キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン・・・
黒板が白い文字で隙間なく埋め尽くされる頃、やっと昼休みの到来を知らせるチャイムが鳴った。
鈴凛「・・・疲れた」
今日は4時間連続で座りっぱなしだった。
亞里亞「お疲れさま」
鈴凛「・・・やっと昼休みね」
亞里亞「亞里亞は学食に行くの・・・。 でも、鈴凛ちゃんは・・・やっぱり来ないの?」
鈴凛「そうね・・・」
いつもなら、アタシの向かう先はひとつだった。
この時期には誰もいないはずの場所。
ただ一面の雪に囲まれた(一部土が露出して腐っている)、寂しい空間。
だけどアタシは・・・。
『・・・申し訳ありません』
鈴凛「今日は・・・」
・・・・・・。
鈴凛「・・・やっぱり、学食には行かない」
自分でも、どうしてそう答えたのか分からなかった。
もう、あの場所には本当に誰もいないと分かっているのに・・・。
鈴凛「・・・ゴメンね、亞里亞ちゃん」
亞里亞「別にいいの」
鈴凛「なんか嬉しそうね」
亞里亞「くすくす・・・」
鈴凛「露骨に笑ってるし・・・」
亞里亞「あのね・・・。 鈴凛ちゃんらしいです、って思ったの」
鈴凛「どう言う意味?」
亞里亞「馬鹿みたいに無駄な足掻きをして、もがいてるような所」
一度裏亞里亞になってから、真剣な表情でアタシの顔をじっと見る。
亞里亞「でもね・・・今日の鈴凛ちゃん、元気がどこかに行っていてニコニコ笑顔じゃなかったから心配だったの」
鈴凛「アタシはいつもニヤニヤしてない!」
でも、自分ではいつもと同じでいるつもりなのに、亞里亞ちゃんには通じなかったらしい。
鈴凛「・・・じゃあ、ちょっと行ってくるね」
亞里亞「わかりました」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
鈴凛「・・・・・・」
足跡をつけることさえためらわれるような、まっさらの雪。
寂しくて、冷たくて、そして誰もいない場所。
その風景の中に、メガネの少女の姿はなかった。
鈴凛「・・・・・・」
時間が過ぎていく。
見渡す光景は、影の位置が微妙に変わっていること以外、何も変化がなかった。
鈴凛「・・・・・・」
・・・キィーーン
マイクの調子がおかしい時のような音。
変化のなかった景色が歪む。
千影「・・・・・・」
裂けた空間の中から、ひとりの生徒が出てきた。
鈴凛「早く閉めて・・・大地が腐るから・・・」
千影「・・・・・・詳しいんだな」
アタシの呼び掛けに、淡々と答える。
千影「初めて見る人間は・・・・・・大抵驚くなり何なりするものなんだが・・・・・・」
鈴凛「相変わらず人知を超えたことをしてるのね」
千影「初めて見せたはずの君は・・・・・・リアクションが薄いんだな・・・・・・」
鈴凛「初めてじゃ・・・ないからね」
千影「・・・・・・そうか」
押し殺したような声だった・・・。
鈴凛「・・・・・・」
千影「・・・・・・」
それっきり、ふたりとも黙り込む。
また、時間明けが流れる。
さっきと同じ風景の中で、違うのは千影ちゃんが立っていることだけ・・・。
鈴凛「お昼はもう食べたの?」
千影「・・・・・・まださ」
鈴凛「今から学食行く? まだ少し時間あるから」
千影「・・・・・・」
鈴凛「・・・・・・」
千影「・・・・・・いや、結構だ・・・・・・」
鈴凛「・・・・・・」
千影「・・・だって」
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン・・・
千影ちゃんが顔を上げると同時に、昼休み終了を知らせるチャイムがなる。
千影「・・・だからさ」
力無く微笑んだその表情が、どこか痛々しかった。
更新履歴
H15・11/12:完成
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