雪が降ってた・・・。

 重く曇った空から、真っ白な雪がゆらゆらと舞い降りていた。

 冷たく澄んだ空気に、湿った木のベンチ。


鈴凛「・・・・・・」

 アタシはベンチに深く沈めた体を起こして、もう一度居住まいを正した。
 屋根の上が雪で覆われた駅の出入り口は、今もまばらに人を吐き出している。
 
鈴凛「・・・遅い」

 再び椅子にもたれかかるように空を見上げて、一言だけ言葉を吐き出す。

 体を突き刺す様な寒さ。
 そして絶えることなく降り続ける雪。
 もう一度ため息混じり見上げた空。

 その視界を、ゆっくりと何かが遮る。

女の子「・・・・・・」

 雪雲を覆うように、女の子がアタシの顔を覗き込んでた。

女の子「雪・・・積もってるの」
鈴凛「そりゃ、2時間も待てるからね・・・」
女の子「・・・? 今、何時・・・?」
鈴凛「3時」
女の子「・・・びっくりです☆」
鈴凛「最後の☆は何よ・・・!?」
女の子「もう6時くらいだと思ってたの〜」
鈴凛「アンタ、アタシをどんだけ待たせる気だったの!?」
女の子「ひとつ聞いてい〜い?」
鈴凛「話聞け!」
女の子「寒くない?」
鈴凛「寒い!!」


女の子「これ、あげます」

 そう言って板チョコを一枚差し出す。

女の子「再会おいわいなの☆」
鈴凛「・・・・・・数年ぶりの再会が、板チョコ一枚?」

 しかも一口食べられてるように欠けている・・・。

女の子「亞里亞の名前・・・まだ覚えてる?」
鈴凛「今、自分で答え言ったわよ・・・」
亞里亞「・・・びっくりです☆」
鈴凛「・・・・・・」

 もうなんかツッコムのも嫌になってきた・・・。

鈴凛「そっちだってアタシの名前覚えてるの?」
亞里亞「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
鈴凛「なにその間!?」
亞里亞「凛鈴」
鈴凛「逆!」
亞里亞「ンリンリ?」
鈴凛「そう言う逆じゃない!」
亞里亞「???」
鈴凛「・・・分かんないの?」
亞里亞「・・・・・・くすん・・・」

 これ以上ないくらい分かりやすく悲しい顔をする。
 一言一言が、地面を覆う雪のように、記憶の空白を埋めていく。

鈴凛「・・・はぁ・・・、いいとこまで行ってるのに・・・」
亞里亞「!」
鈴凛「ここにいるのも限界ね・・・そろそろ行こうか」

 数年ぶりの町で、

 数年ぶりの雪に囲まれて、

亞里亞「鈴凛?」

 新しい生活が、冬の風にさらされて、ゆっくりと流れていく。

鈴凛「お! 正解」
亞里亞「・・・良かったの☆」



 雪が降っていた。


 思い出の中を、真っ白い結晶が埋め尽くしていた。


 数年ぶりに訪れた白く霞む街で、


 今も降り続ける雪の中で、


 アタシはひとりの少女と出会った。

 


更新履歴
03年9月5日:完成
03年9月18日:修正
03年10月2日:加筆改良
 


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