少女「そこの人っ! どいてっ! どいてっ!」
鈴凛「・・・へ?」
ツインテールに縛った髪の毛を上下に揺らしながら、プラスチックの容器を二箱ほど大事そうに抱えた、
アタシより少し背が高めの綺麗な女の人がアタシに向かって走ってきてた。
少女「どけって言ってんのよッ!!」
ドガァッ
鈴凛「・・・痛い・・・」
少女「どけって言ってるのにどかないアンタが悪いのよ!」
まともに体ごとぶつかられて、アタシの体は謎のツインテールの女の人に轢かれ、
豪快に跳ね飛ばされた・・・。
鈴凛「あんな猛突進・・・とっさに対応できる人間がいるの・・・?」
少女「なんか言った?」
鈴凛「・・・・・・別に・・・」
少女「・・・やばっ! とにかく話はあとよっ!」
鈴凛「・・・へ?」
アタシの手を掴んでそのまま引っ張るように走り出す。
鈴凛「あ! ちょ、待ってよ!」
少女「待てないわよっ!」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
鈴凛「一体何があったって言うの?」
少女「追われてるのよ!」
この人は何故にこんなに強気なのだろうか・・・?
鈴凛「とにかく事情を説明して」
少女「無関係の人を巻き込むわけには行かないわ!」
鈴凛「既に十分過ぎるほど巻き込まれてるんだけど・・・」
少女「・・・・・・」
鈴凛「・・・・・・」
少女「大好きなたこ焼き屋があったのよ・・・」
アタシの質問は無視ですか?
少女「たくさん注文した所までは良かったわ・・・でも・・・」
なんとなく話の雲行きが怪しくなってきたような気がする・・・。
少女「まさか財布が無いなんてね・・・」
鈴凛「おまわりさ〜ん、この人食い逃げは―――」
ガンッ
少女「黙れ・・・」
鈴凛「・・・痛い・・・」
見ず知らずの人に殴られた・・・。
少女「後でちゃんとお金は払うわよ」
鈴凛「ホントですか?」
少女「ほんとよっ!」
でも反省の色が見られない・・・。
少女「まあ、そんな事より、早く食べないとせっかくのたこ焼きが冷めちゃうわ」
鈴凛「全然“そんな事”じゃない気がするんですけど・・・」
少女「どお? あなたも食べる?」
鈴凛「事情を話して返した方が・・・。 その方が罪も軽い―――」
少女「はふはふ・・・」
鈴凛「もう食ってるし・・・」
少女「うるさいわね!」
鈴凛「何故アタシが怒られるのだ?」
少女「あのね、たこ焼きは出来立てがいちばん美味しいのよ!」
鈴凛「・・・美味しくても盗品でしょ?」
少女「今度まとめて払うから良いのよ!」
鈴凛「・・・それでいいのか?」
少女「ほら、私からのおすそわけよ」
鈴凛「・・・まあ、後でキチンと払うなら、大丈夫かな・・・」
少女「やっぱ焼きたてよね」
鈴凛「ですね・・・」
少女「私は咲耶、咲耶って言うの」
鈴凛「アタシは鈴凛」
咲耶「・・・鈴凛・・・ちゃん?」
鈴凛「どうしたんですか?」
咲耶「・・・いえ、なんでもないわ」
泣き笑いのような複雑な表情・・・。
・・・なんてこの人に似合わないんだ・・・。
咲耶「今、失礼な事でも考えてなかった?」
鈴凛「・・・いえ」
咲耶「じゃあ、これでさよならね」
鈴凛「ですね」
咲耶「また会えるといいわね」
鈴凛「勘弁して下さい」
ガンッ
咲耶「また会えるといいわね」
鈴凛「ハイ、まったくもってその通りです」
アタシは暴力に屈した。
咲耶「じゃ」
憎らしいほどすがすがしい笑顔のまま元気に手を振って走っていく。
傾いた夕日の中で、先程と同じ様に上下に揺れるツインテールが印象的だった・・・。
更新履歴
03年9月6日:完成
03年9月20日:修正
03年9月24日:また修正
03年10月16日:またまた修正
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