今日は1月15日。
 つまり成人の日・・・・・・だった日だ・・・。

 成人の日は今はもう動いて、1月の第2月曜日が休みになったはずなのに、
 何できちんと月曜日に学校があって、15日に休むんだあの学校は?
 まったく・・・ホントにテキトーで“ご都合主義”な学校だ。

 とにかくまったくもってよく分からんが、要するに今日は休みという訳だ。

 こういう祝日と言うものは、本来ほとんどの人が喜ぶものだろう。
 しかし、この町に引っ越してきて1週間以上が過ぎたけど、
 休みの日に気安く遊びにいけるような友達なんてアタシにはまだ居ない。
 そう言う場合、アタシはは普段メカでも作ってるんだけど、まだ道具と材料が届いてない。
 ついでに言うと材料費も足りない・・・。

 つまり暇だ。

鈴凛(ぐっすり睡眠でも取ろ・・・)

 今までと違う新しい生活。
 だから疲れていることには間違いないし、
 それに道具や材料が届いたら、また「規則正しくは馬鹿を見る」、
 「生活にはリズムは破るためにある」、「早寝早起きクソ喰らえ」な生活を始めるんだろう。
 だからこう言う時でもないとアタシはじっくり睡眠をとるような事はない。

鈴凛(ま、ちょうどいいかもしれないわね・・・)

 部屋に向かい、ベッドで仰向けに寝転がって目を閉じると、自然に眠りに入れた。


    ・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・・・・


鈴凛「ふぁ・・・」

 目が覚めると、窓から夕日が見えていた。

鈴凛「・・・・・・」

 枕元の時計で時間を確認すると、短針は4の数字を指していた。
 つまり4時だ。
 平日なら、丁度学校から帰ってくる頃だった。
 一日でこんなに寝たのは何年ぶりだろう?
 なんて考えていたら家の中が静かな事に気がついた。


    ・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・・・・


鈴凛「・・・静かなはずね」

 リビングに下りてきて、家の中に誰もいな事が判明した。
 亞里亞ちゃんと白雪ちゃんは、どうやらふたりで夕食の買い物に出かけたみたいだった。

鈴凛(・・・アタシも出かけようかな)

 特に目的はないけど家にいてもやる事がない、
 亞里亞ちゃん達もなかなか戻ってこないし、
 このまま黙っているよりはいいと思った。

鈴凛(・・・じゃあ、どこに行こうかしら)

 少し考えて、学校に向かって歩いていく事にした。
 学校には何の用もないけど、あんな“ご都合主義”な学校だ、
 もしかしたら新しい発見やメカのアイディアになる何かがあるかもしれない。

 それに・・・。

鈴凛(昔の事、思い出すかもしれないし・・・)


    ・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・・・・


鈴凛「なんもなかった・・・」

 特に何もなく学校の入り口に着いた。
 いやいや、ここでなにか新しいことを発見するかも・・・、
 なんて考えながらその場所に突っ立っていた。

 ここも、今日が休みじゃなかったら、きっとまだ部活の生徒で溢れているんだろう。
 事実、今日は平日だから途中で見かけた中学校とかではそうだった。

鈴凛「・・・・・・」

 今日は平日だから・・・。

鈴凛「・・・・・・」

 平日だから、もしかして・・・。

鈴凛「・・・まさか知らないって事は・・・」

 本来、休みのはずの月曜日にはきちんと来たんだから・・・、
 と頭で否定してはみるものの、心のどこかで否定しきれない部分があった。
 もしかしたら、今日も来てるって事は・・・

鈴凛「・・・・・・」

 ここに立っていても確認は出来ない。

鈴凛「・・・新しい発見を探す、そのついでにでも」

 自分に言い訳するように呟いて、アタシはゆっくりとその場所に向かった。


    ・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・・・・


 真っ白な風景が、赤く染まっていた。

鈴凛「・・・面白い事教えてあげようか?」
鞠絵「なんでしょうか?」

 中心に佇む少女が、小さく頷く。

鈴凛「うちの学校、成人の日を未だに15日に休む事にしてるのよ」
鞠絵「知っています」

 表情は、よく分からない。

鈴凛「何やってんのよ、こんなところで」
鞠絵「わたくしにもよく分かりません」

 少女が、ゆっくりとアタシの方に歩いてくる。

鞠絵「そう言う鈴凛ちゃんは、間違えて学校に来ちゃった口ですか?」
鈴凛「アタシは、近くまで来たからちょっと寄っただけ。 大体、月曜日に学校来たから知ってるし」
鞠絵「どうしてですか?」
鈴凛「インスピレーションを求めて」
鞠絵「・・・かっこいいですね、それ」

 そうか?

鈴凛「・・・鞠絵ちゃん」
鞠絵「なんですか?」
鈴凛「もしかして、お昼からずっとここに?」
鞠絵「えっと・・・そうなりますね」

 照れたように笑う鞠絵ちゃんの表情は、どこか悲しげだった。

鞠絵「鈴凛ちゃん・・・本当の事を言います・・・」

 鞠絵ちゃんが急に改まった。

鞠絵「わたくし達は本当の姉妹じゃないんです」
鈴凛「知ってる」

 しかし、なんかその言葉が言いなれてる気がした。
 寧ろそれが本職のように思えた。
 何故?

鞠絵「今日は、来るつもりじゃなかったんです・・・。 でも、気がつくとこの場所に立っていました。
   どうしてかは、自分でもよく分かりません。 誰もいないって分かってるのに・・・。
   それなのに、こんな場所に立ってて・・・。 やっぱり誰もいなくて・・・」
鈴凛「・・・・・・」
鞠絵「がっかりしてはいません。 だって、わたくしがおかしいんですから・・・」

 うん、色んな所が。

鞠絵「それなのに、この場所を動く事ができなかった・・・。 ・・・何か取り憑かれたのかと思いました・・・」
鈴凛「金縛り!?」
鞠絵「もしかしたらって、そんな曖昧な希望にすがって・・・。
   結局一人ぼっちで・・・。 いつの間にかこんな時間になってて・・・。
   楽しみにしていたお昼のドラマ、見逃してて・・・」
鈴凛「最後のはどうでもいい」
鞠絵「本当に、馬鹿ですよね・・・」
鈴凛「本当に馬鹿ね」
鞠絵「ひどいです・・・」

 微かに笑ったような気がした。

鞠絵「そんな事言う人、斧で頭を叩き割りますよ」

 ・・・そのポケットからはみ出ている、やや錆びついた鉄の刃のようなモノはなんですか?(汗)

鞠絵「でも、嬉しかったです。
   鈴凛ちゃんに、会えましたから・・・」
鈴凛「・・・鞠絵ちゃん、ひとつだけ正直に答えて」
鞠絵「なんでござるか?」

 どこの野武士だ?

鞠絵「・・・自転車に乗れるかどうか以外なら答えます」
鈴凛「乗れないのっ!?」
鞠絵「こ、答えないって言ったじゃないですか!」
鈴凛「・・・でもそう言うって事は乗れな・・・・・・・・・・・・ナンデモアリマセン」

 だから今ポケットから出したその手斧をしまってください。

鈴凛「どうして、毎日学校に姿を見せるの?」

 どうして、アタシに会いに来るの・・・?

鞠絵「・・・そうですね」

 手斧をしまって、言葉を紡ぐ。

鞠絵「ストレスは人にぶつけると良いですから」

 夕焼けの下、鞠絵ちゃんが(台詞とは裏腹に)穏やかに微笑む。
 いつもと同じ鞠絵ちゃんの笑顔。

鈴凛「・・・・・・」
鞠絵「本当は、わたくしにも分かりません・・・。
   一度、言いましたよね? 分からない答えを探すために来てる・・・って。
   あれ、台詞はパクりですけど、本当です」
鈴凛「それで、答えは見つかったの?」
鞠絵「・・・分かりません」
鈴凛「・・・鞠絵ちゃん、明日はどうするの?」
鞠絵「明日ですか・・・?」
鈴凛「土曜日だから昼休みないのよ」
鞠絵「そうですね・・・盲点でした」
鈴凛「じゃあ、放課後どっか遊びに行かない?」
鞠絵「デートですか?」
鈴凛「・・・アタシ達、女の子同士だよ」
鞠絵「分かりました、明日は鈴凛ちゃんとデートです」
鈴凛「いや、だからアタシ達女の子同士だからデートじゃなくて・・・、え〜っと・・・・・・と、とにかくデートじゃなくて・・・」
鞠絵「明日の放課後、この場所で待っています」
鈴凛「そうね、じゃあ1時に待ち合わせ」
鞠絵「はいっ。 約束です」


    ・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・・・・


鈴凛「じゃあ、これで解散ね」

 それぞれの帰路につくため、場所を校舎の入り口まで移した。

鞠絵「はい」

 いつも敬礼する白い肌の少女も、今日はすっかりそれを忘れているようだ。
 ヨカッタ、ヨカッタ。

鞠絵「明日、忘れないでくださいね」
鈴凛「大丈夫」
鞠絵「・・・約束、だよ」
鈴凛「ちょっとマテ

 その言い方は明らかに何か問題ないか?
 ・・・いや、“何”か分からないけど。

鞠絵「約束ですから・・・」
鈴凛「アタシ、約束は守る方よ」
鞠絵「はい。 期待しています。
   それでは、わたくしはこれで帰りますね」

 いつものようにぺこっとお辞儀をして、そのまま歩き出す。

鞠絵「鈴凛ちゃん、また明日です」
鈴凛「そうね」

 いつものように鞠絵ちゃんの後ろ姿を見送って、アタシも家路についた。


更新履歴
03年10月8日:完成
03年10月16日:微修正


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