愛しています・・・誰よりも・・・。
そして心の底から貴女が憎いです・・・。












最愛の貴女へ、最悪の結末を














「やあ・・・・・・鞠絵くん」
「千影ちゃん、来てくれたんですか」
「体は・・・・・・大丈夫かい?」
「ええ」
「そうか・・・」
「あの、今日はどうして・・・?」
「何・・・・・・ただの気紛れさ・・・」
「それでも来てくれたのは嬉しいです」
「そうかい・・・」
「ええ・・・わたくしは体が弱いので、いつもベッドの上で本を読んだりするしかなくて・・・、調子のいい日でもないと、何処へも行けませんから・・・」
「鞠絵くん・・・」
「だから誰かが来てくれるのはすごく嬉しいんです」
「・・・・・・元気に・・・・・・健康になりたいのかい?」
「もちろんです」
「だったら・・・・・・毎日これを飲むといい」
「・・・・これは?」
「私が作った・・・・・・健康な体になる薬さ・・・」












「やあ・・・・・・鞠絵くん」
「千影ちゃん! また来てくれたんですか!?」
「ああ・・・」
「あの・・・なんでですか?」
「なにがだい?」
「どうして最近、毎日のように来てくれるんですか?」
「迷惑・・・・・・なのかい?」
「そんなこと無いです! ただ・・・来るだけでも大変なのに・・・」
「ここに来るだけで・・・・・・君が喜ぶから・・・」
「えっ?」
「これでは・・・・・・理由にならないかい?」
「千影ちゃん・・・。
 ありがとう・・・ございます・・・」
「ところで・・・・・・薬は効いているかい?」
「えっ? あ、ええ、そうみたいです、お医者様も信じられないって言っていました。 この調子だとみんなと一緒に暮らせる日もすぐ来るだろう、って」
「そうか・・・・・それは・・・よかった・・・」










「・・・・・・」
「どうしたんだい?」
「えっ?」
「さっきからこっちを見て・・・・・・私の顔に・・・・・・何か付いてるのかい?」
「い、いえ、そんなことないですよ」
「だったらどうして?」
「なんでもないんです・・・なんでも・・・」
「そうかい・・・? それよりも・・・・・・聞いて欲しい事があると言っていたが・・・」
「あ、はい、実は・・・」
「実は?」
「退院が決まったんです」
「本当かい・・・!」
「ええ」
「おめでとう・・・・・・鞠絵くん」
「ありがとうございます。 ・・・この事は一番最初に千影ちゃんに聞いて欲しかったんです」
「どうしてだい・・・?」
「それは・・・」
「それは・・・?」
「・・・・・・」
「鞠絵くん?」
「い、いえ、ただ何となくです・・・」












「退院・・・・・・おめでとう」
「あ、ありがとうございます・・・」
「元気が・・・・・・ないようだね」
「いえ、そんな事は・・・」
「熱でもあるのかい?」
「えっ?」
「顔が真っ赤だよ・・・」
「えっ! いえ、違うんです! これは・・・」
「これは?」
「あ、あの・・・と、とにかく大丈夫ですから」
「・・・そうかい?」












「分かってるんです・・・、それがいけない事だって・・・間違ってる事だって・・・」
「・・・鞠絵くん」
「何度も何度も自分に言い聞かせました・・・」
「・・・・・・」
「でも・・・もう抑えられないんです・・・」
「鞠絵くん・・・」
「愛して・・います・・・。 ・・・千影ちゃん」












「・・・いいのかい?」
「いいんです・・・もう・・・決めましたから・・・」
「折角・・・・・・みんなと一緒に暮らせる様になったのに・・・」
「でも、もうこれしか方法が・・・」
「・・・すまない」
「大丈夫です、千影ちゃんさえ居れば・・・わたくしは・・・」
「鞠絵くん・・・」
「行きましょう・・・千影ちゃん」
「ああ・・・・・・これからは・・・二人で生きていこう・・・」
「はい・・・」
「じゃあ・・・・・・行こうか・・・」
「・・・・・・千影ちゃん」
「・・・なんだい?」
「愛しています・・・」
「私もだよ・・・・・・鞠絵くん・・・」
























あの薬はうまく効いてくれたようだ。
お陰で彼女は私の事を愛する様になった。
全てが私の思ったとおり上手くいっている。
彼女はもう私のモノだ。
身も心も全て私のものになった。
もう私達を邪魔するものはない。
ずっと二人きりだ。
ずっと、ずっと・・・
そう、永遠に・・・。
























「これは・・・どういう事・・・ですか?」
「私の日記を・・・・・・勝手に見たのかい?」
「あの薬は・・・健康になる薬じゃなかったんですか・・・?」
「・・・健康にならなっただろう?」
「じゃあここに書いている事はどういう意味なんですか!!」
「・・・・・・」
「答えて下さい!!」
























「・・・!!」
「だから言っているだろう・・・・・・君が欲しかったからだ、と・・・」
「何を・・・何を考えてるんですか!?」
「・・・大した問題じゃないだろう?」
「そんな訳無いじゃないですか!!」
「だったら・・・・・・今もベッドの上で本を読むだけの生活が良かったのかい?」
「!!」
「調子のいい日でもないと・・・・・・何処へも行けない生活が良かったのかい?」
「そ、それは・・・」
「君は健康な体を望んだ・・・・・・そして私は君を望んだ・・・。
・・・だから私はあの薬を作った・・・・・・君が健康になる代わりに・・・・・・君が私を愛するように・・・」
「人の心を・・・一体何だと思ってるんですか・・・!?」
「・・・・・・」
「卑怯者・・・」
「・・・怒った顔も・・・・・・素敵だよ・・・」
「貴女は・・・人として最低です・・・」
「・・・その最低の人間を・・・・・・君はどう思っているんだい?」
「・・・・・・」












「愛しています・・・誰よりも・・・」












「そして心の底から貴女が憎いです・・・」












「どうしたんだい・・・・・・こんな所に私を連れて来て」
「・・・・・・」
「鞠絵くん?」
「綺麗だと・・・思いませんか?」
「・・・?」
「初めてこの町に来た時・・・この展望台から星を見ましたね・・・」
「ああ・・・・・・、そう・・・だったな・・・」
「あの時はただ貴女と居るだけで幸せだと思ってました・・・」
「・・・・・・」
「例え“作り物の心”でも・・・」
「今は・・・・・・幸せじゃないのかい?」
「・・・・・・」
「鞠絵くん?」
「知っていましたか・・・?」
「・・・・・・・」
「あの日から・・・わたくしは何度も貴女を・・・」
「・・・“殺そうとしてた”・・・・・・かい?」
「・・・・・・」
「知っていたさ・・・」
「・・・・・・」
「・・・だが私は生きている・・・・・・それどころか傷一つ無い・・・」
「・・・・・・」
「君にはできなかったんだろう?」
「・・・その通りです・・・」
「・・・・・・」
「許せなかった!
 わたくしから全てを! 家族を! 友人を!
 心までも奪った貴女が許せなかった・・・!
 なのに・・・」
「・・・それでも・・・・・・できなかったんだろう?」
「耐えられなかった! 貴女が傷つくのが! 貴女が居なくなるのが!!
だってわたくしは全てを捨ててまで貴女を求めているから・・・」
「・・・・・・」
「・・・でも・・・気付いたんです・・・」
「・・・?」
「それは貴女も一緒だという事に・・・」












「だから・・・―――」
























彼女の体が宙に舞った時、
私は彼女との時間を思い出していた、
人としての心を捨て、
ただの独占欲の塊となったあの日から、
現在に至るまでの時間を思い出していた、
堕ちていく彼女の手を掴もうと必死に自分の手を伸ばした、
伸ばした手は彼女に届かず、
彼女はそのままゆっくりと堕ちて行く、

ゆっくりと・・・

ゆっくりと・・・

全てを捨ててまで、
悪魔に魂を売ってまで求めた女性(ひと)は、
激しい轟音と共に

砕けた・・・

私は展望台からバラバラに砕けた最愛の女性を
ただただ見下ろしていた・・・

「あ・・あ・・・」

どうしてこうなってしまったんだ?

「ああ・・あ・・・あああ・・・」

同性を愛したから?
肉親を愛したから?
それは叶わぬ願いだと気づいたから?
人としての道を踏み外してもでも欲しいと願ったから?

「ああッ、ああーーーーッ、あーーーーーーーッ」

愛する人と一緒に居る、
それだけで幸せだと感じるなら、
そう思わせる事は幸せにする事だ。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

その考えは間違っていたのだろうか?



    『だから・・・これは貴女への復讐です』



彼女の最期の言葉だった。

愛する人が目の前で死ぬ・・・。
これ以上の苦痛がこの世に存在するのだろうか?
あの日から彼女はもう私のモノになった・・・はずだった・・・。
もう私から離れられない・・・はずだった・・・。

だが彼女は最悪の形で私の元から逃げ出した・・・。

これは罰なのか・・・?


君が私の全てだった・・・


君が居なければ私は生きていけない・・・。

 ・・・そうか、
 だったら生きていかなければいいんだ・・・・
 待っていてくれ・・・、
 今・・・追いつくから・・・。

周りの景色がゆっくりと堕ちて行く・・・。

ゆっくりと・・・。

ゆっくりと・・・。


あとがき

このSSは自分的にはかなりの問題作です。
内容ダークだし、ちょっと変わった書き方してるし、
「千影の話し方あれで良いのか?」って今でも思うし、
千影の最後の方の叫び方なんて適当だし、
自分鞠絵好きなのにあんな結末だし、
何よりこんな終わり方なのに続編が存在します。
まだ読んでない方で、もし見てみたい方が居ましたら、
続編の『死ンデモ愛シテイル・・・』の方も読んでてみて下さい。
ただし・・・内容はちょっと、度が過ぎてるかもしれませんが・・・。
最後に、これを読んで下さった兄上様および兄くんの方々、すみませんでした・・・。


更新履歴

H15・5/27:完成
H15・6/15:修正
H15・8/5:また修正
H15・8/11:またまた修正

 

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