覚めるのを待てばいいよね。
可憐はそう思いながら左手にナイフを突き立ててました・・・
痛みは全く感じてませんでした・・・












これは現実?
それとも夢?
咲耶ちゃんがまた男の人と歩いている・・・
だったら夢かな?
だって咲耶ちゃんの恋人は可憐だもん。
あ、咲耶ちゃんがこっちに・・・
もう、咲耶ちゃんどうして・・・
え? クラスメート?
なんだそうだったの・・・
そうだよ! 浮気してたかと思ってたんだよ!
え、うん・・・だったら許してあげる・・・
咲耶ちゃんは可憐に優しくキスしてくれました・・・
咲耶ちゃんの唇はとても柔らかかったです・・・












また咲耶ちゃんが男の人と歩いている・・・
またクラスメートかな?
それとも悪い夢かな?
だったら確かめよう・・・
可憐はそのまま持っていたカッターナイフを腕に突き立てました・・・
痛みは全く感じてませんでした・・・












また咲耶ちゃんが男の人と歩いている・・・
今度はキスまでしてる・・・
これは悪い夢だよね・・・
可憐はそのまま窓から飛び降りました・・・
痛みは全く感じてませんでした・・・












咲耶ちゃん、今度は可憐とデートしてる。
だったらこれは現実だよね・・・
あ!
ごめんなさい、可憐、転んじゃった・・・
うん、大丈夫だよ。
少し痛たかったけど・・・
現実だもん・・・












今日は久しぶりに千影ちゃんに会いました。
これは夢? 現実?
別にどっちでもいい事だけど・・・
解らない・・・












これは夢? 現実?
解らない
わからない
ワカラナイ
解らない
わからない
ワカラナイ
解らない
わからない
ワカラナイ
解らない
わからない
ワカラナイ
解らない
わからない
ワカラナイ












今日は咲耶ちゃんとデート。
じゃあ現実かな?
えい!

・・・・・・

やっぱりこれは現実だ・・・
可憐はシャープペンシルを腕に突き立てました・・・
腕には激しい痛みを感じました・・・












咲耶ちゃんがまた男の人と歩いてる・・・
じゃあ夢かな?
えい!

・・・・・・

やっぱりこれは夢だ・・・
可憐は包丁を脚に突き立てました・・・
脚には痛みを感じませんでした・・・












今日は咲耶ちゃんと・・・
じゃあ現実かな?
えい!

・・・・・・












咲耶ちゃんがまた男の人と・・・
じゃあ夢かな?
えい!

・・・・・・






・・・・・・






・・・・・・






・・・・・・






明後日は咲耶ちゃんの結婚式。
咲耶ちゃんの相手は可憐・・・
だったら現実だね・・・
もう調べる必要も無い・・・












明日は咲耶ちゃんの結婚式。
咲耶ちゃんの相手は・・・
可憐じゃない・・・
だったら夢だね・・・
もう調べる必要も無い・・・












今日は咲耶ちゃんの結婚式。
咲耶ちゃんの相手は可憐・・・
だったら現実だね・・・












咲耶ちゃん、可憐、今、幸せです・・・
だって咲耶ちゃんのお嫁さんになれるんだもん・・・
可憐は咲耶ちゃんの隣で素敵なウエディングドレスを着て・・・
今日、咲耶ちゃんと結婚します・・・
咲耶ちゃん、見て、みんな可憐達の事を祝福してくれてるよ・・・
可憐は今、世界一の幸せ者です・・・
咲耶ちゃん、大好き・・・
























『目を覚ますんだ・・・』


え?


『これは現実じゃない・・・』


誰?


『現実では無いんだよ・・・・』


誰なの?






あ、ごめんなさい、咲耶ちゃん・・・
可憐、ちょっと空耳が・・・


『目を覚ますんだ・・・』


誰なのッ!?


『これは現実じゃない・・・』


ウソ!
そんなはず無い!


『ウソじゃないさ・・・』


だって可憐と咲耶ちゃんは愛し合っているんだよ!
だからこれは現実!


『違う・・・』


違わない!!


『君は夢にのめり込んでしまったようだね・・・』


何を・・・、何を言ってるの?
可憐は夢を見る必要は無くなったんだよ!
現実で咲耶ちゃんと一緒になれたから・・・


『それが夢なんだ・・・』


ウソッ!!


『ウソじゃない・・・』


そんなはず無い!
そんなはず・・・!


『帰って来るんだ・・・』


・・・・・・


『可憐くん・・・』


ここは現実です・・・!
間違いありません・・・!


『違う! そこは夢の世界だ・・・!』


証拠を・・・見せてあげます!
























ほら・・・やっぱり・・・現実だった・・・
だって・・・
だってこんなに・・・



痛いんだから・・・












可憐は持っていたナイフで思いっきり自分の身体を切り裂きました・・・
腕に、脚に、胸に、
とにかく手の届く範囲はほとんど切り裂きました・・・
でも、顔は疵つけていません・・・
だって折角の結婚式なんだもん・・・

『可憐ちゃん!!』

咲耶ちゃんの声が聞こえます・・・
ねえ・・・咲耶ちゃん・・・可憐、痛いよ・・・

『可憐ちゃん! 可憐ちゃんッ!!』

こんなに痛いんだよ・・・

『どうしてこんな・・・』

だからこれは現実・・・
ねえ、誰か知らないけど見てよ・・・
可憐のウエディングドレス・・・
穴が開いちゃったよ・・・
真っ赤になっちゃたよ・・・
どうしてくれるの・・・?
折角の晴れ舞台だったんだのに・・・
あ、大丈夫か・・・
可憐が望めば・・・
何でも叶うんだもんね・・・
だって・・・



それが現実なんだから・・・

























あれ?
げんじつって・・・そうだったっけ?
じゃあこれはゆめなの?
でも、かれん、すごくいたいよ・・・
からだじゅうすごくいたいんだよ・・・
でも、げんじつって・・・
わからない・・・
わからないよ・・・












『ここは夢の世界さ・・・』












そう・・・なんですか・・・?
じゃあ、おしえてください・・・
かれんはいつからゆめをみてたんですか?












『それは・・・――――』




































「・・・どうしたんだい?」

咲耶くんが私の家に尋ねて来た・・・

「聞きたい事があるの・・・」
「・・・とにかく・・・・・・入りたまえ・・・」

まあ、大体の見当はついている・・・












「可憐くんの事かい?」
「ええ・・・可憐ちゃんが・・・眠り続ける前に・・・、千影、貴女の家に来たんでしょ? 何があったの?」
「・・・夢を見たい・・・・・・そう言ってきた・・・」
「夢?」
「現実では決して叶わない夢を見たいと・・・」
「だから・・・だから眠り続けてたって言うの!?」
「ああ・・・」
「ふざけないで!! だったらアンタの所為で可憐ちゃんは・・・!!」
「そう・・・かもしれないな・・・」
「!」
「まさか・・・・・・こんな事になるなんて・・・」












「一体何をしたって言うの・・・?」
「・・・・・・」
「ただ眠ってるだけで・・・夢を見てるだけで・・・あんな・・・」
「・・・・・・」
「信じられる? 突然、眠っている可憐ちゃんの体が切り裂かれたのよ!
みんなが見てる前で! 誰も何もしていないのに!!」
「・・・夢・・・」
「え?」
「夢の所為さ・・・」
「なにを言ってるの? そんな事・・・」
「『思い込み』・・・」
「『思い込み』?」
「強い『思い込み』は肉体に影響を与える・・・・・・君も聞いた事ぐらいはあるだろう?」
「でもそれと可憐ちゃんと・・・」
「夢を現実と思い込んだからさ・・・」
「どういう事?」
「つまり彼女の場合・・・・・・夢の中で切り裂かれた事・・・・・・それを現実の事と強く思い込んだ・・・」
「だからあんな事が起きたって言うの!?」
「そうとしか考えれない・・・」
「そんな・・・」
「信じる信じないは自由だ・・・・・・だが私はそう思ってる・・・」












「大丈夫かい?」
「ええ・・・」
「咲耶くん・・・・・・私では・・・・・・支えになれないのかい?」
「え?」
「私では・・・・・・君を支える事はできないのかい?」
「・・・ごめん・・・私は・・・」
「やはり・・・・・・可憐くんでなくてはダメなのかい?」
「・・・ええ・・・」
「そうか・・・」
「おかしいわよね・・・妹に・・・こんな感情・・・」
「だったら・・・私もそうだ・・・・・・私は君の事を・・・」
「そうだったわね・・・ごめん・・・」
「いいさ・・・ただ、私はいつまででも・・・・・・待つつもりでいる」
「・・・・・・」
「だから・・・」
「ありがとう・・・」
「じゃあ・・・また・・・・・・来世・・・」
「ええ・・・」
























私は咲耶くんを見送り一人家に取り残された・・・
そして居なくなった妹の事を思った・・・

「可憐くん・・・」

私の愛した人に唯一愛された妹の事を・・・












「全く・・・・・・やっとくたばったのか・・・」

この世で誰よりも憎かった存在を・・・












彼女は私の愛した咲耶くんに愛された・・・
そして彼女も咲耶くんを愛した・・・
許せなかった・・・!
私が得られなかった咲耶くんの心を・・・!
あんな小娘が・・・!
あのまま二人がくっつくのは時間の問題だった・・・!
そんなの見たく無い・・・!!
私の愛した咲耶くんと他の誰かが・・・
それが同じ妹ならなおさら許せなかった・・・!
だから・・・



彼女に覚めない夢を見てもらう事にした・・・



フフフ・・・何も知らない彼女は私の言う通りにした・・・
既に叶っている願いを叶える為に現実を捨てた・・・
例え夢でも彼女は現実と思うのは当然だった・・・
彼女はそれを現実と認識しているからだ・・・
だから彼女は夢の中でも痛みなどの感覚を感じることができる・・・
まあ、彼女が体感したものに限るが・・・それでも十分だ・・・
彼女はもう現実に戻れないんだから・・・



だが・・・
彼女は眠っている間も咲耶くんを独占し始めた!!
病院のベッドで二度と起きない彼女に咲耶くんは毎日会いに行った!!
許せない・・・!!
放っておけば咲耶くんもそのうち離れると思ったのに・・・!!
咲耶君は私に振り向くと思っていたのに・・・!
そして見てしまった!!
あの小娘に口づけをする咲耶くんを・・・!!
あの小娘はあの時、夢の中でも私の咲耶くんと口づけを交わしていたはずだ!!
そして一度体感した感覚は夢の中では何度でも感じる事ができる!!
そう思うと・・・生かしては置けなくなった・・・!!

だから彼女の夢を滅茶苦茶にした!
現実と夢を解らなくした。
フフフ・・・違うな、既に彼女は解らなくなっていたんだったな・・・
そして最も幸福な瞬間を否定してやった!!
そして予想通り・・・彼女は夢の中で自分を切り裂いた・・・
そうなる様操作してやったからな・・・

彼女でも指を切った事くらいあるはずだ・・・
その痛みさえ知っていればそれが大きくなればどうなるかくらい予想できるはずだ・・・
思ったとおり・・・現実の彼女は夢の彼女に切り裂かれた!

フフフ・・・・・・全く、いい気味だったよ・・・
可憐くん・・・
君が居なくなれば咲耶くんもいずれ私のモノとなる。
そう遠くない未来に・・・
これでもう私と咲耶くんを邪魔するものは居なくなったんだ!
さようなら・・・
可憐くん・・・



この世で誰よりも憎い妹・・・
























じゃあ、おしえてください・・・
かれんはいつからゆめをみてたんですか?












『それは・・・―――』


「―――・・・最初からさ・・・」



あとがき

この話は思いついてすぐ書き始めた作品です。
ありがちな夢と現実が解らなくなるお話ですね。
書く前に書いてる途中、絶対混乱すると思ったらやっぱり混乱しました。
自分でもよく解らなくなっています。
まあ、取り敢えず書くと、文頭から千影パートに変わる前まで全部が夢です!
そうしないと絶対解らなくなるから最初からそうしようと思ってました。
ダメSS作家ですね!
これ記念すべき10作目なのに・・・
とにかく問題作決定!
しかも表ページで一番の!
お兄ちゃんおよび兄くんの方々すみませんでした。
・・・え、タイトル書き忘れ?
あるじゃないですか、一番最初に。
ほら、本文一行目。


更新履歴

H15・6/14:完成
H15・6/15:修正
H15・6/19:また修正
H15・8/5::またまた修正
H15・8/11:また更に超微修正
H15・11/16:誤字修正


 

SSメニュートップページ

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送