『・・・このままだと・・・』

正直、驚かなかった訳じゃない・・・。

『・・・鞠絵ちゃんは・・・』

でも・・・











その短い未来に全てを捧げて












「鞠絵ちゃん!」
「え?」
「どうしたの? 最近元気ないみたいだけど・・・」

お見舞いに来てくれた花穂ちゃんが考え事をしていたわたくしを心配そうに思いそう聞いてきた。

「そんな事ないですよ」
「でも・・・」
「大丈夫です・・・ちょっとだけ・・体の調子が優れないだけですから・・・」

本当は違う・・・
あの話を思い出していた・・・。

「あ、あのさぁ・・・今度、花穂と一緒にお出かけしない?」
「え?」
「見せたいものがあるの!」






「一体どこに連れて行く気ですか?」

数日後、外出許可が出たわたくしは約束どおり花穂ちゃんと一緒に出かける事にした。
見せたいものがある、そう言った花穂ちゃんは、わたくしをどこかに連れて行こうとしていた。
でも、それがどこか、またどんな所かは着いてからのお楽しみという事でまだ教えてもらってない。

「いいから、いいから・・・きゃっ!」
「花穂ちゃん!!」

歩いている途中、花穂ちゃんは何も無い所で転んでしまった。

「ふぇ〜ん、花穂、ドジだからまた転んじゃったぁ〜」
「大丈夫ですか?」
「うん・・・」

少し涙目になりながらも花穂ちゃんはそう答えた。

「はぁ、花穂どうしていっつも転んじゃうんだろう・・・」
「ふふふ・・・」
「鞠絵ちゃん?」

そんな様子を見たわたくしは突然笑いたくなった。

「ひどいよ〜、花穂の事笑うなんて・・・」
「すみません、でも・・・」

何気ない日常の何気ない風景
ただそれだけなのに・・・
わたくしにはそれがとても嬉しい事に思えたから・・・。






「着いたよ、鞠絵ちゃん!」

しばらくして花穂ちゃんがわたくしに目的の場所に着いた事を教えてくれた。

「ここは・・・」
「えへへ・・・どう? 鞠絵ちゃん」

そこには一面の花畑が広がってた。

「すごい・・・」

わたくしの口から思わずそう声が漏れた。
赤や白、黄色やピンク、様々な色をした花がそこには咲き乱れていた。

「綺麗・・・ですね」
「でしょ! 花穂がね、見つけたんだよ!」

わたくしが驚いた事に満足げの花穂ちゃん。
わたくし達は並んでしばらくその花畑を見つめていた・・・。












『・・・このままだと・・・』

『・・・鞠絵ちゃんは・・・』






『・・・もって半年でしょう・・・』











「・・・りえちゃん・・・鞠絵ちゃん・・・」
「え?」
「鞠絵ちゃん!」
「あ、すみません」
「どうしたの? また考え事?」

深刻そうな顔をしていたわたくしを心配した花穂ちゃんがそう尋ねた。

「・・・・・・みたいなものです」

わたくしはそう答えた。
思い出してしまった・・・。
偶然聞いてしまったお医者様の話を・・・

「花穂ちゃん」
「なに?」
「この花は・・・こんなにも綺麗に咲いているのに・・・
・・・冬には全て枯れてしまうんですね・・・」
「え?」

突然こんなことを言うわたくしに花穂ちゃんは少し驚いたようだった。

「あと少しの間しか・・・生きていられないんですよね・・・」

まるでわたくしの様・・・。



あの話を聞いた時・・・、
正直、驚かなかった訳じゃない・・・。



でも・・・、なんとなく分かっていた・・・。






「・・・でも」
「え?」

そんなことを考えていたわたくしに花穂ちゃんが話し始めた。
突然の事だったのでわたくしは少し驚いてしまった。

「でも、このお花さん達はそれまで精一杯生きているんだよ!」

そう言うと花穂ちゃんはわたくしの前に回りこみ―――

「フレー! フレー! ま・り・え・ちゃん!」

―――わたくしを応援し始めた。

「か、花穂ちゃん!?」

またもや突然の事にわたくしは驚きを隠せなかった。

「頑張れ! 頑張れ! ま・り・え・ちゃん!」

その為わたくしは何も言えずそのまま黙って花穂ちゃんを見続けていた。

「フレー! フレー! ま・り・・・きゃあ!」

ところが花穂ちゃんは応援の途中足を縺れさせてしまいそのまま転んでしまった。

「花穂ちゃん!」

転んでしまった花穂ちゃんを心配したわたくしは、慌てて花穂ちゃんの側まで駆け寄った。

「いたた・・・ふぇ〜ん、花穂また転んじゃったぁ〜」
「大丈夫ですか?」

そう聞いたわたくしに花穂ちゃんはこう答えた。

「うん、お花さん達は大丈夫だよ」
「いえ、花穂ちゃんは・・・」
「え? あ、花穂はいつもの事だから大丈夫」

花穂ちゃんはそう言うと立ち上がってスカートに付いた土を手で払った。

「花穂ちゃんは優しいですね・・・」
「え!?」
「自分の事よりも花の事を考えてあげられるんですから」
「そ、そんな・・・」

そう言う花穂ちゃんはちょっと恥ずかしそうに照れていた。
それがとても可愛らしく思えた・・・。






「ところで、今の応援は一体・・・」

わたくしは疑問に思った事を聞いてみる事にした。

「鞠絵ちゃん・・・最近元気なかったでしょ?」
「え?」
「そんな鞠絵ちゃん、花穂、見たくなかったの・・・。
 だから何とかしてあげたくて・・・、でも、花穂には応援する事しか出来ないから・・・。
 だから花穂・・・鞠絵ちゃんを応援しようって決めたの!」
「花穂ちゃん・・・」
「それにね、ここに連れて来たのは鞠絵ちゃんを笑顔にするため」
「え?」
「お花さん達を見るとなんだか元気になれるでしょ? だから鞠絵ちゃんをここに連れて来たの」
「それで、わたくしを・・・」
「それに隠していたのは驚かせた方がいっぱい喜んでもらえると思ったから」
「そうだったんですか・・・」

わたくしの為に・・・
嬉しい・・・
心からそう思った・・・。

だから・・・

「鞠絵ちゃん!? どうしたの!?」
「花穂ちゃん心づかいがとても嬉しくて・・・」

わたくしの頬を涙が流れていきました・・・。






「すみません、心配掛けてしまって・・・」
「ううん、そんなに喜んでもらえたなんて・・・花穂、嬉しいな」

わたくし達は夕焼けで紅く染まった帰り道を歩いていた。

「ねえ、鞠絵ちゃん・・・」
「なんですか?」
「花穂、応援する事しか出来ないから・・・だからこれからも花穂に鞠絵ちゃんの事応援させて!」

花穂ちゃんはわたくしを向いて真剣な顔でそう言った。

「それはわたくしの方からお願いしたい事ですよ」
「ホント!」
「本当です」

しばらく歩いて横断歩道に差し掛かりました。
二人で横断歩道の信号が青になるのを待っている時、わたくしは花穂ちゃんにこう話しかけました。

「でも、花穂ちゃんは少し勘違いしていますね」
「勘違い?」
「ええ、花穂ちゃんは応援する事“しか”出来ないんじゃないんです。
応援する事“が”出来るんです」
「え? それって同じことじゃ・・・?」

私の言葉に少し不思議そうに思う花穂ちゃん。

「全然違いますよ。 花穂ちゃんは応援する力を、誰かを元気にする力を持っているんです」
「え!」
「わたくしは、それはそれだけで立派な力だと思いますよ」
「そ、そんな・・・あ、青になったよ。 ほら、早く渡ろうよ!」

花穂ちゃんは少し照れて横断歩道を先に渡り始めました。






「・・・ッ!」

横断歩道を渡っている途中、突然の発作が私を襲いました。

「鞠絵ちゃん、早く渡・・・鞠絵ちゃん?」

花穂ちゃんは心配そうにわたくしの所へ駆け寄って来ました。

「す、すみません・・・いつもの発作・・・ですから・・・」

横断歩道の真ん中で少し屈んだ体勢のわたくしを心配そうに見つめる花穂ちゃん。
この発作はいつもの事だからすぐに治まるはず・・・
だから余計な心配は・・・

「鞠絵ちゃんッ!!!」

―――えっ?

一瞬状況が読めなかった。
突然の衝撃にわたくしの体は後ろに突き飛ばされていました。
そしてそれが・・・

花穂ちゃんがわたくしを突き飛ばしたのだという事を理解したのは・・・、






花穂ちゃんの体が無残にも車に撥ね飛ばされた瞬間でした・・・・・・。






「なん・・で・・・?」

信号は未だ青を示していたのに・・・

「かほ・・ちゃん・・・」

なんで?
なんでこんな事に?

「・・・かほ・・・ちゃん?」

さっきまであんなに元気だったのに・・・、
真っ赤に染まって道路にぐったりと横たわって・・・

「かほ・・・」

どうして・・・






「花穂ちゃぁぁぁぁぁぁああああんッッッ!!!」






「花穂ちゃん!! しっかりしてぇッ!!」
「鞠絵・・ちゃん・・・」

!! 生きてる・・・!?
まだ息がある・・・!!

「花穂ちゃん!! 花穂ちゃんッ!!」
「だい・・じょう・・ぶ・・?」
「大丈夫です! わたくしは大丈夫ですッ!! でも、花穂ちゃんが・・・!!」

出血がひどい・・・・地面がどんどん赤く染まっていく・・・。

「だったら・・いいの・・・」
「良くない! 良くなんかない!!」


「どうして花穂ちゃんがこんな目に遭わなきゃいけないの!?
どうしてわたくしなんかの為に!!?」

どうして私を庇ったり・・・
だってわたくしは・・・

「だって・・花穂・・鞠絵ちゃんに・・・生きていて・・・欲しかったから・・・」
「・・・・わたくしに・・生きていて欲しかった・・・!?」

そんな・・・そんな理由なら・・・

「だから・・鞠絵ちゃんは・・・花穂の・・代わりに・・・生きてね・・・」
「そんな事言わないで!! 花穂ちゃんは助かります!! 絶対にッ!!」

花穂ちゃんがあの事を知っていたら・・・
そうしたらわたくしが車に跳ねられて・・・―――

「花穂・・・鞠絵ちゃんが・・生きていてくれたら・・・それで・・・」
「そんな・・・そんな事・・・言わないで・・・・! だって・・・わたくしは・・・」

―――・・・ただ“早まっただけ”だったのに・・・!

「わたくしはあと半年も生きられないのにっ!!」

・・・神様は・・・残酷です・・・。







「しってた・・・」

「・・・え?」

―――知って・・いた・・・?

「だったら・・だったらなんで!!?」
「・・それでも・・・花穂・・鞠絵ちゃんの事・・・・助けたかったから・・・」
「何を言っているんですか!!? わたくしの半年の為に!!
花穂ちゃんのこれからが!! 何年、何十年もある未来が・・・!!」
「あのお花さん達は・・・あと少ししか・・・・生きていられないけど・・・
それでも・・精一杯・・・・生きていくんだよ・・」
「花穂ちゃんなにを言って・・・!?」
「だから・・・鞠絵ちゃんも・・あと少し・・・かもしれないけど・・・・精一杯生きて・・・」
「精一杯生きます! 花穂ちゃんと一緒に!! だから・・・」
「そのために・・・花穂・・・、花穂の未来を・・・まりえちゃんに・・・ぜんぶ・・・あげる・・」
「だからそんな事・・・言わないでください!!」
「かほ・・おそらのうえで・・・・まりえ・・ちゃんが・・・くるの・・・ ずっ・・と・・・まってる・・から・・・・」
「そんな事言わないでッ!! 花穂ちゃんは助かるんですからッ!!!」
「・・・でも・・・・できる・・だけ・・・・かほ・・の・・こと・・・・またせ・・てね・・・」
「花穂ちゃん!! もう喋らないで!! 傷が・・・ッ!!!」
「ふれ・・・え・・・ふれ・・・・え・・・ま・・り・・・え・・・・ちゃ・・」
「もういい! 花穂ちゃん! もう喋らないでッ!!!」
「がん・・ば・・れ・・が・・・ん・・ばれ・・・」
「花穂ちゃんお願い!! お願いだからッ!!!」
「ま・・・り・・・・ぇ・・・・・」
「花穂ちゃんッ!! お願い!! もう・・・ッ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「かほ・・ちゃん・・・?」

「嘘・・ですよね?」

「ねえ・・・花穂ちゃん? ねえ! ねえッ!!」

「いや! 花穂ちゃん!!」

「返事をして!! ねえ、花穂ちゃん!!」

「これからもわたくしを応援するって!!そう言ってたじゃないですか!!?
ねえ、花穂ちゃん!! 花穂ちゃん!? ねえっ!!?」

「いや・・・」



「花穂ちゃん・・・・」






「いやあああああああああああああああああああああああああっっっっ・・・・・!!!!!」
























三年後・・・ side鈴凛



「花穂ちゃん・・・もう貴女が居なくなってから三年も経ったんだね」

アタシは今、花穂ちゃんのお墓の前に立っている。

「早いよね・・・」

今日は花穂ちゃんの命日・・・。
アタシはみんなよりも遅れてお墓参りにやって来た。
みんなで一緒に来てあげた方がいいかったんだけれど、あいにく予定が合わなかった。
アタシは花穂ちゃんの前まで来てゆっくりと話しを始めた。

「花穂ちゃん・・・みんな、貴女が居なくってから元気がなくなっちゃってたんだよ」

「花穂ちゃんは・・・いつも自分になにかできる事はないかって思ってたみたいだけど・・・、
でも・・・本当はもう・・・やっていたんだよね・・・」

「みんなは・・・アタシもだけど・・・それに気づいてなかっただけだったんだよ・・・」

「だから・・・花穂ちゃんが居なくってから・・・みんな元気がなくなっちゃってたんだよ・・・」

「でもね、いつまでもそれじゃあ・・・花穂ちゃんが悲しむでしょ?」

「だからアタシ達、・・・今はみんな元気でやっているよ」

「あ、そういえば・・・一人だけそれに気づいていた人が居たんだっけ・・・」

「その人が来たみたい・・・」






アタシがそう言うのとほぼ同時にアタシの後ろから足音が聞こえてきた。

「遅れてしまってすみません、鈴凛ちゃん」
「遅いよ!」

アタシは振り返って後れて来たその人に軽く怒った顔をしてそう言った。

「でも・・・」
「分かってる・・・あの花畑の花を摘んで来たかったんでしょ?
三回もやればアタシも覚えるよ」
「ええ・・・」
「ほら・・・早く花穂ちゃんに挨拶してあげて・・・・・・鞠絵ちゃん・・・」
「はい・・・」

そう言うと鞠絵ちゃんは花穂ちゃんのお墓の前まで歩いてきた。

「花穂ちゃん・・・お元気ですか?」

鞠絵ちゃんはそう言って花穂ちゃんに話し始めた・・・。






今、鞠絵ちゃんが生きているのは花穂ちゃんのお陰だ。
鞠絵ちゃんはあの後、今まで以上に生きようと思い始めたらしい・・・。
少しでも長く・・・、そうする事で花穂ちゃんのやった事の意味を大きくしたかったから・・・
生きるようとする意志というのは生きるためにとても大切なものとなる。
その所為かどうかは知らない・・・。
でも、鞠絵ちゃんはあと半年の命と言われながら三年経った今も生きている。
多分、あと何十年も・・・
それくらい鞠絵ちゃんは元気になった・・・
医師も奇跡だと驚いていたらしい。

「最近のみなさんの様子はこんなところですよ・・・」
「鞠絵ちゃん、そろそろ行こうか・・・」
「あ、はい・・・じゃあ最後に・・・」






「ありがとうございます・・・わたくしは今あなたのお陰で生きていられるんです」

「花穂ちゃん・・・最期に私が来るのを待っている、って言いましたよね?」

「すみません・・・多分、わたくしはしばらくはそちら行けそうにありませんから・・・」

「でも・・・その方が花穂ちゃんも喜んでくれますよね・・・」

「楽しみに待っていて下さいね・・・」



「何十年でも・・・待たせますから・・・」



あとがき

まず始めに・・・お兄ちゃまの方々申し訳ありませんでした!
実際この話は作り方次第では死ぬの花穂以外でも出来るんですが・・・、
まあ、ターゲットが花穂になったという事で諦めてください(笑)
これは意外と簡単き書き上げましたね。
なんか色んな所で失敗したかも、とか思っています。
余命半年って言われたのに元気になりすぎとか・・・。
まあ、ドナーが見つかって臓器移植でもしたと考えてください(適当)
でもその割に書いてる時色んな事を思いましたね。
例えば花畑の花の色なんか最初は「赤やピンクやオレンジ、緑」って書こうとしたんですけど、
それだと“まもかほ”に一日に色を付けられそうだったから止めました。
(この意味分かる人居るのかな?)
あと何故最後が“side鈴凛”なのかとか思った人居ると思います。
自分でもそう思いました(笑)
まあ、鈴凛は鞠絵の恋b(ただの思い込みの為削除)
内容の割になんてミもフタもないあとがきなんだか・・・。
余談ですがこれ書いてる時、
特に「ふれ・・・え・・・ふれ・・・・え・・・」辺りを書いてる時、
感情移入しすぎたのか目が潤みました。



更新履歴

03年6月上旬くらい:完成
03年8月5日:修正


 

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